「復讐のアーカイブ」   作:蛙先輩

1 / 14
視点の入れ替わりが激しいかもしれないけど、どうかご容赦ください!


第1話「這い寄る脅威」

 無機質な部屋の中、フードを被った青年が一人、扉の前に立っていた。これから行く場所の事を考えて、懐には銃や手榴弾を備えていた。

 

 手元のある鍵を鍵穴に差し込むと鍵穴を起点に扉全体に青い電気が走った。そして、ゆっくりと扉を開けた。扉の向こう側に足を踏み入れると仄暗く、広い洞窟の中だった。

 

 記憶を頼りに進んでいくと無数の鳥の形した鉄屑や、黒いルービックキューブのような物体が転がっている。懐に入れていたタブレットを取り出して、指先で操作していく。地面が小刻みに揺れ始めた。

 

 地面の小石が音を立てて、揺れた。目の前にあった鉄の物体が動き始めたからだ。青年はこれから自身が引き起こす事を考えただけで笑みを浮かべた。

 

 そのまま視線を逸らすように一枚の写真に目を向けた。そこには制服姿の女学生数人と一人の若い男性が写っていた。

 

「さて、復讐を始めようか」

 青年は写真を睨みつけて、呟いた。

 

 

 

 

 

 燃え盛るキャンプ場の中を彼は息を切らしながら、走っていた。あちらこちらに人間の死体が散らばっている。ほとんどの死体は銃弾を浴びて、見るも無残な姿だ。

 

 彼はそんな地獄絵図に吐き気を覚えながらも、目的地に向かった。

 

 たどり着いた時、そこには何もなかった。かつて学舎があった小屋は木っ端微塵に破壊されていた。彼はその場で膝を着いて、喉が引きちぎれそうな勢いで叫んだ。

 

 彼は布団から飛び起きた。額には光沢を帯びるほどの汗をかいていた。時刻は夜中の三時。まだ起床時間ではない。

 

 しかし、あんな夢を見たせいか、二度寝する気にはなれなかった。

 

 落ち着く為に深呼吸をした。荒波のような心がゆっくりと戻っていった。視界の端に山積みの書類が乱立しているデスクが映った。

 

「そういえばまだまだ、あるんだった」

 膨大なタスクの量にため息を零しつつ、ゆっくりと体を起こして、デスクに向かった。席に座り、引き出しを中から一枚の写真を取り出した。

 

 そこには今よりも若い頃の彼と幼い少年が写っていた。先生は写真越しに少年の顔を親指でそっと撫でて、仕事に戻った。

 

 

 

 

 

晴れ渡る青空の下、先生はアビドス高等学校に足を運んでいた。在校生達と共に未だに残る学園の借金を返済するプランを練るためだ。

 

「それでは長期的な借金の返済プランを考えましょう」

赤いメガネが特徴の生徒、奥空アヤネがホワイトボードの前で借金の返済について語っていた。

 

「はい! FX!」

 同じく、黒髪のツインテールが特徴の後輩。黒見セリカが提案したが、アヤネに即座に却下された。すると隣にいた温和な雰囲気漂う少女、十六夜ノノミが手を挙げた。

 

「ではアイドルを!」

 

「却下です!」

 

「ここはぎんこ」

 

「絶対に却下です!」

 机の端に座る白銀の髪の少女。砂狼シロコは瞬時に却下された。おそらく強盗だ。

 

「まあまあのんびり行こうよ〜」

 アビドス高等学校唯一の三年、小鳥遊ホシノが机に突っ伏しながら、あくびをしている。

 

何度も見た平和な光景を微笑ましく見ているとシロコと目が合った。

 

「ん。先生は何が良いと思う?」

 

「わ、私は」

 突然、平和な空気を壊すように銃声が鳴った。外からだ。彼は窓の外に目を向けると校門の方から無数の人影が見えた。

 

 よく見ると全員ヘルメットを被っていた。先生は目を見開いた。

 

「あれはカタカタヘルメット団!?」

 

「どうして!? 彼女達を操っていたカイザー理事はもういないはず」

 

「おい! 出てこいよ! アビドスの」

 リーダー格の赤いヘルメットの少女が声を張り上げる。

 

「何をしに来たんだ! 君達は!」

 

「ああ?見てわかんねえのか?」

 先生の問いかけにリーダー格の赤いヘルメットの少女が銃を構える。

 

「この学校を乗っ取りに来たんだよ!」

 団員達が声を荒げながら、銃を向けてきた。

 

「話し合いは無理みたいだね。みんな」

 先生は愛する生徒達に目を向けた。彼女達が決心したように頷いた。

 

 そこからはすぐさま生徒達にインカムをつけさせて、所定の位置に移動するように指示を送った。

 

 そして、痺れを切らしたカタカタヘルメット団の団員が動いた、その瞬間、シロコが窓から飛び降りた。

 

「馬鹿が!」

 敵の数人が落下するシロコに向かって銃弾を放った。

 

「今だ! ノノミ!」

 

「はい!お仕置きの時間ですよ〜」

 先生の一声で横の部屋に移動していたノノミがヘルメット団にお得意のガトリングを打ち込んだ。

 

「うわあああ!」

 銃撃の雨を浴びた団員達は露骨にパニックを起こした。

 

「ホシノ! セリカ! 残りの子達を!」

 

「了解!」

 

「任せて〜」

 ノノミの連射攻撃に場が混乱しているうちに、セリカとホシノが残党を一人、二人と倒していく。

 

「クソ野郎!」

 団員の一人がセリカの眉間に向かって、引き金の指をかけた。しかし、発砲は叶わなかった。

 

 着陸に成功したシロコの強烈な回し蹴りをもろに受けたからだ。

 

「シロコ先輩!」

 

「気をつけてセリカ」

 

「なめんじゃねえ!」

 近くにいた団員が大声を張り上げながら、銃を構えたシロコにはどこか近未来的に見えた。無機質でどこか機械的な近未来的な銃だ。

 

「シロコ! 一旦退避だ!」

 先生はシロコに下がるように言った瞬間、団員が引き金に指をかけた。凄まじい勢いで光線が放たれた。

 

「ん!」

 シロコは背筋に冷たい物を感じて、瞬時に躱した。数秒後、後方から爆発音が聞こえた。あの光線が地面を抉ったのだ。

 

「シロコ大丈夫か!?」

 

「ん、大丈夫。でもまともには受けるのはまずい」

 

「みんなあの武器から距離を取るんだ! アヤネ! 君にやってもらいたい事がある!」

 隣で先生のサポートをしていたアヤネに一つの作戦を告げた。

 

 

「もう〜いきなり飛び出したらダメですよ! シロコちゃん」

 

「本当よ!」

 シロコの周りを固めるように仲間達がいた。皆、武器を構えて臨戦態勢に入っていた。

 

「カタカタヘルメット団だけど前とは少し武器が違うね」

 

「ん、でもやることは同じ」

 

「学校を守ります!」

 

「いくわよ!」 

 セリカの掛け声とともに一斉に走り出した。そこからアビドス勢の猛攻が始まった。

 

 ノノミのガトリングによって敵陣が粉塵にまみれた間にシロコはホシノ、セリカとともに制圧していく。

 

「武器は変わっているけどそんなものじゃ倒せませんよ〜」

 

「粉塵ごときで怯むなー!」

 

「隙あり!」

 セリカが団員の一人のヘルメットを銃撃を破壊した。破壊された団員は尊厳を奪われたようにその場に膝をついた。

 

その近くでシロコが赤いヘルメットの少女の元に駆け寄るために近くの塀に隠れていた。

 

「アヤネ! シロコに弾倉を支給して!」

 

「はい!シロコ先輩!」

 彼の指示を受けたアヤネがシロコに弾倉を持ったドローンを飛ばした。

 

シロコのインカムに声が聞こえて、目を向けるとアヤネのドローンが飛んでいた。そこから弾倉が落とされた。

 

「アヤネ。ナイスタイミング」

 シロコがアヤネから受け取った弾倉を装填するとリーダー格の少女の元に走った。

 おそらくリーダーを倒せれば、他の隊員達の気力を削ぐことも出来る。

 

「くそ! これでも喰らえ!」

 リーダー格の赤いヘルメットの少女が何かを取り出した。黒い四角形の物体だった。それを向かって勢いよくシロコに投げつけた。

 

「シロコちゃん!」

 ホシノが彼女との間に割って入り、盾で上空にうち飛ばした。

 

 数秒後、鼓膜が破れるような轟音とともに青い爆炎に覆われた。その衝撃的な光景に先生は息を飲んだ。

 

 もしあれが生徒達の元に来ていたらきっと無事ではすまなかったからだ。

 

 それは他の生徒達も同様だった。

 

「なっ、なんだよ!?これ? 聞いてねえぞ」

 四角形の物体を隊員も上空を見上げて声を震わせていた。先生はその隙を逃さなかった。

 

「シロコ!リーダーの子を抑えて!」

 

「ん!」

 先生の一言で気を捉えていたシロコがすぐに駆け出した。動揺して声を震わせる赤いヘルメットの少女に鉛玉を数発打ち込んで、トドメにお得意の回し蹴りを鳩尾に叩き込んだ。

 

 シロコに続いて、アビドスの面々が残党達を瞬く間に制圧した。

 

「みんな。お疲れさま」

 先生はアビドスの生徒達に労いの言葉をかけた後、アヤネとともにシロコ達の元に向かった。

 

 

 

 

「これは何だい?」

 先生は押収した武器の中から見つけた黒い四角形の物体を手に取った。これが先ほど上空で凄まじい勢いで爆発したのだ。

 

「知らねえよ! もらったんだよ。なんか威力を確かめたいとかどうとか言っていたからな。でもあんな馬鹿げた威力があるなんて」

 

「あんた達ねえ!知らないで済まされるわけ」

 セリカが眉間に皺を寄せて、銃を構えた。

 

「本当だよ! この兵器使ってアビドスを潰してくれって」

 

 

「誰に依頼されたの?カイザーコーポレーション?」

 

「ちげえ。若い男だった。待ってくれ。連絡先があるはずだ」

 リーダー格の少女のスマホを手に取り、依頼主の電話にかけた。

 流れたのは電話が対応されていない事実を告げる無機質なアナウンスだった。

 

「繋がらない!? どうなってんだ!」

 リーダー格の少女が露骨に動揺していた。おそらく彼女も嵌められたのだ。事態は雲を摑むように不明瞭になり始めていた。

 

 

 アビドス砂漠の中に半端に埋もれたビルの屋上。フードで顔を隠した一人の青年が双眼鏡である一点に意識を向けていた。

 

 そこには自身が送り込んだカタカタヘルメット団とそれに抗う女生徒達とその先生が映っていた。

 

 そして、団員のリーダーに渡した爆弾が青い炎となって青空を焼いた。

 

 あまりの衝撃に離れた彼のところまで爆風と砂が飛んで来た。

 

「まあ、威力は上々か。でもこんなものじゃまだダメだね」

 彼は双眼鏡を下ろして、踵を返した。

 

「さて次のプランだ」

 彼は次の計画を実行するためにその場を立ち去った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。