ジョジョの奇妙な冒険part10 CLOCK WORK VALUE   作:アマのしゃちほこ

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こたつはいい加減しまいましょう


第6話『白い入口』

 

第6話『白い入口』

 

夕暮れ。

 

赤黒い空が、ガラクタ森の上に広がっている。

 

折れた鉄骨の影が長く伸び、吹き抜ける風が、キィ……と不快な音を鳴らした。

 

その鉄屑の山のふもとで――

 

ジョシュア・ジョバーナは仰向けに倒れていた。

 

その横で、カイ・ツキシマは腕を組んで立っていた。

 

「っつぅ〜〜〜〜〜〜……」

 

鼻血を垂らしたまま、腕で顔を押さえる。

 

全身が痛い。

 

特に顔面が痛い。

 

カイは静かに言った。

 

「バリューク・ロック」

 

沈黙。

 

ジョシュアは聞き返す。

 

「……バリューク・ロック?」

 

「ああ」

 

カイは視線を遠くへ向けた。

 

「通称、BR」

 

「この国最大のスタンド競技制度だ」

 

「そこで勝ち続けた者は、価値を得る」

 

「……まあ、おおやけにはされてないがな」

 

そして――

 

一瞬、間。

 

「優勝した者は、最上層へ行ける」

 

風が止まる。

 

ジョシュアの目が見開かれる。

 

「……は?」

 

起き上がる。

 

「マジかよ!!」

 

鼻血を垂らしたまま立ち上がる。

 

「ありがとな!!」

 

「早速行ってみるわ!!」

 

そのまま走り出そうとする。

 

だが。

 

「残念ながら」

 

カイの声。

 

「ジョシュアだけじゃ行けない」

 

ジョシュアが止まる。

 

「……あぁ?」

 

「BRは中層で開かれているんだ」

 

沈黙。

 

ジョシュアの顔が固まった。

 

「は!?!?」

 

「中層って……!」

 

「下層にも入れない俺が行けるわけねえだろ!!」

 

さらに気づく。

 

「ていうか、お前も参加できねえじゃねえか!!」

 

カイは平然としていた。

 

「いや」

 

コートの内側から、細長い金属片を取り出す。

 

鍵だった。

 

ただし普通の鍵じゃない。

 

表面には青白い光が走り、内部で何かが脈打っている。

 

機械そのものみたいな鍵。

 

「俺は上層の鍵を持っている」

 

ジョシュアが目を細める。

 

「……上層?」

 

「上層の鍵は、中層と下層を自由に通れる」

 

「正規のゲートを使わなくてもな」

 

ジョシュアは絶句する。

 

「なんでそんなもん持ってんだよ……」

 

カイは歩き出した。

 

「そんなことはどうでもいい」

 

振り返らない。

 

「歩きながら話すぞ」

 

ジョシュアは少しだけ眉をひそめる。

 

だが、結局その後ろを追った。

 

ガラクタ森を抜ける。

 

折れた鉄板の間を通り、錆びた機械の影を抜ける。

 

ジョシュアが口を開いた。

 

「おい」

 

「そっち、下層ゲートと逆だぞ」

 

カイは歩いたまま答える。

 

「ゲートでは行かない」

 

「この鍵は、下層と中層なら“どこのドア”でも繋げられる」

 

ジョシュアが変な顔をする。

 

「は?」

 

「もちろん限界はある」

 

カイはちらりと、ジョシュアがぶち抜いた小屋を見る。

 

壁に人型の穴が空いたまま、今にも崩れそうになっていた。

 

「ああいうオンボロドアじゃ無理だがな」

 

ジョシュアは顔を逸らした。

 

「……悪かったよ」

 

カイは特に気にしていない様子で歩き続ける。

 

しばらくして。

 

ジョシュアが再び口を開いた。

 

「んで、そのBRってのはいつやるんだよ」

 

「この時期だ」

 

「そろそろ始まってるだろう」

 

「まあ、まだ参加はできるだろうな」

 

ジョシュアの目が少し輝く。

 

「へぇ……」

 

カイが前方を指差した。

 

「あそこから行けそうだ」

 

二人の前に、古びた建物が現れる。

 

壁は汚れ、看板も剥がれかけている。

 

どこにでもある廃ビル。

 

その片隅に、小さな鉄のドアがあった。

 

ジョシュアは眉をひそめる。

 

「……ここか?」

 

ドアを見る。

 

「いやいやいや」

 

「本当にこんなんで中層行けんのか?」

 

「鍵穴すらねえぞ」

 

カイは無視した。

 

静かに鍵をドアへ近づける。

 

すると――

 

ギィィィィィ……

 

ドア全体が発光する。

 

錆びた鉄が、内側から変形していく。

 

機械的なライン。

 

白い光。

 

幾何学模様。

 

まるで、眠っていた機械が起動するみたいに。

 

ジョシュアが息を呑む。

 

「……マジかよ……」

 

カイはドアノブに手をかけた。

 

ゆっくりと開く。

 

その向こう。

 

光。

 

ジョシュアの目が見開かれる。

 

そこには――

 

まるで別世界みたいな景色が広がっていた。

 

巨大な立体広告。

 

ガラス張りの高層ビル。

 

空中を走る輸送レーン。

 

青白い照明。

 

途切れないネオン。

 

人々の服装すら、下層とは全く違う。

 

下層の空気とは別物だった。

 

ジョシュアは思わず呟く。

 

「……ここ……異世界とかじゃねえよな……?」

 

カイは静かに言った。

 

「ここが中層だ」

 

そして前を見る。

 

「これが、俺たちの戦場になる」

 

ジョシュアは完全に固まっていた。

 

目が忙しなく動く。

 

「うわ……」

 

「何だあの店……!」

 

「空飛んでんぞ!?」

 

「なんだこれ、全部光ってる……!」

 

そのまま店に入ろうとする。

 

だが。

 

「そんなもんは後だ!!」

 

カイが首根っこを掴む。

 

「今は先に行くぞ!」

 

ジョシュアは不満そうな顔をした。

 

「ちょっとぐらいいいだろ!!」

 

「ダメだ」

 

「ケチ!」

 

歩きながらも、ジョシュアは周囲をキョロキョロ見続ける。

 

動く広告。

 

自動配送ドローン。

 

巨大モニター。

 

透明ディスプレイ。

 

見るもの全部が新しい。

 

そのたびにカイが引き戻す。

 

「うおっ!?」

 

「そっちは違う!」

 

「何なんだよお前は親か!!」

 

「前を見ろ!」

 

そんなやり取りを繰り返しながら、二人は街を進む。

 

そして――

 

カイが止まった。

 

ジョシュアも足を止める。

 

目の前。

 

ビル群の中に紛れて、“それ”は建っていた。

 

真っ白だった。

 

周囲の建物とは明らかに違う。

 

汚れ一つない。

 

無機質な白。

 

窓すら少ない。

 

清潔すぎて、逆に異様だった。

 

そして壁面には、巨大な文字。

 

【VALUEC ROCK】

 

ジョシュアはその建物を見上げる。

 

息を呑む。

 

カイが静かに言った。

 

「――ここが、BRの入口だ」

 

#■to be continue

 




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