ウマ娘 エトワールロマンツェ   作:たかと

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貴弘のトレセン学園就任初日の
貴弘と美桜の作戦会議の話がメインです
主にサクラチヨノオーに関する話題となります


第2話 チヨノオーの適正

"秋川やよい"への電話を終えメジロアルダンの

専属トレーナーとしてトレセン学園に赴任する

決意をした貴弘

 

その様子を美桜とチヨノオーは笑顔で

見届けていたのだが不意に自分たちの

退院するアルダンの迎えに来たという

当初の目的を思い出し目の前に止まる

黒塗りのメジロ家の高級車に目にして

美桜はアルダンに尋ねる

 

「えっと……?

私たち、お迎えに来たんだけど

その様子だと、アルダンちゃんは

これから車で、お屋敷に帰るのかな?」

 

「はい……当主の、お婆様を初め家族や

他のメジロ家のウマ娘たちにも退院の

知らせと挨拶を……そして……」

 

そこまで話してアルダンは

頬をピンクに染め貴弘に目を向ける

 

「素敵なトレーナーさんが

見つかったことも知らせて参ります」

 

そう告げるアルダンの表情は完全に

貴弘に全幅の信頼を抱いた様子であった

その姿に美桜とチヨノオーだけではなく

アルダン専属メイドの2人も笑顔になる

 

「そっか……じゃあ、チヨちゃん……

お祝いの品だけ渡して私たちも帰ろうか?」

 

「そうですね」

 

アルダンが実家であるメジロ家の屋敷に

帰ってから学園に戻るというので美桜と

チヨノオーも学園に帰ることにした

 

「宜しければ、お屋敷に向かう前に

トレセン学園に寄って御送り致しますが?」

 

わざわざ迎えに来てくれた美桜と

チヨノオーに無駄足をさせてしまったと

思ったのか"ばあや"が美桜、チヨノオーの

3人に車で学園まで送ることを提案する

 

しかし……

 

「いえいえ……早くお屋敷に戻って

皆さんに元気な姿を見せてあげてください」

 

「そうですよ! 私たちのことはお構い無く」

 

美桜とチヨノオーは全く気にした様子はなく

笑顔で断り早くお屋敷に戻った方がいいと促した

 

「宜しいのですか……?」

 

「はい! 貴弘くんと雑談しながら帰りますから」

 

「お気遣い、感謝致します

では、アルダンお嬢様……参りましょう」

 

「はい……それでは、美桜さん

チヨノオーさん……そして、貴弘さん

後日また、お会いしましょう。ごきげんよう」

 

最後に優雅な挨拶を交わすとアルダンと

"ばあや"とサキの3人は高級車に乗って

専属の男性運転手が運転席に乗り込むと

車は病棟からメジロ家のお屋敷に向けて

ゆっくりと走り去っていった

 

その後、貴弘は美桜とチヨノオーと

雑談をしながら昼食を済ませると2人に

トレセン学園のトレーナー寮への入寮が

決まったことで帰国前に仮住まいの為に

キープしていたアパートの解約手続きを

済ませに不動産屋に向かうと告げてから

また明日トレセン学園で会おうと告げて

解散して無事にアパートの解約を終えて

その日の夜はビジネスホテルに宿泊した

 

そして翌朝……

 

トレセン学園の正門を訪れると

理事長秘書である駿川たづなが

貴弘を待っていた

 

「お待ちしておりました

水野貴弘さん……秋川理事長がお待ちです」

 

そう言って優しい笑顔で案内してくれた

彼女も貴弘の父親のことも知っている為か

少し懐かしそうな表情にも見える気がした

 

そして理事長室に入ると

メジロアルダンと秋川理事長が待っていた

 

「貴弘さん!」

 

「よくぞ来た、水野くんッ!」

 

アルダンは嬉しそうに貴弘を出迎えると

秋川理事長もバッと扇子を広げて歓迎すると

 

「さて……早速だが

これがメジロアルダンとの

専属トレーナー契約書であるぞッ!」

 

そう言って秋川理事長が貴弘に手渡した

契約書にはウマ娘の名前とトレーナーの

名前を書く欄があり既にウマ娘の名前を

書く欄には綺麗な字でメジロアルダンと

名前が書かれていた

 

「既にメジロアルダンの名前は

契約書に刻まれているッ! あとは君が

名前を書けば晴れて契約は成立するぞッ!

さあ、水野くん! 迷わず名前を書くがよいッ!」

 

秋川理事長の後押しを受け貴弘は

アルダンが見つめるなか迷いなく

万年筆でサインをした

 

そして……

 

「**【契約成立】**ッ!

存分に腕を振るうが良いッ!」

 

そう言って秋川理事長は

貴弘のトレセン学園就任を大喜びしている

 

「アルダン……改めて今日から宜しく頼む」

 

「はい……私の方こそ宜しくお願い致します」

 

貴弘とアルダンは互いに挨拶を交わすと

朝の授業が始まる時間が迫ってきたので

一先ず明日またプランやスケジュールを

建てることを約束して解散すると同時に

貴弘は"駿川たづな"から学園敷地内にある

トレーナー寮へ案内されて移動すると鍵を

受け取り用意された自分の部屋へ入室した

 

窓を開けると遠くに学園の本物のレース場を

模した練習場のターフが見えてウマ娘たちが

走る蹄鉄の混ざった足音が微かに響いてくる

 

貴弘は欧州から持ってきた段ボールを床に広げ

荷解きに追われていると部屋のドアが遠慮なく

数回ノックされると返事をする前に扉が開いた

 

「お~い、貴弘くん! 引っ越し作業進んでる?」

 

入ってきたのは美桜だった

 

「美桜……お前なぁ……

ノックと同時に開けるなって……

というか、何だ? その大きな荷物は?」

 

呆れる貴弘の前に美桜は両手に抱えた

大きなタッパーとお盆に乗せた湯気の

立つマグカップをドサリと机に置いた

 

「はい、コレ! 引っ越し祝い!

ウィンフォードにいた頃に貴弘くんが

『日本食が恋しい』って言ってたから

肉じゃがとお味噌汁を多めに作ってきた

まずは腹ごしらえしなきゃ力が出ないよ」

 

「……ありがたい

ちょうど腹が減っていたところだ」

 

「フフッ。素直で宜しい」

 

室内のパイプ椅子に腰掛け

美桜の作った肉じゃがを口に運ぶ

「美味い」と呟く幼馴染みの姿を見て

美桜は嬉しそうに満足げな笑みを浮かべ

近くの段ボールの上にちょこんと腰掛けた

 

「それにしても……本当に貴弘くんも

トレセン学園のトレーナーになったんだね

昨日までは『何もする気が起きない』って

死んだ魚の目をしてたを見た時は心配したよ」

 

「面目ない……」

 

「ユリアーヌスさんと何かあったんでしょ?」

 

「……美桜には全てお見通しか」

 

美桜に指摘され貴弘は否定せず数ヶ月前に

起こったことを包み隠さず全て打ち明けた

 

「そっか……それじゃあ

あんな目になっちゃうのも無理ないね

相変わらずユリアーヌスさん厳しいね」

 

「……確かに勝つことは大事だ!

だが俺は、やっぱりパートナーを信じて

走る楽しさと喜びを常に意識させてやりたい」

 

「うん……私も貴弘くんの信念を

支持するし、それが一番大事だと思うよ」

 

決してお世辞や同情からではない

心からの美桜の賛同に貴弘は心が

少しだけ救われた感じがした

 

「今思うと俺にアルダンの

見舞いに同行しようと誘ったのも

アルダンと会わせることで俺が気力を

取り戻せると思って誘ってくれたんだろ?」

 

「まあ、確かにそれもあるけど

貴弘くんの為だけって訳じゃないよ……」

 

「そうなのか……?」

 

「うん……昨日も言ったけど

アルダンちゃんは屈腱炎を発症して前任の

トレーナーに見限られて契約を解除されて

直ぐに新しいトレーナーを探していたけど

実績のあるトレーナーはおろか新人でさえ

匙を投げちゃって皆からメジロアルダンは

もう無理だろうって決めつけられちゃって

もしこのまま退院したらアルダンちゃんは

本当に走ることを諦めてしまうかもって

私もチヨちゃんも心配をしていたその日に

貴弘くんと再会したからアルダンちゃんを

救えるのは貴弘くんしかいないって咄嗟に

思って気がついたらお見舞いに誘っていた」

 

「そうだったのか……確かに

あのアルダンの『まだ走りたい』って

気持ちのこもった目を正面から見たら

アルダンの脚を守り抜きつつ、もう一度

彼女を、走らせてやりたいって思ったよ」

 

「うん! 貴弘くんなら

きっと、そう思ってくれるって信じてたし

私もチヨちゃんの脚のことで一人でずっと

悩んでいたから貴弘くんがトレセン学園に

来てくれたら心強いだろうなって思ったし」

 

「そっか……何はともあれ美桜が

俺とアルダンを出会わせてくれたことで

少なくとも俺は救われたよ……ありがとな」

 

「フフッ。どういたしまして」

 

幼馴染みな故に気兼ねなく互いの心中を

包み隠さず打ち明けたことにより貴弘は

昨日よりも更に気持ちが前向きになって

無気力状態から完全に立ち直っていた

 

「そういえばチヨノオーも

屈腱炎を発症したと聞いていたが

チヨノオーの脚の調子の方はどうなんだ?」

 

「うん……普通に歩くくらいなら

問題ないし日常生活にも支障はないけど

一昨年の日本ダービーの頃のキレは戻ってない」

 

美桜の話ではチヨノオーは日本ダービーで

骨折してからリハビリに1年要してしまい

昨年の安田記念から復帰したものの1年の

ブランクの影響は感覚を奪うのには十分な

要因だったらしくまさかの最下位に沈むと

続く翌月の宝塚記念も再び最下位に終わり

挙げ句にレース直後に屈腱炎までも発症し

今に至っているとのことらしい

 

「……ダービーで

無理させちゃった私の責任だよ」

 

「チヨノオーにとって

ダービー勝利は悲願だったんだろ?

美桜は担当ウマ娘の意思と決意を尊重して

ベストを尽くしたまでじゃないか……過度に

自分を責めることはないと、俺は思うけどな」

 

「うん……ありがとう

一先ずトレーナー寮の案内をするね」

 

「ああ、助かる

できれば夕食の後で良いから

アルダンとチヨノオーの過去のレースの

映像やデータとかを見せてくれないだろうか?」

 

「もちろん! 私の持ってる

映像やデータならいくらでも見せてあげるから」

 

そうして美桜からトレーナー寮内を一通り

案内してもらったその日の夕食後に美桜と

アルダンとチヨノオーの過去のレースの

映像やデータを見ていたがチヨノオーの

映像とデータを見ていた貴弘はあることに

気付き美桜に提案をする

 

「なあ、美桜……」

 

「なに?」

 

「はっきり言うが、チヨノオーは

中距離よりマイルの方が適正だと思うぞ?」

 

「マイル!?」

 

予想だにしない貴弘からの

アドバイスに美桜は思わず目を見開く

 

「ああ……ダービーのラストでアルダンに

一度は抜かれた後に再び抜き返して逆転した

あの瞬発力とダービーの前に走った弥生賞に

3年前の朝日杯フューチュリティステークス、

加えて敗れはしたが昨年の安田記念の映像を

見るにマイルなら彼女は再び輝けると思うぞ」

 

「!!」

 

貴弘の指摘を聞いた美桜は

希望が見えて興奮したのか

両手で自身の口元を覆う

 

「確かにチヨちゃん、去年の安田記念、

勝てなかったけど凄くいい走りをしていた……」

 

「そうだろ? 安田記念で敗れたのは

久しぶりの実戦で走る感覚が鈍ってたからだ。

それに加えて中距離だとチヨノオーみたいな

瞬発力のあるウマ娘は後半のスタミナ勝負で

中距離が得意なウマ娘が相手だと持久力では

分が悪いし脚の怪我のリスクも付きまとうが

マイルなら彼女の最大の武器である一瞬の

爆発的な瞬発力を極限まで活かせると思うぞ」

 

「全然、気づかなかった……」

 

貴弘の説明を聞いた美桜は

鳥肌が立つ感覚を覚えたのと同時に

今まで気づかなかった自分を情けなく思った

 

「ダービーで一度アルダンに抜かれながら、

もう一度信じられない根性で差し返した彼女の

あの脚……あれはマイルウマ娘の最高峰の資質だぞ」

 

「そうか……きっと私は

ダービーを勝ったウマ娘だからって

無意識に、ずっと中距離のレースばかりに

拘っちゃってたのかもしれない……チヨちゃんの

可能性をトレーナーの私が狭めちゃってたんだね」

 

「自分を責めるな美桜……確かに

ダービーウマ娘をマイルに転向させるなんて

普通のトレーナーなら怖くて提案できないさ。

だけど……今のチヨノオーが、もう一度自信を

取り戻して足元に負担をかけずに再び頂点を

狙うとしたら……マイルが最適解だと思うぞ」

 

「わかった! チヨちゃんと

相談してマイルでローテを組んでみる!

貴弘くん……気づかせてくれて、ありがとう!」

 

「アドバイスした俺が

こんなことを言うのもアレだが……

ダービーウマ娘をマイルに転向させるのは

一部のファンやトレーナー達に批判される

可能性があるかもしれないが……大丈夫か?」

 

「うん! 私の役目はチヨちゃんを

相応しい場で輝かせて勝たせてあげること!

批判なんて結果で黙らせるよ!」

 

「凄いな、美桜は……」

 

「データと映像を見ただけで

チヨちゃんの最適解に瞬時に気づいた

貴弘くんも凄いと思うけど?」

 

「そうか……?」

 

貴弘は少し照れくさそうに

頭を掻きビデオの再生を止めると

画面が暗転し夜の静寂が部屋に戻る

 

こうして純粋な「プロ同士」として

互いの担当ウマ娘の未来を真剣に語り合う

夜のトレーナー寮の一室でサクラチヨノオーの

「マイル転向」という運命の作戦会議が決した

 

「まあ、言い出しっぺだし

俺もチヨノオーのマイル仕様への

リビルド(再構築)』を全面的に手伝うからな」

 

「ありがとう、貴弘くん!

じゃあ、夜も遅いし今日はもう寝て明日、

アルダンちゃんやチヨちゃんと初合流しようよ」

 

「そうだな……続きは明日にしよう」

 

「うん! じゃあ私も自分の部屋に戻るね」

 

「ああ! 美桜とチヨノオーが

短距離〜マイル戦線……俺とアルダンが

中距離〜長距離戦線で雪辱を目指そう」

 

「うん!明日から頑張ろうね!」

 

美桜が笑顔で部屋を後にし

静かになった自室で貴弘は窓の外を見つめた

遠くにトレセン学園の夜間照明街灯が見える

 

 




因みに、この物語の貴弘と美桜は、
お互いに幼馴染み以上の感情はなく
信頼関係はありますが互いに恋愛感情が
芽生えることはないことをお知らせしておきます。

そして今回のサクラチヨノオーのマイル転向は
彼女がマルゼンスキーに凄く憧れていることに加え
実馬のサクラチヨノオーが主にマイル戦線を主戦に
強さを見せたマルゼンスキーの子供であることから
マイルで復帰して活躍できたかもという書いている
私の主観ではありますが何卒、宜しくお願いします。
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