話は進んでいますが設定は進んでいません。
入学してすぐのころ。何やらケンカもどきを見かけた。
カチューシャを取り合っていたのか、そういう遊びだったのかわからないが、片方が持って行って、片方が追いかけていた。
逃げる金髪は目立っていた。元々クラスで浮いていたから、もっと悪化するのだろうなと漠然と思った。ハーフだったか。明るい性格なのだろうが、この件を後に悔んでドロップアウトしないといいな。
途中で追いかける方が諦めたように立ち止まった。立ち止まった静かそうな雰囲気の女の子の顔は、俯き気味で見えなかった。
すこし、良くない流れである。典型的ないじめっ子といじめられっ子の構図が完成してしまう。今はまだ、子どもの遊びですむ。
しかし、あまりわかりやすい絵面が出来て、人の記憶に残るのはまずい。下手に教師に知られてしまえば、両者ともに大打撃を受ける。学校側もいい迷惑であろう。
止めるほどの気力は無いが、どうにか後の対策でも練ろうか考えていたところで、その女子は現れた。
茶髪、可愛らしいが覚悟を決めた顔、ツインテール。
何だか見覚えはあるが、恐らく知らない顔だろう。入学してから今まで、すれ違っても何も言われなかった。
金、茶、紫。髪色の明暗が分かれたものだ。バランスがいい三人が揃っている。膠着状態は、茶色のワンビンタと一喝で終わった。そこまで近くにいなかったので中身は聞こえなかった。視力はいいが、聴力は人並みである。
その後の詳細はわからないが、鐘が鳴ったのであの三つの目立つ頭はセットで教室に戻っていった。河原で殴り合って和解する男子高校生の日常を幻視した。そんなタイトルの漫画もあっただろうか。著しく内容に誤解はあるだろうが、読んではいないので勘弁してほしい。
ちなみに、その漫画は小学校の図書室には無かった。一連のやり取りは図書室の窓を開けて見ていた。三人組のうち、紫の定位置がこの窓のそばだったから、何となく因果を感じた。
そして、普段は彼女がこの位置で近寄りがたいオーラを放っていたから私は図書室であまり落着けなかったのである。この場所好きだったのに。
今この時も、鐘が鳴ってしまってがっかりである。せっかくの昼休み、図書室に来てちょっとしたら先ほどのやり取りに目を奪われた。本も大して読めずに、ゆっくりも出来なかった。
先ほどの三人が仲良くなって、紫があまり図書室に来なくなるほどアクティブになってくれれば、この場所はフリーゾーンになる。流石にいじめの被害者加害者が仲良くなることは無いだろうが、仲良くなってくれたら嬉しいな。
身勝手に私は思って、手元の本にしおりを挟んで貸出手続きを済ませた。
両端にカーテンが巻かれた窓から眺める景色は、舞台の一幕のようだったかもしれない。私には、華々しくは映らなかったが。