おじさん(真) in 牢屋敷 作:ちょっと待って!
まのさば二次。
おじさんが出る二次創作なんてn番煎じもいいとこだと思うんですけどおじさん大好きなのでたくさん見たいです。
『まのさば二次創作を書け』
「せ、先生がなんでここに?!」
色々聞きたそうなミリアがこちらを見てくるが、こちらも首をかしげるしかなかった。
聞こうとしたもののお預けを食らったので、特に知っていることはなく、むしろ『先生』とやらの素性を知っていそうなミリアのほうがよく知っているまであるだろう。
それを知ってか知らずか、男が話し始める。
「それも含めて、今から説明するから…まずは自己紹介をしようか」
「それならば私に任せてほしい!あ、いや、ください!」
唐突に少女たちの中から凛々しい声が上がる。
声を上げたのが誰かを知る者たちは、男に注目が集まりすぎているためこれを目立つ好機ととらえたのだろう、と推測する。
「おぉ、君は蓮見レイアちゃんだったかな?以前ドラマか何かで見た覚えがあるよ」
「知っていただけているとは!うれしい限りです!」
「ぷぷ、なんかレイア敬語使って猫かぶってね?ウケんだけど」
「こ、ココくん!あまり茶化さないでほしいな!」
「かしこまらなくて大丈夫だよ、所詮大してえらくもないおじさんだからね。話しやすいように話してもらって方がこちらとしてもうれしいな」
「自称おじさん二人目じゃん、キャラ被ってんだけど」
「二人目…?ここにいるのは女の子だけって聞いてたから、肩身狭いだろうなぁって思ってたんだけど…誰かいるのかい?」
男は周囲を見渡す。
どうやら自分以外の『自称おじさん』について見当がつかないようだが…。
(それって…おかしくないかな…?)
そう、おかしい。
なぜならば、
(ミリアちゃんとあの人は知り合いなんだよね…?)
ミリアの一人称は『おじさん』である。
これは関わりのあるものならば誰でも知っていることであり、わざわざ隠しているとは考えられない。
「あ、あー!ね、ねえ先生?そんなことより、早く自己紹介して何でここにいるのか教えてほしいなーって…!」
前言撤回。
どうやらミリアは『おじさん』という一人称を『先生』に隠したがっているらしい。
そしてそんな面白そうな餌を目の前に吊り下げられた一部の少女たちはにやりと口を弧に歪ませ、ミリアを見つめている。
少なくとも今この場で追求しないでおこうとする慈悲はあるようだが、どちらにしろ、だろう。
「それもそっか…それじゃあ、レイアちゃん。お願いしてもいいかな?」
「はい、それじゃあこちらから順番に──」
「──待ってくれないだろうか」
(…!)
途端に冷たい声が響く。
その声は少なくとも好意的でないことは確かであり、そちらに目線を向ければ誰もが「そりゃそうだ」と納得せざるをえない者。
その名も
「ど、どうしたんだい、ヒロくん?先に自己紹介をしたいというなら譲るが…」
「そうではないよ、レイア。ただ私はまだ貴方のことを信用できていない、だから示してほしい、というだけのことさ」
「何を、だい?」
「無論、信頼に値する何かを、だ。知っての通りだろうが、私たちはここに突然閉じ込められたんだ。未だ心の傷が癒えない者たちもいる…少なくとも、突然外から来た何者かに自己紹介をしろ、と言われて「はいそうですか」なんて言える者が多数でないことを理解してほしいし、それを強制するのは正しくないだろう」
「正しくない…そうだね。いや、当然だと思うよ。むしろこちらが言い出すべきだったというのにそちらに言わせてしまって申し訳ない」
「いや、結局はこちらの都合であるし、謝る必要はない。それに…」
突き刺すような視線はいつの間にか少女たちと話すときのような優しいものに変わっており、どこか悪い笑みを浮かべている。
「私としてもミリアとの関係に興味がない、といえば嘘になるからな…それを含めて話してほしい」
「ひ、ヒロちゃん?」
「わがはいも気になる、ひじょーに」
「アンアンちゃん?!」
「うふふ……一体どんな関係なのか…想像がはかどるわね?楽しみだわ」
「マーゴちゃん?!?!」
「はは…申し訳ないけれど、そう面白い話でもないし…君たちが期待するような関係でもないと思うよ。多少は話すけれど…」
ここぞばかりにミリアをからかう少女たちを見て、どこかうれしそうな顔で、しかしイジられている対象に自分が含まれていることへなのか、どこか複雑そうな声で男は息をつく。
「それじゃあ…何から話そうか。とりあえず、おじさんのことは好きに呼んでもらって構わないよ、おじさんでもミリアちゃんと同じように先生でも」
「うーん…ということはお仕事は先生なんですか?それならミリアさんと関わりがあるのも理解できます」
「いや、仕事は弁護士をさせてもらっているよ。まだまだペーペーだけどね」
「べ、弁護士…正しすぎる……!」
「ヒロちゃん…?」
どこか別の方向にトリップしかけた、ヒロを戻しつつ、会話は続いていく。
ヒロが話し始めたときの審問めいた雰囲気はどこへやら、まるで新学期の担任の自己紹介のような雰囲気へと変わり始めていた。
好きなもの、タイプ、どこに住んでいるのか、嫌いなもの、特技は、趣味は…。
などと他愛もない話が続いていたが、今まで話していなかったものが気を荒立て口火を切って話し始める。
「…あー、ちょっといいか?」
「うん?君は…」
「ウチは紫藤アリサ…話の流れ切るようで悪いけどよ、さっさと本題入ったらどうだ?時間も無限ってわけじゃねーだろ」
「あ!すっかり忘れかけてました!ナイスですアリサさん!」
「それもそうですわね…わたくし、ずっと気になっていましたの」
「あぁ…なんでここに──「ミリアさんとの関係について教えてください!!!」──は?」
「ば、ばっかじゃねーですの?!ぜってーそっちじゃねーでしょう!!!」
「ええ?でも気になるじゃないですかぁ」
「た、確かに気になりますけどぉ…TPOをわきまえやがれ、ですわー!」
唐突に始まった漫才に、少女たちは笑うが渦中の男は困惑しきっている様子だった。
「…おじさんは何に答えればいいのかな?」
「はぁ…橘は無視しろ。…で、なんでおっさんはここに来たんだ?」
ふむ、と顎に手を当てて男は思索し──あるいは思い出しているだけかもしれないが──思考がまとまったのか話し始める。
「まずここに来ることになったきっかけは政府からの要請だったんだ」
「政府から?」
「うん、行ってくれないかー、ってね。おじさんが魔法について一ミリも知らなかったらひっくり返ってたと思うよ」
「え…元から魔法について知ってたの?」
「もしや先生も魔法が使えたりしたんですか?どんな魔法でしたか?!」
「いや…ミリアちゃんに頼んで以前使ってもらったことがあってね。それであることは知ってた、って感じかな」
少し話しづらそうに下に目線をそらしたのを不思議に思うが、間髪入れずにナノカが質問を投げかける。
「その話は今はいいわ。それよりも政府に呼ばれてからの話の続きをしてもらってもいいかしら」
ナノカが少し強引に話をぶった切ると男は感謝を示すように視線を下げ、また口を開く。
「うん、それでね。どうやら皆のお手伝いというか、なんというか…困ることがきっとあるからそれの一助になってやれ、みたいなことを言われてね」
「しかし…あなたは弁護士なのだろう?職業的に見るようで恐縮だが、他に適任がいたのでは?少なくとも一人目に指名されるほどとは思えない」
「それについては少しばかり汚い話になってしまうんだけど…どうやら政府の人たちはここを怖がってしまっているみたいでね。魔女についてなにか教育的なもので脅されているのか、罪悪感なのか…」
「どっちにしてもさー、ウチここに送り込んだやつがのこのこ顔出したらぶん殴っちゃうかも」
「それもあると思うよ。恨まれてたら自分に危険が及ぶだけだしね」
男はいかにも話しづらそうな顔をし、周囲の機嫌をうかがっている。
いかに自身が政府の人間でないとしてもこれから一定期間ともに過ごす人間が自分に反感を抱いていないか不安なのだろう、と推測できる。
「…そう不安そうな顔をしなくても、あなたを恨むような真似はしないと約束しよう。先に言ったような私たちをここへと連れてきたものならばまだしも、私たちを思って行動してくれている人を邪険にはしないしできないさ」
「……うん、ありがとう」
ふう、と嘆息し少し暗くなった雰囲気を払拭するように男は声を張る。
「それじゃあ、お手伝いの内容について詳しく話そうか」
「生活の手助け…という感じではなそうですわね?」
「そっちもできる限りのことはさせてもらうけど、本題ではないね」
「…なら、外に出るお手伝い、とかかしら。弁護士さんならそっちの制度にも詳しそうね」
「外に出るお手伝い…?」
どういうことだろう、と自分を含めた一部が首をかしげる。
男は少し驚いたように声を上げる。
「すごいね…まさにその通りだよ。金銭とか精神的な補助が主になるかな、もちろん必要な人に限るけどね」
「…しかしここには諸事情で牢屋敷に残りたい、という子たちもいるんだ」
「それも問題ないよ。そんな子がいると思ってると想定もしてるし、戸籍等の問題で戻ることができないと考える子もいるだろうしね」
一部の少女の顔が曇る。
エマたちが来るよりも前にここに囚われ、裁判にて魔女化し保存されていた少女たちである。
自分が世界に取り残されていることを改めて認識されたのか、泣き出す少女もいた。
「…あぁ……えーと」
「…気にすることはない。仕方がないこととあの子たちもとうに分かって──「戸籍に関してはどうとでもなるよ」──なんだと?」
「ごめんね、話が前後しちゃった。改めて、戸籍に関してはおじさんのほうでどうとでもできるよ。非も負い目も政府にあるからちょっと脅せばいくらでも偽造できる」
「…ね、ねぇヒロちゃん」
「……なんだ、エマ」
今までそれとなく避けられていたがヒロも酷く混乱していたのか、こちらの声に返答する。
とはいえ、そのことに関して言及する暇もないほどこちらも困惑していた。
「戸籍の偽造って、とってもまずいんじゃ…?」
「まずい、どころの話ではない。犯罪行為だ。まったくもって正しくない」
(…本来ならそのはずだが)
先ほど顔を曇らせ泣いた少女のうち一人が男に走り寄る。
きっと牢屋敷内で過ごすのは当人にとって本意ではなかったのだろう。
少し展望を男が話すと、みるみる顔色が良くなり、抱きしめようとすらしている。
(これを正しくない、と弾劾することこそ正しくない)
フッと笑みを漏らすヒロを見て、どこか嬉しくなる。
少なくともこの光景を見て断罪するようなことがなくて一安心、ともいえるだろう。
男の方に目をやると、抱きしめられる直前までいっていたが、ミリアがどうにか引きはがして少女を落ち着かせていた。
あまりにも必死なものだから、この場にいる少女たち全員の思考はおそらく一つになっていた。
マーゴの微笑みがより深くなっていたため、ミリアへのからかいはしばらくは止まることはないだろう。
「ま、まぁそっち方面の相談事があればいつでも言ってほしいな」
「よかったですね!ハンナさん!」
「な、なにがですの…?」
「えぇ?だって前に言ってたじゃないですか。ここから出たら政府にお金請求してやるんだー、って」
「うぐ!…ま、まぁ言いましたわね…」
「ふふ、そっち方面でも、いつでもオッケーだよ」
「…よし!じゃあ一段落ついたところで自己紹介をしようか!まずは──」
またもレイアが仕切り始めるが、今度こそ割り込んで異を唱える者はいなかった。
名前、特技、趣味…等、この場にいる少女たちの自己紹介を終えるだけでも、かなり時間が経っていたため、その場はお開きになった。
幾人かの少女はレイアを囲み、素早く連れ去っていた。
きっとこれから質問のふりをしたからかいが始まるのだろう。
それとなく、またシェリーやハンナと集まると男から声がかけられる。
さきほどのふわりとした笑みとは違い、仕事をする大人の目だ。
「すまない、三人とも。シェリーちゃんについてお話をしたいんだが、構わないか?」
「…それわたくしたち居ていいやつですの?」
「二者面談は怖いですよー!エマさん、ハンナさん、一緒に居てくださーい!」
「おじさんは構わないよ。むしろ周知してもらった方がいい問題かもしれないからね」
「なら…」
ハンナと目を合わせ、席に着く。
長く話して疲れていたのか、男が伸びをする。
その行動の中にもできる限り重い空気にしないように、という気づかいを感じる。
「さて、まずは──
──シェリーちゃんの身体の状況についての認識のすり合わせを始めよう」
ここまでで導入終わりです。
書きたいものが出来次第書き始めるので、不定期にはなりますが見ていただけると幸いです。