地に伏した最愛の後輩達を見て、ホシノが重くため息をついた。
明らかに己の中で渦巻く激情を抑えようとしていた。
「先生。あとは任せて」
先生の盾になるように小柄な少女が割って入る。
「……暁のホルス」
ユドルが目の色を変えて、呟いた。
「へー おじさんの事知ってるんだ」
「要警戒対象として見ていたよ」
「そっかそっか。ならもうやめにしない? その場で膝をついて銃を捨てるなら攻撃しないよ?」
異色の双眸が彼を捉える。いつもの柔和な口調だが目は笑っていない。
「悪いね。この世界に来た時点で情けは捨てているんだ」
「なら仕方ないね」
ホシノが説得を諦めたのか、大きくため息をついた。数秒後、銃撃が始まった。
一つの失態が命取りになるような凄まじい攻防戦だ。
「あのホシノと互角……」
ホシノの猛攻と互角レベルに張り合っている。
人工ヘイローを装着したユドルはキヴォトス最高クラスの実力者と張り合える実力を持っていたのだ。
身体能力はもちろんのことだが、彼自身の銃や武器の扱いも洗練されていた。
それだけ彼が過ごした環境が過酷だったという事だろう。
銃声が二人の争いの激しさを表していた。移動と着弾であちらこちらで粉塵が上がる。
それらを鉛玉が切り裂いていく。最早どちらが命を失ってもおかしくないほどだ。
「問題なのはその頭についたヘイローまがいのやつだね」
「ご名答。だけど僕に弾を当てられないようじゃ壊すのは無理だぞ」
「それはお互い様じゃないかな? 君も当てられてないよ」
ホシノが目を鋭くして、ユドルを挑発した。
「ならこれはどうかな?」
ユドルが悪戯な笑みを浮かべて、何かを投げてきた。ルービックキューブのような形をした黒い四角形の物体だ。
ホシノは危険を察知して、盾で身を守った。数秒後、周囲が一気に青白い炎に包まれた。四角形の物体が凄まじい勢いで爆発したからだ。
「この前、カタカタヘルメット団にもたせたものだね」
「ああ、Blue Cube。三大校に送ったのはこれより少しだけ威力を上げた物だよ」
「明らかに人に使っていいものじゃないと思うよ」
「常日頃、鉛玉飛ばしている君達に言われたくはないね!」
ユドルが絶えず、銃撃を続ける。ホシノは盾の横からユドルの動きを確認して、手榴弾を投げた。
盾を持って、後方に引き下がった後、爆発した。数秒の静寂が流れた後、煙を振り払うようにユドルが飛び出してきた。
そして、懐からBlue Cubeを二つ取り出して、投げつけてきた。二つが盾越しに爆発した。
「ぐっ!」
あまりの衝撃に耐えきれず、ホシノは態勢を崩して地面に転んだ。
「Cubeを至近距離で二つ受けても耐えるなんて、その盾丈夫だね。君も」
ユドルが死神が命を刈り取ろうとするように、銃口を彼女に向ける。
「さようなら。暁のホルス」
「ホシノ!」
侵略者の銃口が暁のホルスへ向けられそうになった時、
紫色の閃光が轟音とともに飛んで来た。ホシノは突然の事態に驚いていると目の前に見覚えのある背中が降りてきた。
小柄な体に似つかわしくない程、巨大な武器と悪魔の翼。ゲヘナ学園最強の生徒がそこにいた。