先生は安堵の目で広げられた二枚の翼を見ていた。その背中から伝わってくる圧倒的なオーラ。
「ごめんね。先生。遅れて」
「ナイスタイミングだよ。ヒナ」
先生はヒナに微笑むと彼女は頰を少し赤らめた。
「空崎ヒナ。君がここにいるって事はそうか。ケルベロスはやられたのか」
「ええ、随分と面倒をかけさせてくれたわね。侵略者」
ヒナの紫色の瞳がユドルを睨んでいる。その出で立ちは魔王を彷彿とさせた。
次の瞬間、ヒナが愛銃の引き金に指をかけた。ものすごい数の銃弾が放たれた。ユドルがすぐさま、近くの建物に身を潜めた。
「隠れたか」
ホシノとヒナが背中を合わせて、彼からの奇襲に備える。
「二人とも気をつけて!」
先生は二人に一層警戒する事を促すと二人は静かに頷いた。その時に廃ビルから何かが飛んできた。
消火器だった。同時に消火器に銃弾が撃ち込まれて、中の薬剤が周囲を真っ白に染めた。それと同時に足元に何かが転がってきた。Blue Cubeだった。
「ヒナちゃん!」
ホシノの声とともにヒナが即座にその場から離れた。踏み出したと同時に四角い物体は青色の輝きを放って、爆発した。
消火器の薬剤が爆発で吹き飛んだ後、ユドルから銃弾が飛んできた。ホシノはすぐさま盾で防いで、引き金に指をかけた。ユドルが銃撃を躱し、三つのBlue Cubeを投げ込んできた。
「任せて」
ホシノの近くにいたヒナが自身の銃に指をかけた。幾千にも思える紫色の光がBlue Cubeを即座に破壊した。
そこからさらに銃撃戦が続いた。キヴォトス最高クラスの二人を持ってしても、ユドルを止めきれずにいるのだ。
「隙あり!」
ユドルがヒナの空いた横腹に向けて、発砲した。しかし、その一撃はホシノの盾によって防がれた。ヒナがお返しと言わんばかりに撃ち込んだが、ユドルが容易く躱した。
「避けるの上手いね」
「君たちと違って、元は銃弾一つで命取りの身。銃弾への警戒度が違うんだよ!」
ユドルが銃を向けようとした時、突然、歯軋りをしながら、右手で右目を押さえはじめた。
「ぐっ!」
塞いでいる右目から真っ赤な血がドロドロと流れ出ていた。おそらくあの人工ヘイローは使用者の脳に大きな負荷をかけるのだろう。
「ちゃんと点検したはずなんだがな……」
ユドルが自嘲気味に呟いた。しかし、疲弊したタイミングをホシノ達は見逃さなかった。
ホシノは一瞬にして間合いを詰めて、引き金に指をかけた。鉛玉がユドルの右肩を掠めて、赤い線を作った。
キヴォトス上位の実力者である二人に追い詰められて、後退していく。鳴り止まない彼女達の銃撃にユドルは徐々に防戦一方となった。
「がっ!」
さらに彼の劣勢を決定づけるように右目と鼻から血が出た。
人工ヘイローの副作用が再発したのだ。その隙を彼女は逃さなかった。
ヒナは怯んだ彼に何度も銃弾を撃ち込んだ。紫色の閃光がいくつも彼の体に直撃していく。
彼は何度も地面を転がり、倒れ込んだ。
態勢を立て直そうとした彼に銃口が二つ突きつけられた。
「これで終わり」
ホシノが冷徹な目を作って、彼に告げる。
対する彼は勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。