目の前にいる狐のような何かは、私に向かって契約しろと言い放ってきた。
本当なら、たくさんの疑問が湧いてくるのだろう。
しかし男の子を看取った直後の私は、気力ない疑問を投げかけることしかできなかった。
「...あなたは、誰?」
『私は何者でもない。今のところはね』
「どういうこと?」
『私はイマジンという種族でね、誰かの記憶に憑かなければ姿形も保てない哀れな種族さ』
イマジンという単語には聞き覚えがあった。
彩葉がそんな事を言っていたような気がする。
どこかで、聞いたことある口調。
時々彩葉から発せられた、別人みたいな口調にそっくり。
どこかで、聞いたことある声。
ツクヨミでいつも彩葉の隣にいた、あの人みたい。
「...ヤクモ?」
私は無意識にその質問を投げかけていた。
「あなた、もしかしてヤクモなの!?昔から生きてるって本当だったんだね!?」
『ヤクモ...?誰かの名前かい?それは』
「えっ、違うの?口調も声も同じだからてっきり...」
『あんたがそうだと言うなら、そうなのかもしれないね。あんたはこの時代から何千年も未来の世界を過ごしたんだろう?』
「それは知ってるんだ」
『あんたは特異点だ。それもかなり特殊なね。複数の時代に同じ自己が存在する稀有な例だ。そんなあんたと契約すれば、私の存在を強固なものにすることが出来る。その代わりに、あんたの願いを叶えるやるって言ってるのさ』
「私の、願い...」
そんなもの、決まっている。
だって、そのためにお仕事爆速で終わらせて地球に戻ってきたんだから。
「...彩葉に会いたい。私は、彩葉に会いたい!」
『本気かい?その人は何千年も先の人物なんだろう?』
「それでも...私はそのために地球に戻ってきたから」
『...まあいいだろう。大事なのは契約することだ。内容は何でもいい。』
「あと、私はあんたじゃなくてかぐやだよ!」
『そうかい、よろしくね、かぐや』
そんな会話をしていると、向こうから人が歩いてきた。
多分この辺の現地人かな?
「○△■※※★!!」
『なんて言ってるが分からないが、かぐやに用があるみたいだね』
「私に?」
そして次の瞬間、その人から大量の砂が落ち、異形の怪人が現れた。
「見つけたぞ、貴様がカグヤだな!」
「そ、そうだけど...何?」
『ちっ、もう来たのか...』
「貴様の命、貰い受ける!」
「わわっ、ちょっと待ってぇ!?」
その怪人は私に向けて拳を振りかぶる。
私はそれを間一髪で避けた。
「なんで急に襲ってくるのぉ!?」
『あんたが邪魔なんだよ。あいつらの目的にとってはね...仕方ない』
ヤクモがそうため息をつくと、砂が集まっていき、実体が形成される。
「おいあんた、悪いがかぐやはやらせないよ。こいつはもう私の契約者だ」
「貴様、我々の邪魔をするのか?そいつがどういう存在か理解しているだろう!?
「お生憎様、私はそういうのに興味がないんだ。ただ私は生きたいだけさ」
「...愚か者が」
「そっちこそ、かぐやを排除すれば歴史にどれほどの影響が起こるか分からないんだぞ?最悪の場合、私たちの存在だって...」
「あの方の命令は絶対だ」
「だから嫌いなんだ、あんたたちは」
ヤクモがそう言い放つと、どこからともなく腰にベルト?が出現する。
そして懐からパスケースのようなものを取り出し...
「変身」
<デュアルソード・フォーム!>
ヤクモは変身という掛け声と共にパスをベルトにかざす。
するとヤクモは装甲を纏い、その姿を変えた。
「あんた、私に化かされてみるかい?」
ある日のバイト帰り、家に帰ると、七色に光る電柱がそこにあった。
スマコンをつけっぱなしにしているのかと思って目を擦ってみたが、そういうわけでもない。
「ねえヤクモ、幻覚じゃないよね?」
『だとしたら、私ら揃って幻覚を見ていることになるね』
どうやら幻覚ではないらしい。
だがしかし、私にはヤクモの前例がある。
これしきの事で私は動じないのだよ!
そう思っていると、突如電柱はスモークを吐き出した。
そして扉のようなものが形成されていき、その扉が徐々に開いて...
「いや、開くな!」
咄嗟に抑え込んだ。
いや、流石に開くのは違う。
しかし、抑え込まれると思っていなかったのか、その扉は私の手を押し返し、強引に開けようとする。
筋トレだけはぬかっていたのが裏目に出た。
「ぐおっ、力づくかい!そうだ、ヤクモ!抑えてくれない!?」
『イマジン使いが荒いねえ、まったく』
私のお願いに応じ、ヤクモが表に出てくる。
これで一安心...と思っていた時期が私にもありました。
「あっ、こりゃ無理だね。押し返される」
『うっそぉ!?』
ヤクモが表に出ている間は、イマジン由来の怪力が適応される。
前に家のドアがつっかえた時に力づくでこじ開けたのには驚いたものだ。
そんなヤクモの怪力でも押し返されるって、どんな力よ...
そしてその扉の中から現れたのは...
「ふぇ...ふぇ...」
「...赤ちゃんだね」
『ん?????』
まさかの赤ちゃんであった。
「私には専門外だ。戻るよ、彩葉」
「えっ、ちょっ、私も無理なんですけど!?」
ヤクモは自分には無理だと言わんばかりに裏に引っ込んでしまった。
赤ちゃんは何かを訴えるような目でこちらを見つめている。
「すまん!しかし、私手一杯ですので!」
私はその場を立ち去ろうとする。
しかし次の瞬間、酔っぱらいの叫び声、ガラスの割れる音、野良犬の遠吠え、車のブレーキ音が聞こえてくる。
急に治安悪くなったな、おい。
「流石に放置はまずいか?...どう持つんだ、これ?」
『多分、そんな感じで合ってるんじゃないか?』
そして、赤ちゃんを抱きあげた瞬間、「じゃ、後はよろしく」と言わんばかりに取っ手は消え失せ、ただの電柱に戻ってしまった。
「えっ!?すみません、お忘れものですよ!」
電柱を必死に叩くが、それはもう物言わぬただの電柱。
なんの応答もなかった。
抱き上げた赤ちゃんは、無垢な笑顔で私の襟口をくわえている。
ただでさえヤクモという存在がいるのに、電柱生まれの赤ちゃんまで...
「もうわけわかんない...」
『どうするんだ?交番にでも届けるかい?』
「いやいや、届けたところで信じてもらえるか...それに、この状況じゃ私が攫ったみたいでは!?」
そう言っていると、突然赤ちゃんが泣きだし、咄嗟に部屋に戻って赤ちゃんをあやしているとお隣さんから初の壁ドンを頂戴してしまった。
どうにかして泣き止ませようと、ヤチヨの『Remenber』を歌ってみると、赤ちゃんは泣き止み、ぐっすり眠った。
「もう、疲れた...」
赤ちゃんを寝かしつけると気が抜けたのか、彩葉も寝落ちしてしまった。
まあこんなことが起こっては無理もないだろう。
『七色に光る電柱からめっちゃちっちゃい女の子が...』
『それで彩葉はこう言ったの!』
『その時の彩葉の
私はそのウミウシが、目を輝かせて語った夢のような物語を思い出した。
「ついにこの時が来たんだね、かぐや」
私は誰にも届かない言葉を呟くのだった...
・ヤクモ(過去)
地球に不時着したかぐやに接触し、契約を結んだ。
その目的は特殊な特異点であるかぐやと契約することで自分の存在をより強固にするため。
他のイマジンからかぐやを守るため、出自不明のベルトとパスを使って謎のライダーに変身する。
・ヤクモ(現代)
ある日突然彩葉に憑依。
しかし偶然彩葉が特異点だったことにより抑え込まれてしまう。
どうやら契約者と喧嘩して飛び出してきてしまったらしいが...?
本編では過去パートの戦闘シーンを描写するつもりは今のところありません。
あくまで超かぐや姫ベースなので。
やるとしたら多分番外編とかでやります。