超かぐや姫!~八千代の記憶に棲む者~   作:白豆男爵

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つまんないから家から出ても、いいよね?答えは聞いてない!

翌朝、私は宇宙人をなんとか家に押し留め、学校に登校していた。

昨日のドタバタのせいか、いつもより疲労が溜まっている気がする。

しかしこの程度のことで学校を休むわけにはいかない。

私の全てと言えるほど、この場所での生活は重要なのだ。

 

「このままのペースを維持できるなら、まったく夢じゃないよ」

 

放課後、職員室にて、立花先生は進路希望調査票と、いくつかの大学のパンフレットを添えて私に手渡した。

 

「はい、そうしようと思ってます」

「親御さんも、さぞかし自慢の娘なんじゃない?」

「だと、いいですが」

「...期限までまだまだ時間はある。ゆっくり考えよう」

 

失礼します、という言葉と共に私は職員室を後にする。

すると突然、ヤクモが話しかけてきた。

 

『東京大学、それも法学部ねぇ...』

「何よ」

『いや、私は彩葉の進路に口を出すつもりはないさ。私は彩葉の選択を尊重するよ。それが本当に彩葉のやりたいことなら...ね』

 

本当にやりたいこと...その言葉に、思わず歩みを止める。

別に、法学に興味があるかと言われると首を縦に振ることはできない。

でも、一番にならないと、母は認めてくれないだろうから。

何も持たない私が母に認めてもらうには、これしかないから。

だから、これが私のやりたいこと。

 

「自慢の娘になって認めてもらいました。めでたしめでたし...うん、それで十分上出来」

 

私はそう自分に言い聞かせて、再び歩みを進めるのだった。

 


 

私は今、絶望の淵に立たされています。

なぜなら...

 

「よっ、彩葉!」

 

家で大人しくしてるように言っておいたはずの宇宙人が私の目の前にいるからです。

それも、芦花と真実と一緒にカフェに来ているタイミングで。

 

「えー、可愛い。彩葉の友達?」

「彩葉の服着てる~」

「パンケーキ好き?これもど~ぞ」

「パンケーキ?これが?彩葉のと全然違う!」

(ど、どうしようヤクモ!)

『とんでもないことになっちまったねぇ。かといって、私じゃどうにもできないけど』

 

パニック状態になっている私を差し置いて、芦花と真実はあいつに興味津々だ。

てか芦花はしれっと甘やかしてるし。

そしてあろうことか、こいつはとんでもない爆弾をぶち込みやがった。

 

「月から来たの!」

「「...?」」

 

バカヤロ~~...今一番言ってほしくない言葉だったよそれは。

ど、どう誤魔化そう...

 

『築地とでも誤魔化しておけばいいんじゃないかい?』

(はっ、それだ!)

「つ~、築地だよね!私のいとこ!」

「わぁ、おいしいおすし屋さん教えて~」

「お名前は?何ていうの?」

「な、名前...?」

 

しまった、宇宙人とかこいつとか呼んでたから名前がない。

そんな私の脳裏をよぎったのは、昨日あいつに見せた竹取物語だった。

 

「か、かぐや!」

「かぐや~、かわよ~」

「ねっ、かぐや?」

「かぐや?かぐや...!かぐやかぁ、エへへへ~」

 

咄嗟につけた名前だったが、存外嬉しそう。

『名前は人生最初のプレゼント』とはよく言ったものだ。

だが問題がひと段落したのも束の間、かぐやはまたしてもやらかした。

 

「彩葉、ヤクモにもかぐやって呼んでもらいたい!変わって?」

「なっ!」

 

ヤクモの存在はかぐや以外には誰にも言ってない。

ワンチャンさっきよりもまずいことになった...

 

「ヤクモ...?その子も彩葉のいとこ?」

「変わってって?」

「えーっと...」

『おい彩葉、どうする?誤魔化さないとバレるよ』

(うるさい! 今考えてる!!)

 

しかし、その焦りとは裏腹に、かぐやは不思議そうな顔をしていた。

 

「? いつも話してたじゃん」

「余計ややこしくしないで!」

 

こいつ、この状況のヤバさを微塵も理解していない。

すると今度はヤクモが半ばやけくそ気味に念話を飛ばす。

 

『...もう“ペットの名前”ってことにしたらどうだい?』

(無茶言わないで!?)

 

あんなボロアパートでペットなど飼えるはずもない。

ゆえに、ペットの名前という言い訳はほぼ通用しないだろう。

すると芦花と真実が心配そうな顔で私の肩に手を置いた。

 

「彩葉、疲れてるんだね」

「えっ?」

「バイトするのはいいけど、ちゃんと休んだ方がいいよ~?」

 

なんか変な勘違いをされている気がするけど...この状況を切り抜けるにはもうこれで通すしかなさそうだ。

 

「う、うん。気をつけるよ。あはは...」

 

私は苦笑いしつつも残ったパンケーキを口に放り込む。

これ以上かぐやがここにいたらどんなボロが出るか分かったもんじゃない。

 

「ごめん、もう帰る!ありがとね、ごちそうさま!後で埋め合わせするから!」

 

私は二人に別れと感謝を告げ、かぐやを連れて店を飛び出した。

 

「ゼェ、ゼェ...」

「いやー、さっきの建物涼しかったねー。あれ彩葉の家で出来ないの?」

「正気!?何で家から出てくんの!?正体ばれたらどうすんの!?ヤクモのことも、他の人には秘密なんだからね!?」

「だってつまんないんだもん」

 

こ、こいつ。こともあろうにつまんないの一言で済ませただと...?

言いたいことは山ほどあったが、そのほとんどが母と同じものであったため、言葉が詰まってしまった。

 

「ねーねーヤクモ出して~?」

「もう、名前呼ばせるだけだからね!?」

「やったー!」

 

一旦ヤクモに替わらないと話が進まなさそうだ。

そう思った私は仕方なくヤクモに主導権を渡す。

替わったことを何となく察知したのか、かぐやは目を輝かせている。

 

「...かぐや」

(ヤクモ...?)

 

ヤクモから放たれたたった三文字の言葉は、どこか懐かしいものを見た時のような、庇護対象を見た時のような、そんな優しさを感じた。

 

「エへへー...」

「喜んでもらえたようで何よりだ。さ、戻るよ彩葉」

『あ、う、うん』

 

いつもは淡々としてて、皮肉屋な感じだったのに...

聞いたことのないヤクモのほころんだ声音に困惑していると、ヤクモが体の主導権を返してきた。

するとかぐやは懐からあるものを取り出しながら質問してきた。

 

「ねー彩葉、これどうやって使うの?」

「...私のスマコン?持ってきた?」

「彩葉のノートPCで買えた!」

「え˝」

 

私は急いで口座の残高を確認する。

スマコンって超高いんだぞ!?

 

【ウォレット残高 ¥452】

 

その画面に映っていたのは、無情な現実であった。

 

「死ぬ気で貯めたんですけど?死ぬ気で貯めたんですけどっっ!?」

「な、なんか銀行?のデータ書き換えれば数字増やせるっぽかったよ?やる?」

「ダメに決まってるでしょ!?絶~~~体!しないでよ!」

 


 

ヤクモと出会ってから少しの年月が流れた。

私はふと思った疑問を口にする。

 

「そういえばさ、あのベルトって結局何なの?」

「ん?ああ、これはある技術を模倣して作ったクローン品...らしい」

「らしいって...ヤクモの物なのに知らないの?」

「だってこれ、パクったものだしねぇ」

「パクったの!?」

 

パクったって...ええ...?

衝撃の真実である。

てっきりヤクモが作ったものだとばかり思っていた。

 

「かぐやを狙うイマジンたちの上層部が研究していたものでね。なんでも、電王という戦士の戦闘データを分析して作り上げたらしい」

「電王?」

「ああ、こことは別の世界で、時の運行を守るために戦ったやつの名前らしい。といっても、私はそいつに会ったことも見たこともないがね」

「ふーん...で、パクったって?」

「私は元々あいつらと一緒に行動してたんだが、どうにもそりが合わなくてねぇ。自分たちの存在が消えるかもしれないのに、変わらないよりマシだからと、かぐやを消すとか言い始めた。だから組織を抜け出すついでに、嫌がらせでパクってやったのさ。実際役に立ってるわけだし、パクって正解だったね」

 

ハハッ、と笑い飛ばしながらヤクモはそう言ってのけた。

私の知らないヤクモの一面を垣間見た気がした。

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