うす汚ねェクルタ族の血を増やしてやるし!   作:黒岩

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マフィア×ト×フタゴ

 

 ハンターになれば裏社会にもそれ相応に詳しくなるもんさ。

 それがプロにもなれば尚更。ハンターサイトにはその地域随一の情報屋でも敵わないような裏社会の情報が盛り沢山だしハンターになれば賞金首や密猟者グループを追うこともあれば、マフィアなんかに雇われることだってある。

 貴重品を求めるなら裏の人間とかち合うこともある上そうでなくても狙われることも多い。ハンターってのはある意味じゃマフィアなんかよりよっぽどヤクザな職業だ。

 もっともヤクザや殺し屋なんかよりは比べ物にならないほどマシだがね。ひょんなことで一時手を組むことになったスピカからチームに入らないかって言われた時は殺し屋相手に何の冗談だと思ったが今では全く後悔しちゃいない。あいつはヤニにうるさくないし持ってくる仕事は退屈しない。人間相手より殺したら美味い飯にありつける動物や魔獣相手の方がよっぽど腕のふるいがいがある。

 そして何よりあいつの飯は美味い──レストランの中でタバコを吸ってもアイツは怒らないし、居心地も悪くなかった。

 フリーの殺し屋なんてやってた時に比べたら随分とマシな人生を送ってる。そしてそんな日々が嫌いじゃない。もうこのまま表の人間として生きていくもんだと思ってた。

 

『た……頼む……取引を反故にしたのは悪かった……謝るし金も払う……だから命だけは……』

 

『悪いね』

 

 ──緋の眼の取引を反故にした時点であんたらに死ぬ以外の道は残されていないんだよ。

 

 あたしは目の前で情けなく命乞いをする三下マフィアに得物の棺桶を振るい、物言わぬ屍に変える。相手はこの屋敷で生きている最後の人間だった。

 ゆえにこれで役目は終わり。その男の死体と荷物を残らず棺桶の中に収納していく。

 

 ──その者は墓に住み(グレイブイーター)

 

 具現化した棺桶に死体を収納し、あたしは仕事を終える。あいつが求めた緋の眼もその棺桶の中にあった。

 

『全く……またこんな大量に血生臭いものを運ぶことになるなんてね』

 

 フードを深く被って独りごちる。こんなことはフリーの殺し屋時代で卒業したと思っていたがそうではなかったらしい。グルメハンターとして活動をし始めてからもたまにかち合った裏の人間の死体を運ぶことはあったが、その大半は仕留めた獣を傷まない内に保存しておくために使われた。棺桶の内部では状態が保存されるため「便利な冷凍庫! いや、冷凍庫よりも便利じゃん!」とあたしの能力を表現したあいつの生意気な面は生意気すぎていっそ毒気が抜かれるほどに清々しかった。

 だが今は──

 

『──ああ、なるほど。やっぱりそれじゃ駄目なんだ……大脳辺縁系……扁桃体に前頭前野に影響を与える薬でも……うーん、むずいなぁ……座学だけじゃどうしても限界が……やっぱり……』

 

 ──クソ真面目な顔で机に齧りついてやがる。

 

 あたしはその部屋に──研究室に入室した。秘密裏に作られた窓も出入り口もないその研究室はスピカの“転移する象の印(ぱおん)”の1番でのみ入室することが出来る秘密の部屋。

 つまりあたしらの仲間以外誰もその存在を知ることはないし入ることも出来ない。主に元研究者のヴルストや機械に強いパンプがここで作業している。研究に必要なものはこの1ヶ月で全て調達した。

 

 そしてあたしらのボスはずっと椅子に座って人体と医学の本にご執心だ。周囲には山積みになった本。何かのレポート。よく分からない薬品。スピカが開発したエネルギーバーが一口齧られただけで皿の上に残されている。

 

 どれもこれもスピカには似合わない。あいつの白い服といえばコックとしての正装かエプロンくらいだったのに今じゃいっちょ前に白衣なんて着てやがる。全くもって似合ってない。見た目の話ではなく何もかもが。

 だがあたしは何も言わずに声をかけた。

 

『スピカ』

 

『あ、シュカちゃんおっつ~。どうだった~?』

 

 少しだけ安心するのは態度だけは前と同じってこと。あたしが声をかけるとあたしのシュクシュカ=エクソシースって名前から取ったシュカちゃんなんて可愛い名前で呼んでくる。無愛想なあたしにはあまり似合ってないと思うけど今ではすっかり仲間内で定着していた。

 

『……緋の眼は手に入れた。ゴネた取引相手も始末しておいたよ。──ほら、これが緋の眼だ』

 

『おお! あざまーす! ……そっかぁ……これが死後の緋の眼かぁ』

 

 あたしは棺桶から緋の眼を取り出してスピカに手渡す。専用の容器に入ったその2つの緋色を、スピカは何とも言えない微笑を浮かべて数秒眺めた。

 その失意は察するに余りある。クルタ族の虐殺──元殺し屋のあたしでも狂気の沙汰だと思うその事件からスピカはその瞳に狂気を宿すようになった。

 表面上は何も変わらない。たまに外に出て活動する時は普段通りの姿を見せる。

 だけどふとした時に狂気が緋の眼と共に顔を出す。そう、例えば今みたいに。

 

『これは誰かな~。分からないけど()()()()()()()()()()。とりあえず改めてこれは調べるとして……しかしその後のアプローチがむずいんよなぁ~……』

 

 軽い調子で首をひねるスピカの様子は新しい料理を考案してる時の仕草と振る舞いに似ている。

 だが料理じゃない。スピカは仲間の緋の眼の使い方について悩んでいる。料理と変わらない様子なだけにその狂気がより際立つ。その緋の眼がこちらを捉えた。

 

『シュカちゃんはどう思う?』

 

『……さあね。あたしに聞かれても。ヴルストや他の奴にでも聞いたらどうだい?』

 

『ん~そっか。でもほんと困ったなぁ……仮に薬品を作ったとしても使う相手が……さすがに人体実験は駄目だよねぇ?』

 

 椅子に腰掛け、足を組みながら顎に手を当てる。その様は紛うことなき研究者だ。

 ──ただしマッドな。人体実験はよくないと自分を戒めながらも、その口元には笑みが溢れている。それを試してみたいと言わんばかりに。

 

 そもそもどうしたって研究を進めるのならそこに行き着くことには気づいているだろう。それでも躊躇してるように見せてるのはスピカ自身の良心か。あるいは……()()()()()()()この先に待っていることを思って楽しんでいるのか。

 

 ──だが止められない。あたしは逡巡しながらもその背中を押してやることにした。

 

『プロハンターなら死刑囚を雇うこともできる。そいつらを使えばいい。死んだって罪には問われない。合法だ』

 

『やっぱりそれしかないよね~。じゃ、そうしよっか。──パンプちゃ~ん! テキトーな刑務所に連絡して死刑囚雇ってきて~! 最初は数人くらい~! そんでヴィアンくんは引き取りよろ~!』

 

『……りょうか~い』

 

『……わかった。行ってくるぜ』

 

 スピカの言葉に遠くでパソコンを前に作業をしていたかぼちゃみたいな頭をした小柄な少女と長身で灰色のウルフヘアーが特徴的なチャラ男がそれぞれ返事をする。

 スピカのチームは全員がリーダーであるスピカの指示で動く。今やっていることだって全員が納得して手伝っている。あたしだって納得している。スピカの計画が上手くいくならそれはそれでいい。仲間として満足するまで付き合ってやろうと。

 

『楽しみ~♡ 早く届かないかな~♡』

 

『……………………』

 

 そしていつの日かまた心の底から美味い飯が食べられればいい。

 それまではこの不味いヤニで我慢するしかない。

 

 

 

 

 

「やっぱ一番エロい系統って具現化系だと思うんだよね~」

 

「いきなりかよ……」

 

「操作系もそうだけど具現化系って戦闘だとちょっとアンバランスだけど結構便利でさ。自分ルール系というか初見殺しがしやすいってカンジ。そもそも念で具現化したものか本物なのかも見分け付き辛いし、ディテールに拘った念獣なんかも生み出せるし特殊ルールの念空間まで自由自在! まあオーラを切り離すのは一番苦手な系統だから基本的に遠くでのパワーを維持し辛い発になりがちなんだけどね~」

 

「と思ったら結構ちゃんとした話じゃねーか……それで?」

 

「だからセッ◯スしないと出られない部屋とかも理論上作れるってワケ!」

 

「結局そっちかよ! ……それで?」

 

「後は人間も具現化できるんよ。理想の美少女とか美少年とか……イメージ修行は大変だけどそれさえクリアすれば……後はわかるっしょ?」

 

「…………師匠。オレ、具現化系の修行頑張るぜ」

 

「その気持ちはわかりみが深いよレオリオくん。でも悲しいかな、あーしらは放出系だから具現化系は一番苦手系統なんよね~……それでもめちゃくちゃ頑張れば出来なくはないかもだけど効率も悪いし出来もあんまよくなくなるからさ……あーしも念容量が許すなら理想の少年を具現化するんだけどね~……」

 

「…………放出系の修行、頑張ります」

 

 ……ってことであーしは今、人気のない山にいる。

 ここはあーしらのチームが管理してる箱庭で食材の管理以外にも修行なんかにも使われる。レオリオくんは基本の四大行の修行を終えたことで故郷での勉強に力を入れ始めたけどそれでもなんだかんだこまめに念の基礎修行──纏や練なんかは行ってるし、自分一人でも出来るように系統別修行でも教えとこうかなーってことでここに連れてきた。

 

「応用技の知識は頭に入れてきた?」

 

「ああ……けど全然出来る気がしねーぜ。凝や堅はまだしも円や隠なんて本当に出来んのかってレベルだ。周はまだいけたんだけどな」

 

「おけまる~。そんじゃまずはオーラを切り離して飛ばす放出系の系統別修行教えとくぜ~。こんな風に小さいオーラを切り離して……ほいっと投げる。これが放出系修行のレベル1」

 

 基礎の知識は頭に入ってるみたいだし、次は系統別修行の実演ってことであーしはちっちゃいオーラの球を作って適当に投げる。オーラはどこまでも……それこそ肉眼では見えなくなるほど遠くに飛んでいった。

 

「……おい飛んでったぜ。どこ行った?」

 

「さあ? 知らんけど1キロ以上は飛んでったかもね~」

 

「1キロぉ!? そんなに遠くまで飛ばせんのかよ!?」

 

「本気出せばもっといけるかもだけど確認出来ないし。オーラを浮かせるだけならこんな風に……ほいっと」

 

 あーしは沢山のオーラのボールを作ってお手玉を開始する。更に途中から足でリフティングしたり、周囲に何個も滞空させてみたり。あーしが得意なオーラ遊びの一種をレオリオくんに見せつけた。

 

「こんなカンジかな~」

 

「す……すげぇな……それはレベルいくつだ?」

 

「レベル? そんなのないけど強いて言うなら…………レベル70くらい?」

 

「70!? どんだけだよ!!」

 

「いや念能力者でもあーし以外にこれ出来る人って1人くらいしか知らんし。でもある程度オーラの操作技術と纏が強ければいけるからレベル100はいかないかな~。多分ね」

 

 レオリオくんは驚くけどこんなのは大道芸みたいなものだからぶっちゃけ大したことないんよな~。むずいはむずいだろうけどあーしはやろうと思えば1ヶ月くらい他のことしながらオーラを浮かしたままとかも出来るし。それ以上はめんどくて試したことないけど多分もっとできる。放出系ってかオーラを切り離すのはあーしマジ天才だから。

 でもレオリオくんも結構才能感じるんよね~。あーしのサポートがあったとはいえ受験勉強しながら半年も経たない内に基礎修行終わらせて応用技と系統別修行に入ろうとしてるわけだし。

 

「そんじゃレオリオくんもやってみ」

 

「よし……オーラを少しずつ……切り離して……こう、か?」

 

 なんで次はレオリオくんにやらせてみる。するとあっさりと小さくオーラを切り離し、10メートルくらい先の木に当たって消えた。

 

「おお! 出来たぜ!」

 

「まー放出系ならこんくらいは出来るかー。でもやるじゃ~ん。これなら一々コツを教えなくても良さそうじゃんね?」

 

「これより難しい修行もあるんだよな?」

 

「まーね。念弾とか良さげかな」

 

 ってことで次は念弾の実演。ただ問題はどこに撃つかってこと。うーん、修行にも使う場所とはいえあんま壊したくないから適当に……まああの岩でいっか。おりゃっと。

 

 あーしは手頃なサイズの念弾を作って投擲。オーラもあんまり込めてないし蹴ったりもしてないけど岩は粉々に砕け散る。あ、レオリオくんが絶句してる。

 

「……………………」

 

「こんなカンジ」

 

「いや威力高すぎだろ!?」

 

「10%以下でも一般人に当てたら死ぬし、半分以下でも普通の念能力者も重傷負うくらいにはなるから実際強いけど気をつけないとマジやっべーんだよね~。一応言っとくと放出系の必殺技ってか攻撃手段はマジ念弾一本でもいいくらい強いから。マジ神なんだよね~。下手な銃火器や爆弾なんかよりよっぽど威力でるし念弾極めるだけで大抵の念能力者は何も出来ずにジリ貧になってやられっから」

 

「な、なるほどな……」

 

 レオリオくんは戦慄してっけどこれはガチなんよね。放出系の念能力者は殴り合いでもやれるけど近づかなくていい念弾の方がガチ。距離を取ってるから一々オーラの攻防力とかも考える必要ないし、念弾にオーラ全ツッパでもあんまり問題ない。防ぐには単純に避けるかオーラでガードするしかないから対策もむずいしね。念弾の威力やスピードで勝ってればもう相手は何も出来ないまである。戦闘なんて距離を取りながら念弾だけ撃ってればよくない? ってなっちゃうんよね。実際はそんな思考停止はしないけどさ。

 

「そんじゃしばらく修行してて~。終わったらご飯食べて転移で帰るカンジで。あーしはあっちの管理棟に行ってから戻ってくるから」

 

「ああ! ──よし! やると決めた時はやるぜオレは!」

 

 ってことでレオリオくんに修行を頑張るように言ってから離れる。午前中は修行。レオリオくんのルーティーンもなんだかんだ続いてるしやる時はちゃんとやるからいいよね~。

 

 ──まあでもさすがに9月1日の戦力にはならないだろうけど。

 

 あーしは考える。この間ゴンくんとヒソカの試合もあってゴンくんとキルアくんが天空闘技場から去るのと同じタイミングであーしも準備をすることにした。レオリオくんの修行はちょいちょい見てるけど次はあーしの仕事があるからね。

 

 ──その目的は幻影旅団を狩ること。

 

 さて、ここで改めて連中の情報をおさらいすると……幻影旅団は簡単に言えば強者揃いの盗賊団だ。

 そのメンバーには流星街出身者が多いという特徴があり、メンバーは大体13人で全員が念能力者。その首の価値。難度はA級。星持ちのハンターでも容易には狩れないだけの難度があるってこと。

 星なしのハンターが幻影旅団を狩ったらそれだけで一つ星の功績には十分なくらいじゃんね。だから結構手強いんだよな~。あーしは何年か前に()()()()()()()()()()()()()()そん時は成り行き上やっただけだから別に仕留めなかったんよね。あーしの念弾でも粉微塵にならないゴリラみたいな奴だったし、確かにあれはそこいらのハンターには荷が重いっしょ。

 

 なんでメンバーの情報もちゃんと探らないとじゃんね。あーしのチームにも戦闘に長けたメンバーはそれなりにいるけど旅団は全員が戦闘メンバーみたいなもんだろうし。あーしとサイユウがいるといっても決して楽な狩りにはならない。

 

 ただ狩る以上は詰めてくから。そのためにまずは手分けして動く。そのためにメンバーにはもうちゃんと指示を出してんよね。

 

「ティラミ~ン」

 

 この箱庭のちょうど真ん中にある管理棟まで辿り着くとそこの冊の中に倒れている1人の人間──サダソっちとそれを前に日傘を携えながら佇んでる水色髪を縦ロールにした如何にもなお嬢様がいた。ドレスを着て相変わらず優雅そう。

 そしてその目があーしを捉える。目の下にホクロがあって色っぽい。どこか嗜虐的にも見える笑みが蠱惑的でマジ可愛いよね~。

 

「──おや、もういらっしゃいましたの? 弟子の修行があったのでは?」

 

「今は1人で修行させてる~。そっちも見て上げてんの?」

 

「くすくす……ええ♡ 彼は結構見どころがありまして。少し嬲ってあげましたの……わたくしの濡れる恋模様(ラブスライム)で♡」

 

「うっわぁ、それガチじゃ~ん。サダソっちかわいそ~」

 

「貴方がやるよりはマシだと思いますわ。さて、それではお茶にしましょう」

 

 そうして近くの席まで移動して腰掛けるのはあーしのチームの一員であーしがハンターになってからの最初の仲間で同い年のティラミス=レイブちゃん。あーしはティラミンって呼んだりティラちゃんって呼んだり色んな呼び名で呼んでる。流行りがあるからね~。長い付き合いだから呼び名は逆に適当だったりするんよな~。

 

 そんで最近はサダソっちもここで鍛えてあげてっから同じ変化系の念能力者のティラミンが見てあげてるっぽいね。でも可哀想。実はティラミンってかなり嗜虐的だし。懐かし~あーしも昔はティラミンと一緒に2人でハンター活動してて……。

 

『うっわざっこ~♡ こんなんでやられちゃうんだ~♡』

 

『あらあら♡ 貴方、わたくしたちのような歳下の女性に負けるなんて生きてて恥ずかしくないんですの?』

 

『ティラミスちゃん言い過ぎ~♡ でも的を射てる♡ ほらほら、牢屋に入れる前に踏んであげる♡ おじさんたちにはご褒美同然だよね~♡』

 

『ならわたくしも踏んで差し上げます♡ 貴方たちのような弱者はこうして足蹴にされるのがお似合いだと思いませんこと? なんなら下僕にして差し上げてもよろしくってよ♡』

 

『あはははは♡』

 

『おーほっほっほ♡』

 

 ……と、ティラミスちゃんとは楽しい思い出でいっぱいだ。何しろ14年くらいの付き合いで一番長いし、親友だし性格もすっごい合ったんよね。同じ年のハンター試験でプロハンターになったし、グルメハンターとして各地で食材を集めて美味しいご飯を食べては密猟者や賞金首のオジサンを千切っては踏みつけ、ぶっ飛ばしては嬲り、牢屋にぶち込んでは煽りを繰り返してた。

 でも今は変わったからね。あーしの方は。ティラミスちゃんの方は全然変わってない。相変わらず人を詰って楽しんでる。

 

「それでどんなカンジ~?」

 

「パンプやカルボナ達が探してますが旅団の目撃情報は今のところないようですわね。緋の眼の方はシュクシュカとムスビたちが情報を洗っている最中。ヨークシンはヴルストとリヌイが先に現地入りして網を張っています。そしてクラピカさんの方ですが……」

 

「人体収集家を探すためにどっかの富豪の雇われハンターにでもなった? もしかしてマフィアだったりしたらウケるけど」

 

 何となくティラミスちゃんの報告を聞きながら予想を口にしてみると僅かにティラミスちゃんの眉が楽しそうにあがった。

 

「その通りですわ。ですのでアメとモチの2人に監視兼護衛を任せておきました。わたくしが行ってもよろしかったのですが2人の方が内緒話は得意だと思いまして」

 

「あーね。ならクラピーが余計なことしそうになったらそれとなく連れ去ることも出来るし、子どもの2人ごと戦場から遠ざけるには良い振り分けじゃん」

 

「いざとなったら逃げることも出来ますわ。そしてわたくしたちは情報が集まり次第作戦会議ですわね」

 

「ヒソカの情報やサイユウとも擦り合わせつつね~」

 

 あーしの予想とティラミスちゃんの采配は一致してる。

 この分だと当日までも問題は起きないかな。クラピーに付かせてる2人もあーしらに似てすっごい強いし良い子だしね。きっとクラピーを守ってくれるしょ。

 

 

 

 

 

 ──その日、とある屋敷にハンターが集まった。

 

 身辺警護込みの依頼を仲介人を介して受けるためにやってきたのは内通してる2人を除いて6人。

 ヴェーゼ。

 センリツ。

 バショウ。

 クラピカ。

 そして……白い髪の双子の女の子アメとモチ。

 黒紫色の小学生のようなワンピースタイプの制服をどちらも身につけ勝ち気な表情かつツインテールにしてるのがアメで無表情とも言えるクールなポニーテールがモチ。

 どちらも少女らしい……いや、はっきり言って子供。12歳程度の子供にしか見えずクラピカも含めて少しばかり気にはなったもののハンターには大人も子供もない。すぐに彼らは切り替えて護衛団のリーダーであるダルツォルネからの契約に関する雇用条件を聞いて、同時に屋敷から出られるくらいの強さが必要だと言われ──その直後に黒尽くめの刺客複数人に襲われた。

 

 銃や刃物が容赦なく振るわれるがその場にいる者達は全員が念能力者であるためなんとか襲撃を防ぐ。

 そしてそんな中で──クラピカはその刺客が念獣であると見抜いて術者であろう相手──シャッチモーノ=トチーノという人物を見つけて彼を脅して念獣を止めさせようとした。

 

「ヤツらを止めろ。3秒──」

 

「きゃはー♡ 死ねー!」

 

「ウブ!!?」

 

 ──しかしその双子の片割れ。アメの飛び蹴りがシャッチモーノの顔面に突き刺さる。

 

 あまりの早業かつ勢いづいたものだったため、刃物を突きつけて脅そうとしていたクラピカも距離を取る。

 

「……一応止めて真意を問い質すつもりだったのだがな。しかし操っているのは彼で間違いなかったようだ」

 

「……クックック……」

 

 黒い刺客たちが萎んでいくのを見てクラピカが呟く。そこでようやくアメはやってしまったことに気がついた。ゆえに彼女は表では余裕そうに含み笑いをしながらすぐに裏で妹に話しかける。

 

(や、やっちゃったー!? 守らないといけないクラピカを襲おうとしてるヤツだから仕留めないとと思ってつい……! どうしようモチ!?)

 

(さすがはお姉ちゃん。電光石火の早業だった。でもしょうがない。その人が弱いのが悪い。つまり雑魚だった。雑魚は雑魚だから自然の摂理でやられるしかない──とスピカは言っていた)

 

(でもなんか微妙な空気に……というか生きてる? あ、生きてる。良かったー。さすがにいきなり殺しちゃったらドン引きだもんね)

 

(大丈夫。いきなり死ねって蹴りかかった時点でドン引きされてる)

 

(やっぱ駄目じゃん!)

 

 ガーン、と心の中でアメは白目を剥く。そして変わらず無表情のモチ。

 だがその言葉。2人のやり取りは周囲に一切聞こえていない。それが2人の能力であるがゆえに。

 

 ──あなたは私で私はあなた(ツインソウル)

 

 双子の念能力者であるアメとモチは特質系に属する念能力者であり、彼女たちは互いの感覚を共有し、互いに頭の中で会話を行うことができる()()()()()()()()()()()

 相手にオーラを分け合うことができたり、他にも条件を満たすことで発動する能力も持っている彼女たちは、2人で内緒の相談ができる上に強いということもあってクラピカの監視と護衛を任されていた。

 

 だが子供であるがゆえに若干だが軽率に動いてしまったものの……その実力は確かである。

 それに空気は気まずくなったものの気を取り直したクラピカが彼が能力者である根拠を口にし、ギリギリのところで意識を保っていたシャッチモーノが震える声で「お……お前たち……6人なら……屋敷を、出られ……」と言って気絶したことで体裁は保たれた。おそらく最後の発言は屋敷側からここにいるメンバーを試すためにそう発言することを決めていたのだろう。希望者同士で疑心暗鬼にしてここから出にくくするための策だ。

 

 しかしながらその発言でまたしてもクラピカとセンリツに潜入者が見破られたことで事態はどんどん進行していく。

 

(……どうする? アメたちも何か見どころを見せた方がいいんじゃない?)

 

(さっきので十分……と言いたいけどわかる。モチたちにはユーモアが足りない)

 

(ユーモア……なるほどね! さっきの乱した空気を取り戻すために頑張るわ!)

 

(お姉ちゃんその調子。モチも頑張る。一緒に()()()()()

 

 アメとモチの2人は双子。能力がなくても以心伝心。

 スクワラという男が内通者だと指摘され、バショウが詠んだ俳句の内容が実現するという能力を見せた瞬間、2人のやるべきことは決まった。──モチがバショウに近寄っていく。

 

「ねえおじさん。モチたちも俳句考えたから詠んで」

 

「ガキ共俳句知ってんのか? いや、というか今は潜入者を問い詰めなきゃなんねぇしそんな場合じゃねぇんだが」

 

「フフン。その潜入者を自白させる俳句よ! いいからこのアメ様の傑作俳句を詠みなさい!」

 

「ぐっ……なんだってんだ」

 

 モチとアメが2人して俳句をバショウに渡す。いつの間にか紙とペンを調達したのか、それとも最初から持っていたのか。強引に渡された紙をバショウは全員に見せるようにして詠んだ。

 

『ちん◯んが 向けてホクホク 焼きばなな』

 

『嘘つきは ち◯ぽみじかく なるのにゃ』

 

「「どう?」」

 

「いやどうじゃねーよ」

 

 ──ド下ネタの俳句が詠まれた。バショウは冷静にツッコミを入れる。子供相手に怒鳴らなかった彼は大人の鑑だった。

 

「くくく、アメのが実用性はあるでしょ」

 

「モチのが面白いので勝ち。季語も入ってる」

 

「言われてみればそうね」

 

「焼きばななは季語じゃねーよ」

 

「え、そうなの? じゃあち◯ぽは?」

 

「ち◯ぽで季節感じる奴がいてたまるか! 年中無休だろうが!」

 

「ダウト。年中無休とは限らないわ!」

 

「……“童貞や ち◯ぽ短し 無用だね”……どう?」

 

「キャハー♡ 無用の長物ってわけね! さすがモチ! ウケる!」

 

「童貞が可哀想だろうが。やめろクソガキ共」

 

「じゃあどんなのならいいの? 潜入者も同時に白状させる句で下ネタもあって面白いのがいいわ」

 

「む……そうだな…………“嘘つきは 金玉2つ ねじ切れる”……これでどうだ?」

 

「それで全員に質問してみよう。ちなみにモチは潜入者じゃない」

 

「アメも強くて可愛いけど潜入者じゃないわ!」

 

「…………いや、女には意味がないんだが……まあ詠んじまったものは仕方ねぇ。お前は潜入者か?」

 

「……私は違う」

 

「私も違うわ……(この子達……なんでこんなに平然としてるの……? 子供だから……?)」

 

「アタシも金玉はないけど違うわ」

 

「そうか。ならお前は潜入者か?」

 

「……………………」

 

「と、こいつは気絶しちまったんだった。なら次はお前だ。心して答えた方が身のためだぜ。お前は」

 

「お……オレが潜入者だ……」

 

 ──そしてスクワラはすぐに折れた。彼も男である。まだ使い道のある金玉がねじ切れる未来を選ぶことはできなかった。

 

「……………………」

 

「どうしたの? いえ、気持ちは分かるけれど」

 

「いや、何でもない……(さすがに関係者ではないだろうが……スピカに似ていて頭が痛くなった……)」

 

「館から出るんだって。モチ、どうする?」

 

「全部殴ればいい」

 

「それもそうね!」

 

 ──それからクソメスマセガキ(アメとモチ)を加えた6人は紆余曲折あって無事に屋敷から出ることができた。クラピカの周囲にスピカの影があることをクラピカはまだ知らない。




スピカの豆知識
①仲間は全員食べ物の名前。かつモチーフは怪物だったりオカルト。
②類は友を呼ぶ。よってメスガキは友を呼ぶ よってチームにはメスガキが多い

『その者は墓に住み(グレイブイーター)』
スピカの仲間で元フリーの殺し屋シュクシュカ=エクソシースの能力。具現化系。
具現化した巨大な黒い棺桶に生物以外を収納する。収納したものは収納した時の状態で保存され、腐ったり劣化することはなくいつでも棺桶を開いて取り出せる。チームでは食材搬入係をしている。

ということでクラピカにガキが2人纏わりつきました。ヨークシン編始まります。スピカもクラピカも旅団も活躍します。でもどっち側にも死人が出ます。陰獣は全員死にます。お楽しみに。

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総合評価:6254/評価:8.7/連載:48話/更新日時:2026年05月29日(金) 18:11 小説情報


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