蜘蛛の巣の親方 "天殺星" 作:愛を取り上げる人
それなら俺が書き換えればいいじゃない!って感じの見切り発車です。
続くかは分かりません。
「……この子か。」
「そうだ。あなたの血を継いだ…尊い子だ。」
目の前の赤子を見つめながら、和服を着た男が呟くと、それに答えるように、黒いスーツを着た男が口を開く。
「この子の感じる時間に対する感覚と適性は、実に絶妙だ。…天殺星、あなたに匹敵するほどに。」
「…そうか。それは楽しみだ。」
そう言ったきり黙り込んだ天殺星を気に留めず、黒スーツの男…リアンは話を続けた。
「しばらくは、自分だけの世界観で適度に時間を持つ期間を置くつもりだ。」
「へぇ、こいつが…。使い物になるまで待つとなりゃ、だいぶかかるんじゃないか?」
赤色のスーツを着た女…ヴァレンチーナが口を挟む。
「ふふ…私たちが丹精込めて削るほど、価値は高まるでしょう。」
風変わりな白い服とハットを被った男…カリストが楽し気に話す。
「こいつ見ろよ、今俺を見て笑ったぞ!なっ?みんな見たか?」
紫色の特徴的なコートを羽織った男…マティアスが子供を見つめて騒ぐ。
そうしていると、マティアスが、ふと気づいた疑問を口にした。
「でもさ…なんて呼べばいいんだ?」
「それはこれから相談すべき問題ですね。私は個人的に、エリサという名が…。」
「…あ。」
ピピッと、カリストの話を遮るように電子音が鳴り響く。その音に反応したリアンが胸元のポケットから端末機を取り出し、口を開いた。
「子供の名前はヨシヒデがいいだろう。」
「…指令か?」
「ああ。」
ヴァレンチーナの質問に、リアンが手短に答える。
「ふぅ…指令のおっしゃることなら従うしかないね。まあ、エリサだか何だかよりはマシだ。」
「ヴァレンチーナ、あなたから命名センスについて語られたくはないのですが。」
ヴァレンチーナが嘲笑混じりの言葉を吐き出すと、不愉快そうにカリストが返す。
「……むぁ!」
「こいつ…ヨシヒデって名前が気に入ったみてぇだな?よし!今日からお前の名前はヨシヒデだ。ヨシヒデ!」
反応を見せた赤子を見たマティアスが笑いながら話す。
「……。」
しかし、そんな中でも、天殺星は口を開かなかった。
「天殺星、しばらくの間この子はあなたが預かっていろ。」
リアンの言葉に、天殺星は表情を変えず、しかし何処か不服そうな雰囲気で口を開いた。
「よりによって…なぜ俺なんぞを選んだ?」
「そりゃあ、あなたの血縁だからな。目元以外はそっくりの。」
「…俺が言いたかったのは、そういう質問じゃなかったんだが。」
静かに此方を見つめる天殺星を見て、リアンは静かにこう言った。
「…『よりによって』という単語ほど、ここに落とされた俺たちに無意味な言葉はない。」
「なんだ、まだその愚痴か?飽きないねえ。」
「………。」
ヴァレンチーナが冷やかすような言葉を紡ぐが、天殺星は沈黙を保つ。
そんな光景を、リアンはただ見つめるだけだった。
「ふむ…。」
「こうして胸ぐら掴みながら、じわじわ絡み合っていくんだ。縁と業が絡まり続ければ、いつの間にか蜘蛛の巣ができあがる。」
「遂に得られた子どものために、各々が最善を尽くす時だな。」
「…ぱ!」
「お前…。」
赤子が手を伸ばす。この中で唯一血の繋がった親方へ。
「…びゃ!」
「…どうかお前は、俺に似てくれるな。」
「お前は…大切なものを守り、慈しめるようになってくれ。」
「どうか、自分だけの狭い世界で終わらずに、広い世界を謳歌して、幸せになってくれ。」
「どうかお前は……俺のように奈落に引き摺り込まれないでくれ。」
「そのためなら俺は…幾ら切り裂かれても、幾ら不幸になっても構わないから。」
「だからお前は…決して俺に似るな。分かったな?」