ジョジョの奇妙な冒険part10 CLOCK WORK VALUE 作:アマのしゃちほこ
ガラクタ森。
風が吹くたびに、折れた鉄骨がきしむ音を立てる。
地面は錆と砂と油で沈み、歩くだけで足跡が濁る。
その中心に――
ジョシュア・ジョバーナは立っていた。
呼吸は荒い。
だが、目だけは死んでいない。
数メートル先。
ガルド・マルケスが拳を握っている。
そのさらに奥。
瓦礫の影に、ヴァルク・アーベント。
動かない。
ただ見ている。
「……まだ立つか」
ガルドが唸る。
ジョシュアは答えない。
ただ、一歩踏み出す。
その瞬間――
景色が“戻る”。
足が、同じ位置に引き戻される。
まるで最初から動いていなかったかのように。
しかしジョシュアは息を吐く。
「完全に戻れるわけじゃねえ」
拳を握る。
「お前のは“戻しきれねえ”んだよ」
ガルドが叫ぶ。
「ふざけてんじゃあねえよォ!」
ラッシュ。
ドドドドドッ!!
拳が雨のように降る。
ジョシュアは耐える。
一歩。
戻る。
だが距離は、確実に縮む。
ガルドの拳が顔面を打つ。
「がっ……!」
吹き飛ぶ。
だが――立つ。
戻る。
もう一歩。
戻る。
ヴァルクが静かに言う。
「正確だな」
ジョシュアとガルドの距離が縮まっていく。
ジョシュアは笑う。
「じゃあよ」
血を拭う。
「答えは簡単だろ」
足元の鉄屑を蹴る。
ジャラッ、と音が広がる。
空間が乱れる。
ズレが発生する。
ガルドの視線が一瞬ブレる。
「こいつなんでこんなに近くにいるっ……!?」
ジョシュアは踏み込む。
戻る。
だがズレが大きい。
そのまま一気に距離を詰める。
「止まらねえってのはな」
拳を構える。
「“ズレ続けるってことだ”」
ガルドの目の前。
「なにッ――!?」
拳。
ドゴォッ!!
骨の軋む音。
ガルドの体が吹き飛ぶ。
鉄屑の山に叩きつけられ、動かない。
静寂。
ジョシュアは、ゆっくりヴァルクを見る。
足音が変わる。
ジャリ……
ジャリ……
ヴァルクは一歩前へ歩く。
ジョシュアとの距離が狭まる。
「面白い。だが……」
ジョシュアは踏み出す。
戻る。
だが――
今度はズレない。
「……っ」
ジョシュアの目が細くなる。
「ズレが小さくなっていやがる」
ヴァルクが初めて動く。
「ここから先は別だ」
ジョシュアは息を吐く。
「そうかよ」
ヴァルクがもう一歩前へ出る。
今度は“完全に戻る”。
同じ位置。
完全固定。
ヴァルクが言う。
「何がどういうことか理解していないようだな」
「お前に敬意を称してあえて言おう。俺の能力『リピートサイン』の射程は15メートルだ。この15メートルの中に入ると発動する」
ヴァルクは淡々と続ける。
「お前の言ったことは間違いではない。対象を物理的に戻すことができる。ただ、戻った時にズレが出る」
「だが、近づけば別だ。近づくほどズレはなくなる。戻す間隔も短くできる」
ヴァルクはさらに近づく。
ジョシュアとの距離、およそ3メートル。
「つまり――」
ジョシュアの足が止まる。
「……!?」
踏み出せない。
体が前へ出ない。
「動けねえ……?!」
ヴァルクは静かに言った。
「お前はもう、ここから先へ動けることはない」
ヴァルクが拳を振るう。
ドゴッ!!
ガードできないジョシュアに直撃する。
視界が揺れる。
「俺の能力が遠距離型だからって、素の力が弱いとでも思ったか」
ヴァルクは殴り続ける。
ドゴッ!!
ドゴォッ!!
ジョシュアの体が揺れる。
吐きそうになる。
だが――戻る。
ダメージだけが残り、体勢だけが巻き戻る。
「ぐっ……!」
ヴァルクは冷たく見下ろす。
「終わりだ」
その時。
ジョシュアの口元がわずかに歪む。
「動けないなら……動けないで」
血を吐きながら笑う。
「俺にも考えがあるんだぜぇ」
「ほざけ」
ジョシュアが息を吸う。
胸が大きく膨らむ。
「俺は――ッ!」
空気が震える。
「お前の耳が破れるまで叫び続けるぜェーーーーッ!!」
「お前の大声ぐらいで鼓膜は破れない!」
だが――
ジョシュアは叫んだ。
最初はただの大声に見えた。
しかし次第に、音量が異常な勢いで膨れ上がっていく。
「うるさすぎるーーッ!?」
空気そのものが震える。
鉄板がビリビリと鳴動する。
ジョシュアの“止まらない”エネルギーが、声にも乗っていた。
さらに声を張り上げる。
終わらない。
止まらない。
叫び続ける。
――ブチッ。
「ぐおおおおォォ!! 耳がァァ!!」
ヴァルクの鼓膜が破れる。
その瞬間。
ほんの一瞬だけ――能力の精度が乱れた。
戻しが途切れる。
わずかな空白。
だが、ジョシュアには十分だった。
「ゴラァァァッ!!」
拳が突き上がる。
ヴァルクの体が宙に浮く。
「ゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラァッッッ!!」
ラッシュ。
止まらない連打。
ヴァルクの体が吹き飛び、ガラクタの山へ叩き込まれる。
静寂。
ジョシュアは肩で息をしていた。
だが――止まらない。
そのまま歩く。
前へ。
ヴァルクの方へ。
ヴァルクはズタボロの体を仰向けに直す。
そして薄く笑った。
「なるほどな……」
血を吐きながら、呟く。
「“前に進む”ってのは……」
「そういう意味か」
ジョシュアは答えない。
ただ、前へ進む。
遠くのビル。
その屋上に、男がひとり立っていた。
ジョシュアを見下ろしている。
「あいつとなら……」
風が吹く。
ガラクタ森の鉄屑が、カラカラと鳴った。
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#■to be continue
ヴァルク・アーベント
スタンド名『リピートサイン』
パワー D
スピード D
射程距離 A
持続力 B
精密動作性 A
成長性 C
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