超かぐや姫!~八千代の記憶に棲む者~   作:白豆男爵

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始まりはいつも突然

「ねえヤチヨ、どこにいるの...?」

 

歌を歌って男の子を看取った後、私は行く当てもなく砂浜を彷徨う。

ここから何年、過ごすことになるのだろう。

一体いつになったら、彩葉に会えるのだろう...

 

「わっ!?」

 

すると突然、体がフワッとした感覚に襲われる。

急に意識の中に何かが入り込んできたような、不思議な感覚だ。

 

『ようやく見つけた...おい、あんた!』

 

そんな声がどこからともなく聞こえてくる。

しかし辺りを見渡しても声の主は一向に見つからない。

 

『おい、後ろだっての!』

「後ろ...?」

 

私はおぼつかない発音で言葉を発しながら振り向いた。

するとそこには上半身が地表から、下半身が宙から突き出ている砂のような何かがこちらに語りかけていた。

 

『あんた、望みを言いな。私と契約しろ』

「...契約?」

 

その何かは、私に対してそう告げた。

 


 

「ねぇ、一つ聞いていい?」

 

私は自分の家で一人呟く。

本当なら帰ってくるはずのない返事。

しかし、今の私の状態においては例外である。

 

『なんだい?彩葉から話しかけてくるなんて珍しい』

 

その声が私の脳内に響き渡る。

女性のように高く、どこか凛としていて、それでいて年長者の風格を帯びたような声。

この状況だけ聞くと私が頭のおかしい奴に見えるが、本当に聞こえてくるのだ。

先に断っておくと、二重人格などではない。断じて。

 

「今日、バイト中に()()()()()()()でしょ?」

『...さて、何のことやら?』

「だって、バイトの途中からの記憶ないもん。また勝手に出てきたんでしょ」

『疲れてたんだよ、きっと』

 

その声の主は誤魔化すように適当に返事をする。

ある日突然、この声は聞こえるようになった。

それは去年の10月頃、バイトからの帰り道の事。

 

・・・

 

バイトが終わり、辺りもかなり暗くなってきた時間帯に帰路につく。

高校に進学してから約半年、ようやく勉強とバイト漬けの日々にも慣れてきた。

しかし次の瞬間、背中を押されたような感覚に襲われる。

 

『えっ?何?』

「ふう、とりあえずこの体でいいか」

 

そして、体の制御が効かなくなる。

私の意思に関係なく、その身体は動き出す。

何が起こっているのか分からない。

 

『ちょいちょいちょいちょい!どういうことこれ!?』

「ああ、この体の持ち主か。すまないが、しばらく借りるよ。そうしないとこっちも存在が危ないんでね」

『ちょっと待てい!』

 

私の静止を無視して、私の体は勝手に動き始める。

私がその歩みを進めようとする足を止めようと念じると、本当にその足は止まった。

 

『ぐぎぎぎぎ...!』

「なっ、う、動かない...?まさか!」

『何かわからんけど、勝手に人の体動かしてんちゃうぞ!』

 

そう叫んだ直後、急に自分の体の制御が利くようになった。

 

「あっ、戻った...」

『ちっ、特異点だったか...ハズレだね』

「ちょっと、人の体勝手に動かしといてハズレとは何よ」

 

私がそう言うと、私の目の前に、地面から上半身が、宙から下半身が現れる。

その姿は、まるで狐を人型にして体現したようなものであった。

 

「な、何!?バケモノ!?怪奇現象!?」

『私はヤクモ、イマジンさ』

「イマジン...?」

 

とうとう過労による幻覚でも見てしまっているのだろうか。

しかし先ほどの奇妙な現象が何よりの証拠である。

 

「...とりあえず、私の家で話そっか。ここじゃ人目があるし。詳しく説明してもらうからね?」

『ああ、構わないよ』

 

そして私は少し駆け足気味に歩き、家に帰宅する。

 

「それで、目的は何?侵略?」

『まあ一部を除いて大半のイマジンはそうだね』

「えっ?ホントに侵略...?私、今からどうなるの?」

『別にどうもしないさ。私も例外の内の一体だからね』

「そ、そうなの?」

『イマジンは遥か未来の人間の成れの果てだ。イマジンは人間に憑いて、記憶に残ることで存在を確立できる。その大半の目的は、契約者の願いを叶えて実体を得ることさ』

 

あまりにも荒唐無稽な話。

でも、人ではないそれが目の前に居てしまっては信じるしかない。

 

「つまりヤクモは、契約者に私を選んだってこと?」

『うーん、契約しに来たわけじゃないんだ。本当は別の契約者がいたんだが、少々喧嘩しちまって...』

「...私はその場しのぎで選ばれたと?」

『...』

「おい、なんとか言いなさいよ」

 

図星を突かれたのか、押し黙ってしまうヤクモ。

 

「私、正体不明の人外を匿ってる暇なんかないよ...」

『ともかく、しばらく体の中にいさせてくれるだけでいい!あんたに迷惑はかけないからさ!なっ?頼むよ、この通りだ!』

「うっ...」

 

ヤクモは手を合わせて、その顔を下げる。

私はその懇願するような様子を見ると、断らずにはいられなかった。

 

「...分かったわよ。好きにすれば?私、酒寄彩葉」

『...!彩葉!?そうか、アンタが...

「...?どうかした?」

『いや、何でもないよ。よろしくね、彩葉』

 

・・・

 

そうしてその日から、私とヤクモとの生活が始まった。

どうやら私の意志が弱い状態だと軽々と入れ替われるらしく、疲労しているときなどは勝手にヤクモが表に出てきたりする。

今のところ芦花や真実、バイト先のみんなにはバレてない...と思う。

 

『なぁ彩葉、少しくらいバイトの数を減らしてもいいんじゃないか?』

「何よ急に、そんなことしたらお金が足りなくなっちゃう」

『今の彩葉は相当体にきてる。バイト中に私が軽々入れ替われるくらいにはね』

「やっぱ入れ替わったんじゃん」

『前にも言ったけど、私が出てきても低減できるのは精神的疲労だけだ。肉体的疲労までは低減できない。その体、いつか限界を迎えるぞ?』

 

ヤクモは急にお説教じみたことを言い始める。

でも、その節々には私への心配が感じられる気がした。

 

「なんで、そこまで心配してくれるの?」

『なんでって、私のために決まってるだろ。彩葉に倒れられたら私が困る』

 

前言撤回、やっぱり自己中心だったかも。

ヤクモは言い淀むことなく、ケロッと自分のためだと言い切った。

 

「あっそ、今から勉強するから、邪魔しないでよ?」

『あいよ、言われなくても』

 

これが、酒寄彩葉の2029年10月から2030年6月までの話。

そしてここから約一カ月後、この生活は更なる波乱を迎えることとなる...




電王のイマジン周りの設定って結構フワフワしてるんですよね。
なのでお手柔らかに見ていただければと思います。
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