人工ヘイローが砕けて、ユドルが力なく倒れた。ヘイローが砕けた事により、彼を取り巻いてエネルギーが霧散した。
レーザーが消えてホシノ達が疲弊した顔でその場に崩れた。連戦に続いて、この死闘。彼女達の体はもう限界だったのだ。ここで終わる事が出来てよかった。廃ビルの方にいるシロコに目を向けて、インカムで成功を伝えた。
「シロコ。作戦成功だ」
「ん。よかった」
インカム越しにシロコに伝えると、廃ビルから手を上げる彼女が見えた。
「あの時、シロコが無事で連絡くれたからこの作戦が上手くいったんだ」
六人に意識を向けさせた後に隠れていたシロコが人工ヘイローを破壊する。ユドル自身も彼女が動ける事まで予想していなかったのだ。
「他のみんなは?」
「ん。辛そうだけど命は大丈夫」
「そうか。本当によかーー」
アビドスの面々の無事に安堵した時、周囲の空気が凍りついた。彼が動いたのだ。
「ユドル……」
先生は未だに戦いを続けようとする教え子に目を向ける。既に色彩の影響はなくなっていたがその目からは殺意が滲み出ていた。
「もう勝負はついた。だから、もう」
「ま、まだ……終わるわけにはいかないんだ!」
ユドルが懐から何かを取り出した。それは鋭利な刃物だった。周りの空気がさらに緊張感を帯びた。
「死ねええええ!」
ユドルが強く地面を蹴り、先生に迫ってきた。生徒達は死闘の末、その場から動けない。シロコの方は距離が遠くて間に合わない。彼は覚悟を決めた。
迫り来るユドルの凶刃。それを彼は真正面から受けた。
周囲に静寂が走った。生徒達は壮絶な光景に思わず、言葉を失っていた。鋭利な刃物が刺さった先生の右腹部には生暖かい感覚が広がった。
対するユドルも目を見開いていた。なんらかの抵抗を予想していたにも関わらず、彼が黙してナイフを受けた事に困惑しているのだ。
「どうして……」
「……ずっと後悔してた。君を救えなかったこと。ずっと悔いていた。自分の無力さを。あの日のことを考えない日はなかった」
先生は痛みに耐えて、言葉を喉の奥から絞り出していく。か細い息を吐きながら困惑する彼の肩に手を回した。
「ユドル……ごめんね。あの時、もっと早く駆けつけていれば……」
先生の目から静かに涙が流れた。彼がこの数年間、言いたくても言えなかった言葉だ。
「くそ……なんで、こんな……」
ユドルのナイフを握る手が小刻みに震えた。しばらくして前髪で隠れた目元から一粒の雫が溢れ落ちた。
その涙を見た瞬間、先生の視界が揺らぎ始めた。全身から力が抜けてそのままゆっくりと横に倒れた。朧げな視界の中、駆けつけるシロコの姿を見て、意識を手放した。