うす汚ねェクルタ族の血を増やしてやるし!   作:黒岩

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シショウ×ト×チーム

 ──わたくしはスピカに寄り添うと……そう決めています。

 

『なんで上手くいかないのかな……』

 

 それは緋の眼の研究が始まって1年が過ぎた頃。

 スピカは研究室の椅子に背中を預け、真っ白な天井を見上げながらぼやきます。

 周囲には積み重なった本。レポート。世界中から集めた薬品の数々。実験用の死刑囚はちょうど先程使い切り、実験室で酷い状態になって死んでいます。

 

 そして机には──()()()()()()()()()

 

 スピカ自身の両眼と、亡くなったクルタ族の誰かの緋の眼──わたくしたちが手に入れてきたそれが培養液の中で浮かんでいました。

 

 そもそもどうしてこうなったのか。なぜスピカはこんな研究をしているのか。それ自体はさほど難しくもない、多くの人にも理解が及ぶものです。

 

 原因はスピカの出身。少数民族クルタ族の緋の眼。

 感情が昂ぶると紅くなる世界七大美色に数えられる緋の眼が、人体収集家のコレクションアイテムとして喉から手が出るほど欲しい貴重品であるという残酷な現実。

 わたくしも上流階級の出なのでそういった方々がいるのは知っていましたが、自分の大切な人まで苦しめることになるなんて想像もしていませんでしたし、対策を打っていなかった自分を殴りたくなりましたわ。

 

 ……いえ、わたくし程度のただのお金持ちが対策した程度ではきっと何も変わらなかったでしょう。クルタ族という少数民族の社会的地位は決して高くなくむしろ最底辺に近いもの。

 

 もちろん虐殺は罪。しかし、クルタ族が虐殺されて死体を弄ばれたからといって本気で激怒し、経済制裁や武力的な解決法を行う組織など存在しません。国で言うならG5やそれに比類するカキン帝国などの列強。国際連盟に加入し、ある程度の発言力を持つ国家。あるいはハンター協会などの組織。クルタ族はその庇護下にない。

 

 幾ら国際警察や人権団体が声を上げようともその訴えに力はありません。クルタ族の緋の眼を欲しがる上流階級の人々は鬱陶しがるでしょうが、バレなければいいしバレたところであまり問題にはならない。

 

 さすがに虐殺を行いその証拠が出たとするならば大きな問題にもなるでしょうが、逆に言えばそこに至らなければ何も問題はない。

 

 この世の全ての組織にとって当然ながらクルタ族を襲った悲劇など他人事。それに本気で怒ったり悲しんだりできるのは当事者であるスピカともう1人だけ。あまりにも、数も少なく力もない。

 スピカは二つ星ハンターとしてそれなりに力を持つし財力もあれば人脈もある。わたくしと共同CEOを務める会社の売上は好調。レストランの顧客には一国の大統領や上流階級の人間だらけ。ネテロ会長から十二支んに誘われて断るほどの実力があり、念能力者としての強さもハンター協会で指折り。

 

 しかしそれでも大きな組織と比べればまるで足りない。だから緋の眼を求める人間を無くすことは出来ない。

 緋の眼がある限り今後もクルタ族は狙われる。仮にスピカやもう1人が子供を作って少しずつ数を増やしても変わらない。

 いや、むしろ最初は数が増えていくことを見守るかもしれない。少し性格が悪い人なら増やしてから狩ることを考えるだろう。

 

 だからこそ解決策は2つ。1つは緋の眼がなくなること。クルタ族が本当の意味で族滅してしまえばそもそも問題はないし、緋の眼も現存するものだけになる。

 

 だけどそれは難しいとなればもう1つの解決策──緋の眼を増やすしかない。

 

『緋の眼が狙われるのは緋の眼が希少だから。なら希少でなくなればいい。緋の眼を持つ人間が千人や一万人。あるいは十万人やそれ以上になれば。そして人体収集家自身まで緋の眼になるとしたら? 緋の眼なんて欲しがらなくなる。普通の瞳なんて誰も欲しがらないし』

 

 そう──スピカの計画とは緋の眼の市場価値を崩壊させること。

 

 全人類が緋の眼になればクルタ族を狙う理由はない。全人類と言わずともその1%だけでも構わない。その1%が人体収集家や大きなコミュニティに属する人間ならばなおいい。

 

 それはある意味クルタ族の血が増えたようなもの。緋の眼を持つ人間が増えれば増えるほど社会的な地位も向上する。ヒエラルキーの最下層からは脱出できる。

 それでも緋の眼を愛する人体収集家は緋の眼を欲しがるかもしれないが、一々無実の人間を狙うなんて面倒かつリスクのある真似はしない。叩けばホコリが出る裏社会の人間や犯罪者、囚人。死刑囚から調達すればいい。あんな虐殺染みた真似はなくなる──スピカやクラピカが子孫を残してもその子孫が狙われることはなくなる。少なくとも目眩ましになる。

 

 だからスピカは緋の眼を増やすためにクルタ族の研究を引き継いでいる。人体実験を行い、その方法を模索している。

 

 そしてそれが1年以上続いて……でもスピカは行き詰まった。

 

『移植は無理。薬はまだ可能性があるけどまだまだ時間がかかる……やっぱり……』

 

『……スピカさん』

 

 今研究室にはわたくしとスピカしかいない。

 そんな中で独り言のように呟かれるその言葉はわたくしには弱音や悲鳴のように聞こえた。

 

 だから声をかけようとした。辛かったらやめていいし、どんな選択をしてもそれを尊重すると。

 もちろん続けたって構わない。構わないが……スピカ自身が苦しいのならわたくしはそれを止めたいと思った。

 

 狂気を宿すその瞳に何を隠しているか、わたくしには推し量れない。

 だから話そうと思った。親友として。仲間として声をかけることはできる。

 

 そうしてわたくしは──

 

『やっぱり──()()()()()()()()()

 

 ──その産声を聞いた。

 

 緋の眼になったスピカの身体からオーラが膨れ上がる。いつもとは違う妖しいオーラだ。練をしている。そして自然にスピカは近くにあった水の入ったコップに手をかざし──その水の色を緋く染め、その上で水が増えてコップから溢れ出した。スピカは放出系。それなのにその水の変化はまさしく。

 

『スピカさん。それは……?』

 

『ああ、うん。あーし緋の眼になると特質系になるんよ』

 

『そうでしたか……それで、この方法しかないというのはどういう意味ですの?』

 

『薬物や移植なんて試すより、念能力の方が手っ取り早いと思って』

 

『念能力で……』

 

 言いながら、スピカは笑みを浮かべている。緋の眼になることで特質系になったという彼女のオーラに不思議と魅入られる。そのオーラも緋く見える。いつもより彼女の八重歯が笑みで見えて舌の動きも艶めかしく感じた。

 

『なんとなくね。そうするのがいいって最初からわかってたんだよね』

 

『最初からわかっていた……? 特質系になることがですか?』

 

『ううん。念能力がね、一番手っ取り早いだろうなって。でもなんかあーしって人を巻き込むのが好きで仲間を増やしたくて……それでいて欲も強くて。だから緋の眼を発現させての発の開発が頭にちらついた時点で、不思議とぼんやり形は見えてたんだ』

 

『能力の構想が既にあると?』

 

『細かい制約はまだだけどね。でも今決まったし、やっぱりって感覚なんだよね。あーしが拘るものや目的。あーし自身の性質的にさ。最初からこういう能力なんだっていう実感がある。後はルールを明確に定めて実行するだけ』

 

 なぜだろう。スピカから目が離せない。

 どういうわけか止めようとも思わない。魅入られる。

 特質系の念能力者にはカリスマがあると言われがちだが、それがこれ? ──いや、特質系になったところで本人の性格や言動が変わるわけじゃない。

 だとするならこれは……大きな力を前にした時の、魔性。

 わたくし自身が、今までのスピカやここまでの言動を鑑みて、その力がどういうものか何となく予感があるがゆえの期待。

 

『最初は仲間たちからがいいな。もちろん断ってくれても全然アリだけど』

 

『……いいえ』

 

 同じものになれるという予感。

 それがわたくしの身を焦がす。渇望する。

 

『最初はわたくしがいいです。いえ、わたくしにしてください』

 

 ずっと前から彼女が好きだったがゆえに。

 

『──わかった。なら始めるね』

 

 そうして自然と、なぜか片膝を突いたわたくしの前で、スピカは培養液に入った緋の眼を取り出す。その緋色の眼球。それを1つ、指で摘んだスピカは──

 

『発動条件はこう──緋の眼を身体に取り入れることで()()()()()()()()。あーしはそうして力を得る。あーしの仲間もこれで力が得られる……ま、長いから後で教えてあげんね』

 

『ええ、お願いします』

 

『うん。これからもよろ~』

 

 緋の眼を、舌で迎え入れて、()()()()()()()()()

 瞬間、スピカのオーラが膨れ上がり鳴動する。

 

『受け取って』

 

 スピカが自分の指先を歯で軽く切る。その指先から滴る真っ赤な血の雫。

 それがわたくしの目の前に差し出され、わたくしはその指先を同じように口で受け止めた。

 

『“緋色の再誕(リィンカーネーション)”──発動』

 

『────!』

 

 そうしてわたくしはその眼に緋色を宿し……スピカの最初の眷属になった

 

 

 

 

 

「特質系はねー……なんでもありだよ」

 

「なんでもありってどういうことなんだよ」

 

「本当になんでもいいんだよ。特質系に苦手な系統はないからね。どんな能力でも自由自在。今まで教えたことは全部実現できるし、放出系と具現化系を組み合わせた発だって作れる」

 

「……それって最強じゃねーか?」

 

「まーガチったら最強かもね。でも特質系は発ありきだから何とも言えんかなー。強化系の能力が100%極められてもガチでそれができてる人ってほぼいないからね。特質系は生まれついての能力者も多いし、最初っからある程度やりたいことが決まっててしかも頑固だったりするから特質系って分かってから全部能力を作るって人も多分珍しいと思うし。誰かを倒すためだけに念の修行をしてる特質系能力者はかなりやっべーけど」

 

「へぇー……」

 

「……ってことで一番のド変態は特質系ってワケ!」

 

「結論結局それかよ!!」

 

「じゃあ修行頑張ってねー。あーしはしばらく忙しくなるから連絡取れなくなるかもだし。そんじゃおっつ~!」

 

 ──さて……と。あーしは1つ用事を終えるとまた“転移する像の印”で移動する。

 

 行き先は2番。その場所あーしの大事な人の1人が住んでる場所。

 

「おーい師匠ー。可愛い可愛いスピカちゃんが来たよー! うぇーい☆」

 

「……………………」

 

 その相手はあーしの唯一の師匠。二つ星のグルメハンターにしてネテロ会長に次ぐ協会最高齢のハンター。リンネ=オードブル。

 かつてはあの清凛隊に所属してネテロ会長とかゾルディック家の人らと暗黒大陸にすら挑んだことのあるすっげー人。ってかもはや生きた偉人? みたいな人なんだけどババアすぎて耳は遠いし全然喋んねーしそもそも割とずっと寝てるしハンター活動もあんまりしてないけどご飯は三食しっかり食べる。そんで今も結構強い──ま、今はあーしのが強いけどね! 

 

「おーい生きてるー? 寝るならちゃんと布団で寝た方がいいんじゃな~い?」

 

「……………………」

 

「まだご飯の時間じゃないから起きないって? いやいやこんなかわいい弟子がせっかく訪ねてきたのに寝るとかそれはなしよりのなしっしょ~」

 

「……………………」

 

「…………ってかいい加減起きろババア。あーしがせっかく様子見にやってきてんだけど?」

 

「ババア言うんじゃないよ」

 

 声を低くしてババアって言うとすっと目を開いて声を出した師匠にあーしはエプロンを身に付けながらにしっと笑う。

 

「ほーら起きた。妖怪狸寝入り~ババア~♡ いいからさっさとこの台帳にサインしてあーしの最高に美味しくて栄養満点の料理を食べな~♡」

 

「……………………ん?」

 

「いや、ん? じゃなくて。ってか言いながらサインしてレストラン入室してんじゃん。ボケた?」

 

「ボケてないよ」

 

「うーわ悪口だけ反応してくんじゃん。ま、いいけど~」

 

 あーしは師匠の家の壁に“Ristorante G.A.L”に続く扉を具現化して台帳を師匠に渡す。レストランの説明は最初にしておけば2回目以降はスキップできんだよね。台帳にサインした時点で店のルールには同意したってみなされる。だから問題なし。

 で、師匠は無言のまますっとサインしてさっさと席についてしまった。そんで悪口には反応してくる。そこだけは変わんないよな~。まあ10年くらい前はそれ以外にも結構反応してたけど。省エネにもほどがあるっしょ~。

 

 なのであーしは各地から、あるいはあーしの箱庭で養殖したり栽培してる最高級の食材を集めて今日も最強のフルコース。スペシャリテを作る。幻の野草を使った薬膳料理にあーしの畑で採れた野菜とギガントタートルのスープ。メインは虹うなぎの白焼きとタイラントブルの脂身の少ない部分を絶妙な焼き加減で。あーし特製のソースで出してサラダも同様にあーし特製のお野菜。ドリンクは力の実を100%使ったジュース。主食のお米はあーしが秘境で見つけた“宝米”を品種改良に成功して更に美味しく作り上げたブランド米『白宝米』。……まーこれはあーしの理想じゃないんだけどね。できれば米は暗黒大陸にある“ニトロ米”がいいんだけどそこはまあいつか調達する。……え? ババア相手に量が多いって? いやいやこれが食べるんよ。ご飯だけは。グルメハンターなだけあって食事はしっかり今でも食べる。これが長生きの秘訣なんかもねー。

 

「ほーらあーしの最強最高グルメ美味しいっしょ~? 一つ一つがあーしのグルメハンターとしての功績♡ 値段にしたら10億J以上……ってか値段付けられないくらいの料理♡ もう三つ星級じゃない? もうババアなんて余裕で超えちゃってるかなー♡ もうババアの功績であーしが超えてないのって暗黒大陸くらいじゃない? それもいずれジンちゃんと一緒に行く予定だから超える予定だし~♡」

 

「……………………」

 

「って、無視して黙々食べるだけかーい! いやまババアはババアだしいいけどさ~。あーしが三つ星ハンターになって暗黒大陸から希望を持ち帰る偉業を成し遂げて完璧にババアを超えるまでは死んでもらったら困るし♡ いや~その時のババアの悔しがる姿を想像するとそれだけでご飯いけるわ~♡」

 

「……………………ご馳走様。また腕を上げたようだね」

 

「はいお粗末様~。そんじゃ持ち帰りの料理持ってさっさとレストランから出てってね~。それは夕飯に食べてもらって。それと冷蔵庫に日持ちするおかずとか漬物とか作ってタッパーに入れてっからそれも食べてあーしの料理の腕に絶望してね~♡」

 

「あんたの料理の腕は認めてるよ」

 

「…………そっか。ま、それならいいけどあーし的には足りないからこれがあーしの限界って思ってもらっちゃ困るかなー。なんで今日はもう帰んね~」

 

「スピカ」

 

「ん?」

 

「いつもより僅かだけどオーラが強いよ。肩に力が入ってるね」

 

「…………あはは。さっすがババア。わかる~? これからちょっと気合入れなきゃいけない狩りがあっからね~」

 

「そうかい」

 

 …………このババアさぁ。飯に対してもそうだけどこういう時はまだまだ全然鋭いんだよなぁ。他の誰も気づかないことをババアだけは気づいてくる。感情の揺らぎによるオーラの増減なんて本人でも中々気付けることじゃないんだけどなぁ。

 ま、さすがはあーしの師匠なだけはあるじゃん。でも問題ない。あーしは自覚してるし冷静。これはあーしが本気に狩りに行く時の通常状態だから。

 

「そんじゃあね~ババア♡ おっつ~♡」

 

「……………………」

 

「って、寝るんかい」

 

 そしてババアはそんな鋭い指摘だけして寝やがった。まあいいけど。とりあえずあーしの目的のためにもこれから始まる狩りは気が抜けない。対魔獣や対自然と違って対人はまた癖があっからね。

 

 ──あーしは再び転移する。行き先はヨークシンシティ。その街中に秘密裏に作ったあーしらの陣地。

 そこには幾つもの準備を終えて待っている仲間たちがいた。全員があーしのチームであーしとは深い繋がりを持っている。その全員が、今は普通の瞳であーしを見ていた。

 

「そんじゃ最終ミーティングするよ~。──パンプちゃん、陣地はこれで完成?」

 

「うん。問題なしだよ」

 

 パンプちゃんの身体にぶら下げているかぼちゃの人形が陣地の至るところに置かれている。陣地はこれで完成したと。それなら防衛も問題ないね。

 

「ヴルスト」

 

「はい」

 

 あーしが名前を呼ぶとヴルストは即座に能力を使用する。

 

 ──箱庭の管理者(マネージゲットー)

 

「既に管理タグは()()()()()()。政財界の大物やマフィアだけでなくオークショニアや適当な民間人にも付けています。十老頭の1人にも付けることに成功しましたので彼らのバイタルデータと位置情報に問題があればすぐにご報告します」

 

「お願いねー」

 

 頭に紙袋を被った研究者のヴルストは陣地に置かれた端末を見ながらそう言った。普段は箱庭の動植物に使う“箱庭の管理者(マネージゲットー)”は人相手にも有効的に働く。

 

「ドレシーちゃん」

 

「はいっす。罠は全部配置しました。起動すれば場所はわかるので問題ないっすよ」

 

 猟師の格好をした田舎っ娘。猟銃や獣の皮を被ったドレシー=ヘルシングちゃんからも気持ちの良い返事が返ってくる。

 

「オッケー。なら3人とパオパオちゃんは後方支援でここで待機」

 

「了解アル。アタシはいつも通り治癒アルね」

 

「お願いね」

 

 チャイナドレスにキョンシー風の札を額につけてるパオパオ=マミちゃん。パオちゃんはあーしのチームの唯一の除念師だから当然他の支援要員と待機。

 そして次は遊撃班だ。探索班ともいえるけど。

 

「ヴィアンくん」

 

「ウス! もう足は温まってるぜ! うぇいうぇーい☆」

 

「じゃあ何かあったら急行してね~」

 

「カルボナおじ~」

 

「今日のカロリーはとうに2万キロを超えておりますゆえいつでも発動できますぞ!」

 

 日焼けした灰色髪のチャラ男くんのヴィアン=ルーガルーくんは既に準備運動を終えてるらしい。

 そして太った金髪の貴族みたいなおじさん。カルボナ=グールおじは能力の発動に必要なカロリーを溜めるためにひたすら食べてる。

 

「ティラミスちゃんは2人をよろ~」

 

「ええ。問題ありませんわ」

 

 そしていつも通り優雅に日傘を携えながらお茶をしているティラミスちゃんがこの2人を指揮する。追跡や捕捉。獲物を動けなくしたり時間稼ぎをするのに適してるからね。あーしの次に強くて指揮もできるティラミスちゃんがいるし、問題なし。

 

「アメとモチは別仕事として……ムスビちゃんとシュカちゃん。それとゴーヤちゃんはあーしとこれから合流してくるサイユウと戦闘。準備できてる?」

 

「無論だ。…………ゴーヤーはまだ寝ているが」

 

「あーね。まあ寝溜めしてるならその時に起こせばいいし問題ないかな~」

 

 そして戦闘班。既に甲冑に兜に具足に籠手。大太刀と鎧武者の格好になり更にそれを複数用意しているムスビ=シュテンちゃんと端の方でアイマスクをして気持ちよさそうに寝ているメイドのゴーヤー=レムちゃん。ちな寝てるのは能力だからしゃーない。戦う時になったら起こせばいいだけ。

 シュクシュカちゃんは普段は遊撃班だったりするけど能力が便利だからね。今日も棺桶に色々と収納してもらう。戦闘班に混じっても問題ないくらいには強いし。

 更に本来は戦闘班にアメとモチが入ったりするけど今はクラピーの護衛中。なのでこれで全員──ではなく。

 

「サダソっちはヴルストたちと後方支援として待機ねー。あ、でも何かあれば遊撃班辺りで出すかもだから覚悟はしといて」

 

「……はい!」

 

 もう1人。あーしらのチームに加わったのは天空闘技場の元闘士であるサダソっちだ。あーしやティラミスちゃんに鍛えられて能力も改良したからいざとなったら役に立ってくれると思う。

 そしてあーしを加えたこの14人が今のあーしらのチーム。そして──

 

「全員。全員で幻影旅団を狩る。生死は問わない。皆殺しが目標だけど深追いはなしね。何かあればあーしかティラミスちゃんの判断を仰ぐこと。いい?」

 

 ──あーしの問いかけに全員から返事が返ってくる。

 なら問題はない。

 

「それじゃ狩り始めよっか」

 

 幻影旅団を狩る。そのために今日……9月1日。

 あーしらはヨークシンに降り立った。




スピカの豆知識:緋の眼を発現すると特質系になり、新たな能力を発動できる。

『緋色の再誕(リインカーネーション)』
特質系能力。詳細不明。

今回はここまで。次回から遂に戦争です。お楽しみに。

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