うす汚ねェクルタ族の血を増やしてやるし!   作:黒岩

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ヒノメ×ト×ケイヤク

 私は久し振りに彼女と連絡を取った。

 ……いや、正確には向こうから連絡を取ってきた。

 

『へぇ~じゃあ結構修行進んでるんだ~。頑張ってんじゃ~ん!』

 

「ああ。四大行に応用技もある程度は。そして……発も形になってきた」

 

 修行を行っている森の中。私に念の指導をしているイズナビから離れて電話越しに会話を行う。

 その相手はスピカ。私にとって唯一の同胞。プロハンターでハンターとしての先達。

 そのことから当然だがスピカもまた若い頃から念能力者だったのだろう。確か11歳の時には既にプロハンターだったはずだ。彼女の能力は私も知らないが……それでも子どもの時から念を覚えていたのならあの強さにも納得がいく。

 

『師匠はあのイズナビさんだっけ? 無精ひげのおじさんでしょ?』

 

「ああ」

 

『あーしあんま話したことないけど結構いい人だからちゃんとしなね~。失礼な態度取ったりしてない?』

 

「するわけないだろう。普通に接している」

 

『……あはは~あーしも大人になってから気づいたけど実はあーしらにとっての普通って普通じゃなかったりして~』

 

「? どういう意味だ?」

 

 理解できないことをスピカは言う。私たちが普通じゃない……? 確かにクルタ族は普通の人とは違うが……いや、それでは文脈的におかしい。

 まさか私が失礼な態度を? ふむ……思い当たる節はそれほどないが……。

 

『まああーしは理解した上でやるから人のこと言えないかー。なら話題変えるね~』

 

「まだ何かあるのか? そろそろ修行に戻りたいのだが……」

 

『すぐ終わるからへーきっしょ~。──でさ、もう発まで形になってきたって言ってたけど……もしかして旅団や緋の眼に関係する能力にした?』

 

「!」

 

 ──不意に転換した話題。スピカからの問いかけに私は鼓動を跳ねさせる。なぜスピカが私の能力について知っている? 

 まさかイズナビか? 彼が私の力を……いや。

 そこまで考えて私は自らの思考を自らで否定する。そうではない。簡単な推理、推測だ。スピカは私の思いを知っている。ならば旅団や緋の眼が関係してくると思うのは普通のことだ。

 

「その通りだ。──と言ったら?」

 

『別に? やっぱりな~ってだけ。そんでその反応はやっぱりな~』

 

「……そうだとして何か問題があるのか?」

 

『それもない。ってかもうクラピーは大人じゃん。プロハンターになったし、念能力は人それぞれどんな能力も作るのも自由。それがどんな能力であれあーしが口出しする権利はないし』

 

 スピカの言葉に内心で頷く。その通りだ。同胞だとしても他人に口出しされたくはない。

 当然だがそれでも身構えてしまったのは……スピカが旅団への復讐や仲間の眼を取り戻すことに否定的だったからだろう。またそのことについて言われるのかと思ってしまった。

 だがその予感は少し遅れて的中する。スピカはいつもの変わらない軽い声色で告げた。

 

『ただわかってる? ──それをするってのは相当な覚悟が必要だってことがさ~』

 

「……無論だ。覚悟は決めている」

 

『本当かなぁ。何が何でもやるって本当に決めてる? 他の何よりも優先するって。本当にそれができる?』

 

「だからそう言っている!! スピカ……私の覚悟を愚弄するつもりか?」

 

 そのしつこい確認に私は声を荒げる。感情が昂ぶって緋の眼になってしまう。

 だがそれほどのことだ。緋の眼や旅団について。私はとうに覚悟は決めている。だからこそあの制約と誓約を定めた。

 

『……ん~~~~そっか。ならいいや。あーしはもう何も言わない』

 

「……そうしてくれ」

 

 何も言わないとあっけらかんとそう言うが、本当は何か言いたいことがあるのだろう。スピカはいつも私に声をかけ、去る時にそんな雰囲気を微かに漂わせる。

 5年前に一族が滅んでからいつもそうだった。

 だがもう何も言わないというならそれで構わない。唯一の同胞だが彼女のことを心配する必要はない。おそらく私よりも数段強いのだから。そう緋の眼を発現して“絶対時間(エンペラータイム)”を発動した私より──

 

『じゃ、修行頑張ってね~』

 

「! ──待ってくれ。こちらからも1つ聞きたいことがある」

 

『? なに?』

 

 私は思考の中で気づいたことを、本当に今更気づいたことを思い出し、電話を切ろうとするスピカを呼び止める。

 水見式で判明した私の系統は具現化系だった。

 しかし後に新たな事実が判明した。緋の眼を発現した時──私は特質系になる。

 特質系は他の系統と違い、特殊な環境や血統によって発現するという。

 クルタ族であり緋の眼になった私は特質系になる。それは問題ない。

 ではなら──()()()()()()()()()()()()()? 

 

「スピカの念系統は何なんだ?」

 

『放出系だけど?』

 

「ならば──緋の眼になった時は?」

 

 私は意を決してそれを問いかける。

 そしてよくよく考えてみれば、私はスピカが緋の眼になったところを一度も見たことがない。

 感情を完全にコントロールしている。かつて長老がスピカを指して言ったことだ。彼女はクルタ族の中でも特に強いと。

 ならばおそらくは私と同じように……いや、あるいはクルタ族皆がそうなのかもしれない。

 ゆえに確認のためにスピカに質問したが、質問に答えるまで間があった。ゆえに私は半ば確信する。このあと、スピカは嘘を言うかもしれないと。

 

『そんなこと聞くってことはクラピーはもしかして特質系になったのかな~?』

 

「……ああ。緋の眼になった時のみ特質系になる。スピカはどうなんだ?」

 

『ん~どうだろう。どっちだと思う?』

 

 だが私の予測はまたしても外れた。嘘ではなく答えははぐらかし。

 しかしその答えはある意味で答えているようなもの。はぐらかすということは、何かあるということ。

 スピカ自身もまた緋の眼になれば特質系になる。ならないかもしれないが、なってもおかしくはない。

 

「……答えられない理由があるのか?」

 

『ん~……ま、クラピーなら言ってもいっか。あーし──緋の眼ってあまり好きじゃないからさ』

 

「好きじゃない?」

 

『そりゃそうじゃん。だってしんどくない? 緋の眼になるとすっげーパワー上がるけど疲れるし大変じゃん。もう無理なんだけど~ってカンジで』

 

「確かに体力は消耗するが……」

 

 そうして更に深堀りする質問を投げかけるが、返ってきたのは大したことのない理由。スピカにとって緋の眼はそれほど好きではなく、その理由は単純に疲れるためだという。

 確かにそれは間違いではない。念能力者として目覚める前も緋の眼は身体に負担がかかった。

 しかしそんなことが理由……何か秘密でもあるのか? 私にも言えない何かが……。

 

 ……“導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)”が使えればいいが……。

 

 私はふと自らの具現化した鎖の一つ“導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)”を使うことを考える。相手の嘘を見抜くことができるこの能力ならばスピカが嘘をついているかを見抜き、隠している何かに近づくことが出来るかもしれない。

 しかしこの能力は実際に顔を合わせる必要がある上、能力を使用していることは相手にバレてしまう。軽率に使っては関係が壊れてしまうような能力だ。親しい相手の嘘を見抜くために使っていい能力ではない。

 

 しかし妙に気になってしまうのは何故だろうか。私はスピカを──

 

『──クラピカくん。今何しようとしてる?』

 

「!?」

 

 ──耳元で響く普段よりも低く静かな声に私は身を跳ねさせる。

 

 スピカのあまり聞かない声色。私のことをあだ名で呼ばない。

 そして何よりその言葉の内容。私が今能力を使えないかと考えたことを見抜いたのか……!? 

 

「……いや、何も、していない」

 

『へぇ~そっかそっか。それならいいんだけどさ。クラピカくんはあーしに旅団とか緋の眼のことでとやかく言われたくないんだよね? 幾ら同胞でもさ』

 

「……ああ。その通りだ」

 

『うん。ならさ──あーしにも人に言いたくないことはあるよ。だから探らないでくれるかな?』

 

 通話越しに聞こえる──いや、感じるほどの異様な気配に私は冷や汗を掻き、息を呑む。

 なんだこれは。スピカは、こんな雰囲気が出せたのか? 

 だがもしかしたら今のスピカは私と同じように緋の眼を……。

 

「……わかった。そのことについて()()()()()()やめよう。二度としない」

 

『……ま、それならいいけどね~。修行がんば~。あーしも用事あっから切るね~。おっつ~』

 

「ああ。また」

 

 そうして通話を切る。……あえて言葉を選んでみせたが、おそらくそのことにも気づかれているだろうな。

 しかし私にとって重要なのはスピカのことよりも旅団や緋の眼のことだ。どのみちスピカは関わらない。なら今は彼女のことよりも力をつけるために最後の仕上げを行うこと──それが先決だと私は自らを戒めることにした。

 

 

 

 

 

 プロハンターって実は単独よりもチームを組んで行動することが多いんだよね~。

 意外と思わせてそうでもなくてさ。アマチュアだと人に雇われることも多いし協専ハンターも大人数で行動するし、ライセンス持ちのプロハンターは自分が狙うものを狩るために仲間を、それこそプロに限らずアマチュアのハンターを雇ったり、プロ同士で組んだりすることもあるある。

 あのジンちゃんですらデカいことをやる時は仲間を集めるし。普段はどこで何してるのかわからんし単独で行動してるっぽいけどさ。

 

 そんであーしも実はチームを組んでる。プロやアマチュア含めて私以外に12人。全員がグルメハンターで大きなことをする時に集まって行動する。それ以外の時は複数人で固まって何かを狩るか、料理人として働いてたりあーしのお手伝いをしてくれてんだよね。

 

「はい。そんじゃ後は勉強頑張って~」

 

「ああ! そんじゃあな! 今日も飯美味かったぜ!」

 

 あーしは自分のレストランでレオリオくんに料理を振る舞ってから手を振って別れる。発の修行を始めて2週間。レオリオくんも修行に慣れてきたのか料理を食べた後は元気良く机に向かっていった。適度に身体を動かすと勉強効率も良くなるし調子が良さそうじゃんね。……いや適度な運動では絶対ないかもだけど。

 

 ただ発の修行はやること自体は単純だからね。オーラを使うからしんどいけどそれさえ回復すれば勉強に支障はないってこと。レオリオくん自身の基礎体力も増えてるし問題ないっしょ。

 

 ってことで午後は大体天空闘技場でゴンくんたちをウイングちゃんと一緒に見て上げるかしてるけど今日から明日は別の用事があるから“転移する象の印”であーしは移動。行き先は2番。そこはあーしが管理してる巨大な放牧場の番号。

 美味しいけど気性が荒い上に繁殖期に暴れまわるから普通の牧場では飼えないタイラントブルとか美味しいけど他の植物の栄養を吸いすぎる力の実とかあーしが家畜化に成功した動物だったり食材を敷地内に捕らえてる。

 

 で、ここであーしとチーム組んでるハンターの大半が働いてて食材の管理とかしてるんだけど──今日は大事な用があんだよねー。

 

 転移した先の管理棟。あーしの部屋から出て庭先に出る。

 

「ちっすー!」

 

「! スピカ!」

 

「スピカさんお久しぶりっす!」

 

「スピカが来たアル!」

 

「ってことは……遂に始まるのか」

 

「いつでもいけます」

 

「ああ……この時を待っていましたわ~」

 

「むっほー! やる気ですね!」

 

「ああ……気分上がってきた……マジ病まない……」

 

「これはゲームやめられるんだけど!! GG!! ナイスゲーム!!」

 

 するとあーしに視線が集中する。

 そこにいたあーしの仲間。どいつもこいつもキャラが濃いんよ。ジャポン風の軍服を着た侍っぽい娘とかチーパオ着てる娘とかチャラ男とか引きこもりとかエージェントっぽい娘とか猟師っぽい田舎っ娘とかキャンディ持ってるぽっちゃりしたおじさんとかお魚持ってるお嬢様とか紙袋被ってる研究者とか白髪ロリの双子とか萌え萌えなメイドとか──プロハンターにアマチュアハンターまで全員があーしを待っていた。

 それが意味するところは明白じゃん。そう、これからあーしたちは……。

 

「バーベキューパーティだ~~~~!!!」

 

「ウェーイ! 動画撮ろうぜ~!! オタクくんみってる~!?」

 

「肉だァ~~!!」

 

「魚~!」

 

「食べ放題だ~~!!」

 

「いえーい!!」

 

 ──バーベキューパーティをする!!! うぇーい!! 最高じゃ~ん!! 

 

 仲間の輪に集まってあーしはパーティの始まりを宣言する。同時にみんなでお肉やら野菜やら海鮮やらをコンロで焼いて食べる。どれもあーしたちが自分で育てたり採ってきた最高の食材ばかり! いや~マジ仲間とのパーティ以上に大事な用なんてないじゃんね~! うぇーい! 

 

「──って、人を待たせといてなんでパーティやってんだこのカス!!」

 

「ん? 何? 一緒に食べればいいじゃーん。ムスビちゃん、パオパオちゃん何か食べさせてあげて」

 

「空気を読めてないな。これだから猿は」

 

「バナナでいいアルね?」

 

「猿にバナナ。定番すぎて草」

 

「てめーら全員マジ殺すぞ……」

 

 とみんなでパーティ気分のところで叫ぶ猿が1人。そうそう客人を呼んでたんだよねー。お互いにここがちょうどよくてさ。

 ってことで相手はハンター協会“十二支ん”申のサイユウだ。相変わらず口悪いなぁ。本気で怒ってる感じじゃないけどぐぬぬってなってる。でもあんまり怒らすと昔みたいに喧嘩になるからしゃーない。

 

「はいはい。お猿さんからかわないでみんなは楽しんでて~。──ほら、あーしらはあっちのパラソルで仕事の話しよっか。お茶請けはバナナカステラでいいよね?」

 

「てめーもからかってんじゃねーかボケナス!!」

 

 よし。そんじゃ猿もちゃんといるし少し離れたテーブルでお仕事の話を始める。サイユウを呼んだのはあーしだし。

 理由は簡単──仕事内容が内容だから。それに適した人に声をかけた。

 

「……で? 仕事内容はなんだ? さっさと説明しろボケギャル」

 

「あっは、相変わらず口悪いな~。そんなんだから後輩に慕われないんじゃな~い?」

 

「はっ、お前の昔の口も大して変わんねーだろうがカスが」

 

「まああーしは可愛いから許されたかな~。……と、それは置いといて仕事なんだけど──幻影旅団、一緒に狩らない?

 

「!」

 

 あーしがその単語を口にするとサイユウの目の色が変わった。

 幻影旅団。多くの盗賊団。裏の組織の中でも数少ないA級賞金首。

 その情報はハンターなら一度は聞いたことがある。ましてや賞金首(ブラックリスト)ハンターであるサイユウが知らないはずがない。

 そしてA級という意味も星持ちのプロハンターなら知っている。あーしらでも簡単には狩れない難度だってことを。

 

「…………なにがどうなって幻影旅団を狩るって話になんだ? おめーはグルメハンターだろうがカス」

 

「情報提供があってね。幻影旅団が9月1日にヨークシンシティに現れるってさ」

 

「ヨークシン……オークションか」

 

 日にちと地名をいえばすぐに何があるかを察してくれるサイユウ。

 幻影旅団は盗賊団。世界中から貴重品が集まるその日に旅団が集まるってのは信憑性はともかく納得性は高い。だからこそあーしもヒソカの情報を信用したわけだし。

 

「情報提供者は? まさかそこらへんの馬の骨から聞いたとは言わねーよな?」

 

「プロのハンターだよ。旅団のことを知ってるみたいでね~」

 

「ハッ、それじゃ何も信用できねーな。そいつが偽情報掴んだだけじゃねーのか。もしくはてめーが嘘ついてるか」

 

「会わせてもいいけどそれでも信用できないんじゃ意味ないか~。なら他の賞金首の情報もあげるよ」

 

「あァ? ……! これは……」

 

 あーしは遠くにいる仲間の1人──白髮ボブのぴっちりタイトスーツで無表情のロリっぽい娘を手招きして呼ぶ。するとすっと書類を持ってきてくれたのでその中から3枚ほどサイユウに渡す。

 サイユウはそれらの束を見てすぐに気づいたっぽい。それがB級以下──B級からD級までの賞金首の有力情報だって。

 だからこそ見せるのはまず3枚だけ。

 

「ここ1ヶ月あーしらのチームで探した情報。仕事を受けてくれるなら全部あげる。22人分。これならもしガセでヨークシンが空振りでも補償にはなるっしょ?」

 

「チッ……これもガセじゃねーだろうな?」

 

「そこまで疑われちゃうんじゃもうどうしようもないから断ってくれてもいいよ~」

 

 これは本音。ここまでやって断られるならもう別にいい。旅団はあーしらだけで狩る。

 ただサイユウは席を立たない。真剣な表情。賞金首(ブラックリスト)ハンターとして頭の中で計算してる。

 仕事を受けた場合のリターンとリスク。実行可能かどうか。そういった諸々を計算して勝算が高ければ乗る。それが経験を積んできたハンターとしての姿。

 

「……質問するぜ。やるのはオレとお前の2人だけか?」

 

「実際に前に出て戦うのはあーしとあんた。他はサポート。まあ何人かは前に出て戦うこともあるかもだけどね」

 

「それは妥当だな。足手まといのカスがぞろぞろいても邪魔なだけだ」

 

 サイユウのあーしの仲間を下に見る発言に何人かがサイユウに殺気を向けるけどサイユウは意に介さない。まーこんな口悪いサルだけど星持ちの賞金首(ブラックリスト)ハンターだからねー。言うだけはあるってカンジ。

 ただあーしの仲間にも戦える人はいるし、サポートとしてかなり優秀だから。組み合わせればかなりやれると思う。申の能力もあーしと相性良いし。

 

「まだ幻影旅団がヨークシンに現れるかわかんないけど、今考えてるのはヨークシンで旅団の捜索を含む情報収集。それが終わったら旅団を1人ずつ狩っていく。仕事の報酬はあーしらのチームとそっちで半々でいいっしょ?」

 

「オレ1人で半分? そいつは太っ腹じゃねーか」

 

「幻影旅団は1人ずつ賞金がかかってるし1人狩っても2人狩っても半分ね。それと旅団を狩ったっていう功績もサイユウにあげてもいいよ。ただし……」

 

「ただしお前のチームの……いやオレも含めて指示はお前が出すってか?」

 

「そういうことだけどあーしの指示に納得いかない時は全然意見してくれてもいい。人数の問題で全体の指示はこっちが出すし優位ではあるけど2つのチームで行動するって形かな。受けるならあーしたちの能力は話すし共有する。その上で雇うのはあーしで契約金も別に支払う。旅団の賞金の報酬は半分で功績もあげる。期間はヨークシンでのオークションの期間だけど場合によっては延長。そういう契約でどう?」

 

 仕事の報酬に内容。それらを話してサイユウの返答を待つ。

 するとサイユウは机に茶請けとして置いてあるバナナカステラを手で掴んで齧った。あ、結局食べるんだ。しかも美味しかったんかな。それを今度は口の中に丸ごと放り込む。そしてそれらを咀嚼し終え、お茶で喉を潤すとそこで再び言葉を紡いだ。

 

「……話は分かったぜ。お前にしちゃマシな仕事持ってきたじゃねーか」

 

「なら受けてくれるん?」

 

「そうだなァ~。受けてやってもいいが……ただまだ最初の質問の答えを聞いてねーな」

 

「?」

 

「なんでてめーが幻影旅団を狩るんだ?」

 

 最初の質問。その答えをまだ聞いてないと仕事を受けるかどうかはそれを聞いてからと態度を示すサイユウ。いや~気づかれちゃうか~煙に巻こうと思ったんだけどさすがに熟練のハンター相手に誤魔化せないなぁ。

 

 あーしは軽く息を吐いて決心する。あーしが旅団を狩る理由ね。それは──

 

「旅団に故郷を滅ぼされたから──って言ったら信じる?」

 

「……つまり私怨ってことか?」

 

「そういうこと」

 

 ──仲間を守るため、かな。

 

 あーしの眼とサイユウの眼が交差する。そこに嘘はない。私怨が0ではないとは言えないからだ。

 ただあーしは旅団に憎しみを抱いてるかというと違う。その感情は少し複雑で一言で表せるようなものじゃない。

 

 でも罪がないわけじゃない。

 だからあーしはあくまで仕事として狩る。憎しみじゃなくて粛々と。

 

 ──仲間をこれ以上失わないために。

 

「…………わかった。いいぜ。仕方ねェから受けてやるよ」

 

「──ありがとう。なら詳細は追って話そうね。今日はこのままバーベキュー楽しんでって!」

 

「馴れ合うつもりはねーぜ。タダで食ってすぐ帰るからな」

 

 でも食うんだ……多分美味いことは分かってるからだろうね。可愛いとこあんじゃん。

 そしてサイユウはあーしの仲間の元までいって肉を掻っ払うようにもらってた。あーしはそこに混ざってパーティを楽しむ。本当にサイユウはすぐに帰っちゃったのは残念だけど。

 

 ──でもある意味ちょうどいいかな。

 

 あーしはサイユウが帰って仲間だけになったその牧場で後片付けをする。

 

「……旅団は狩らないって前に言ってなかったっけ?」

 

 そんなことを聞いてくるあーしの今の仲間たち。今ここにいる人達は色々知ってるからねー。あーしが以前にそう言ったことも……いや、そのつもりがないことも知ってる。

 だからみんなあーしの心変わりが気になっていた。こっちにはちゃんと答えてあげないとな~。

 

「そのつもりだったんだけどな~。でも状況が変わっちゃってね」

 

「状況?」

 

「生き残りがハンターになっちゃったんよ」

 

 そう。クラピーがプロハンターになっちゃった。それがあーしの心変わりを起こした。

 今までなあなあでやってきたし、もしハンターになれなかったり、あるいは別の目標をしっかり見つけてくれるならそれで良かった。

 もうこれで念を身につけるのは時間の問題だし、クラピーは目的のために動き出す──緋の眼の回収と幻影旅団への復讐に。

 

 だけどそれは茨の道。絶対に良い方向には転ばない。

 全ての問題を解決するほどの圧倒的な力があれば話は別だけどね。

 ただそれは念を覚えたばかりのクラピーではほぼ不可能。何か代償を支払わない限りは。

 

「できるあーしがやるべきだからね」

 

 たとえこの忌まわしい眼の力を使ってでもね。

 嫌いだからとか黒歴史だからとか言ってられない。

 

「ならもしかして力使う?」

 

「うん。みんな協力してくれる?」

 

 今の仲間。あーしのチームに問いかける。

 すると誰もが頷いてくれた。本当に良い仲間だ。あーしの黒歴史を受け入れてくれた仲間たち。

 

 だからやってみせる。この血を絶やさせやしない。

 

「研究室行こっか。そこで久し振りにあげるよ──あーしの血をね

 

 その場にシールを貼って転移を行う。向かう先は1番だ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──あーしは幻影旅団を狩る(ハントする)

 

「それともしかしたら近々仲間も増えるかもだから楽しみにしといて~」

 

 あーしの言葉に仲間が頷いてくれる。

 その誰もが瞳の奥に同じ輝きを宿していた。

 




スピカの豆知識:スピカの仲間は現在12人いる。

今回はここまで。真面目ですまない……次回は修行回なので下ネタ入れます。お楽しみに。

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