兄妹←ディス→コミュニケーション   作:首絞め井戸3級

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キッズの浅知恵

 

「でけえええ!」

 

「触るな! この変態出涸(でが)らしが!! マジで殺すからね、というかこれもう殺さない理由が無いでしょ。あのさぁ……兄妹だからって何しても許されると思ってるの? 客観的に考えてみてよ。他人だったら即通報案件じゃん。いや、家族でもだけど。っていうか、なんでそんなことするわけ? 妹の胸触ってて楽しい? ほんとあんたみたいなのが兄だってことが人生最大の不幸だわ」

 

 妹は突然の接触に目を見開きながら反射的に拳を握りしめる。鋭い視線と頬が僅かに赤みを帯びている、これは『照れ』ではなく『怒り』の赤みだろう。

 

「ごめん、モテなくてつい……これ以上はしないから! 手を今の状態でキープして動かさない! だからこのまま浸らせてくれ! 頼む!」

 

 俺は胸から一切手を放さない勢いで頼み込む。ちなみに妹はよく俺と茶葉を間違えてるせいか『出涸らし』と呼んでくる。

 

「モテないからって身内に手を出すとか、その発想が既に終わってるわ。常識ゼロなの? あのね。『これ以上しない』っていう選択肢の前に『そもそも触らない』ことが正解って分からない? それに『頼む』じゃないから、拒否されてるのに続ける厚かましさ、普通に刑法176条違反ね。ほら、今すぐ離しなさい、警察呼ぶまでカウント、3、2、1、…………なに? 無敵なの? 無敵の人なの? 本当に手を動かさないことに有言実行を全振りしたの? カンスト勢なの? それとも出涸らしは妹からの正当防衛を顔面に食らいたい? 理屈じゃ分からないなら、別に身体で覚えてもらうけど?」

 

 妹は俺が胸を触ってる手の手首を掴み、引き剥がそうとしてくる、徐々に力を込めてきて俺の手が鬱血していく。

 

「痛みか、仕方ない。俺が可愛い妹に殴られる覚悟も無くこの場に立っているとでも。さあ! どこからでもかかってこい! 妹ラブ!」

 

「マジでキモい、妹ラブじゃないから」

 

 殴るのはフェイントで妹の膝蹴りが腹部に直撃した、愛には痛みが伴うんだね。

 

「いい? 私が可愛いとかそういう問題じゃないの。近親相姦は理屈抜きで本能的にもアウトなの、分かる? 社会秩序維持の観点が。あっ、分からないか低学歴だから。あのさ、こんなことしてる暇あったら外に出て女性と普通に会話しなよ。マジで勘弁してくれない? 今日のご飯当番は私なんだけど、普通にお前の分だけ毒入れたくなるわ。家族だからって甘えないで」

 

 青筋を立てながら冷静さを取り戻そうと嘆息を漏らして台所に向かう妹に、腹部のダメージで床に蹲りながら謝る。

 

「ううっ……ひっぐ……お兄ちゃんが全面的に悪かった……でも胸は柔らかかった……」

 

「はぁ? 感想は求めてないんだけど。キモすぎ」

 

 冷蔵庫を開けて食材を取り出しながら、

 

「『悪かった』と言う前に行動で示して。口だけなら誰でも言えるじゃん」

 

 包丁を持ち、まな板の上で野菜を刻み始める。俺が同じことやったら野菜を食べなくなりそう。

 

「それにさ、泣いたフリをして同情を買おうとするの小学生レベルの浅知恵だよね」

 

 鋭い包丁捌きでネギを細かく切り刻んでる。

 

「まぁいいけど。とりあえず今日の夕飯、出涸らしの分はカップ麺ね。作ってあげる義理も無いし」

 

 鍋に水を入れながらチラッとこちらを振り返る妹。

 

「っていうか、いつまでそこでメソメソしてるの? 大人なんだから立ち直りなよ。誰も立ち上がらせないからね」

 

 湯気が立ち始めた鍋を見守りながら、

 

「あー、もう! 本当に面倒くさい兄貴だわ。こんなんだから彼女できないんじゃない?」

 

 妹は深く息を吐き出し、肩を落とす。俺もいい加減に床から立ち上がり台所に向かう。

 

「女友達紹介してくれ!! とびっきり可愛い彼女候補を! 妹が可愛いから知り合いも可愛いに違いない! 策士な俺!」

 

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