ジョジョの奇妙な冒険part10 CLOCK WORK VALUE   作:アマのしゃちほこ

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ありんすでござんす…チキショー!


第7話『危険で楽しい世界その①』

 

白い建物。

 

周囲のネオンとは異質な、無機質すぎる白。

 

汚れ一つない壁面が、夜の街の光を鈍く反射している。

 

その入口へ向かって、カイ・ツキシマは歩いていた。

 

ジョシュア・ジョバーナも後ろをついていく。

 

建物を見上げながら、ジョシュアは顔をしかめた。

 

「……なんでここだけこんな白いんだよ」

 

カイは振り返らない。

 

「上層の奴らは白が好きなんだよ」

 

「へぇ……」

 

ジョシュアは適当に返す。

 

その時。

 

ウィィン……

 

白い自動ドアが開いた。

 

中も、白だった。

 

床。

壁。

天井。

 

全部が白。

 

光すら白く感じる。

 

あまりにも無機質で、病院より冷たい。

 

その空間の中央にだけ、“黒”があった。

 

黒いロボット。

 

人型。

 

細長いシルエット。

 

顔には何もない。

 

まるで、白い世界に置かれた影みたいだった。

 

カイが顎で示す。

 

「あそこが受付だ」

 

「受付は個別に行われる」

 

そのまま黒いロボットへ歩いていく。

 

ジョシュアは少し眉をひそめる。

 

「個別って……他の部屋は無いぞ」

 

カイがロボットの前に立った。

 

その瞬間。

 

ブツッ……

 

「……は?」

 

カイの姿が消えた。

 

跡形もなく。

 

ジョシュアの目が見開かれる。

 

「おい!!?」

 

周囲を見る。

 

どこにもいない。

 

白い空間。

黒いロボット。

 

それだけ。

 

「……マジかよ」

 

少し引き気味になりながら、ジョシュアはロボットへ近づいた。

 

「……えっと」

 

「受付なんだよな……?」

 

その瞬間。

 

視界が切り替わる。

 

「――ッ!?」

 

気づけば。

 

別の場所に立っていた。

 

だが、雰囲気は同じ。

 

白い壁。

白い床。

白い空間。

 

そして目の前には、黒い“人型”が立っている。

 

今度は、より人間に近かった。

 

そのロボットが口を開く。

 

「大会の受付ですか?」

 

声。

 

もはや、少しだけ機械音が混じった、人間の声だった。

 

ジョシュアは若干引きながら答える。

 

「……は、はい」

 

黒いロボットは淡々と続ける。

 

「お名前は何ですか?」

 

「ジョシュアだ」

 

「フルネームでお答えください」

 

ジョシュアは顔をしかめる。

 

「……ジョシュア・ジョバーナだよ」

 

「年齢はいくつですか?」

 

「……たぶん17だ」

 

「スタンド能力の名前と能力をお答えください」

 

ジョシュアが止まる。

 

「……それも教えなくちゃダメなのか?」

 

沈黙。

 

黒いロボットは動かない。

 

「…………」

 

「…………分かったよ」

 

ジョシュアは頭を掻く。

 

「能力の名前は『ドント・ストップ』」

 

「能力は――」

 

少し考える。

 

「一度始めたことが終わらなくなるスタンドだ」

 

ロボットは数秒沈黙した。

 

そして。

 

「最後に、この薬を服用してください」

 

小さな白いカプセルが差し出される。

 

ジョシュアは眉をひそめる。

 

「……薬?」

 

「はぁ……?」

 

怪しみながらも、ジョシュアはカプセルを受け取る。

 

少し迷う。

 

だが。

 

「……まあ、いいか」

 

口に放り込んだ。

 

水も無いのに、するりと喉を通る。

 

ロボットが頭を下げた。

 

「お疲れ様でした」

 

「それでは――」

 

「バリューク・ロックをお楽しみ下さい」

 

ジョシュアは顔をしかめる。

 

「おい、ちょっと待て」

 

「この薬なんなんだよ!!」

 

その瞬間。

 

--------------------

 

 

視界が切り替わる。

 

「――ッ!?」

 

何かがおかしい。ジョシュアは最初の場所でもない。あの黒い人間ロボットの場所でもない。自分の体さえも認識できない真っ暗な空間にいた。

 

「なにが起こった…?なにも…見えないぞ…」

 

ジョシュアの胸のうちポケットから光が漏れる。

 

それは紛れもない、あの黒い矢であった。黒い矢からまっすぐと光が走る。

 

光がその場で止まるとそこにはボロボロな姿のロボットがあった。

ロボットはこちらの矢に反応したのか録音テープを流すように音が出る。

 

『理由、辿リ着クコト、道筋、遠イ記憶、古代ノ記録、終ワリナキ時代、流レル時間。壊レナイ決意、意思ヲ持ッ者、黒き槍、影、烈火ノゴトク、永遠ノ燃焼。』

 

「は…?なに言ってんだ…よ…?」

 

ジョシュアは後ろに引いた。

 

ロボットは次に大きな声で言う。

それは誰かの声に似ていた気がする。

 

ミ…ツ…ケ………て………』

 

--------------------

 

 

元の場所。

 

白い建物のロビー。

 

隣には、カイが立っていた。

 

ジョシュアは周囲を見る。

 

「……戻った……?」

 

カイは呆れたように言った。

 

「……遅いぞ」

 

ジョシュアは顔をしかめる。

 

「いや意味分かんねえだろ今の」

 

カイは返事をしない。

 

そのまま踵を返し、入口へ向かって歩き出す。

 

ジョシュアも横をゆく。

 

自動ドアが開く。

 

外へ出る。

 

気づけば、辺りは真っ暗になっていた。

 

ネオンだけが街を照らしている。

 

ジョシュアは大きくあくびをした。

 

「ふぁぁ……」

 

「もう今日は寝ようぜ」

 

「ああ、そうだな」

 

カイが答える。

 

「もういい時間――」

 

その瞬間。

 

「ッッッ!!!」

 

カイの体が揺れた。

 

「おい!?」

 

ジョシュアが横を振り向く。

 

カイの肩の後ろと、ふくらはぎの位置。

 

そこに。

 

ナイフが刺さっていた。

 

「カイーーーーッッ!!!???」

 

血が飛ぶ。

 

カイが膝をつく。

 

肩から血を出しながら、低く言った。

 

「まさかお前……」

 

「誰も飲まないような……あの薬を飲んだのか……?」

 

ジョシュアは混乱したまま叫ぶ。

 

「ああそうだよ!!」

 

「でもそんなことより――!!」

 

周囲を見る。

 

誰もいない。

 

ネオン。

車。

通行人。

 

なのに。

 

「……っ!?」

 

「周りに誰も怪しい奴がいねえ!!?」

 

カイは肩を押さえる。

 

血が指の間から流れていた。

 

「意味が無いかもしれないが……」

 

「一旦この場を離れるぞ……」

 

ジョシュアは慌てて肩を貸した。

 

「お、おい!! しっかりしろ!!」

 

二人はその場を離れる。

 

歩きながら、カイが呆れたように言った。

 

「……本当に、あの薬を飲む奴がいるとはな……」

 

ジョシュアが怒鳴る。

 

「だから何なんだよ!!」

 

「あの薬がなんかヤベーのか!?」

 

カイが何か言いかける。

 

「あの薬はなぁ――」

 

その瞬間。

 

「ッッッ!!」

 

カイが顔を上げる。

 

「前を見ろジョシュア!!」

 

「は?」

 

ジョシュアは前を向く。

 

そして。

 

固まった。

 

大通り。

 

そこを歩いている人間達が――

 

“トランプ”になっていた。

 

スペード。

ハート。

クラブ。

ダイヤ。

 

人々の顔が、カードの模様みたいに歪んでいる。

 

いや。

 

人だけじゃない。

 

街全体。

 

建物。

標識。

ネオン。

 

全部が、童話みたいに歪んでいた。

 

鏡の国。

 

絵本。

 

そんな世界。

 

ジョシュアの顔が引きつる。

 

「こんなの!!」

 

「異世界じゃねえかーーーーッ!!!」

 

その瞬間。

 

ヒュンッ!!

 

何かが飛んできた。

 

ジョシュアは反射的にスタンドを振る。

 

ガキィン!!

 

金属音。

 

「……?」

 

地面へ落ちたそれをよく見る。

 

トランプだった。

 

だが。

 

「……なんでトランプで金属音が……」

 

次の瞬間。

 

トランプの姿が崩れる。

 

そこにあったのは――

 

ナイフ。

 

カイを刺したものと同じ形。

 

ジョシュアの顔が引きつる。

 

「あっぶねえな!!」

 

カイが低く言った。

 

「……幻覚系のスタンドだ」

 

「能力者本人を叩け……」

 

ジョシュアは周囲を見る。

 

歪んだ街。

トランプ人間。

ネオン。

 

その中で。

 

ひとりだけ。

 

“ハートの女王”のような人影が立っていた。

 

ジョシュアはそいつへ近づく。

 

すると。

 

そのハートの女王が口を開いた。

 

「アリスって面白いですよね」

 

静かな男の声。

 

その女王は、すでにかしこまった服を着た男に見えていた。

 

「でも、敵のあなたにアリスを見せたら、私はハートの女王に見えましたよね」

 

ゆっくりと笑う。

 

「私としたことが……って感じですよね。これでは幻術の意味が無いですよね」

 

ジョシュアの目が細くなる。

 

男は続ける。

 

「そしてあなたは――」

 

「私に目を付けられた」

 

「哀れで、お馬鹿な新人さん……っていうことですよね」

 

#■to be continue

 




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