殺伐とした空気が流れる廃墟の中、忙しなく動いていた思考が急ブレーキを踏んだように停止した。
先生は目の前の青年を知っていた。忘れるはずもない。その目に映る彼は間違いなくーー。
思考が停止した先生を現実に引き戻すように銃声が聞こえた。それは目の前の青年が放ったものだった。
「先生! 大丈夫か!?」
サオリが先生の前に壁になるように立った。
「あの男が今回の首謀者か」
サオリの目が血走っていた。濡れ衣を着せられたこと。アズサの件。それらの元凶が目の前にいるのだ。
同じくそばにいた他メンバーも青年を睨みつけていた。
「ここで拘束する!」
「出来るかな?」
青年が不敵な笑みを浮かべた瞬間、何かがビルめがけて突っ込んできた。よく見るとそこにはラードーンがいた。シロコ達を振り切って、こちらに飛んできたのだ。
「オオオオオオオオ!」
機械竜が先生達に雄叫びを上げて、動きを牽制した。至近距離での迫力に一同が足を止めた。その隙に青年は機械竜の頭頂部に乗った。
「じゃあね。先生。また近いうちに」
「待て!」
先生は動きを止めようと走り出したが、彼が不敵な笑みを浮かべると、巨大な機械竜と共に消えた。
騒動の後、彼は作戦会議も兼ねて、すぐに生徒達に招集をかけた。連邦生徒会の会議室の中には多くの生徒達が集まっていた。
アビドス廃校対策委員。アリウススクワッド。ゲヘナの万魔殿。トリニティのティーパーティー。ミレニアムのセミナー。
そして、連邦生徒会の面々を含んだ学園の面々がいた。皆、ただならない様子で席について、先生の方を見ていた。
無理もない。普段なら飛ぶような勢いで生徒達を歓迎してくれるはずの先生が明らかに憔悴しているのだ。
先生は俯きながら、椅子に腰掛けている。先ほどの廃墟の出来事が上手く咀嚼できずにいた。
「先生。教えてください。例の侵略者について。何かご存知なんですか?」
沈黙を切るように連邦生徒会会長代理の七神リンがいつもより鋭い眼差しを彼に向けた。
アヤネのヘリに搭載されていたカメラが飛び去っていくラードーンを捉えていたのだ。
このような事態になった以上、彼女達が気になるのも無理はない。彼は胸の奥に引っかかっていた錘を下ろすようにため息をついた。
「……私のせいだね。まさか、この話をする事になるなんてね」
秘めた過去と向き合うためにゆっくりと席を立ち、生徒達の前に立った。向けられる無数の眼差しに応えるべく、重い口を開いた。
「一連の騒動を引き起こした首謀者。ユドルは……私の最初の教え子だ」