一発ネタなので続きません。
そんじゃ本編どうぞ。
「醜鬼だ!醜鬼が出たぞぉぉ!」
その声を皮切りに人々は恐れ、逃げ惑う。醜鬼。突如として現れた異界と現世をつなぐ門「クナド」から現れては人を襲い喰らう異形の怪物。
だが人間も大人しく食われているわけではない。それが桃。門の先、醜鬼の世界「魔都」にて発見されたこの桃は一度食らえば食べた者に異能の力を授けた。しかし桃も万能ではなかった。桃が異能を授けるのは女性だけだったのだ。この為、人類の男女の力関係は崩壊しそこに生まれたのは女尊男卑が色濃く染み付いた世界だった。
そしてこの桃を食べ異能を使い人々を醜鬼から守護する組織「魔防隊」。
しかしながらこの場では魔防隊が現場に到着するよりも醜鬼が人々を襲う方があまりにも早かった。醜鬼は我が物顔で人々を襲い喰らう。何せこの場を支配しているのは彼らなのだから。
そしてここにも一人勇敢にも友人を守ろうと頼りない鉄パイプを構え足を怪我した友人を背に庇う少年がいた。
「こ、こい!醜鬼!テメェなんざこれで十分だ!」
蛮勇。あまりにも愚か。この少年とて醜鬼に現代兵器が一切効果がないことなど分かっているのだろう。けれどもそれが友を見捨てる理由にはならない。
だが、
「グハッ!?」
「!?た、大智!」
現実とはいつも残酷だ。力を持たない者には生きることすらも許されない。まさに弱肉強食。
醜鬼は殴り飛ばし身動きが取れない男を喰らうのを一旦見送ると男が背に庇っていた少女に標的を定めた。醜鬼は優越に浸っていた。弱者を嬲り喰らうことはこの醜鬼にとって至福の時間だった。
残酷、まさにこの場はその一言だろう。
しかし、それは醜鬼にも例外ではなかった。この世は確かに残酷だ。されども確かに希望はあったのだ。醜鬼が優越の表情を浮かべ少女に手を伸ばした瞬間だった。
醜鬼の腕が突然横から掴まれる。
「?」
そういえばおかしい、先程までは人間の悲鳴が響き続けていたはず、しかし今はなぜか人の気配はあれど悲鳴は聞こえてこない。それに今自分は何者かに腕を掴まれている。醜鬼が首を回しその手の持ち主を視界に入れようとした瞬間だった。聞き覚えのない声が響く。
「オイ、その手を今スグ引っこめロヨ?」
その声は女性のような声だった。しかしその声はノイズがかったような雑音が混じり、込められた気配はあまりにも深く、暗く、そして冷たかった。
そして遂に醜鬼はその声の主を視界に入れた。入れてしまった。
死
そこに居るのは「死」そのものだった。その姿は一見黒尽くめのパーカーを着た小柄な少女に見える。
しかしあまりにもソレは異常だった。腰からはまるで丸太のように太い尾が生えその先端には歯のような物がズラリと並んでおり機械と生物を無理やり合わせた様になっている。そして
フードから覗くその肌と髪は亡者の様に色白で色素が存在しているのかすら怪しい。その瞳は青色に怪しく光りその奥には絶対零度の様な、地獄の灼熱の様な狂気があった。
その口は三日月を倒した様に弧を描いて笑顔を作り上げてはいるがその笑顔に気楽の感情など篭っていない。パーカーの下から伸びて地面を確かに踏み締める両足もまた亡者の様に色白だった。
その少女の姿が艦隊これくしょんというゲーム作品に登場する深海棲艦、戦艦レ級であることなど誰も知りはしないし知ることはない。何故ならコレは本体この世界に存在しない異物なのだから。
そして少女は辿々しくも言葉を続ける。
「ソコの、ソコのオマエだ。ソコで座り込んでボウ然としてるソコの男、コノオンナを連れて逃げナヨ。今はコイツイガイ醜鬼はイナいカラ。」
「!?は、ハイ!逃げるぞ!美緒!しっかりしろよ!」
イイ子だ。そう一言ソレは呟くと腕を掴んでいる周期に視線を向ける。醜鬼は身動きひとつ出来なかった。一見細くそれほどの力もなさそうな少女の腕から発せられるその腕力はまさに人外。
醜鬼の腕に少女の指が食い込まんとするほどの力で少女は先ほどの人間が逃げる余裕を作り出していたのだ。
待て、今コイツは自分以外の醜鬼は居ないと言ったか?いや、そんなはずはない。あの量の醜鬼を短時間で殲滅するなんてまずありえない。
醜鬼は思考する。何故今自分はこの化け物と相対しているのかと言う疑問と恐怖、あの人間どもをコイツのせいで逃してしまった事への怒り。
「サテ、オレも魔防隊がクル前に撤収しなきゃナンねぇ。そんでオマエ。マサカ生きてカエレルと思ったか?」
その言葉は醜鬼にとって死刑宣告に等しい言葉だった。もし、コイツの言ったことが本当ならコイツ相手に自分一人ではまず勝てない。そして今自分はコイツに片腕を拘束されている。
最早醜鬼に逃げ場など無かった。もし醜鬼がソレに平伏し服従を選ぼうとしてもソレは恐らく醜鬼の命乞いなど無視して殺すのだろう。
最早醜鬼には死への道しか残されていなかった。
だが、
「────────────ッ!」
醜鬼は吠える。意地でも生き残ろうとする。拘束されている腕の痛みなど無視し醜鬼はその鉤爪を少女に振り下ろした。直撃コース。醜鬼の爪はたとえ下級の醜鬼であっても簡単に人の生命など散らすことができる。
「──ッ?──────────!!!」
だが、現実とは非情なものである。醜鬼の振り下ろしたはずの爪は振り下ろした腕ごと肘の先から消えていた。何が起きた!?醜鬼は激痛と困惑の中である物を目にした。
ソレは少女の尾の先の口に咥えられた自らの失った腕だった。その口は噛みちぎった醜鬼の腕を音を出しながら噛み砕いた。急激に圧力の加わった腕はその断面から鮮血を噴き出しながら噛み砕かれて口の中へと消えた。辺りは噴き出した鮮血によって赤黒く染まり鉄の匂いが漂う。
「ウーン…アンま美味くはナイわな。…普通の飯が恋しい…マ、食わナイと強くなれナイんダケドな。」
少女はまるで醜鬼の腕の感想を食レポするかの様に話す。狂っている。醜鬼は恐怖した。
「ンジャ、コッチも食いますカネ。イヤだけど。」
「──────────ッ!」
コレから起こることを察した醜鬼は必死になって逃げようとする。しかし醜鬼の腕はへし折られかねないほどに強く掴まれビクともしない。少女の尾がまるで獲物を吟味する蛇の様に首をもたげる。そして生え揃った歯の生えた口が開かれる。醜鬼は必死になって暴れる。しかしながらそんなことは意味をなさない。そして無慈悲にも刑の執行は訪れた。
少女は両手を合わせるとその言葉を紡ぐ。
「ジャ、イタダキます。」
瞬間、尾の先の艤装は大口を開け醜鬼に喰らいついた。
ばくん。
もう、ソコには何もいなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「────なんだ、これは。」
数分後、魔防隊隊の戦闘員が現地に到着した時そこは地獄だった。辺り一面は正に血の海。一帯には鉄の地おいが立ち込めている。だが、その血は人の血では無かった。その血の池から漂う気配は醜鬼の物。そしてそこに浮いているのはバラバラになった醜鬼のパーツだった。
「ウッ!」
一部の隊員が口元を抑え物陰に走る。
ソレほどまでにこの場所はあまりにも凄惨だった。そしてさらに恐ろしいのはこれほどまでに醜鬼を凄惨に殺害するその力を持った何者かだった。
そして何よりも不可解なのが人的な被害がこれまでの醜鬼発生よりも圧倒的に少なかったことだった。避難者の数を確認するだけでも今回の死傷者は一桁にも満たないと言う死傷者過去最低数を更新するほど。恐らく醜鬼だけが狙われ人は全く狙われていない。つまりこの現場を作り出した原因は恐らく醜鬼を集中して狙い、人間を守るかの様な行動をしている。
「一体ここで何が起きたのだ…?」
そんな疑問は鉄の匂いと共にここ一帯の除染作業への指揮への関心によって薄れていったのだった。
続きません。それはそれとしてオリ主は人類の味方。