うす汚ねェクルタ族の血を増やしてやるし!   作:黒岩

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ネン×ト×トウギジョウ

 “念”ってめっっさ奥深いんよねー。

 あーしが初めて念の存在を知ったのはあーしが受けた第271期ハンター試験のすぐ後であのババア──グルメハンターリンネ=オードブルに出会ってからだった。

 

『きゃはは! “纏”も“絶”も“練”も“発”も簡単じゃん! やっぱあーしってば天才なんだ~♡ この調子で──あてっ!?』

 

『四大行を覚えた程度で調子に乗るんじゃないよ。あんたなんてまだまだひよっこさね』

 

『はぁ~~~~!!? 誰がひよっこよババア!! あーしは天才!! 最強カワイイ美少女スピカちゃん♡ 今年プロハンターになったハンター協会のアイドル♡ 試験でもみ~んなあーしのこと狙ってたし♡ はぁ~ロリコンおじさんが多すぎて困っちゃうなぁ~♡』

 

『……………………』

 

『って聞け!! ──痛っっ!!?』

 

『普通に殴っても意味ないよ。“硬”を使いな』

 

『使ってるつーの!! ガードすんな!!』

 

『出来てない』

 

『っ……今日教えられたばかりでできるわけ──』

 

『天才なのに出来ないのかい? そうかい……残念だね。なら()()には勝てないよ』

 

『はぁ!? うっさいババア! できるし! こんなの1週間後には、いや3日……いや今日中に覚えてやるし! あーしは天才なんだから!!』

 

『精々その調子で頑張りな。休みと食事を挟みながらしばらくはずっと基本の四大行の反復。それと応用技の習得を目指してもらうよ』

 

『ぐぬぬ……! あーしは天才……天才……! 大人にも負けない……! あいつにも負けない……!! だからすぐできる……!!』

 

 ……まああーしは天才だったから修行も全然苦じゃなかったしなんでもすぐ出来たけどね。まあちょびっとだけ習得に時間がかかったものもあったけど。円とか最初は一番苦手だったけどできるようになってからは一番得意になったから。さすがあーし。

 

 ただババアはクソババアだったけど念の指導は適切だったかなー。さすがジジイを除いてハンター協会最高齢で一番ババアなだけはある。あーしの師匠やれるだけはある。最近は耳が遠くなってて声を大きくしないとだからメンディーけど。

 

 とまああーしの師匠の話は置いといて。あーしはあーしでもう数年前から二つ星(ダブル)ハンター。

 二つ星って功績だけじゃなくて上官職で指導したハンターが一つ星にならないとなれない。つまりあーしの指導力は折り紙付きってワケ! あーしの弟子のメンチちゃんは一つ星だかんね。念の指導をした経験はあるし、やったことでよりあーしも成長してる。だから弟子の育成はより完璧に──

 

「はい、纏! 身体にオーラを留めて~~……そのままそのままー! はい次は絶! オーラ消して~! ──消すのが遅い!!」

 

「痛ぇ!!? おい! 絶してんのに殴んなよ!?」

 

「こっちも絶で殴ってるし手加減してんだからぶーたれんのは無し! はいもっかい絶!」

 

「っ…………ぐ……」

 

「ん~……ま、そこそこ出来てんじゃん。それじゃ次は“練”。練のやり方は? はい復習」

 

「あ~……確か、身体の内側にエネルギーを溜めてから一気に放出する、だったよな?」

 

「わかってんね。じゃあ練して~」

 

「気軽に言うんじゃねー! クソしんどいんだっつーの……!」

 

「はいまたぶーたれた。筋トレ5セット追加ね」

 

「~~~っっ、クソったらァ~~~~~~!!」

 

「にひひ♡ 普通の人ならもうとっくに四大行修めてるし~♡ 今頃他の同期はもう念の習得してるかもな~? 受験勉強と並行してるとはいえあーしの能力のサポートを受けてこれなのだらしなくな~い?」

 

「わーってるよ!! やりゃいいんだろやりゃあ!!」

 

「うんうん♡ その調子でがんば~。ちゃんとやったらご褒美あげっからね~」

 

 一人暮らしの男の部屋。アパートの一室であーしはソファに腰掛け足を組みながら必死にオーラを操ろうと修行する老け顔の新人ハンター……レオリオ=パラディナイトに指導していた。

 

 あーしがレオリオくんを弟子にして念の修行を始めてから2週間が経った。あーしのおっぱいに釣られたレオリオくんは勉強と並行しながら念の修行をめっちゃ頑張ってくれてる。

 

 念を目覚めさせるにはゆっくり目覚めさせるか無理やり目覚めさせるかの2択があったけどレオリオくんは説明を聞いた上で覚悟して無理やり目覚めさせる方法を選んだ。おかげですぐに纏は覚えられた。

 

 ただそっから絶──オーラを消す技術には結構時間がかかった。オーラを消すのは苦手みたいじゃんね。纏を維持し続けるのはできるけど絶の習得に修行を始めてからの2週間を殆ど費やした。

 そんで昨日から練の習得の修行に入ったんだけど──ここでまた驚かされたんよね。

 

「おっっっ……らぁ!!!」

 

「おー」

 

「ぜぇ……ぜぇ……どうだ!? 出来てんだろ?」

 

「んー……まあ、ね。じゃあそのまま練と纏と絶を休みながら交互に」

 

「こ、交互ォ!? ま、マジかよ……他の奴らはこんなことを平然とやってやがんのか……」

 

 汗だくになりながら荒い息を吐くレオリオの言葉に何も言わずマニキュアを塗りながら修行を見る。こんなことを平然と習得して行っている──もちろん、()()()()()()()

 

 念の習得は本来なら年単位で行うのが普通。ハンター試験に合格してプロハンターになった新人が裏ハンター試験に合格するまで1年や2年──それ以上かかることも珍しくない。

 

 念を無理やり目覚めさせて全身の精孔を開いたとしても基本の四大行を習得するにはやっぱり数ヶ月か年単位の修行が必要。

 

 だけどレオリオくんはたった2週間で練まで習得した。

 

 絶の習得にこそ時間がかかったけど(それでもめっちゃ早い)纏と練に関してはたった一日で覚えたからマジはんぱない。

 どうやらレオリオくんはオーラを一気に出す。その瞬発力は優れてるっぽい。反対に消すのは苦手。まだ先の話だけど“隠”の習得は時間かかりそ~。

 

 もっともまだまだ纏も絶も練もできるだけでお粗末ではあるけど、それでも覚えるだけならあと1週間で“凝”。1ヶ月くらいで“発”の習得に取り掛かれるかもしれない。比べるのもなんだけどメンチちゃんより全然早い。あーしと同じくらい才能ありそう。

 

「くっそ……難いな……」

 

 だけどレオリオくんに数百万に1人かそれ以上の才能があるかもしんないことは言ってない。他の人と比べてめっちゃ早いことも。

 それ言ったら調子に乗っちゃうかもしんないし。まだ短い付き合いだけどレオリオくんは褒めまくって調子に乗らせるより少し追い込んだ方が力を発揮するっぽい。

 

 まあでも──

 

「……はぁー……はぁー……!」

 

「──ん、おつかれ~♡ 今日もよく頑張ったじゃ~ん♡ 練も出来てたし良かったよ♡」

 

「お、おお……」

 

「すぐにご飯作んね~。あとは好きに勉強してていいよ~」

 

「ああ、ありがとうございました……」

 

 ──終わったらちゃんと褒めてはあげないとね~。修行中は鞭で終わったら飴。

 

 あーしはすぐにレオリオくんの部屋に“Ristorante G.A.L(クッキングギャル)”でレストランを出現させて条件を満たしてレオリオくんをお客さんとして招き入れる。そんで料理を作って疲労回復。筋トレで傷ついた身体の治癒も早まるし、オーラの回復速度も上がる。勉強に影響を残すのは可哀想だしね。

 

 本当はもっとやらせたいことはあるけどあんま詰め込みすぎもよくないし。今は四大行と勉強だけで十分かな~。

 

「死ぬ……このままじゃ死んじまう……なんだこの生活……スパルタってレベルじゃねーぞ……早く飯くれ……」

 

 ……それにこれ以上厳しくしたらメンタルが死にそうだし……念の修行は精神も大事だからね。

 ただ修行が終わったあとはこうでも料理を食べたあとは回復するし勉強時間だから問題はない。明日の朝には元気いっぱいじゃんね。

 それにメンタルも回復する方法はある。たとえばこう。あーしはテーブルに突っ伏して魂が抜け落ちたようになっているレオリオの耳元に唇を近づけて。

 

「──Hカップ♡ 95♡」

 

「!!!」

 

「あーしのサイズ♡ にしし、それじゃ料理してくんね~」

 

「……………………」

 

 囁くようにその魔法の数字と記号を口にするとレオリオくんはむくっと真顔のまま身体を起こした。真顔だけど若干鼻の穴が広がってるしえっちなこと考えてるのがバレバレじゃん。でも男の子ならこうなるのも仕方ないよね~。

 

 ってことでメンタルの回復方法はこうやってえっちなことで煽ること。人間疲れてたり病んでてもご飯食べてえっちなことしてしっかり睡眠を取ってれば大抵は何とかなる。特にメンタルはこれが一番効くと思ってんよね~。軽い悩みくらいならあーしの料理食べさせて谷間見せてふかふかのベッドで寝かせれば吹き飛ぶ。医学的にもおっぱいを見るとストレスが軽減されるって証明されてるから間違いないんよ。

 

 ……ただヘビーすぎると無理げーだけどねー。なんで使い所は計画的に思慮深く。

 

 ちなあーしは別に性欲は強くない。そういうことも昔はともかく今は全然やってないし。なんか変態って言われるけどカワイイ男の子に興奮するのは当然じゃん。そしてあーしはカワイイ男の子に興奮してるだけで別に四六時中発情してるわけでもえっちなわけでもない。まあ見た目も性格もえっちかもしんないけどあーしの性欲は平均並みってワケ──っと。あとは仕上げをして完成。

 

「お待たせ~! 今日は凶暴で知られる地上げ鳥のお肉と卵を使ったオムライスがメイン! それにあーしの畑厳選の野菜を使ったポタージュもおすすめ! 食後のドリンクには勉強の集中力をより高めてもらうためにすっきりとした味わいが特徴のオチマ産のコーヒー豆を中煎りで用意してっから食べ終わったら言ってね~」

 

「おお!! 今日も美味そうだ!! いただくぜ!!」

 

「召し上がれー♡」

 

 キッチンで作った料理をホールで席について待っていたレオリオくんに提供する。レオリオくんはそれを見るなりすごい勢いでがっつき始めた。まだまだ食べ盛り。成人男性(レオリオくんは3月3日が誕生日でこの間二十歳になった。パーティもしてあげた)の食欲はすっごい。だから料理も大盛りだしメインディッシュ以外にも沢山の料理を毎回作ってんだよね。ガチのフルコースを形式ばって出すと時間がかかるからっていうレオリオくんの要望で作った料理を一気に出して食べてもらってる。そしてどんどん消えていく。ものの30分もすれば全部綺麗に完食。これは料理人冥利に尽きるね~。

 

「ふぅ~食った食った!! 毎度思うがやべーな……美味いのはもはや当然としてさっきまであった身体の疲れも吹き飛んだぜ」

 

「それがあーしの能力。そんであーしの料理の腕前だからね~。──さ、次は勉強がんばれ~」

 

「ああ。ごっそさん。あんたはどうすんだ?」

 

「あーしは適当に過ごしてるから気にしないでいいよ~。そんじゃおっつ~☆」

 

 料理を平らげてお出ししたコーヒーも飲み干したレオリオくんと共にレストランを出て念の扉を消すとあーしはそのまま笑顔で手を振ってアパートを後にする。

 

 レオリオくんの住んでる街は雑多ですごい活気がある。医大に行くために図書館が近い場所を選んだ結果、結構な都会に住んでるんよねー。ガチの地元は都心から少し離れたスラムだって話を聞いた。

 

 そしてあーしの家は……ない。いや、ないっていうと語弊があんだけどね。拠点は幾つかある。

 だけどハンターって結構同業やそれ以外も含めて狙われやすいからあんま一箇所に留まるのって微妙なんだよね~。有名なハンターなら尚更。

 つーかそもそも仕事で世界中飛び回るから家を持っててもあんまりそこにいないってことも多いからハンターの基本はホテル暮らし。仕事に近い場所で適当なホテルを借りて寝泊まりするってカンジ。

 

 まああーしの場合は“Ristorante G.A.L(クッキングギャル)”で寝泊まりできるし、それ以外でもどーとでもなる。

 なんで今日はどこに行こうかと思ってた──そんな時にあーしの携帯に電話がかかってきた。パリストンだったら即切りしよ。えーっと相手は……うげっ。

 

 あーしは相手の名前を見てちょっと嫌な気分になる。なったけど出ることにした。連絡先を渡したのはあーしだし出ないのはちょっとね。

 

「──何?」

 

『いや、キミの声が聞きたくてね♥ 用は──』

 

 あーしは携帯の画面の赤いところをタップする。通話終了。さーて、あーしも話題の飲食店でランチか、それともネカフェで最近ハマってるオンラインゲームでもしよっかな~。

 

 ──と、思って歩き出そうとしたらまた着信音。あーしはもう一度電話を取る。

 

「何?」

 

『酷いじゃないか♦ 急に切るなんて♠』

 

「だって取った瞬間キモいこと言われたからストーカーかと思ったし」

 

『軽い挨拶だよ♥』

 

 ……ってことで電話をかけてきたのはこの間のハンター試験で顔見知りになって連絡先を交換したヒソカ=モロウ。あーしに殺意向けながら硬くしたり、コクってきたりしたガチの変態。

 

 でももしかしたら取引相手になるかもしんない相手なんだよねー。だから一応応対はしねーとなー。

 

「ま、いいけど。どしたん?」

 

『この間は君が忙しいからすぐに別れてしまったから♣ 改めて話をしたいと思ってさ♥』

 

「あーね。それならいいけどちょい待ち。盗聴されたくないから会ってから話そっか。今どこにいんの?」

 

『くく……慎重だね♠ なら天空闘技場まで来れるかい?』

 

 ──天空闘技場かー。あの野蛮人の聖地って言われてる場所になんで……とは思わんよね。こいつどう見ても戦闘狂だし。手っ取り早く戦いたいなら天空闘技場しか勝たんのよねー。あーしも昔は……っと。思い出を振り返ってる暇はないし。とりあえず返答しないと。

 

「おけまる。そんじゃ今日の夜に待ち合わせね」

 

『……早いね♦ もしかして近くにいるのかい?』

 

「偶然ねー」

 

『わかった♣ なら天空闘技場で落ち合おう♠ ボクは200階で遊んでるからもし連絡が取れなかったらそこに来てほしい♥』

 

「りょー。そんじゃまた後で連絡すんね」

 

 ピ、とそこで通話を切る。さてさて、そんじゃ早速移動しよっかな。

 あーしは適当な路地裏に入りながら良い感じの場所を探す。ちなさっきは嘘をついた。あーしが天空闘技場の近くにいるわけがないし。

 ただ不必要に能力をバラすのはよくないからああ言っただけ。なのでこっからはあーしの能力で移動する。天空闘技場ねー。確かミンボ共和国に8番を貼ってたかな。

 

 ──流転する少女の流行(ぴえんこえてぱおん)】!! 

 

 あーしは右手にオーラを集中させて能力を発動する。掌に浮かんだシールはデフォルメされた11番と刻まれた象のシール。それを押し付けるように右手で壁に触れてシールを貼り付けた。能力の条件はこれで満たされた。あーしはその象のシールの能力を発動させる。

 

 ──転移する象の印(ぱおん)】!! 

 

 瞬間、あーしの視界は切り替わる。都会の路地裏から()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っと。そんじゃチケット取るかー」

 

 あーしはそのまま壁に貼ってある不可視のそれ。象の8番のシールを右手でぺりっと剥がして消す。取っといてもよかったけどこれから天空闘技場に行くならそっちに貼っといた方がいいっしょ。

 

 ほんっとあーしの“転移する象の印”は便利。これこそ放出系の醍醐味じゃんねー。

 

 ──あーしの“流転する少女の流行(ぴえんこえてぱおん)”はシールを貼って様々な効果を発揮させる能力。その中でも“転移する象の印(ぱおん)”は放出系の代表的な能力の瞬間移動をする能力だ。

 

 まずあーしが掌に“転移する象の印(ぱおん)”を発現させる。そのシールは2枚一組で1番から20番まであっての全部で40枚なんだけどあーしはそれを選んで貼り付ける。貼り付ける条件は掌で壁や床に触れること。

 このシールは貼ると壁や床と一体化してあーし以外には見えなくなんだけど、要はこれが瞬間移動を行うためのスイッチ。ここに触れると同じ数字の書かれた象のシールの地点に転移できんだよね。

 

 事前に転移したい場所。繋げたい場所に移動して両方に貼り付ける必要があんだけど貼ってさえいればその貼った地点に触れるだけで瞬間移動が出来ちゃう。

 しかもあーし自身は数字の組を無視できるし、シールの近くであーしが直接触れてるならそっちも数字を無視した転移ができる。

 

 ただ1回貼ったらあーしが直接剥がす必要があるし、そもそも“流転する少女の流行(ぴえんこえてぱおん)”で貼れるシールの数は制約で全部のシール合わせて同時に40枚までだから“転移する象の印(ぱおん)”だけで全部あちこち貼っちゃうと他のシールが使えなくなるし剥がすの面倒だし考えて貼らないといけないんよねー。

 

 ま、それでも他のシールも含めてチョー便利だけど。()()()()()()()便()()()()()あーしも負けてないっしょ。以前に仕事で組んだ時はめっっっ……っっちゃ楽だった。放出系ってあーし色んな意味で最強だと思ってんだよねー。

 

「──ん~~……着いたー! おっひさ~」

 

 ──ってことであーしの超絶便利な能力を使って空港から天空闘技場までちゃちゃっと移動したたどり着いた。相変わらずデカ~~~……何年ぶりだっけ。念をある程度習得してババアに戦闘経験積むならここって勧められた時以来だから……13年くらい振りかぁ~。確かあの時は……。

 

『鬼さんこちら♡ 手のなる方へ♡ くすくす♡』

 

『ぐっ……速ぇ……!』

 

『おじさんおっっっそ♡ そんなんじゃ女の子満足させられない♡ おまけにオーラもちっさ♡ それで強化系とか雑魚すぎる♡』

 

『~~~~~っ!! 殺すぞガキが……!!』

 

『殺さないけど死ぬとしたらおじさんの方♡ おじさんは子孫を残せないまま死ぬ♡ 末代になって可哀想♡ 野蛮人の雑魚は負けて地に落ちろ♡ 天はあーしにあり♡ 雑魚は天に必要なし♡』

 

 ……まあ舌戦って言葉もあるくらいだし問題なかったハズ。ないよね? 

 でもあん時は大変だったな~。あーしに変なファンがついて挙句の果てにファンクラブまで出来ちゃったし。あの時のおにーさんとかおじさんたち元気でやってんのかな。

 まあ子供で200階クラスで戦ってた人なんてあーし以外いないっしょ。おまけにあーしは世界一の美少女だったし、ファンが出来ても仕方な──

 

『ゴン選手! キルア選手! ともに190階一発クリア────!!!』

 

「ショタァ!!!」

 

 ──うえええええええ!!? ご……ゴンくんにキルアくん!!? なんでいるし!!? しかも190階クリアってヤバない!? マジでモニターに映ってんじゃん!! 

 

「ってか190階で勝ったってことは次200階じゃん!! マズくない!? ……ハッ。しかも200階クラスには……」

 

 あーしは気づいてしまう。そう──あーしがここで待ち合わせしてる変態ピエロの存在に。

 このままじゃゴンくんとキルアくんは200階で選手登録をしてしまう。2人ともショタの鏡みたいなわんぱくで生意気な少年だから意気揚々と挑んで洗礼を浴びてしまう。もしかしたらあの変態ピエロに……!! 

 

「あーしが保護しなきゃ……♡」

 

 そしてあーしは2人に感謝されるのだ。それであーしがこのまま師匠になって2人に洗礼を……そして師匠になったあーしはあんなことやこんなことを……うへへ……♡ そうと決まればあーしも200階に急がないと!! 

 

 

 

 

 

 ──190階をゴンと一緒にクリアして200階にたどり着いたオレたちの前に現れて立ち塞がったのは……あのヒソカだった。

 

「──このフロアに足を踏み入れるのはまだ早い♠」

 

 そう言ったヒソカがオレたちを追い払うような仕草を取った。

 すると嫌な感じがオレたちの身体に襲いかかる。

 

「くっ……」

 

「どのくらい早いかは君達次第♦」

 

 なんだ……一体なんなんだあのヒソカの嫌な感じは……!! 

 

「出直したまえ♣ とにかく今は早い♦」

 

「ざけんな! せっかくここまで来たのに……」

 

 嫌な感じはしたけどそんなこと言われて黙っちゃいられねー。

 だから言い返したけどそれに対するヒソカの返答は、背筋がゾクッとするような重く嫌な気配。

 

「……!!」

 

「通さないよ♠ ってか通れないだろ?」

 

「ぐっ……」

 

 オレはその場から先に進めない。本能が先に進むことを拒否してやがる。隣のゴンも同じみたいだ。

 廊下の先に座り込むヒソカに近寄れない。ヒソカの言う通りになっちまってる。これは一体なんなんだ……!! わからねーけど……

 

「──ゴンく~ん……♡ キルアく~ん……♡」

 

「!!?」

 

「! おや……♦」

 

 だがオレたちが後退りしたその時だった。

 背後からオレたちの名前を呼ぶ声と、それと共に嫌な気配をまた感じた。

 ヒソカとはまた違う。ゾワゾワするようなねっとりとした気配を。

 

「おひさ~♡ えっと……その変態の言う通り、そっちは危ないからこっちおいで~♡ おねーさんの下に飛び込んでおいで~♡」

 

「スピカさん!!」

 

「な、なんでここに……!」

 

 オレたちの後方。廊下の真ん中に立っていたのは試験で見たあの派手なプロハンターの女。スピカだった。そいつがニヤニヤとキモい笑顔でこっちを見てやがる。

 ただスピカが言うようにこのまま進んだらヤバそうなのは確かだ。それは間違いない。だが……。

 

「ほら怖いでしょ♡ おねーさんが抱きしめてその変態から守ってあげるよ~♡ ふひひ♡」

 

 ──う……後ろも通れねぇ────……!!! ってか近寄りたくない。

 

「なんですかこの状況……と、とりあえずあの、スピカさん……?」

 

「は? 誰? あ、ウイングちゃんじゃん。おひさ~。でも今は邪魔しないでね♡ あの子らはあーしが保護するから♡」

 

「い、いや……私も彼らに忠告しに来たので……一旦ここは私に任せてもらえますか? 2人も貴方のことを怖がっているようですので」

 

「こ、怖いわけじゃないけど……」

 

「馬鹿! ゴン! 今はウイングにノっとけ!」

 

「だよね~♡ じゃああーしも一緒に行こうかな♡」

 

「なんでだよ!! つーか試験の時から思ってたけどマジでなんなんだお前!!」

 

「あーしは親切なおねーさんだよ♡ 聞きたいことがあるなら何でも教えてあげる♡ とりあえず部屋いこっか♡」

 

「え? ほんと?」

 

「だあああ!! だから待て!! クソ!! とりあえずよくわかんねーから一旦引くぞ!!」

 

 ──それからオレとゴンはウイングって人についていってどうにかその場を脱した……クソ……200階クラスに()()()()()()()()いるなんて聞いてねーぞ!!




スピカの豆知識:天空闘技場でフロアマスターだったことがある

・『転移する象の印(ぱおん)』
壁や床に掌で触れると頭に数字が付いたぱおんシール(ゾウのシール)を貼ることができる。シールを貼るとぱおんシールは壁や床と一体化して見えなくなる(ただしスピカには感知できる)。
シールは2枚一組の1番から20番までの全40枚。スピカは好きな数字を選んで貼り付けることができる。シールは2枚とも貼らないと効果を発揮せず、対象が一方のシールが貼られた地点(半径20センチ程度)を踏んだり触れたりすると対となるシールが貼られた地点に転移するが、転移するには術者であるスピカ本人が転移を行うシールから10メートル以内にいる必要がある。相手がそのシールの貼られた地点を踏んだり触れたりした瞬間にスピカは転移を発動できる。
一度貼られたシールは時間経過で消えることはない。ぱおんシールはスピカ本人が直接剥がさなければならず、転移先を変えたい場合は一度剥がしてから別の場所に貼り付ける必要がある。
ただしスピカ本人が転移する場合のみ数字の組を無視して好きな地点に転移できる。



今回はここまで。ノヴ便利すぎない?って能力を考えてるといつも思う。レオリオの修行と並行しての闘技場編です。次回は戦闘回になるかも。お楽しみに。

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