ジョジョの奇妙な冒険part10 CLOCK WORK VALUE   作:アマのしゃちほこ

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新キャラ登場!


第4話『道を切り開くための罠①』

 

ガラクタ森。

 

風が吹くたびに、折れた鉄骨が軋む。

 

キィ……ギギ……

 

耳障りな音が、空気の中に溶けていく。

 

地面は、砂と錆と油、そしてチンピラどもの血で黒く濁っている。

 

踏みしめるたびに、靴底がじわりと沈む。

 

その中心で――ジョシュア・ジョバーナは立っていた。

 

肩で息をしている。

 

胸が上下し、吐き出す息は熱い。

 

その足元。

 

ヴァルク・アーベントが倒れている。

 

身体は歪み、血が地面に広がっている。

 

だが、かすかに呼吸はある。

 

ジョシュアは、それを見下ろしていた。

 

さっきまでの戦い。

 

止まらない体。

戻される空間。

ズレる位置。

 

全部がまだ、体の中に残っている。

 

その時。

 

「後ろを向くんだ」

 

後ろから声が聞こえた。

 

ジョシュアの目が細くなる。

 

ゆっくり振り返る。

 

そこに――男が立っていた。

 

錆びた鉄骨の上。

 

不安定な足場のはずなのに、まるで揺れていない。

 

風にコートが揺れる。

 

視線だけが、まっすぐこちらを見ている。

 

「全部、見てた」

 

淡々とした声。

 

ジョシュアは眉をひそめる。

 

「……誰だ、お前」

 

男は少しだけ口角を上げる。

 

「俺は、カイ……カイ・ツキシマだ」

 

一歩、降りる。

 

音が、ほとんどしない。

 

「お前はジョシュアだったな」

 

ジョシュアは警戒したまま睨む。

 

「……なんで知ってるんだ」

 

「戦いながら名前呼ばれてただろ」

 

当たり前のように言う。

 

一拍。

 

カイは視線を細める。

 

「なあ、ジョシュア」

 

「スタンドが出たのはいつだ?」

 

ジョシュアの眉が動く。

 

「……スタンド?」

 

「後ろに出てたやつだ」

 

ジョシュアは一瞬考える。

 

「……昨日だ」

 

「気づいたら出てた」

 

カイは小さく息を吐く。

 

「そうか」

 

ジョシュアは苛立ったように言う。

 

「さっきから何なんだよ」

 

「スタンドってなんなんだよ」

 

カイはジョシュアを見る。

 

「教えてやろう」

 

沈黙。

 

風の音だけが流れる。

 

「……スタンドっていうのは、精神が実体化したものだ」

 

短く言う。

 

ジョシュアは眉をひそめる。

 

「……なんだそれ」

 

カイは続ける。

 

「スタンドに目覚める前に黄金の矢を刺しただろう。それを使うことで、スタンドという超パワーを手にすることができる」

 

「……黄金の矢? 黒い矢のことか?」

 

カイは頭を軽く掻く。

 

「………? まあいい……」

 

一歩、近づく。

 

「お前が戦ってた時に後ろに出てた“あの人型”」

 

「あれがスタンドだ」

 

ジョシュアは黙る。

 

思い出す。

 

自分の動きに合わせて動く影。

 

拳を振ると、同じように振るあれ。

 

「……あれか」

 

カイは頷く。

 

「そうだ」

 

少し間を置いて――

 

「名前をつけるとしたら……」

 

ジョシュアを見る。

 

「『ドント・ストップ』だな」

 

沈黙……

 

ジョシュアの顔が歪む。

 

「……安直すぎねえか?」

 

カイは肩をすくめる。

 

「凄くイカしてるだろう」

 

ジョシュアはキョトンとする。

 

「……まあ、いい」

 

そしてカイを見る。

 

「お前もその……スタンドってやつ持ってんのか」

 

カイは答えず、すっと手を上げる。

 

その瞬間。

 

空気が、わずかに歪む。

 

背後に――人型の影が現れる。

 

滑らかな線。

 

均整の取れた体。

 

どこか“重さ”を感じさせる存在。

 

「これが俺のスタンド」

 

「『グラビティ・スケッチ』だ」

 

ジョシュアの目が動く。

 

「……こいつは、何ができるんだ」

 

カイは即答する。

 

「教えられない」

 

「は?」

 

「戦いになるかもしれない相手に能力は教えない」

 

淡々とした答え。

 

ジョシュアは少しだけ笑う。

 

「ケチくせえな」

 

カイは無視する。

 

そして、少しだけ声を落とす。

 

「それより」

 

ジョシュアをまっすぐ見る。

 

「お前、自分のスタンドを使いこなせてないだろ」

 

一瞬の沈黙。

 

ジョシュアの眉が吊り上がる。

 

「……別にいいだろ」

 

「お前には関係ねえ」

 

少し間を置いて、

 

「あと、名前で呼ぶな」

 

空気が少しだけ張る。

 

だがカイは引かない。

 

「いや、良くない」

 

一歩、近づく。

 

「ジョシュアは強くならないといけない」

 

ジョシュアの目が細くなる。

 

「ジョシュア」

 

わざと、名前を呼ぶ。

 

「お前も――上に行きたいんだろ」

 

その一言。

 

空気が変わる。

 

ジョシュアの喉がわずかに動く。

 

「……だったら」

 

カイは静かに言う。

 

「その方法を、俺は知ってる」

 

沈黙。

 

風が止まる。

 

「……教えろよ」

 

低い声。

 

カイは指を一本、立てる。

 

「いいだろう」

 

そして――

 

「ただし条件がある」

 

その指を前へ向ける。

 

ジョシュアの視線が動く。

 

鉄屑の山の向こう。

 

ボロボロの小屋。

 

壁は崩れかけ、屋根は傾き、今にも潰れそうな建物。

 

「……小屋がどうした」

 

カイは言う。

 

「ここから、あそこまで」

 

「能力を使って行け」

 

ジョシュアは鼻で笑う。

 

「そんぐらい、やってやるよ」

 

カイの顔が一瞬、不機嫌になる。

 

「話を聞け」

 

空気がピリッと張る。

 

「能力を使っていいのは“一回”だけだ」

 

「一回のみ」

 

「一回だけ」

 

「一回しか使うな」

 

一歩、近づく。

 

「その一回で辿り着けなかったら――」

 

「最初からやり直しだ」

 

沈黙。

 

ジョシュアは、小屋を見る。

 

遠い。

 

足場は不安定。

 

真っ直ぐには行けない。

 

ゴクリ。

 

喉が鳴る。

 

「……小屋まで、だったよな」

 

カイは頷く。

 

ジョシュアは笑う。

 

「いいぜ」

 

「やってやる」

 

ジョシュアは一歩、踏み出す。

 

体を前に倒す。

 

走る。

 

ザリッ!!

 

足が地面を蹴る。

 

加速。

 

「おおっ……!」

 

スピードが乗る。

 

だが――

 

止まらない。

 

「……っ!?」

 

さらに加速する。

 

地面が流れる。

 

視界がぶれる。

 

「チョッ、止まれ……!」

 

止まらない。

 

「止まれ止まれ止まれ――!!」

 

小屋が迫る。

 

「ちょおおおッッッとおおーーッ! ド、ド、ド、ドーントストーープ!!!」

 

ドゴォォォン!!!

 

木材が砕ける。

 

壁が吹き飛ぶ。

 

屋根が歪む。

 

小屋に――“人型の穴”が空く。

 

砂埃が舞う。

 

静寂。

 

ジョシュアの姿は――見えない。

 

#■to be continue

 




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