余命一年なのでグレたアイドルの終活プロデュースして死にます   作:鯖ジャム

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熱血要素は特にないです。しいて言うなら生き様か。



熱血初星派くにおくん

「おお、よく来たのぉ、プロデューサーよ」

「お久しぶりです、学園長。すいません、ここのところ足が遠のいてしまっていて」

「うむ、まったくじゃ。おぬし、最後にここに来たのいつか覚えとる? 新学期が始まる前じゃぞ? ハァ〜! まったくけしからんのぉ! ハァ〜!」

「……い、いや、あの……す、すいません……」

 

 ある日、学園長室に呼び出しを受けたおれ。

 

 おそらく先日星南さんから聞かされていた、彼女のプロデュースのレビューの件だろうと思ってやってきたのだが……初っ端から学園長が、思いのほか拗ねていらっしゃった。

 

 

     ☆ ☆ ☆

 

 

「いや、もちろんわかっておるよ? おぬしも、賀陽燐羽くんのプロデュースでさぞかし忙しかったんじゃろうて。じゃからわし、おぬしのこと呼び出すの我慢しとったんじゃ」

「はい、それはもう、ご配慮痛み入ります……」

「じゃけどさ〜、ほれ、『初』でおぬしちょっと困ったことになったじゃろ? ああいうときとかに顔出して、頼ってくれるかと思って期待してたのにのぉ……なんならおぬし、龍正の奴となんか仲良くなったとか星南から聞いたんじゃが? どういうこと? そうはならんくない? あんな冷血漢と何をどうやって仲良くなったの?」

 

 別に、ならんこともないと思うんですが……というか、娘からも親からも冷血漢呼ばわりされている十王社長が超かわいそうなんですけど。

 

 それにしても学園長、マジですごい勢いで拗ねてるな。

 これまでかかわってきたどのアイドルよりも拗ねてる。

 

 これは、いったいどうしたものか。

 

 ……プロデューサー科では、担当アイドルとのコミュニケーション術の一環として、自身の失態で機嫌を損ねてしまったときのハウツーを教わる。

 

 この前、燐羽さん相手にはあえて使わなかったが、これはもしかすると実践の機会かもしれない。

 

「……学園長、改めて申し訳ありませんでした」

「んお? おぉ、いや、そこまで深々と頭を下げんでも……」

 

 まず、真摯に謝罪をする。最敬礼だ。

 担当アイドル相手ではここまでしてしまうとあまりにわざとらしく逆効果になりかねないが、学園長という地位もある方が相手であれば、その心配は無用と判断した。

 

「確かに、燐羽さんのプロデュースで忙しかったという事実はあります。学園長のお心遣いのおかげで、その一事に集中させていただきました。しかし、学園長とお話をする時間を一切作れなかったかと言えば、そうではありません」

「うむ……」

 

 次に、非を認める。言い訳をしない。

 今回の場合、学園長のお言葉をそのまま認める形だ。早まって相手の言っていないことまで斟酌し、あれもこれも自分が悪い、と過剰に話し過ぎると感情を逆撫でする可能性が高いので要注意。

 

 ……また、相手が今まさに感情的になっている状況でなければ、説明するべきことは説明してよい。

 

「ただ、一点だけ、誤解があるといけませんのでお伝えさせてください。『初』の件で学園長を頼らなかったのは、これが、学園長が与えてくださった試練だろうと考えたのです」

「ほう?」

「学園として『初』の規模拡大にゴーサインを出したということは、すなわち学園長がお認めになったということ。そして、それがおれと燐羽さんにとって不利になることは明らかだったわけで……そこにある学園長の意図を推察するに、おれはそれを学園長からの課題であると認識しました。故に、学園長に頼るのは違う、十王社長とはおれ自身が向き合わなければ、と思ったのです」

 

 別に口からでまかせで言っているわけではない。

 ただ、もう少し正確に言うと、実際に学園長を頼ったとしても「プロデューサーなら己の力でなんとかしてみせい!」とおっしゃるだろうと思って最初から選択肢として除外していたのだ

 

 ……もしも燐羽さん、あるいは星南さん相手であれば、「というかそもそもあなただって、おれに会いたかっただけの口実でしょう?」とか言うのだが、学園長相手にはそんなことは言えない。……心の中ではそう思ってるが。

 

「……ふむ。まぁ、そうじゃな。無論、おぬしらのことを第一に考えたわけではない。あやつの提案に乗ったのは、『初』の活性化が初星学園として利のあることゆえじゃ」

「もちろん、承知しております」

「ならばよい。わしを頼らなかったのも正解じゃ……が、それはそれとして、わしに会いに来る良い口実だったとは思うんじゃがのぉ?」

「あ、ご自分で口実と仰ってしまうんですね……」

 

 これは想定外。

 さすが学園長、一筋縄ではいかない……いやこれ、さすが、でいいのか? よくない気がする。

 

「……ええーっと。まぁとにかく、そうですね、口実……ええ、口実にはできましたね、はい」

「……クックックッ、もうよい、もうよい」

 

 と、学園長がいたずらを成功させた子どものように笑う。

 

「意地悪言って悪かったの。わしが呼び出さんだけで、こうもパッタリと顔を合わせる機会が減るとは思わんかった。それで、ちーっと寂しかっただけじゃ」

「……はい。いや、本当に、申し訳ないです」

 

 寂しかった、と、まさかはっきり言われるとは。

 それはもう、ただ謝るしかない……。

 

「これ、そんなしょぼくれた顔をするでない。賀陽燐羽くんのプロデュースに精を出していたのは結構なことじゃ……が、今日はその分、星南のことも含めてたっぷり聞かせてもらうからのう?」

「ええ、もちろん、喜んで」

 

 おれは、苦笑してそう答えた。

 

 

     ☆ ☆ ☆

 

 

 学園長との面談……いや、歓談と言ったほうがいいか。

 とにかく、、話せることはとことん話した。

 おれの近況についてはあったことをそのまま、星南さんのプロデュースに関しては一度本人に話したものをより詳しく……ざっと二時間くらいは経っただろうか。

 

 学園長もお忙しい方のはずなのだが、今日は本当におれと話をするためにたっぷり時間を作ってくれていたらしい。

 

「……うむ、うむ。おぬしも星南も、順調なようで何よりじゃ」

「はい、ありがとうございます」

 

 そして、鷹揚に頷き、口元に笑みをたたえているあたり、大層ご満足いただけたようだった。

 

 ……ただ、少し調子よく話しすぎてしまった気もする。

 

「星南さんのプロデュース業に関しては、どうでしょう、可能な限り客観的に評価するよう努めましたが……多少は甘くなってしまっている部分もあると思います。そこはご留意いただきたいですね」

「わしは、おぬしの目を信用しとるよ。それに、先はああ言うたが、おぬしには龍正のやつと通ずるところがある……情はあるが、情を排して冷静な判断を下すことができる。そういう資質じゃ」

「もったいないお言葉です」

「謙遜するでない。あやつがおぬしを気に入ったのは、そういうところを感じ取ったからじゃろうて……しかし、あやつはちと極端じゃからのぉ。経営者としてはあれで正解じゃが、おぬし、プロデューサーをやる限りは今のバランスを踏み外してはいかんぞ」

 

 ふむ、学園長の仰ることは、わかる。

 十王社長のあの感じ、格好良くて憧れちゃうのだが、プロデューサーとして真似しようとしたら担当できるアイドルは相当限られてしまうだろう。

 

 それと、さっきは冷血漢呼ばわりしていたけれど、星南さんみたいに本気でそう思っているわけではないらしい。当たり前か。

 

 ともかく、肝に命じておこうとおれは思った。

 

「……それにしても」

 

 と、少しの沈黙の後、不意に学園長が言う。

 

「おぬしと星南がまた仲良くするようになったようで、わしとしては一安心じゃな」

 

 ……また一つ、合点がいった。

 星南さんのプロデュースの状況をおれに説明しろ、というのは、そういうことでもあったのか。

 

「……すみません、その節は、ご心配をおかけしました」

「お互い、心の整理に時間は必要じゃったろう。それはもちろんわかっておる。しかし、あんまり爺をやきもきさせんでくれよ?」

「はい。まぁ……後悔、とは言いませんが。星南さんとほとんど喧嘩別れをして、会うこともせず……おれ自身くよくよと悩んでいた時期は、もったいなかったなと思っています。限りある時間を無駄にした、と」

「いいや、それでもおぬしは立派じゃよ。受け入れて、前を向いた。……難しいところじゃのう、おぬしが現実的な男じゃからこそそれができたのじゃろうが、しかし現実的じゃからこそ、己の期限を己で決めてしまっておるところがある」

「ええ、そうですね」

 

 それは、おれもわかっている。

 しかし、現実は現実なのだから、仕方がないだろう。

 

 あえてあっけらかんとしてみせるおれに、学園長は――なぜか、不敵にニヤリと笑う。

 

「じゃからおぬしは、そのままプロデューサーをやり続けるがよい」

「……? はい、もちろんそのつもりですが……どういう意味でしょうか?」

「さてのぉ。わしのような年寄りが言って聞かせるようなことでもない……いずれ、それがわかるときがおぬしに訪れることを祈っておるよ」

「は、はぁ……」

 

 何か、妙に意味深だが……後悔のないように、ということだろうか。

 

 若干戸惑うおれを見て、学園長は呵々大笑する。

 

「いやはや、星南との仲もまた良好、賀陽燐羽くんのプロデュースも順調……そして、花海咲季くんのプロデュースも始めるとはのう。おぬしが精力的で、わしも嬉しいわい。……また、話を聞かせてもらうからの?」

「それは、もちろん。いつでも、遠慮なく呼び出してください」

 

 星南さんのプロデュースをしていた縁から、学園長にはずっとよくしてもらっている。

 これが、少しでもその恩返しになるならば……などというのは、少々自惚れがすぎるだろうか。

 

 まぁとにかく、社交辞令ではなくて、本気でおれはそう言ったのだった。

 

 ……うん、いや本当に本気だったんだけど、この後四日連続で呼び出されたときにはさすがに苦言を呈しましたね。さすがにね。学園長相手なんだけどね。

 





次回からSTEP2に入ります。
もっといろいろ書くつもりだったんだけど、思ったよりサクサク書ける感じじゃなかったので本編に戻ったほうがいいなって。

あとかれこれ一週間以上家のネットが断絶していて萎えてます。萎えてるっていうかシンプルに「〇すぞ」ってなってます。

あとやっぱ週3は執筆速度的に厳しい(筆が止まるとすぐにジリ貧になる)ので学マ水曜日と学マSundayの週2更新にします。書き溜めができるようならたまに週3とかにするからよ~許してくれよな~
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