ネットに流したから後戻りはできない的なちんまいプレッシャーがちょうどよい。
私立聖祥大学付属小学校、そういうのもあるのか。
公立でずっと育ってきた一般市民代表たる私としては、エスカレータ式に進学できる一貫校という奴は心惹かれるものだ。小学校の頃から奨学制度があるとは随分驚く。尤も、その分要求される学力は相当なもの。一度学んだ内容といえども、油断はできないように思われる。
さて――――
思えば起きてからすぐにパソコンの前の椅子に座ってしまって何も飲んでいないし食べてもいない。さすがに喉くらいは乾こうものよな。私は席を立って、少し硬くなってしまったような肩をぐりぐりと回しながら冷蔵庫の前まで歩いていき、牛乳パックを取り出してコップに中身を注ぎ、飲もうとした。
そういえば母も父も出てこないな、今日は何か用事でもある日だったのだろうか、などといったとりとめもない思考を始めようとして、口内に満たされる危険な臭いに顔を顰めた。
取りあえずガラガラのシンクに臭いの元を吐き出して、牛乳パックの期限を確かめる。
酷いもので、まず美味しく飲める期日は守られていない。一体どうしてしまったのか。記憶が中途半端に欠如している以上、こういった些細なことが命取りになっていくかもしれない。この牛乳とて、ここまで妙な臭いがしなければ胃に運ばれて腹を壊して寝込む事態に発展していたかもしれない。今後はこの身体――――昔の記憶に頼ってばかりではいられない。今いるこの私の家、もとい住居を積極的に探索していくべきだろう。何か致命的な思い違いをしている可能性もある。
考察はひとまず置いて、口の中をどうにかすることにした。
子どもだろうが大人だろうが腹痛には抵抗値がそこまでないものだ。今回は不快感で済んで運が良かったと思うべきだろう。
記憶通りの洗面台で、記憶通りの場所にあった自分の歯磨きを取り出して念入りに磨いていく。
致命的な思い違い。つまるところ、これが夢も希望もない何かしらの科学的なドッキリである可能性。あるいは、そのまんま夢で希望でしかない朝チュンオチか。
あいにく、このような奇妙な夢を見た覚えはないし、人類が急速に発展させられる科学技術にも限界というものがある。
既存の言語概念でコミュニケーション対応できて、かつ違う文化圏の人類種に対してやさしく技術提供をしてくれる親切な異星人でもいなければ、大幅に過ぎるブレイクスルーは見込めない。
それこそ、私が何となく抱いているファンタジックなこの状況への推測よりもSFじみているというものだ。
一通り歯を磨いてすっきりした私は、うがいをして肩をコキリコキリと鳴らしながらパソコンの前に戻る。まるでどこぞの引きこもり生活だと自嘲した。
全く方向性がつかめないゾ。