ジョジョの奇妙な冒険part10 CLOCK WORK VALUE 作:アマのしゃちほこ
ガラクタが積み上がる森の奥。
錆びた鉄板が何層にも折り重なり、
千切れた配線が木の根のように地面を這い、
砕けた機械の残骸が、まるで墓標のように突き刺さっている。
風が吹くたびに、どこかで金属同士が擦れ合い、
キィィ……と嫌な音を立てた。
その中心で――
ジョシュア・ジョバーナは立っていた。
「……なんなんだよ、これ……」
拳を握る。
その瞬間、背後の空気が歪む。
油のように揺らめいた“それ”が、ゆっくりと形を成す。
丸い形をした奇妙な像。
二つある左腕。
そして無機質な穴が、こちらをなぞる。
そして――
自分と同じように拳を握った。
「さっきから……ついてきやがる……」
ジョシュアは眉をひそめる。
そのまま腕を振る。
ドンッ!!
鈍い衝撃音。
拳の軌道に合わせて、背後の像も拳を振り抜く。
その余波だけで、目の前の鉄の塊が弾き飛ばされ、奥のガラクタの山に突き刺さった。
金属がぶつかり合う甲高い音が、森の奥へと響いていく。
「……!」
ジョシュアは息を呑む。
手の感触は、ただ振っただけ。
だが結果は明らかにおかしい。
「……つよすぎる……」
低く呟く。
昨日までは見えなかった。
あのチンピラの“見えない攻撃”。
理不尽に殴られ、何もできなかったあの感覚。
だが今は違う。
「……あれが……見えてたのか……」
一歩、踏み出す。
足が地面を踏みしめた、その瞬間。
「……っ!?」
身体が“止まらない”。
踏み出した足が、そのまま前へ滑る。
砂利と鉄片を巻き込みながら、ズズズッと進む。
止めようとしても、膝も腰も言うことをきかない。
「おい……!」
無理やり体重をかける。
靴底が地面を削り、ガリガリと音を立てる。
ようやく止まる。
「なんだよ……これ……」
息が荒くなる。
胸が上下し、肺が焼けるように熱い。
「俺の意思じゃ……止まれねえ……?」
しばらくの沈黙。
遠くで、鉄片が風に揺れてカランと鳴った。
ジョシュアは近くに転がっていた鉄パイプを、ネジが刺さった手の痛みも気にせず拾う。
冷たく、重い感触。
「……試すか」
軽く投げる。
カラン、と落ちるはずだった。
だが――
止まらない。
パイプは空を勢いよく飛ぶ。
最初は軽かった勢いが徐々に増し、進み続ける。
鳥にぶつかってもなお勢いを殺さず――ようやく、奥に見えるビルにぶつかって止まった。
「……はは……」
乾いた笑いが漏れる。
「止まんねえのかよ……」
拳を握る。
背後の像も、ぴたりと同じ動きをなぞる。
「……“動いたら”終わりってことか……」
ゆっくりと口角が上がる。
「いいじゃねえか……」
もう一度、踏み出す。
今度は止めようとしない。
「止まらねえなら……そのまま行くだけだろ」
その時。
ガラクタの奥から足音。
鉄を踏みしめる乾いた音。
「見つけたぜェ……」
ジョシュアの目が細くなる。
「……あぁ?」
錆びた板を蹴り上げながら現れたのは――昨日のチンピラ。
ガルド・マルケス。
顔にはまだ腫れが残り、乾いた血がこびりついている。
「……てめえ……」
低く唸るような声。
「よくもやってくれたなァ……!」
その後ろから、もう一人。
コツ、コツ、と規則正しい足音。
無駄のない歩幅。
周囲のガラクタを一切踏み崩さない、正確な足運び。
細身の男。
鋭く冷えた視線が、ジョシュアを捉える。
「……そいつか」
男はガルドの隣に立つ。
ヴァルク・アーベント。
「こいつだ……!」
ガルドが叫ぶ。
「俺をぶっ飛ばしたクソ野郎だ!」
ヴァルクはジョシュアを一瞥する。
ほんの一瞬。
値踏みするような視線。
「……へえ」
次の瞬間――
ドゴッ!!
鈍い衝撃音。
「ぐぁっ!?」
ガルドの顔面に拳がめり込む。
そのまま体ごと吹き飛び、ガラクタに叩きつけられる。
「パンピーに負けてんじゃねえよ」
冷たい声。
感情が一切乗っていない。
「……っ、すまねえ……でもよ……!」
ガルドは血を吐きながら立ち上がる。
膝がわずかに震えている。
「こいつ……なんかおかしいんだよ……!」
ヴァルクは視線をジョシュアに戻す。
「……で?」
「黒い……変な部品持っててよ……」
その言葉で、ヴァルクの目がわずかに細くなる。
「……黒い?」
「矢みてえな形で……」
一瞬の沈黙。
風が止まったように空気が重くなる。
ヴァルクの纏う空気が変わる。
「……ほう」
ゆっくりと歩き出す。
鉄片を踏んでも、音がほとんどしない。
「それは……ちょっと面白いな」
ジョシュアはポケットに手を入れる。
黒い矢の感触が、はっきりと指に触れる。
冷たい。
重い。
「……やっぱ狙いはそれかよ」
「いや」
ヴァルクは首を振る。
「それもあるが……」
視線が鋭くなる。
まるで刃物のように。
「お前自身にも興味がある」
ガルドが前に出る。
足元の鉄屑を蹴散らしながら。
「今度は逃がさねえぞ……!」
拳を握る。
背後に、あの“像”が現れる。
空気が重く歪む。
「ぶっ潰してやる!!」
ヴァルクは一歩下がる。
影の中へと身を引く。
「ガルド」
「先に行け」
「……あぁ!」
ガルドが突っ込む。
地面を蹴るたびに、鉄片が弾け飛ぶ。
拳が振り下ろされる。
ジョシュアは動く。
だが――
「……?」
同じ場所に戻っている。
「……は?」
一歩踏み出す。
また同じ位置。
足元の削れた跡すら変わらない。
「……なんだこれ……?」
ガルドの拳が迫る。
ドゴッ!!
衝撃。
「ぐっ……!」
体が吹き飛ぶ。
背中からガラクタに叩きつけられ、鉄板が歪む。
「どうしたァ!?」
ガルドが笑う。
「さっきの威勢はどこいったァ!!」
ジョシュアは歯を食いしばる。
立ち上がる。
(動いた……確かに動いた……)
もう一度、踏み出す。
戻る。
「……チッ!」
その瞬間――
ドゴッ!!
横から拳がめり込む。
「がっ……!」
地面を転がる。
砂と鉄屑が口に入る。
「だから言ってんだろォ!!」
ガルドが近づいてくる。
「動けてねえんだよお前は!!」
蹴りが入る。
ドゴッ!!
「ぐっ……!」
さらにもう一発。
ドゴォッ!!
体が浮く。
肺の空気が一気に抜ける。
「……っ……!」
声にならない。
それでも、ジョシュアは元の位置に戻ってしまう。
前に歩く。
「……今の……」
息が乱れる。
視界が揺れる。
(戻されてる……)
また一歩踏み出す。
戻る。
「……!」
ガルドが笑う。
「何回やっても同じだァ!!」
突っ込んでくる。
拳。
ドゴッ!!
「がっ!」
もう一発。
ドゴォッ!!
さらに――
ドドドドドッ!!
連続で叩き込まれる。
体が揺れる。
骨が軋む。
それでも――
倒れない。
「……っ……!」
ガルドの動きが一瞬止まる。
「……なんでこれだけ殴ってやったのに何で気絶しねえ?」
ジョシュアはゆっくりと顔を上げる。
血が額から流れ、視界に入る。
「……動けてる」
低く呟く。
「ただ――」
拳を握る。
背後の像が現れる。
「戻されてるだけだ」
ヴァルクがわずかに笑う。
「ほう……」
「理解が早いな」
ガルドが苛立つ。
「うるせえ!!」
再び突っ込む。
ジョシュアは踏み出す。
止まらない一歩。
戻る。
「……チッ」
ガルドの拳が迫る。
ジョシュアは、あえて前に出る。
ぶつかる。
ドゴッ!!
「がっ!」
吹き飛ぶ。
地面に叩きつけられる。
それでも――
笑う。
「……いいぜ」
ガルドが顔を歪める。
「何笑ってやがる……!」
ジョシュアはゆっくり立ち上がる。
「だったら――」
拳を握る。
「止まれねえまま……ぶち壊すだけだ」
ガルドの拳が迫る。
風を裂く音。
ヴァルクはそれを見ている。
ジョシュアは前へ出る。
止まらない動き。
戻される空間。
ぶつかる二つのルール。
その瞬間――
「……?」
ジョシュアの体が、“戻るよりも前に”わずかに前へ出る。
ほんの数センチ。
だが確かに、“戻りきっていない”。
ヴァルクの目が細くなる。
「……今のは……」
ジョシュアの口元が歪む。
「見えたぜ」
一歩、踏み出す。
戻る。
だが――
わずかに前へズレる。
「てめえの“倒し方”がな」
#to be continue
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ガルド・マルケス
スタンド名『パワートリップ』
パワー A
スピード B
射程距離 C
持続力 D
精密動作性 E
成長性 E
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