「先生!」
アヤネの声が、耳に装着したインカム越しに届いた。ヘリからアビドス高等学校の生徒達がこちらに手を上げていた。
「みんな!」
アヤネがヘリからミサイルやガトリングでの攻撃を加えていく。その隙にヘリから垂らしたハシゴを使って、アヤネ以外のメンバーが素早く降りていく。
「うへ〜なんか見た事ないものが暴れているね〜」
「ん、やることはいつもと同じ」
シロコ達が引き金に指をかけて、ラードーンに銃撃を加え始めた。
「先生。あれが応援部隊か?」
「うん。とても頼りになる子達だよ」
「あの人達どこかで見たことあるような」
「気のせいだろう」
ミサキが眉間に皺を寄せて、シロコ達を見つめて、サオリが軽く流した。
「先生。怪物の弱点は事前に送られていたもので全部ですか!?」
インカムからアヤネの声が聞こえる。サオリとともに隠れた際にアヤネ達には事前にラードーンの情報を送っていたのだ。
「うん! 任せてもいいかい?」
「はい!!」
「ありがとう。気をつけて!」
先生はアビドスの面々に伝えると、アリウススクワッドとともに首謀者を止めに向かった。
しばらく移動し続けて、ヒマリが言っていたビルを見つけた。鉄骨がむき出しの箇所があり、見る限り建設途中のビルのように見える。
息を殺しながら、ビルの中を進んでいく。このビルの中に全ての一連の騒動の元凶がいる。
緊張感のせいか、さっきよりも心臓の鼓動が早くなっている気がする。
「止まれ」
先頭を進んでいたサオリが手で制止を合図した。彼女の行動に応じるように物陰から何かが出て来た。
全身が金属の四足歩行の犬のような存在がいた。しかし、その犬には頭が二つあった。
「機械の犬?」
サオリが銃を構えながら、相手を睨んだ。先生は目を丸くした。黒服から受け取ったリストの中に記された機械獣だ。
「オルトロス……」
「知っているの?」
「ああ、資料に載っていた」
先生がそう言った時、オルトロスが地面を蹴って、走ってきた。視線の先はサオリではなく、彼だ。
「先生下がって!」
サオリとミサキが前線に立って、アツコとヒヨリは先生の護衛に入った。オルトロスが俊敏な動きで壁や天井を蹴りながら、縦横無尽に移動する。
その俊敏な動きに五感が警報を鳴らしているのを感じた。警戒していると途端に静かに鳴った。オルトロスが動きを止めたのだ。
時が止まったような静寂の中、辺りを見渡す。先生が生唾を飲んだ瞬間、左後方からオルトロスが飛び出してきた。
その鋭利な爪と牙は間違いなく彼に向けられていた。しかし、それが彼に届くことはなかった。
サオリがオルトロスのこめかみの部分を撃ち抜いたからだ。オルトロスは全身を痙攣させた後、動かなくなった。
「ノックもなしに不法侵入なんて失礼だよ。アリウス諸君」
奥の暗闇から声が聞こえた。突然の声に思わず、構えを取る。
闇の中から一人の人物が出て来た。顔はフードで被って見えなかったが、低い男の声だ。先生は直感的に察した。この人物が黒幕だ。
不良生徒達にオーパーツをもたせて、キヴォトス各地を襲撃して更生しようとしていたアリウスに濡れ衣を着せた全て元凶。
「こんな事はもうやめるんだ」
内からマグマのように湧き上がる怒りを抑えながら、口を開いた。この男だけは絶対に許さない。今まで感じたことがない強い感情に先生は思わず拳を強く握った。
「早く素顔を見せるんだ」
目に怒気を孕んだ先生に応じるように、相手が顔を隠していたフードを取った。
ロウソクの火が消えたように先生の目から怒りが消えた。
「久しぶり。先生」