ジョジョの奇妙な冒険part10 CLOCK WORK VALUE   作:アマのしゃちほこ

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つまり…その…魅力がないのが魅力!


第3話『止まれない理由(ワケ)②』

 

ガラクタ森。

 

風が吹くたびに、折れた鉄骨がきしむ音を立てる。

地面は錆と砂と油で沈み、歩くだけで足跡が濁る。

 

その中心に――

 

ジョシュア・ジョバーナは立っていた。

 

呼吸は荒い。

だが、目だけは死んでいない。

 

数メートル先。

 

ガルド・マルケスが拳を握っている。

 

そのさらに奥。

 

瓦礫の影に、ヴァルク・アーベント。

 

動かない。

ただ見ている。

 

「……まだ立つか」

 

ガルドが唸る。

 

ジョシュアは答えない。

 

ただ、一歩踏み出す。

 

その瞬間――

 

景色が“戻る”。

 

足が、同じ位置に引き戻される。

まるで最初から動いていなかったかのように。

 

しかしジョシュアは息を吐く。

 

「完全に戻れるわけじゃねえ」

 

拳を握る。

 

「お前のは“戻しきれねえ”んだよ」

 

ガルドが叫ぶ。

 

「ふざけてんじゃあねえよォ!」

 

ラッシュ。

 

ドドドドドッ!!

 

拳が雨のように降る。

 

ジョシュアは耐える。

 

一歩。

 

戻る。

 

だが距離は、確実に縮む。

 

ガルドの拳が顔面を打つ。

 

「がっ……!」

 

吹き飛ぶ。

 

だが――立つ。

 

戻る。

 

もう一歩。

 

戻る。

 

ヴァルクが静かに言う。

 

「正確だな」

 

ジョシュアとガルドの距離が縮まっていく。

 

ジョシュアは笑う。

 

「じゃあよ」

 

血を拭う。

 

「答えは簡単だろ」

 

足元の鉄屑を蹴る。

 

ジャラッ、と音が広がる。

 

空間が乱れる。

 

ズレが発生する。

 

ガルドの視線が一瞬ブレる。

 

「こいつなんでこんなに近くにいるっ……!?」

 

ジョシュアは踏み込む。

 

戻る。

 

だがズレが大きい。

 

そのまま一気に距離を詰める。

 

「止まらねえってのはな」

 

拳を構える。

 

「“ズレ続けるってことだ”」

 

ガルドの目の前。

 

「なにッ――!?」

 

拳。

 

ドゴォッ!!

 

骨の軋む音。

 

ガルドの体が吹き飛ぶ。

 

鉄屑の山に叩きつけられ、動かない。

 

静寂。

 

ジョシュアは、ゆっくりヴァルクを見る。

 

足音が変わる。

 

ジャリ……

 

ジャリ……

 

ヴァルクは一歩前へ歩く。

ジョシュアとの距離が狭まる。

 

「面白い。だが……」

 

ジョシュアは踏み出す。

 

戻る。

 

だが――

 

今度はズレない。

 

「……っ」

 

ジョシュアの目が細くなる。

 

「ズレが小さくなっていやがる」

 

ヴァルクが初めて動く。

 

「ここから先は別だ」

 

ジョシュアは息を吐く。

 

「そうかよ」

 

ヴァルクがもう一歩前へ出る。

 

今度は“完全に戻る”。

 

同じ位置。

 

完全固定。

 

ヴァルクが言う。

 

「何がどういうことか理解していないようだな」

 

「お前に敬意を称してあえて言おう。俺の能力『リピートサイン』の射程は15メートルだ。この15メートルの中に入ると発動する」

 

ヴァルクは淡々と続ける。

 

「お前の言ったことは間違いではない。対象を物理的に戻すことができる。ただ、戻った時にズレが出る」

 

「だが、近づけば別だ。近づくほどズレはなくなる。戻す間隔も短くできる」

 

ヴァルクはさらに近づく。

 

ジョシュアとの距離、およそ3メートル。

 

「つまり――」

 

ジョシュアの足が止まる。

 

「……!?」

 

踏み出せない。

 

体が前へ出ない。

 

「動けねえ……?!」

 

ヴァルクは静かに言った。

 

「お前はもう、ここから先へ動けることはない」

 

ヴァルクが拳を振るう。

 

ドゴッ!!

 

ガードできないジョシュアに直撃する。

 

視界が揺れる。

 

「俺の能力が遠距離型だからって、素の力が弱いとでも思ったか」

 

ヴァルクは殴り続ける。

 

ドゴッ!!

 

ドゴォッ!!

 

ジョシュアの体が揺れる。

 

吐きそうになる。

 

だが――戻る。

 

ダメージだけが残り、体勢だけが巻き戻る。

 

「ぐっ……!」

 

ヴァルクは冷たく見下ろす。

 

「終わりだ」

 

その時。

 

ジョシュアの口元がわずかに歪む。

 

「動けないなら……動けないで」

 

血を吐きながら笑う。

 

「俺にも考えがあるんだぜぇ」

 

「ほざけ」

 

ジョシュアが息を吸う。

 

胸が大きく膨らむ。

 

「俺は――ッ!」

 

空気が震える。

 

「お前の耳が破れるまで叫び続けるぜェーーーーッ!!」

 

「お前の大声ぐらいで鼓膜は破れない!」

 

だが――

 

ジョシュアは叫んだ。

 

最初はただの大声に見えた。

 

しかし次第に、音量が異常な勢いで膨れ上がっていく。

 

「うるさすぎるーーッ!?」

 

空気そのものが震える。

 

鉄板がビリビリと鳴動する。

 

ジョシュアの“止まらない”エネルギーが、声にも乗っていた。

 

さらに声を張り上げる。

 

終わらない。

 

止まらない。

 

叫び続ける。

 

――ブチッ。

 

「ぐおおおおォォ!! 耳がァァ!!」

 

ヴァルクの鼓膜が破れる。

 

その瞬間。

 

ほんの一瞬だけ――能力の精度が乱れた。

 

戻しが途切れる。

 

わずかな空白。

 

だが、ジョシュアには十分だった。

 

「ゴラァァァッ!!」

 

拳が突き上がる。

 

ヴァルクの体が宙に浮く。

 

「ゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラァッッッ!!」

 

ラッシュ。

 

止まらない連打。

 

ヴァルクの体が吹き飛び、ガラクタの山へ叩き込まれる。

 

静寂。

 

ジョシュアは肩で息をしていた。

 

だが――止まらない。

 

そのまま歩く。

 

前へ。

 

ヴァルクの方へ。

 

ヴァルクはズタボロの体を仰向けに直す。

 

そして薄く笑った。

 

「なるほどな……」

 

血を吐きながら、呟く。

 

「“前に進む”ってのは……」

 

「そういう意味か」

 

ジョシュアは答えない。

 

ただ、前へ進む。

 

遠くのビル。

 

その屋上に、男がひとり立っていた。

 

ジョシュアを見下ろしている。

 

「あいつとなら……」

 

風が吹く。

 

ガラクタ森の鉄屑が、カラカラと鳴った。

 

 

---

 

#■to be continue

 

ヴァルク・アーベント

スタンド名『リピートサイン』

 

パワー   D

スピード  D

射程距離  A

持続力   B

精密動作性 A

成長性   C

 




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