うす汚ねェクルタ族の血を増やしてやるし!   作:黒岩

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ギャル×ノ×オッパイ

 ──ハンターってガチ仕事としては特殊だよね。

 

 何しろ一口にハンターといっても色々あって一言じゃくくれない。賞金首ハンターとか犯罪ハンターは一生犯罪者を追いかけて分析してと警察みたいな生活してるし財宝ハンターや宝石ハンターは一生RPGゲームみたいな生活してるし遺跡ハンターは考古学者みたいな生活してるし難病ハンターやウイルスハンターはもはや医者よりも医者だしかわ美ハンターはかわ美ハンター協専ハンターはトップがカスオブカスだし他にも聞いただけだとなにそれってなるハンターがいっぱい。あーしは全部わかるけど。

 

 そんだけあるのに更にライセンスなしのプロじゃないアマチュアハンターとかもいるんだよ。もうわけわかめ。

 ちなあーしは星持ち! しかも二つ星だからけっこうすごいぜ~! プロハンターは今600人くらいいるらしいけど星持ちは全然いないし! 世界に10人もいない三つ星には負けるけど二つ星も上澄みだから! 周りからはめっさ尊敬の目で見られまくり! 

 

 そしてあーしはグルメハンター。貴重な食材や美食を追求するハンター。だからどういう生活をしてるかっていうと何もない時は料理を作ったり新しい食材を探したりするために世界中を飛び回ってるカンジ。

 これがまたスケジュール的にちょ~ヤバくてさ~。ま、あーしは他のハンターと比べて移動時間は短縮できるからマシなんだけどね。あーしマジ時間の使い方上手だから。今もあーしのお店に友達をお客様として招待してんだよね。

 

「──でさ~。この間コクられたんだけどそいつがマジ変態で。萎えたから連絡先だけ交換して即逃げしたんよ~。チードルちゃんはどう思う? 前から気になってたんだけど犬キャラってことはバタープレイとかするの?」

 

「世間話の内容がツッコミどころ多すぎるし終わってる!! →するわけないでしょ死ね」

 

「バター犬は知ってんだ……へー意外」

 

「揚げ足取りすんな!! →話題変えないと帰る」

 

 オシャンティーなレストランのホールでお客は今は1人だけ。食後のコーヒーを出し終わったあーしはお客の前に座って世間話をする。

 相手はチードル=ヨークシャー。ハンター協会十二支んの1人でコードネームは戌。眼鏡っ子で犬っぽい見た目をしてる犬キャラを守ろうとしてるかわいいお姉さんだ。

 

 でもハンターの中でもバリ優秀で三つ星(トリプル)の難病ハンターなんよね~。死ぬほど頭良いし性格もまともだしあーしとはマブなんだよね。本人は照れて否定するけど。今も恥ずかしがって怒ってるけどめっちゃ可愛いよね~。

 

「ごめんごめん。それで美味しかった? スギア高原の奥地でのみ取れる幻の透明のキノコ、クリアダケのソテーすごかったっしょ? めちゃくちゃジューシーで旨味が強いしソースにもこだわってんだよね~」

 

「……癪だけど今日も美味しかったわ。いつも思うけど料理だけは本当に素晴らしいし毎日来たいくらいよ→ごちそうさま」

 

「お粗末様~」

 

 料理を美味しく召し上がってくれたチードルちゃんのお皿をあーしは片付ける。ふふん。あーしの料理は最高だからね。しかもこのお店で食べられるチードルちゃんは本当に幸せ者じゃんね! 仕事の関係で特別に割引もしてるし。

 

「それで告白がなに? もしかして依頼に関係ある? →連絡先交換してたみたいだし」

 

「あーごめん。それ関係ない。ただの雑談」

 

「あれで和やかになる人間はいないと思うわ→なら依頼の進捗報告」

 

「お、サンキュ~」

 

 皿を片付けて戻ってくるとチードルちゃんがコーヒーを飲み終えたのか、息を入れながらレポートを手渡してくれる。

 あーしはウッキウキでそれに目を通して……でもある程度読んだところで少しテンションが下がった。チードルちゃんはそんなあーしの様子を見てか、満足いく結果じゃないと予想してたのかさっきから真剣な顔つきになっている。三つ星の難病ハンター……世界有数の医者としての顔。

 

「……悪いわね。貴方が集めてくれた過去のデータを元に調べてみたけど今のところ有効な方法は見つけられてないわ→謝罪」

 

「いやいや、しょうがないって! まだ調べ始めたばかりだし気にしないで!」

 

「一応貴方が過去に集めてくれたデータも参考にはしたけど完全じゃないのが痛いわ。あとは方法があるとすればやっぱり──」

 

「……やっぱり?」

 

 そこまで言ってチードルちゃんはあーしの方を見る。視線が真っ直ぐ交差した。

 だけどすぐに目を僅かに逸らす。露骨に減らすのではなくあーしの鼻の辺りを見て失礼じゃない程度の気遣いで。

 

「──なんでもないわ。とにかく依頼は果たす→難病ハンターの名にかけて」

 

「ありがと。お願いねー。研究に必要な費用は全部出すから。依頼料とは別にね」

 

「……わかったわ。今日はご馳走様。また来るわ」

 

「来なくても予約してくれればあーしから来るけどね。それとキャラ忘れてない?」

 

「……忘れてない→それじゃあ」

 

「──またのご来店をお待ちしています」

 

 そうしてチードルちゃんはお店の出入り口の扉を開けて退店していった。あーしはしっかりと礼をする。依頼相手だけどお客様でもあるなら当然こういうところはちゃんとする。

 

「でもどうしよっかな~。もうあらかた声かけちゃったし、チードルちゃんもサンビカちゃんも他の人もあーしの依頼だけにかかりっきりになるわけにいかないし……」

 

 そして客がいなくなったところで近くの椅子に腰掛けて頬杖をつく。今日はもう予約はない。だから店仕舞いだ。食材集めする気分じゃないし暇な時間ってワケだ。

 

 そこで思考する。あーしはこれからどうするか。

 ヒソカには協力しないかって言われたけどまだ信用していいか微妙なところだしなー。

 

 第287期ハンター試験から2週間経ったけど……うーん、やっぱクラピーたちの様子見に行こっかな。死んだりはしてないだろうけど確かゾルディック家に行ったんだもんね。もうキルアくん連れ戻してるかもしんないけどそうじゃないかもしれないし。

 

 それにまたあの2人に会えたら……ふひひ。仲良くなって一緒にお風呂に入れたりして……あっはー! テンションあっがるぅー! 

 なんだったらあーしが裏試験担当してあげてもいいしね。よーし、それじゃ爆速でクラピーたちの元へゴー!! 

 

 ──ということで移動はささーっと。場所はパドキア共和国のククルーマウンテンだったよねー。ババアに聞いたことあるから知ってるし。

 

 でもまさか観光バスまで出てんのは知らんかったな~。暗殺者の家なんて見に行っても楽しくないっしょって思うけどそれは人それぞれだから需要があんならいいよね。

 

「お、見えてきた」

 

 市内から観光バスに乗ることしばらく。なんかでっかい門が見えてきた。は~~あの敷地内が全部キルアくんとはブラコンの家なんだ。結構映えスポットじゃん! 暗殺者の家とか面白くないと思ってたけど映えるなら話は別じゃんね! 写真撮っとこ~! 

 

「うぇーい!!」

 

「それでさっきのトリックは──あ」

 

「あ」

 

 ──と、門の前で自撮りしたり色々やってたら門がゆっくり開いてそこから見覚えのある4人が出てきた。ゴンくん、キルアくん、クラピー、レオリオさんじゃん!! 

 

「あ、スピカさん!」

 

「スピカ! なぜここに……!?」

 

「なんだ? オレたちを追いかけてきたのか?」

 

「にしては遅すぎるだろ。で、なんか用?」

 

 しかもなんかゴンくんにキルアくん怪我してる! 可哀想! でもめっかわ! タイプが全然違うのが最高に推せる! 

 

「いや~ちょっと暇だったから今更心配して様子見に来たんだけど……その調子じゃ大丈夫そうじゃん?」

 

「ああ。なんとかな」

 

「思ったより時間取られちまったけどな」

 

「なになに? ゾルディック家に乗り込んでバトったカンジ?」

 

「ううん。戦ったりはしなかったよ。その前に分かってくれたから」

 

 ま、だろうねー。さすがにゾルディック家と戦ってたら全員死んでるっしょ。

 ならキルアくんの家族がキルアくんを解放してくれたってこと? ……なーんか気になるけど、まあこうして無事出てきたんならいっか。

 

「あーね。……もしかしてこの門開けるのに手間取ってた?」

 

「あ、うん! これすっごい重いんだよ」

 

「ふーん? どれくらい?」

 

「えーっと……どれくらいだっけ?」

 

「一番小さい1の門で片方2トン。数字が上がるに連れて倍々に重くなって一番重い7の門は両方合わせて256トンかな」

 

「改めてとんでもねぇよな。だがオレはたった2週間で2の門まで開けたぜ! この中でただ1人オレだけがな」

 

「はっ、そんなの全然自慢になんねーよ。オレは3まで開けられるし」

 

「うっ……そりゃお前は慣れてっかもしんねーけどなぁ」

 

「もしまた来ることがあったら今度は一番重いのまで開けたいね!」

 

 2週間で? へぇー……確かにそれはすごいかも。普通にトレーニングしただけじゃ無理だしね。試験終わった後は開けられなかった扉を開けるまで鍛えたってことは2週間ずっと筋トレしたんだろう。それだけ努力し続けられるくらい意思が強い。それだけキルアくんを連れ戻したかった……というのも含めて好感が持てる。

 

 4人のやり取りを見ながら観察しながらあーしは思う。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「──あーね! じゃ心配はいらんかったね~。市内に戻るならそこまでは一緒にバスに乗って戻ろっか! ゴンくんはあーしの隣ね!」

 

「? うん、いいよ」

 

「おい、ゴン。やめとけよ。なんか嫌な予感するし」

 

「どういうこと? スピカさんは悪い人に見えないよ?」

 

「そーそー! あーしは良い人だし! なんだったら膝の上に座ってくれてもいいよ! ふへへ……」

 

「──いや、私が隣に座ろう。積もる話もあるからな」

 

「ええっ!? そんなー!!」

 

「薄々感じちゃいたが……」

 

「ああ。ありゃ絶対変態だぜ」

 

 あーん。せっかくゴンくんと仲良くしようと思ってたのにクラピー酷い! キルアくんもガード硬いし! なんかレオリオさんとひそひそしてるけど聞こえてっからね! 

 

 ……まあでもいいや。また次で。今はとりあえずさっさとついて行こう。やってみたいこと思いついたしね。

 

 ──あ、ちなみに試しの門はさっき軽く押してみた感じ7まで開けれそうだったね。ゾルディック家にはそんな興味ないし、それじゃ故郷へレッツゴー☆

 

 

 

 

 

 ──市内で先にあのスピカって奴が用事で去っていった後。ゴンにキルアにクラピカとも9月1日にヨークシンシティで会うことを約束してからオレは故郷へ戻った。

 

 オレの夢は医者になることだ。バカ高い授業料のためにハンター試験を受けたがプロハンターになった今、授業料は免除になる。

 

 あとは故郷の国立医大に猛勉強して受かるだけ。あいつらのことは気になるがまた会えるしな。

 

「おーし! やっぞー!」

 

 故郷のオレが借りてるアパートの一室の扉を勢いよくあけてオレは自分自身を奮い立たせる。あとは来年の受験まで勉強するだけ! オレならできる! いややるって決めたからな! 

 毎日机に齧りついて勉強する! もうすぐ二十歳になって酒も飲めるようになるが酒や女よりもまずは勉強──

 

「うわ~男の一人暮らしってカンジ~。あんま片付いてないね~」

 

「いやほっとけよ。これでも普段は掃除もちゃんと………………」

 

 ……あ? 気のせいか? なんかオレと一緒に見覚えのある女が一緒に入ってきたような……って。

 

「うおおおおお!!?」

 

「え、なに? 急に声出してどうしたん? 話聞こかー?」

 

「なんであんたがいんだよ!!? どうやってついて来た!?」

 

「普通に尾行しただけかな~。ゴンくんたちと別れてからずっとね」

 

「び、尾行だと……? マジかよ……全然気づかなかったぜ……本当か?」

 

「本当なんだから仕方ないじゃ~ん。あ、エロ本みっけ。ベッドの下なんてベタすぎ。しかも結構ノーマル」

 

「うおお!!? 見るんじゃねぇー!!」

 

 オレは必死にそいつの手から秘蔵のエロ本を取り上げる。そう──オレを尾行して部屋に一緒に入ってきたのはあのクラピカの同郷。試験会場に向かう途中の船で出会った同じクルタ族のプロハンターでギャル……スピカだった。

 

 それをようやく冷静になって呑み込む。呑み込んだが……なんでここにいんのか理由が分かんねぇ……ハッ、まさか。

 

「まさかオレに気があって……」

 

「いや別に。船ではああ言ったけど好みではないかなー。あーしの好みは最低でも10代の可愛い男の子だし。歳上はちょっとね~」

 

「オジサンじゃねぇ!! オレはまだ10代だ!!」

 

「えっ、それマ? あ~~…………」

 

「ぜってーオレのことオッサンだと思ってやがったな……」

 

「あはは……ま、まあそれはともかくちょっと話があって付けさせてもらったんよね~」

 

 誤魔化しやがった……クソ、どいつもこいつもオレをオジサン扱いしやがって。言うほど老けてねぇだろ。

 と、それはまあいい。それよりもこいつがなんでオレを付けてきたかだ。

 

「……話ってなんだよ」

 

「まー結論から言うと──あーしの弟子になってくれないかと思ってね」

 

「……はぁ? 弟子?」

 

「そ。感謝しな~? あーしが鍛えてあげるなんて神ってる展開、中々ないんだからね~?」

 

 ……………………こいつ、何言ってんだ? 

 

 急に弟子になれとか言い出した歳上のギャルにオレは困惑する。弟子って……つまりオレを強くするってことか? なんでそんなことを? 意味がわかんねぇ。

 

「…………あ~~悪ぃんだけどよ。オレは弟子にはなれねーぜ」

 

「なんでー?」

 

「オレは医者になるんだよ。確かにハンターなら多少自衛のために強くなきゃ務まらないのかもしんねーがこれから受験のために猛勉強しなきゃならねぇ。だから他のことに意識を割く余裕はあんまねぇんだよ。悪いけどな」

 

「あーね。じゃそれもサポートしてあげるよ。勉強効率が良くなるようにね」

 

「……あんた医学の知識があるのか?」

 

「いや? 応急処置くらいしかできないかな~。でも助けにはなれそうかな~ってね~」

 

 ……ダメだ。やっぱ意味がわかんねぇ。勉強のサポート? 医者でもねぇんだろ? じゃあ無理じゃねーか! 

 オレは息を吐く。クラピカの知り合いだしあんま邪険にはしたくねーが弟子の件はきっぱり断ろう。

 まあせっかく来たんだから今日くらいは街の案内くらいしてやってもいいがその後に帰ってもらえばいいだろ。そう思ってオレはエロ本を片手に持ったまま口にした。

 

「……やっぱ悪いけどオレは弟子になれねーぜ。そんなに鍛えたいならゴンやキルア……もしくはクラピカの方に行ってやってくれ。特にクラピカは…………」

 

「友達思いじゃん。そういうとこは素直に好感持てるかな~」

 

「お、おう。そんくらい当然だろ」

 

 くすりと笑われてオレはついドキッとしてしまう。……冷静に考えたらオレの部屋に歳上の可愛いお姉さんがいんだよな。良い匂いもするしベッドを背もたれに床に腰掛けてるから上から若干谷間が見えるし。今もベッドの上に置かれた医学書を手に取って「ふーん」と眺めてる。

 

「──そっか。なら説得するしかないよね~」

 

「い、いやだからオレは……(説得? エロいことじゃねーよな?)」

 

「いいじゃん。ほら、ちょっとその手に持ってるエロ本見てみなよ。表紙の女の子の顔可愛くない?」

 

「あ?」

 

 表紙の女の子の顔? 確かこの雑誌の表紙は……。

 オレは言われて目をむける。お気に入りの雑誌だから表紙にどの女優が映ってるかなんて当たり前に把握してる。だからどういう意味で言ったのかよく分からなかったが……。

 

「……なんだこれ? シールか?」

 

 雑誌の表紙。その女優の顔に、絵文字が貼り付けられていた。

 それは携帯やPCなんかで使う絵文字の泣き顔。それに似てるが、よりデフォルメされた可愛いマーク。

 もしかしてこいつが貼ったのか? シールを? 何のために──

 

「はい【ぴえん】っと」

 

「!!?」

 

 ──だがその瞬間、オレの思考は驚愕で埋め尽くされる。

 

 スピカがぴえんと口にした瞬間、オレの手にはさっきの雑誌ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「う……うおおおおお!!? 今何しやがった!? いや、どうやってやった!? 手品か!?」

 

「わーお良い反応じゃん。あはは、びっくりしたっしょ?」

 

「あ、ああ……」

 

 どういうことだ? オレは確かにオレの右手で持っている医学書とスピカが手でふりふりと振る雑誌を交互に見て冷や汗を自覚する。そしてよく見てみれば……。

 

「あ? シールはどこいった?」

 

「ああ。シールならここにあるよ──ほら」

 

「!? て、掌……!?」

 

 オレが雑誌の表紙を見て気づいた疑問に、スピカは右手の掌を見せつけるように振る。

 そこには先程オレが見た雑誌に張られたシール──あの絵文字があった。

 

 そんで同時になんか凄みみてーな気配を感じてオレは自然と後退りしていた。気づけば冷や汗も流れてやがる。

 

「ほらここにあるでしょ? 【交換する悲嘆(ぴえん)の印】……いや、能力の名前は流転する少女の流行(ぴえんこえてぱおん)って言うんだけどね」

 

「“交換する悲嘆(ぴえん)の印”……? ぴ……いや能力? 何言ってんだ?」

 

「今えっちな本と医学書を一瞬で入れ替えたのはあーしの“念”能力なんだよ」

 

「念、能力……?」

 

「オーラっていう生命エネルギーを操る能力のこと。まあめっっっっっちゃ簡単にいうと誰もが持ってるけど使えない。鍛えて使えるようになれば超能力者とか仙人になれる力かな」

 

 ……普通に聞いたなら絶対信じねー。ありえねーだろっつって終わりになる話だ。

 

 だがたった今見た魔法みたいな力と今も若干感じる変な空気は……簡単に否定することができねー。

 

「まー今見せたのはかなりの高等技術であーしにしか出来ないんだけどね。ただ説得力を持たせるには十分っしょ?」

 

「……そ、それをオレに見せて何がしてーんだ?」

 

「さっき言ったじゃん。弟子になってって。この念をあーしがレオリオ……レオレオ……リオリオ…………なんて呼ぼっかな」

 

「…………変な呼び方じゃなきゃ何でも構わねぇよ。それよりも! 念を教えるって……オレにも今の入れ替え? ができるように教えるってことか?」

 

「いやだから今のはあーしにしかできねーって言ったじゃん。念は色々あるからそれはレオリオ次第なんよ」

 

「じゃあなんなんだよ!? それにそういうのってすぐにできると思えねーぞ!? もしかして山籠りとかさせるつもりじゃねーよな……!!」

 

「あーもううっさいなー。それを今から説明すっから黙って!」

 

 うっ……この女……さては意外と短気……っつーか強引だな……! 

 

「いい? 念ってのは生命オーラ。だから身体にとどめる……“纏”って技術を使えばそれだけで肉体は強くなるし、“絶”をすれば気配を消したり疲労も回復しやすいし、“練”をするとゴリラみたいに強くなんの! で、“発”は念能力の奥義でさっきあーしがやったみたいな色んな能力が使える必殺技! はい説明終わり!! 後でまた教えるから今は頭の片隅に置いといて!」

 

「ま、待て待て。そんないっきに言われても覚えられねーよ」

 

「だから頭の片隅に覚えとくだけでいいって言ってんじゃん。……で、この念を覚えるのが裏ハンター試験の試験内容ってワケ」

 

「は……う、裏ハンター試験? なんだそりゃ?」

 

「読んで字の如くっしょ。念を覚えなきゃ一人前のハンターとは認められないんよね」

 

 それを聞いてオレは絶句した。そして、すぐに湧き上がったものを解き放つ。

 

「はぁ!!? なんだそりゃ!? 裏ってなんだよ裏って!! 裏口入学じゃねーんだぞ!? ハンター試験ってあれだけじゃねーのかよ!?」

 

「ライセンスはあげてるけど仕事を受けるのは念を最低限収めてないと無理かな~。仮に受けても念の習得を想定した仕事内容だから死ぬだけなんよね~」

 

「……! じゃあゴンたちも今頃受けてんのか?」

 

「まあそのうち誰かしらが教えることになるかな。すぐではなくとも数ヶ月以内には協会からプロハンターが派遣されるなりして修行に入ることなるってカンジ」

 

「マジかよ……」

 

 オレはそれをスピカから聞かされて考える。裏ハンター試験……確かにそれが必要ならやるしかねー。

 まだ全部わかったわけじゃねーけどとりあえず強くなれたり超能力染みた力が使えるようになんのは理解した。仕事や何かあった時のためにそれが必要になることもな。

 

「……話はわかった。弟子になるって話……受けてもいーぜ」

 

「あざまーす♡ それじゃ早速より詳しい説明を──」

 

「だけどな」

 

 オレはそこで動き出すスピカに待ったをかける。真剣にその眼を見てオレの思ってることを口にする。

 

「オレはそれでも早く医者になりてーんだ。勉強を疎かにすることはできねー……だから弟子になってもいいが、オレの事情を優先させてくれ」

 

「──ところがどっこいじゃんじゃん飯! 念の修行に医者になるための勉強。その両立をするにはどうすればいいか。そこでこのあーしってワケ!!」

 

「へ?」

 

 ぽかん、と呆気に取られちまう。

 急に得意気に立ち上がってポーズを取るスピカの勢いに放心しちまった。

 だが少しして言った内容を理解して聞き返す。

 

「両立……? いやまあそれができるに越したことはないが、オレは……」

 

「まあまあ! それよりそろそろ腹ぺこりんじゃない?」

 

「う……まあ確かに腹は減ってるけどよ」

 

「おけまる~! じゃあ用意すんねー。うーん……ならこの辺りでいっか~」

 

 オレの言葉が言い終わる前に指を立てて顔を近づけてきたスピカにまた気圧され、オレは同意しちまった。実際腹が減ってるのは事実だ。空港からここまでまだ何も食べてないからな。

 だからスピカが用意するって言った時はもしかして何か作ってくれんのかと一瞬期待した──が、よくよく考えたらオレの部屋の冷蔵庫には食材はロクにねーし、向こうは向こうでなぜか冷蔵庫ではなく部屋の間取りと壁を確認してる。

 

 どういうことだとオレが思っていたその時だった──スピカが手をかざしたオレの部屋の壁に、()()()()()()()

 

「!?」

 

「はい。それじゃあ──あーしのお店【Ristorante G.A.L(クッキングギャル)】へいらっしゃいませ

 

 そこでスピカは扉を開いた。そこはオレの部屋の壁しかなかったはずの場所で、その壁の向こうは別の部屋の住人が住んでる……つまりこのアパートと同じ作りの部屋が広がってなきゃおかしい。

 

 だがスピカが開いた扉の先は、確かにレストランだった。

 

「当店にメニューはなく、あーしが好きに料理をお出しします。当店内では他者を攻撃したり危害を加えたり暴れたりするような行為は禁止。──つーかできんけどね。破ったら退店していただきます。あと食事を食べ終わったら1時間以内に退店してください。良ければこの台帳にサインをお願いします」

 

「か……壁の中にレストラン……!? ど、どうなってんだ……?」

 

「いーから早く署名してくれないかな~? じゃなきゃレストランに入れないから」

 

「お、おう」

 

 オレは驚き心臓をバクバクさせながらもスピカに手渡された台帳の一番上の欄に名前を書く。するとスピカが店内に招き入れるように手を開いた。

 

「それじゃいらっしゃいませ~。1名様、お好きな席にどうぞ~」

 

「ま、マジでレストランじゃねぇか……ここはアパートの隣の部屋だったはずだぜ?」

 

「これもあーしの能力だよ。念空間──あーしのレストランを作る能力かな。まずはお水をどうぞ」

 

 オレはレストランの中を見渡す。どう見ても高級レストランだ。ちょっと小さいがオレのアパートの部屋よりは何倍もでかい。ホールは高級そうな長机が置かれていて席は8つだけ。だがインテリアから何から何まで金持ちが利用するフルコースを出すような内装。トイレの案内もありやがるし、窓もある。窓からはオレのアパートの外の景色が見えた。

 

 これが念空間なんて信じられねー。周囲を見渡しながらおっかなびっくりで席につくとスピカがグラスに入った水をオレの前に置いてくれた。

 オレは空気に飲まれてそれを口に含む。

 

「! 美味い!」

 

「今日のドリンクは秘境エリアスの湧き水。それじゃ簡単に作ってくるから待ってろよ~」

 

「あ、おい……!」

 

 これまで飲んだどんな水よりも美味かった。どこの水だと聞く前にスピカはそれを口にすると奥にあるであろうキッチンへと消えていく。

 喉も乾いていたオレはさっさと水を飲み干しちまう。それから10分くらい経った頃。

 

「お待たせ~! ショウグンエビとクモワシの卵。それとあーしの管理してる畑で採れた米を主に使ったチャーハン!!」

 

「うおっ……」

 

「あーしの料理の腕と有用性に気づいてもらうためにあえて簡単なもの作ったから。どうぞ召し上がれ」

 

 食べる前から届いていた香ばしい香り。それが目の前に現れただけでオレは喉を鳴らしてしまう。

 食材は高級だからなのかこいつの料理の腕が凄まじいからなのか、輝いてみえるそのチャーハンをオレはスプーンを使って口に運んだ。

 そして一口食べた瞬間──その飯の暴力に抗えなくなる。

 

「……!!」

 

「あーあーそんながっついちゃって」

 

「いや美味すぎんだろこれ! 今まで食べたどんな料理より美味ぇ!」

 

「ありがと。マナーとか気にしなくていいから好きに食べてねー」

 

「ひうわぁふぇふあふふぁふへほふぁぇふあう!!(言われなくても食べ終わる!!)」

 

 オレは米の一粒、いや、油の残りまで掬うレベルで完食する。

 結局一瞬で食べ終わっちまった。美味すぎてつい放心しちまう。

 

「は~~~~……すげーな……」

 

「でしょ? ──で、あーしの能力はどう? 身体に活力が満ちてるカンジしない?」

 

「あ? そういえば……なんか疲れが全部吹き飛んでるような……?」

 

「そう。これがあーしのRistorante G.A.L(クッキングギャル)の能力。レストランを作ってそこにお客さんを招いて念を込めた料理を食べさせる。そして料理を食べた人の身体を操作・強化して疲労を回復して治癒能力をあげて更に健康状態に! これで3日は何も食べなくても栄養不足になることはない!!」

 

「はぁ!? 確かに料理は美味かったが幾らなんでもそんな馬鹿な──」

 

 って、そこまで言いかけて気づく。そうか、これも念能力の……! 

 

「気づいたみたいじゃんね? そう。能力だからこういうこともできる。結構色々考えて作る必要があるけどねー。この能力で不治の病や瀕死の重体を回復したりできるわけじゃないし」

 

「……! つまりこの能力でオレの修行や勉強も効率が良くなるってことか?」

 

「ぴんぽんぴんぽーん! 正解! だからあーしが師匠なのは幸運ってワケ。特別に超高いあーしの料理を修業の間食べさせてあげんね~。ほら、これなら超キツイだろうけど両立できそうっしょ?」

 

「……………………」

 

 もうなんつーか……ただただ息を呑むだけだ。

 ここまで怒涛の展開だったが……ここまで言われりゃオレもやるしかねー。師匠としてこれほど良い相手も多分いない気がする。あと飯も美味いのが助かる(タダなのもいい)。

 ただ勉強のことだけは優先的にさせてもらわねーとな。もちろん修行はちゃんとやるが……そこだけは改めて口にしとこう。

 

 ……それにちょっと嫌な予感もする。もしかしてこの能力で馬車馬みてーに無茶な修行やらされるんじゃねーだろうな……ってな。

 

「……わかった。だけどな、さっきも言ったがあくまでオレは勉強を優先させてもらうぜ。だからあんまり無茶な修行は──」

 

 だからオレはそうはっきりと口にした。スピカが目の前でニマニマと腕を組むのを見ながら。

 

「やめてく」

 

「もちろん勉強優先でいいよ~。でも

 念の修行を終わらせたらあーしのおっぱい揉ませてあげよっかな~」

 

「オレはやるぜ師匠。さあ、まずは何からやればいいんだ? 教えてくれ」

 

 ──キリッとした顔でオレは覚悟を決めた。そうだ。オレは絶対に医者になるしハンターとして念だって習得してやる。決してギャルの巨乳に釣られたわけじゃない。薄汚い師匠の罠に嵌っただけだ。

 




スピカの豆知識:スピカの発は主に2つ

『流転する少女の流行(ぴえんこえてぱおん)』
主に放出系だがそれ以外の系統も含む複合能力。念のシールを付けたもの同士やシールを付けたものとスピカ自身の位置を入れ替えたりその場に転移させるなど様々な効果を発揮する能力。シールはそれぞれ『ぴえん』『ぱおん』『ぼかん』『ぶおん』『ひいん』『ぴえんヶ丘どすこい之助』がそれぞれ存在し、シールを付ける際に掌にそのシールが浮かぶ。シールを付ける条件や効果がそれぞれ異なるがシールは1つの対象につきどれか1つしか付けることができない。ただし他のシールに上書きすることはできる。

『Ristorante G.A.L(クッキングギャル)』
放出・操作・強化・具現化の複合能力。念の扉を作り、そこからスピカ自身が扉を開いて招き入れることでのみ入れる念空間、スピカのレストラン【Ristorante G.A.L】を生み出す。念空間にはホールにキッチン。食材貯蔵庫とトイレ、事務所がある。更に外からは見えない窓があり、外の様子を見ることができる。この空間で念を込めた料理を食べさせることで対象の体の状態を操作・強化する。この能力を用いて作った料理は食べた者の不足してる栄養素やカロリーを摂ることができる万能の料理となり、疲労は軽減。自己治癒能力やオーラの回復速度も上がる。
またこの念空間内にいる者は客もスピカ自身も含めて銃火器や刃物、念などあらゆる攻撃が通じず傷つくことはない。事前に説明したお店のルールを破ったものをスピカはいつでも退店させることができる。空間から出る時は入った時と同じ場所に扉が出現してそこから外に出ることになる。
レストランに入ることができるのは8人まで(席の数)。料理は他人の手を借りずに自分で1から作らなければならない。

制約と誓約
①客はスピカ自身がその場に出現させた念の扉からスピカ自身が相手を招き入れることでしか入ることができない。
②念空間に入るものは予めスピカから空間内での他者に危害を加えるような行動の禁止、食べ終わって1時間以内に退店するなどのお店の説明を受けた上で台帳に署名する必要がある。
③料理は他人の手を借りずにスピカが1から作らなければならない。
④同じ客は一日に1回までしか入店することはできない。日付を跨げば再度入店できる。
⑤一度に入れる客の数は8人まで。
⑥料理に毒や薬を使用することはできない。破った場合この能力は二度と使えなくなる。



ということで今作はレオリオが活躍するかもしれない。次回から修行編に入ります。お楽しみに。

感想、評価、良ければよろしくお願いします。


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