余命一年なのでグレたアイドルの終活プロデュースして死にます   作:はつぼし たろう

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私事ではございますが、この度いっしょに暮らすぬいの皆さんと一緒に暮らすことを決意いたしました。
月村手毬さん、篠澤広さん、花海咲季さん、十王星南さん、秦谷美鈴さん、どうぞよろしくお願いします。そしてスモックも一着……占めて2万円強!? ばっきゃろー今月てまひろ二人のみてぬいも予約したしデカちびぐるみも来るんだぞ!


第18話 定期公演『初』中間試験

 定期公演『初』、その一次オーディションとも言える中間試験の日がやってきた。

 

 試験は土曜を丸一日使って、初星学園内の屋外ステージにて行われる。

 一般には非公開だが、初星学園の生徒であれば中等部や高等部、科も問わず誰でも観覧することができ、すり鉢状の観覧席には多くの生徒たちが詰めかけていた。

 

 ――そんな場所におれと賀陽さんが二人連れ立って現れると、周囲はにわかに騒がしくなる。

 

「……いやはや、随分と注目を浴びていますね」

「そうね。堂々と観に来たのが意外なんじゃない?」

「実際、大勢の前に二人で姿を見せるのは、初めてですからね」

 

 普段も人目を気にしてコソコソしてきたわけではないし、賀陽さんはもちろんのこと、おれも彼女の引退をプロデュースしている変なプロデューサーとして注目を集めることはある。

 

 しかし、二人揃っている場面はと言えば活動拠点とレッスン室、人前に出るのは移動のために廊下を歩いているときくらい。

 すれ違う生徒たちには漏れなく「あっ」みたいな顔をされるわけだが、こうも大勢から一斉に意識を向けられるというのは今までになかったシチュエーションだった。

 

「ま、避けてくれるなら好都合でしょ。ゆっくり観ていられるし」

「衆人環視は慣れたものですか。流石です」

 

 中等部から足掛け三年アイドルをやってきた賀陽さんなのだから、当然と言えば当然かもしれない。

 おれも今更怖気づくほどのことはないが、賀陽さんほど気にせずにはいられなかった。

 

 ともあれ、腰を落ち着けるとこを探しておれたちは、ステージを正面から見れるギリギリの、後ろの方の席に歩いて行く。

 すると、そこにいた中等部と思しき生徒たちがささっと奥に詰めてくれたので、賀陽さんが「いいの?」と普通の調子で尋ねれば、彼女たちは緊張たっぷりの面持ちでコクコクと頷いた。

 それに対して賀陽さんが「ありがと」と言いながら微笑んで見せれば、中等部の少女たちは顔を真っ赤にして「は、はいぃぃ……」と完全に骨抜きにされたような返事をするのだった。

 

「……本当に、流石です」

「何よ」

 

 ジトっと賀陽さんが睨んでくるが、普通に感心半分、賀陽さんのファンサ的振舞いを間近で浴びた女子生徒たちへの同情半分が漏れ出ただけだ。皮肉とかではない。

 

 譲ってもらった席に、二人で並んで座る。

 

「さっき言っていた資料は?」

「はい、こちらに」

 

 と、賀陽さんに渡したのは、今回の中間試験におけるおれの個人的な注目株のリストだ。

 名前とクラス、簡単に調べた限りの強みと弱みを列挙しただけのものである。

 

 そもそも、このオーディションを観覧することにプロデュース的な意味は特にない。

 基本は興味本位で、星南さんや学Pさんへの義理と、あとはおれたちのことがきっかけで大きな改定があったことから、顛末を見届けるくらいはした方がよいだろうという気持ちがあっただけだ。

 賀陽さんにしてもおれにしても、先々のことを考えるなら勉強のつもりでと言えなくもないが、お互いに先がないのだからほとんど冷やかしとしか言いようがない。

 

 ただ、せっかく見るのなら、と用意したのがこのリストなのだった。

 

「ふーん……三年、二年……一年生は知った名前が多いわね」

「まぁ、この時期に参加するのは中等部で結果を出していた生徒が多いですからね。新入生組は学Pさんと星南さんで半分占めてる勢いですし」

「これ、出る順?」

「はい、変更がなければ」

 

 中間試験は三年生から順番に、学年内ではランダムで一人ずつステージに立っていき、二つの曲をかけてパフォーマンスをおこなう。

 

 一曲は共通の課題曲である〝初〟……公演名と同じ名前の、初星学園伝統の楽曲だ。

 中等部高等部にかかわらず初星学園に入学したアイドルの卵が一番最初に覚える曲で、定期公演『初』でも実際に披露されることになる。

 

 もう一曲は選択制の課題曲で、授業で使用されるいくつかの曲から各自が選択する。

 歌唱力が問われるもの、ダンスの難易度が高いもの、総合的な表現力が求められるものなど、それぞれの得意に合わせて選ぶことが可能で、自身の魅力を最大限に引き出せる楽曲のチョイスが肝要になる。

 

 そして、これら二曲のステージでの出来栄えが試験官たちによって採点され、合格者が次の最終試験に挑めるのだ。

 

「……始まるわね」

 

 試験官を務める教師の一人がマイクを握ったのを見て、賀陽さんが呟く。

 

 長い一日のトップバッターは――姫崎さんだった。

 

 

     ☆ ☆ ☆

 

 

 この前、雨夜さんと一緒になって学Pさんのことを疑ったのは、お詫びして訂正しなければなるまい。

 いや、疑っていたのは手腕でなく正気だけだったのだが、多少様子がおかしいとしても姫崎さんの見せたパフォーマンスを思えば目を瞑るしかないだろう。

 

 姫崎さんの、お姉さんアイドルとしての方向性はバッチリ嵌まっていた。

 専用の楽曲を披露したわけではないのでわかりやすい表現があったわけではないが、ステージの上での振る舞いにそれが出ていたのだ。

 元々基礎力を培ってきていた彼女はそれを十全に発揮して、三年生の中でもほぼトップのパフォーマンスを見せたのだった。

 

 ……()()、と言わざるを得なかったのは、三年生の部で最後に登場した有村さんもまた非常にハイレベルなステージを披露したからだった。

 

 彼女もまた、元々持ち合わせていた技術を、雨夜さんとのユニット活動で得た自信によって120%発揮していた。

 ステージ慣れ、という点では姫崎さんを明確に超えていて、試験官のみならず観客へのアピールを完璧に織り交ぜており、彼女の視線が飛ばされるたびに黄色い悲鳴が上がっていた。

 

 ……というか、勘違いかもしれないが、明確におれにも視線を寄越された気がする。技術として錯覚させられただけなら有村さんに感服するしかないが、なんというか、そういうのじゃない意味深な視線がはっきり向けられたような……ダメだどう表現しても勘違いオタクの戯言にしか聞こえないな。

 

 まぁともかく、三年生たちの中では姫崎さんと有村さんが頭一つ抜けている印象で、しかし全体としてのレベルも決して低くはなかった。最上級生は伊達ではない、ということだ。

 

 

 

 二年生の部については、特段のサプライズはなく、順当な結果だったように思う。

 

 強いて言及するなら、内園わこさんが好調そうだったのは何より、といったところか。

 個人的な面識はないのだが、彼女は昨年一年生にしてH.I.F本選の参加資格獲得までいったという有名人。その実力は間違いないのだが、生まれつきの持病のせいでどうしてもパフォーマンスにムラがあるアイドルだという評価をされている。

 

 そんな彼女が今回は良いコンディションで試験に挑めたようなので、このまま最終試験、それから本番の公演まで調子を維持できると良いなと思ったのだった。

 

 

 

 ……と、さて。

 

 決して三年生と二年生を前座扱いするわけではないが、それでも賀陽さんの担当プロデューサーとして、あるいは学Pさんと星南さんの担当アイドルたちが出てくるということで、一年生の部が始まるときにはいよいよだな、という感想が浮かんだ。

 

 しかも、初っ端に出てくるのが月村さんなのだから、これはもう致し方ない。

 

「…………」

 

 隣をちらりと見ると、賀陽さんは組んだ脚に頬杖を突いてじっとステージを見つめていて、おれの視線に気がつく様子もなかった。

 

 試験官に名前を呼ばれた月村さんが、力強い返事をして、ステージに上がる。

 

 白を基調としたパンツスーツのような衣装は、アイドル科生徒がまず作る〝初〟用のものだろう。よく見ればそれぞれ個性はあるが、カラーや意匠に通底したものがあるのでわかりやすい。

 

 マイクを持った月村さんは、空いた手で拳を作って胸に置き、目を伏せていた。

 

「――なるほど、すごいな」

 

 イントロ、そして月村さんがマイクを通して放った最初のワンフレーズで、彼女がどれほど仕上げてきたのかがわかった。一目瞭然、もとい一聴瞭然だ。

 

 芯のある、力強い歌声。

 中等部No.1アイドルという評価をもたらしていたかつてのそれよりも、明らかに安定感があった。

 

「……持つわね、これは」

「持つ?」

「最後まで、ちゃんと歌い切れるってこと。相変わらずの後先考えない全力でペース配分ができているわけじゃないし、別に燃費がよくなったわけでもない……この試験で歌う二曲分、ピッタリ使い切るだけのスタミナを用意してきたのよ」

 

 ……それは、緻密なんだか脳筋なんだか……しかし、いかにもあの学Pさんがやりそうだと思うのは、おれだけだろうか。

 

 試験においては〝初〟も選択曲もフルサイズではなく、それぞれ三分にも満たないショートバージョンが使用される。

 これは、参加者の多い中間試験を一日で終えるための措置なのだが、最終試験、そして何より本番ではその限りではないのだ。

 

「……このやり方で、大丈夫なんでしょうかね……」

「もう本番の心配?」

「これはもう、間違いなく上がってくるでしょう。無論、月村さんがすごいアイドルであることはわかっていましたが……賀陽さんも、これほどまでになっているとは思わなかったのでは?」

「……まぁ、そうね」

 

 賀陽さんは、単に面白くなさそうにも、あるいは喜悦を押し殺しているようにも思えるような、平坦な声で同意した。

 

 月村さんがこれだけの成長を見せたのは本人の努力の賜物に他ならないが、同時にその原動力が賀陽さんであることは、学Pさんの言っていた通り。

 だとすれば、ポジティブであれネガティブであれ、賀陽さんには思うところがないはずがない。

 

 ……もっとも、それを聞き出そうなどという無粋は、もちろんするつもりもないのだが。

 

 

 

 その後も、次々と注目株、というよりは知った顔が舞台に立っていく。

 

 月村さんと同様に、もはや最終試験での合格も当然と一目でわからせてきたのが、秦谷さんだった。

 彼女もまた中等部時代とは一線を画するパフォーマンスを見せ、この場にいるすべての人に息を飲ませた。

 努力で実力を伸ばしてきたというよりは、中等部時代には抑えていた力を解き放ったと見るべきだろう。いや、もちろんレッスンで伸びた分もあるだろうが、彼女は元々このくらいやれたのだろうという圧倒的な余裕が見て取れた。

 

 そして、秦谷さんがそうしたのは、やはり賀陽さんのことがあったからに違いない。

 賀陽さんはまた、口を引き結んで秦谷さんのステージを見届けたのであった。

 

 そんなこんなで頭の一つか二つくらいは抜けていた月村さんと秦谷さんのステージだったが、しかし他の参加者全員を食ってしまったかと言えば、決してそんなことはなかった。

 

 たとえば、中等部からの内部進学組。

 

 特に、『SyngUp!』の三人に次ぐNo.4のアイドルと言われていた花岡ミヤビさんなどは、月村さんたちが作った雰囲気に一切呑まれることなく、完璧な演技を見せてくれた。

 元よりダンスの成績に限れば中等部でトップだった彼女は、今回の試験でもその実力をいかんなく発揮していたのだった。

 

 ただ、今回も花岡さんのダンスが一番だったかと言えば、実際の採点はともかく意見の割れるところだろう。

 

 花岡さんを脅かした一人は、同じく内部進学組で、しかしまったく成績が振るっていなかったはずのアイドル――藤田ことねさんであった。

 

 正直、驚いた。

 星南さんと契約を結んで日も浅い中、あれほどのパフォーマンスができるとは。

 

 星南さんの目を疑っていたわけではないが、それにしてもとんでもない急成長と言わざるを得ない……が、実際に見てみてわかったが、その理由は秦谷さんに近いものがある。

 つまりは、実際に成長したというよりも、本来持っていた力を発揮できるようになった、ということだ。

 おそらく、雨夜さんとの話の中でも上がった、アイドル活動に専念できない状況が改善したのがきっかけだと思われる。

 有体に言ってしまえば、過労で疲れていた身体を休ませたおかげで、よく動けるようになったということ……本当にそんな単純な話なのかと疑いたくなるが、それしか考えられないのだ。

 

「……藤田ことね。あの子、あんなにダンス上手かったのね」

「賀陽さんも、面識が?」

「名前と顔が一致してただけ。一度も話したことないけど、中等部のアイドルコースなんてそんなに人数いるわけじゃないし」

 

 と、賀陽さんもそんなことを言うほどには、藤田さんの残した爪痕は大きなものなのだった。

 

 そして、ダンスで突出していた人と言えばもう一人、雨夜さんと有村さんが面倒を見ているという一組の紫雲清夏さんもまた素晴らしかった。

 

 調べたところ彼女は元バレリーナであったらしく、ダンスが得意というのは納得の経歴である。

 しかし、どういうわけか入学当初はレッスンをサボりがちだったようで、アイドルは未経験であることもあって総合的には花岡さんや藤田さんには及ばないくらいに落ち着いた形だ。ただそれでも、中間試験は突破できただろう。

 

 ついでに、雨夜さんたちが目にかけているもう一人、葛城リーリヤさんもおそらく最終試験に進むことになるだろう。

 

 歌やダンスで飛びぬけたところはなく、この時期の新入生組としては典型的な発展途上、まだまだ成長中という感じだが、何といっても彼女は北欧出身のいわゆるハーフで、真っ白な花のような容姿だけでもかなりのインパクトがあった。

 そして彼女はきっと、今回の中間試験を戦う武器としてその生まれ持った見目を選び、技術的に拙い歌やダンスさえも〝一生懸命に頑張っている姿〟として演出し、ビジュアルで勝負をしてきたのだと思う。

 

 そんな彼女の演出は、おれの目から見れば確実に成功していた。

 上手な歌やダンスで魅せてくれるだけではなく、思わず()()()()()()()というのも、良いアイドルの十分条件。彼女は、それを満たしていたのだった。

 

 ……同じように応援したくなるアイドルと言えば、星南さんちの倉本さん、学Pさんちの篠澤さんの二人も、そういう系統だったろうか。

 

 いや、意外と言ったら失礼なのだが、たぶん、この二人も中間試験をギリギリ突破できたと思う。

 

 倉本さんは、まぁ以前に星南さんとも話した通り歌も踊りもへたっぴで、しかしまぁ小さい身体で一生懸命やっているものだから否応なく手に汗握らせられるというか、葛城さんのそれとは違う意味で応援したくなるというか……。

 おれは、なんなら隣で賀陽さんも、思わず拳を握って彼女のステージを見守ってしまった。

 そして、多少のミスはありつつも無事に終わった時には、つい二人して息を吐いてしまい、互いに顔を見合わせてしまった……あれはたぶん、幼稚園のお遊戯会を見守る親の心境に近かったのだと思う。倉本さんはおれの娘だったのかもしれない。

 

 ……というのは冗談としても、とにかくそういう彼女の未熟なところは、たっぷりの愛嬌でアイドルとしての魅力になっているようにも思えた。

 通常の『初』であれば、さすがに技術的な部分で足切りラインを越えられなかっただろうが、今回に限って言えば最終試験にコマを進められた……ような気がする。進められていてほしい。あんなに、あんなに頑張ってたんだから……。

 

 で、一方〝2%の人〟こと篠澤さんはと言えば、倉本さんと同じくやはり観客をドキドキハラハラさせるステージだった……の、だが。

 

 それ以上に、なんというか……神秘性……いや神性……? 何かこう、言語化すると途端に陳腐になってしまいそうな、無常や滅びの中に見出される美、細い線の上にだけふっと現れて、一度目に焼き付いたら消えないような何かを……垣間見たような、見てしまった気がした。

 

「……あのプロデューサーには、()()が見えていたのかしら」

「……どう、でしょうか。聞いた限り、学Pさんと彼女は、出会いも契約も偶然の成り行きだったようですが……」

 

 ただ一つ断言できるのは、あんな体力の篠澤さんにアイドルとしての素質を見出した人がこの学園にいるということ……少なくともその一人は十王学園長だろうが、あの方の目には一体何が見えているのか。

 

 ともかく、人によってどこまで篠澤さんの神秘を感じ取ったかには差があると思われるが、一時的にでもこの場の空気を支配してみせたのは間違いなく、試験官たちもそれをまったく無視することはできないはずだ。

 倉本さんと同じく、門戸の広がった今回の『初』においては箸か棒にならきっと引っ掛かるだろう。

 

 ……それからもう一人、倉本さんと篠澤さんほどでないが、割とギリギリで、しかし合格したであろう人物がいる。

 

 それは、星南さんが育てている最後の一人、花海佑芽さんだ。

 

 彼女は、星南さんが嘆くほどに不器用だと評していた通り、倉本さんたちほどではないが歌もダンスも表現力も十分とは言えなかった。

 しかし、代わりと言ってはなんだがそれはもう元気いっぱいで、技術で魅せるのでもなければ、周囲から応援されるだけでもない、彼女自身の有り余る元気をみんなに分け与えるようなパフォーマンスを見せてくれた。

 

 それもまた立派な、一つのアイドルの形……あるいは、アイドルとしての王道と言っても差し支えないだろう。 

 

 

 ――そして、しかし。

 

 

 今日、おれがもっとも驚かされたのは、今まで挙げてきた誰でもない。

 

 突出した実力を見せつけた月村さん、秦谷さん。

 それに勝るとも劣らず、同じ内部進学生の意地を見せた花岡さん、藤田さん。

 新入生組ながらも光るものを感じさせた紫雲さん、葛城さん。

 基礎が固まっていないが、独自の魅力を披露した倉本さん、篠澤さん。

 

 粗削りだが、ある種一番アイドルらしい花海佑芽さん。

 

 その姉にして、今年度の初星学園高等部首席合格者――花海咲季さんこそが、この日の一番の衝撃だった。

 

 新入生組の彼女はアイドル未経験。

 それに、ここまで挙げてきた一年生の中で、唯一プロデューサーが付いていない。

 

 しかしながら、花海さんは花岡さんや藤田さんどころか、月村さんとも秦谷さんとも遜色のない、極めて完成されたステージをやりきってみせたのだ。

 

「花海さん……首席とは言え、ここまでやれるのか」

 

 おれが思わずそう独りごちると、賀陽さんが尋ねてくる。

 

「ねぇ、あれ、さっきの花海佑芽っていうのの姉なのよね」

「はい。双子ではなく、ほぼ丸一年誕生日が違いますが、同学年という……少々珍しい姉妹ですね」

「ふーん……」

 

 表情こそ変わらないが、賀陽さんの返事には何か含みがありそうだった。

 

 ……まぁ、察するところは大いにある。

 しかし、不用意に踏み込むべき部分ではないので、おれはそれ以上何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 ――中間試験は、ともあれこうして終わりを迎えた。

 

 試験結果の発表は週明けの月曜日になる。

 実際にどのような結果になるのか、個人的な縁もあって当然気になるところだ。

 

 が、今はそれ以上に、月村さんや秦谷さんがステージに立つ姿を目の当たりにした賀陽さんが何を思ったのか……あえて聞かなかったそのことが、おれの心の大部分を占めていたのだった。

 

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