念能力ってのは簡単に人に知らせるものじゃない。
それは念を知らない一般人だけじゃなく念能力者相手でもそうなんよ。
ただちょっと意味は変わってくる。一般人相手は念をあんま周知しないようにねーってカンジだけど念能力者相手の場合は、他の念能力者に自分の能力を安易に伝えたり知られないことが大事ってカンジ。
なんで~って思うかもしんないけどそりゃそうじゃんね。自分の能力が相手に、敵対してる相手に知られたらその対策が取られるかもしんない。分からないからこそ有効的な能力もあるわけだし、そうじゃなくても手札はわかんない方が当たり前に戦いを有利に進められる。
だから味方でも細かい条件なんか奥の手は言わなかったりすることも珍しくないんよね~。
でもそれも絶対じゃなくて。知られてもあんま問題ない能力ならリスクは低いし、能力の条件を逆手に取って罠に嵌めるなんてこともできんじゃん。あーしの“Ristorante G.A.L”とかは戦闘用の発じゃないから別に知られてもあんま問題なかったりとかねー。
特に天空闘技場みたいな人が大勢見てるところでやるのはな~。いやまー別に見せてもいいけど見せないに越したことはないんよね~。
だからあのカストロっていう人はささーっと初見殺しで撃破。結構イケメンだったけど残念。10年以上若かったら可愛かったんだろうね。その頃に出会いたかったし。
そんであの試合からまた更に1ヶ月くらいが経ったんだけどあーしは今日も天空闘技場のある街にいる。
「はいそのまま~。練で出したオーラを留めて~」
「……っ………………」
「…………えいっ」
「んぉお!? な、な……どこ触ってんだぁあああ!?」
「なに練解いてんの? 乳首ちょっと突いただけじゃん。誰が練解いていいって言った?」
「で、できるわきゃねーだろ!! 集中しなきゃ練はできねーんだぞ!?」
「身体触られたくらいで解ける練とか何の役にも立たないし。戦闘中にチン◯ン握られたらどうすんの? その度に練やめんの?」
「そんな奴いねーよ!!! ──痛ぇ!?」
「口答えすんなー。ってか普通にいるっしょ。ウイングちゃんもそう思うっしょー?」
「……まあ金的は十分にありえますね(握ってくる人は多分いないと思いますけど)」
「ほら。そんじゃ続けて~。次は凝やりな~」
「ぐっ……」
「……(しゅ、修行までちょっとやらしいっす……!)」
天空闘技場の個室じゃなくて街の宿。ウイングちゃんとズシくんが泊まってる宿にあーしはレオリオくんを連れて修行を見てた。
レオリオくんの故郷と天空闘技場のあーしの個室を転移で繋げたからこれでレオリオくんも家と天空闘技場を行き来できるってワケ。だからせっかくだし今日はズシくんと一緒に修行させてみようと思ってウイングちゃんに言って連れてきた。
そんでレオリオくんと一緒に練してるズシくんを見てたんだけど……ズシくんってばかなり才能ありそうじゃん! やるね~! レオリオくんほどじゃないけどかなり才能あるし可愛いから頑張ってほしいな~。
「ウイングちゃんってば見る目あるじゃん。身嗜みは相変わらずなってないけど。シャツ出てんよ~」
「あ、すみません!」
「前から言ってんじゃん。ウイングちゃん見た目は悪くないんだからお洒落に気を使った方がいいって。なんならあーしがプロデュースしたげよっか?」
「いえ、ありがたいですが遠慮しておきます。それよりそろそろ試合では?」
「んーあと1時間半くらいかな。確かにそろそろ準備しなきゃな~。ってなわけで、あーしは先に会場に行っとくからみんな応援よろ~♡」
「修行のあとは試合観戦か……(もしかしてまたパンツを……)」
「べ、勉強させてもらうっす(またやらしいことが……?)」
「ズシ。試合は録画してこっちは修行だよ」
「あ、す、すみませんっす師範代」
えーズシくん来ないの~? 残念~……ん? 録画? ウイングちゃんそれマ?
あーしはウイングちゃんの言葉を聞いて思わずニヤッとしてしまう。部屋から出ようとしていた足を戻してウイングちゃんの方に振り返ると口元に手を当てる。
「やーん♡ ウイングちゃんのえっち~♡ もしかしてこの間の試合みたいなこと期待してんだ~♡」
「! ち、違います! そういう意味で言ったのでは……!」
「師範代……」
「おいズシ。そんな目で師匠を見てやんな。男なら仕方のないことだぜ。オレだってそんなことはしねーが気持ちはわかる(オレもビデオほしい)」
「そ、そうなんすね……」
「貴方のせいで私の評価が下がりつつあるのですが!?」
「あはー♡ ウイングちゃん相変わらずかわいいねー。まあ冗談じゃん。ちゃんと弟子のためになると思って言ってんのはわかってるし。──そんじゃ行ってくんねー」
ふりふりと手を振って今度こそあーしは宿を後にする。
そして試合のことを考えながら天空闘技場の方へと歩いていく。まー昨日の試合は確かに女の子慣れしてないウイングちゃんには刺激が強かったかもなー。
でも隙ができるんだからしゃーないよねー。念能力者同士の戦闘では一瞬の隙で勝敗が決することもよくあることじゃん。だから見せパンくらいなら別に安いもんだよね。
……ただなー。使い手によっては……そう。今日の試合じゃその手は通用しそうにないじゃんね?
達人になればなるほど対応力とかメンタル面も当然完成される。それでもこういう手が苦手な人は多いけど、あのヒソカじゃ望み薄だよねー。
ヒソカとの取引。情報を聞き出すために提示された戦い。あーしの力を確かめたいっていう約束。それを今日は果たしに行く。
そのために一番大事なのはヒソカに勝つことじゃないんよ。
まず第一にこっちの手札を見せすぎないこと。ヒソカの情報は何も開示されてないから罠の可能性もある。あーしとのやり取りでも「悩んでいてね」と言ってた。普通に読み解けばあーしと手を組むか悩んでるってことだけどもしかしたら別の方向性で悩んでるかもしんないし、隠しとくに越したことはないよね~。
第二に負けないこと。これは単純に情報源、仮にウソだったとしても手がかりがなくなっちゃうかもしれないし。
そして第三に──ヒソカを殺さないこと。殺しちゃったら情報が聞き出せないじゃんね?
つまりあーしは極力能力を見せず、ヒソカを殺さないように気をつけて負かす。
あーしの見立てだとヒソカは面倒そうだし、結構大変かもだけど……まーなんとかなるっしょ。天空闘技場のルールじゃどうやってもあーしの有利は覆らないんよな~。
(戦闘用の発だと“ぼかん”に“ぶおん”だけどそれはあんま使いたくないし。使うとしたら“ぴえん”と“ぱおん”かなー。シールのストックは33枚でまあまあ余裕あるし……って、ん?)
「……………………」
「ねぇ……あの人、カストロじゃない?」
「な、なんで女性用下着店の前で張ってるのかしら……?」
「しかも凝視してる……」
「この間の試合で変になったのか?」
「まああれはすごかったからな……」
──なんか街を歩いてたら見覚えのある人がいたけど無視する。いや、だってランジェリーショップを睨んでる奴なんて関わりたくないし……。
その日の天空闘技場はここ最近のどの試合よりも賑わっていた。
円形の会場に中央に敷かれた石畳のフィールド。そこには現在、2人の闘士が向かい合っている。
「すっげー賑わってんな」
「まああんなもん見せられちゃあな」
「……下着のことか?」
「ちげーよ!! お前と一緒にすんな!!」
そしてその観客席にレオリオとキルアもまたそこにいた。
彼らは向かい合う2人の強者。スピカとヒソカの戦いを観戦しに来ている。
念を習得してから、いや、習得する以前から強者として刻まれていた2人の人物。レオリオにとっては念の師匠であり、キルアにとっても今はゴンと共に修行を一時中断しているが、どちらが強いのか興味が沸かないはずがなかった。
そしてそのキルアはレオリオのふざけた返しを強く否定しながら冷静に中央に視線を送る。前のスピカの試合を思い出しながら。
「あの試合での動き。どいつもこいつも下着がどーのとか言ってるけどオレに言わせりゃあのあとの一瞬の踏み込み。尋常じゃない速さを気にしないなんてどうかしてる」
「……まあ確かにすごかったな。しかもあのあとの……なんだ。オーラを蹴ってたよな?」
「ああ。サッカーボールみたいにな。掌から生み出したオーラが球状になって浮かせてそれを蹴り飛ばす。しかも威力は大砲でも撃ったのかってレベルだった。スピードもおかしかったしな」
キルアは冷静に分析する。未だ念の知識は少ないが、暗殺一家ゾルディック家の生まれ。殺し屋としての経験からあの速さと念の球──念弾の強さはキルアに強い恐れを抱かせるのに十分なものだった。
「ならやっぱスピカの勝ちか?」
「……わからねぇ。スピカの動きもヤバかったけどヒソカはヒソカで嫌なオーラを感じる」
だから見に来た。あの時感じたヒソカの嫌なオーラ。底しれない実力。それを測るためにもこの試合は見逃せない。レオリオも同様に己の師匠がこれから戦うところを固唾をのんで見守っていた。
「──応援あざま~す♡」
「くく、余裕そうだね♦」
──そして中央のフィールドではスピカが周囲の応援してくれる観客に笑顔で手を振る……ファンサービスを行い、対してヒソカはそんなスピカを見てこれから始まる戦いに期待を覗かせていた。
これから始まるのはルール付きとはいえどちらも死にかねない紛れもない死闘。そしてだからこそヒソカは期待し、スピカは自信を表情に見せる。
「そりゃそうでしょー。このフィールドだとあーしのが絶対的に有利だから。そっちもわかってるよね?」
「ああ♣ だからこそ本気で闘らせてもらうよ♥ 君との戦いをできるだけ長く楽しむためにね♠」
「ま、死なないように気をつけなねー。話が出来なくなったらあーしも困るからさ」
「オーケー♥ 気をつけるとするよ……!!」
スピカが携帯をポケットにしまう。言葉とは裏腹に慢心をしていないことを感じ取ったヒソカは不気味な笑みを強くする。互いにオーラを練にして戦闘態勢に入った。互いが互いの力量をある程度感じ取る。
「ポイント&KO制!! 時間無制限一本勝負!! ──始め!!」
「!!」
そして遂に審判の宣言と共に試合が始まる。審判は試合開始と同時にフィールドの外に退避した。巻き込まれることを防ぐために。
だがそれよりも早く両者は動いていた。しかも正反対に。ヒソカは前へ。スピカは後ろに。
「そんじゃ景気付けに一発。あんたにはそんなに手加減いらないよねー?」
(来る……!!)
ヒソカは半ば予想していた行動に喜びながらも正しく警戒する。スピカが試合開始と同時に掌から念弾を生み出し、後方へ軽く放る。そして同時に背後に跳躍し、くるりと回転しながら脚を振り被るところを見た。
スピカの初手は念弾──それをオーラで強化した足で思い切り蹴り飛ばす。
「あの技は!?」
「まただ……!! でもこの間より……!!」
観客席にいるレオリオ。そしてキルアも同じく視認して気づく。カストロ戦で見せたオーラを蹴る技。それが、この間よりも強いオーラを込められて放たれたことを。
(さーて。どんくらいかな~)
凄まじい速度でヒソカへと向かっていく念弾。その速度は通常念能力者が放つ念弾やサッカーでのシュートとはレベルが違っていた。
並の能力者が受ければオーラでガードしていても骨や内臓、肉体が破壊。あるいは消し飛びかねないような威力。
それをスピカは試すように放ち──そしてヒソカはそれに反応した。
(“硬”……!!)
身体のオーラを特定の部位に集中させる。練の応用技“凝”。それを用いれば相手のオーラを込めた攻撃に対しても防御しきれる可能性が高い。
ヒソカはそれを更に集中させる“硬”で合わせた両手を覆い、受け止めることを試みた。無論、回避する方がいい。
だがこれでどの程度の威力なのか測れるし、その結果によってヒソカも対応がほんの少しだが変わる。大筋は変わらないが、危険度を早めに把握しておくことが重要。
そして何より──受け止めてみたい。その愛がヒソカに防御を選択させ。
「ばーか♡ 吹き飛べ♡」
「!!」
ニマニマとした小馬鹿にするようなスピカの笑み。その言葉通りにヒソカは吹き飛んだ。
「クリティカルヒット&ダウン!! 3ー0!!」
念弾を受け止めたヒソカだが、足の踏ん張りが利かずにフィールドからその外へと転がっていく。やがて動きが止まったところで審判がカウントを告げた。
そしてそれと共にヒソカは己の状態を確認。指は折れていない。
(少しジンジンするけど硬で守れば何とかこの程度の念弾なら防げる♣ だけど全力じゃないね♥ だとしたらやっぱり受けるのは危険か……♠)
ヒソカは己の予測が間違ってなかったことを悦ぶ。初手の念弾によるダメージは回避できた。
だが問題は、これが本気ではないこと。そして、このままだとこれが延々と続いてしまうこと。それともう1つ。
(それに困ったな。審判の判定的にも一々受けてふっ飛ばされてたらすぐに試合が終わってしまう……♦)
この天空闘技場における戦いのルール。ポイント制であり、なおかつその採点基準は審判の手に委ねられること。
おかげでヒソカは実質的なダメージは少ないのにポイントを取られてしまった。これはヒソカを少しだけ困らせる。これなら外でやり合った方がよかったと。
ならやはり……とヒソカは前へ動き出す。それを見てスピカも不敵な笑みをみせた。
「ま、そうなるよねー。そんじゃ鬼ごっこ始めよっか♡」
「ああ……存分に楽しもう♥」
スピカにヒソカ。念能力者としてのセオリーを理解している2人は互いに同じことを思う。
スピカの念弾の威力は明らかに放出系の特徴。放出系の対策は大きく分けて2つ。
((間合いを詰めるか、逆に離すか……!!))
スピカは足にオーラを溜めて距離を詰めようとするヒソカを見て、自分もまたオーラを集中させて距離を取る。念弾をまたしても生み出し、今度は蹴らずに普通に放ちながら。
放出系の能力者が放つ念弾は非常に厄介。他の系統の能力者は遠隔攻撃を行う場合、どうしたって威力も間合いも放出系に比べて低く狭い。
制約をつけて特殊な能力で遠くを攻撃することもできるが放出系はそんなことをわざわざする必要はないのだ。
(攻撃手段は念弾が一番シンプルで幅も広いし強いんよ!!)
そう──ただ念弾で攻撃すればいい。
もちろん威力を高めるにはそれ相応に鍛える必要があるが鍛えさえすれば遠距離から一方的に攻撃できる。相手の堅や凝、あるいは硬で防御できない念弾まで磨き上げれば相手は安全圏から一方的に攻撃してくる能力者相手に回避を選択し続けるしかない。
(念弾を全てガードしていたら身が持たない♣ 念弾はできるだけ回避して距離を詰める……!!)
こちらの攻撃は届かず、相手は一方的に安全圏から攻撃してくる。それを防ぐには念弾が意味をなさないほど距離を詰めるか。逆に放出系の能力すら届かないほど離れるか。
後者は逃げの選択肢。ヒソカには合わない。そもそも限られたフィールドで戦わなければならない天空闘技場でその選択を取ることは不可能!
だからこそ間合いを詰めるしかない。ヒソカはそう思い、続く念弾を回避するとスピカに肉弾戦を仕掛ける。
「舐めんなし」
「!」
ヒソカのインファイト。躊躇なく顔を狙った打撃に、スピカは目を見開きながらそれを左手で打ち払う。
同時にスピカはヒソカに回し蹴りを放つ。ヒソカはそれを僅かに下がって回避。その間にスピカはバク転でフィールドに掌をついて大きく後方へと下がってまた距離を取った。ヒソカは口端を吊り上げる。
「なるほど……♠ 近距離もイケる口か♥」
「あーしは全距離いけるっつの変態ピエロ」
その一連の動き。格闘能力の高さとオーラによる流での攻防。
そして何よりオーラの強さ。互いにまたしても力量を理解する。
だがやはりこのフィールドにおいて有利なのはスピカだった。何しろスピカはインファイトも強い。
「で、どうすんのかな~? このままじゃあーしに勝てないじゃんね~♡」
「確かに困ったね♦ 放出系はボクが最も苦手とするタイプなんだ♥」
「ていうか大体どれにも対応できっから♡」
スピカが放出系能力が最も強いと確信する理由がここにある。念能力の系統において放出系は強化系の隣。ヒソカの属する変化系と同じく強化系の次に肉体の強化幅が高い。
強化系以外の他の系統に近接戦闘で遅れを取らず、強化系相手でも食い下がることができる。
もちろん単純な殴り合いだけでは強化系には勝てない。他の系統もそれぞれ長所が、特異な能力があり慢心は禁物。系統に縛られないような能力もあり、決して油断はできない。
しかし放出系は遠距離から中距離、近距離まで距離を選ばずに戦うことが可能。相手によって幅広く対応を変えて戦うことができる。
系統も能力も分からないまま戦うことの多い念能力者同士の戦闘で取れる選択肢が多いのはそれだけで強い。スピカはそう考えている。
「はいそんじゃまた振り出し♡ シューティングゲーム頑張れ~♡」
「……!!」
スピカがまた遠距離から念弾を生み出し、それを蹴りつける。今度は連続で生み出し、連続で次々と念弾を放った。
凄まじい威力の念弾は1つ1つ、石畳に突き刺さってそれを瓦礫に変える。ヒソカは回避に専念した。それに集中すればヒソカにとって回避することは難しくない。
だが近づくことは難しい。念弾をかいくぐり、スピカに追いつく。ただそれだけのことだが──それが何より困難。
「!!」
「クリーンヒット!! 4ー0!!」
念弾に紛れて反対にスピカが距離を詰めた。回避の体勢を取ったヒソカは突如として死角に踏み込んできたスピカに蹴られる。ギリギリで右手でのガードに成功したが吹き飛び、スピカ贔屓の審判によってヒソカはカウントを取られた。
(速い……!! だけどガードした感じ、パワーはそれほどじゃない♠ 近接戦で致命的なダメージをもらうことはない♣ 動きは速いが、やはりやるなら近距離か……♣)
ヒソカは再び距離を取られながら、しかし右手で念を込めたトランプを複数枚投げてスピカを攻撃。スピカの念弾に敵うべくもないが、これも遠距離攻撃。そして牽制にはなり得る。
(トランプで攻撃……このオーラじゃ普通に防御すればあーしにダメージは与えられないしそもそも回避すればいいじゃんね。牽制……? ……! いや──)
スピカはトランプでの攻撃が自身の脅威になり得ないと判断すると狙いを考える。そして凝を行おうとして──少し遅れて気づいた。
(オーラがあーしにくっついて……!!)
「──“
スピカの左足にヒソカの右手から伸びたオーラがくっついている。まるでガムのように。
そしてヒソカが右手で力を込めて引き寄せる。それだけでなく縮むように能力──“
「っ!」
「まずは1回タッチ♥」
「!! クリティカルヒットォ!! 4ー2!!」
引き寄せられたスピカに、ヒソカが左腕で鳩尾を狙った打撃。スピカはそれを咄嗟にオーラで集めてガードし、防御に成功したが──しかし攻撃を食らってしまったことに違いはなく審判によって得点がヒソカに与えられる。
しかもその上でまだスピカはヒソカの近くにいた。スピカはすぐに気づく。ほんの少し遅かったが引き寄せられた直後に気づいたのだ。
「どうだい? ボクの能力は♠ その様子だとすぐに気づいたみたいだね♣」
「オーラが伸びて……くっついて縮む。あーね。中々エロい能力じゃん」
「“
ヒソカの“伸縮自在の愛”。オーラをガムとゴム、両方の性質を持つものに変化させる発。
それによってヒソカはスピカが念弾に紛れて左足での蹴りを行った時に右手でガードし、オーラをくっつけた。
そしてその後にスピカを引き寄せた。その結果をスピカもまた理解する。
「メンディ~~。凝を使いながら戦えってこと?」
「それはキミの自由さ♠」
ヒソカは隠で“
だがそうなると身体を纏うオーラの攻防力は分散される。流によって近接戦で殴り合う時まで見る必要はないかもしれないが、離れればいつでもヒソカは伸縮自在の愛を飛ばせる。
もっともそれはスピカの念弾に比べればそれほど射程は長くはない。だが足にオーラを込めたり念弾を作ることを考えるとスピカが言うようにかなり面倒であることに違いはなかった。
「近くで殴り合おうか♥」
「嫌なんだけどな~」
そして近距離でのヒソカのラッシュ。打撃の連続にスピカはガードを迫られる。
どうにか防御に成功し続けている。それが意味するのはヒソカが有利とはいえ近接戦においてもスピカはやれるということ。ヒソカにとっては嬉しいことのこの上ない。拳を掌でガードされてそれを強引に弾きながら思う。
(? 今のは……?)
そしてヒソカが違和感を感じた時。反対にスピカはつまらなそうな顔をしていた。思案顔、とも言える。普段の相手を小馬鹿にするような表情は鳴りを潜め、目を細めて何かを考えていた。
「しゃーないかー」
そして一言。それを聞いたヒソカは不可思議な現象を見ることになる。
「“
「!?」
ヒソカの視界が一瞬にして切り替わる。否──正確には、少し前へと進んでいた。
(……! 後ろ……!!)
「せいか~い♡ でも手遅れ♡」
気づいた時には遅い。ヒソカは背後から飛んでくる念弾を、振り返りながら右手でガードした。流が間に合わない。硬でも凝でもなく咄嗟に全身にオーラを包む堅を行いながら少しでもオーラを集める。
「!!」
「く、クリティカルヒット&ダウン!! 7ー2!!」
だが、ヒソカは吹き飛んだ。ヒソカの右腕から嫌な音が鳴る。
壁まで吹き飛び、審判によるコールを耳にしながら自らのダメージ量を素早く把握。右腕が完全に折れている。筋肉も断裂。使い物にならない。
しかしヒソカの思考はそんなところにはない。
「……瞬間移動かな……?」
「どうかな~? 知りたい? 知りたいなら頑張って考察してみてね~♡ あと3点だけど♡」
スピカの行った能力の考察。腕の痛みを忘れてすぐの放出系の代名詞である瞬間移動の能力に思い当たるヒソカ。
対するスピカは攻撃が致命的なダメージを与えたことに得意気になる。右手の掌を内側に向けながら口元に当てて笑っていた。
「さーて、どうする? 降参する~? 降参するなら認めなくもないよ~♡」
「……そんな勿体ないことしないよ♠ むしろ興奮してきたしここからが本番かな♥」
「まーた大きくしてるの変態すぎない? って本番? こんなところで本番はちょっと……」
「そっちの本番じゃない♦」
煽るスピカに笑うヒソカ。互いに思うところは違う。スピカは如何にヒソカを翻弄するか。そしてヒソカは如何にスピカをわからせるか──それを考えていた。
スピカの豆知識;スピカは足が早い。ただし格闘能力やパワーはヒソカが上
・『交換する悲嘆の印(ぴえん)』
念を込めて掌で触れることで物体にぴえんシール(泣き顔のシール)を付けることができる。シールは全部で10枚。シールの大きさは最小でコインほどでそれ以下の大きさの物体にはつけられない。ぴえんシールを付けたもの同士やスピカを入れ替える。入れ替えられる距離はスピカ本人から半径20メートル以内。その範囲内ならシールを持つ対象を好きに入れ替えられる。一度入れ替えるとシールは消えるがスピカ自身にシールを貼る必要はなく自分の位置を入れ替えた場合、入れ替えた方のシールだけが消失する。またスピカ本人から20メートル以上距離を取ればシールは消失する。貼り付けたシールの箇所をスピカは正確に感知できる。
制約
①入れ替えの能力を使う時、他のシールの能力は使えない。
②スピカの半径20メートル以内にいなければ入れ替えはできず、20メートルを超えるとシールは消失する。
③入れ替えの能力を使う際、スピカは両足を地面や床につけていなければならない。走りながらや空中での使用は不可。
今回はここまで。戦闘描写長引いたせいで真面目ですまん。次回はまだバトル回です。お楽しみに。
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