超かぐや姫!~八千代の記憶に棲む者~   作:白豆男爵

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ずうっといっしょ

「何?送り出した3体のイマジンが全滅しただと?」

「はい、どうやらそのようです...」

 

ヤクモがイマジンを撃退したあと、時の狭間にてあるイマジンがその報告を受ける。

 

「何やら、奴が持ち出した()()()()()()が新たな力を発現させたと...」

「ほう?あのベルトは研究チームによると一つのフォームしか開放できなかったと言っていたが...」

「研究チーム曰く、やつの感情の変化に呼応したという見解のようです」

「...電王の戦闘データなど組み込むからだ。変わり者共の“感情”にまで引っ張られたか」

 

そのイマジンは呆れるような、はたまた侮蔑するような声音で言葉を吐き出す。

 

「引き続きあの裏切り者とカグヤの始末を進めてまいります」

 

失礼します、という言葉とともに報告に来たイマジンが下がっていく。

 

「あいつめ、単なる裏切り者と思っていたが、そこまでして特異点を守りたいか...理解できんな。」

 

恐らく長であろうそのイマジンは、口元をわずかに歪めた。

 

「だからこそ、余計に壊したくなる」

 


 

ヤクモがイマジンたちを倒したあと、私たちは森の中を歩いていた。

騒ぎを聞きつけた人々の目から逃れるためだ。

すでに朝日が昇っており、木々の隙間からわずかに木漏れ日が差し込んでいる。

 

「ねえヤクモ」

「何だい?」

「さっきは...ありがとう」

「何言ってんだ、随分前にも言っただろう?かぐやに死なれたら私が困る。ったく、そんな小さな体で庇うなんて真似するんじゃないよ」

 

ヤクモはいつものようにそう言うけど、多分もうそれだけじゃない。

この数千年で、ヤクモはかなり丸くなったと思う。

でも、多分本人は気付いてないから、今は言わないことにしておいた。

こういうのって他人から言われてもイマイチ実感できないと思うから。

私を庇ってくれたとき、ヤクモは心から安堵したような表情をしていて、その顔が私の記憶に焼きついて離れなかった。

すごく嬉しかったけど、それと同時に少し怖かった。

ヤクモに芽生え始めている優しさが、いつかその身を滅ぼしてしまうんじゃないかって...

芦花たちが言ってた時の彩葉みたいに、突然フッて消えちゃいそうって...

そう思ったら、ついその言葉を放ってしまった。

 

「ヤクモ」

「ん?」

「私たち、ずっと一緒だよ?」

 

そんな、呪いのような約束の言葉を投げかけた。

 

「...どうせまだ何千年もかかるんだ。どこまでも付き合ってやるさ」

 

恐らく私の真意を理解していないであろうヤクモは、そんな返事をしてくれた。

その言葉に、私は小さく笑った。

でも胸の奥の不安だけは、どうしても消えてくれなかった。

 


 

「ぐぬぬ、まだまだ足りない...どうすれば良いのだー!」

 

芦花と真実も一緒に海に遊びに来ている中、かぐやは砂浜でスマホとにらめっこしながらそう叫ぶ。

あの後かぐやは勝手にライバー活動を開始、ヤチヨカップで優勝する気満々だった。

初配信は中々に酷いもので、不協和音とも言えるジングル、下手くそな立ち絵、そして話す内容が思いつかないからと10秒ほどで終了した。

極めつけは最後にインカメがオンになってしまったことで、かぐやの素顔がネット上に晒されることとなってしまった。

しかも、それに呆れる私に対してプロデューサーになって欲しいと我儘を言ってきた。

もちろん私は断固拒否の姿勢を示していたのだが、かぐやの押しに負けてしまった。

その時のヤクモの煽りようといったらもう...

 

『はっ、彩葉も人のこと言えないねぇ』

「うっさい!」

 

ずっとそんな感じのことを言うもんだから、あの時は本気で締め上げてやりたいと思った。

あの時ほどヤクモの実体が無いことを恨んだことはない。

 

「こないだの歌配信めっちゃ良かったけどねー」

「ね。かぐやちゃん、ゲームも歌も上手いよね〜」

 

そんな芦花と真実の会話が過去を振り返っている私を現実へと引き戻す。

芦花と真実に褒められ、かぐやは鼻を伸ばして調子に乗っている。

 

「天っ才歌姫ですから!でも優勝したい~!どうすればいいのだ~!」

「にしても、オリジナル曲よかったよ~?」

「あれ彩葉が作ったんでしょ?」

「彩葉、可愛い上に天才すぎ~」

 

芦花と真実が褒めてきたので、少し照れくさくなる。

 

「あ、あれは昔作ったやつだから...」

「優勝したい〜〜!彩葉、新曲作って〜?伴奏もして〜?」

「だーめ。これ以上勉強とバイトの時間は減らせません」

 

かぐやのお願いに速攻で拒否の姿勢を示す。

さすがにこれ以上私の時間を削られてはたまったものじゃない。

 

「でも海来てるじゃん!」

「マジのエリートは遊びも疎かにしないはず。勉強時間削ってでも遊ぶ!」

「倒錯してるなぁ〜...」

 

私がそんな主張をしていると、かぐやは涙目+上目遣いでこちらに擦り寄ってくる。

で、出たな!その手はもう...

 

「このままじゃ優勝できない。彩葉に新曲作ってほしぃ...」

「...ま、まぁ、時間が空いてたら」

「よっしゃー!」

「ちょろは〜」

「ちょろはだねぇ〜」

 

くそっ、また断れなかった...その上二人にちょろはとかいう不名誉なあだ名まで...!

 

...そういえば、ヤクモが妙に大人しいな。

私がかぐやの押しに負けたときは大体、『へっ...』とか言って私のこと嘲笑してるくせに。

せっかく海に来てるんだし、泳ぎたいとか思ったりしないのかな?

 

(ヤクモは泳がなくていいの?芦花と真実にバレない範囲でよければ変わるけど?)

『いや、いい。わざわざ水に入る意味が分からん』

(...もしかして水苦手?)

『まさか、そんなわけ...ないだろ』

「ふーん」

 

私はその会話の後、水辺に向かって歩みを進めていく。 

今の間でなんとなく分かった。

多分ヤクモは...水が苦手だ。

 

『急に歩き始めてどうした?』

「いや?べっつに〜?」

『あんたまさか...!おい、やめろ!』

 

静止するヤクモの声を振り払い、水辺にたどり着いた後、ヤクモを無理やり“椅子”に押し込む。 主導権を奪ったり奪われたりする時は、いつもこんな感覚だ。

例えるなら椅子取りゲームに近いだろうか?

 

「わっ、冷たっ!?」

 

普段の余裕なんてどこへやら、 ヤクモは本気で慌てた声を上げる。

 

「彩葉!さっさと引っ込ませろ!」

『普段から、私を笑ってる罰!思う存分水浴びでもしてたら?』

 

芦花と真実が、そんな私(今はヤクモが表だけど...)を見ながら小さく笑う。

 

「彩葉、明るくなったね」

「突然ふっと消えちゃいそうだったもんね...」

 

その言葉が耳に入った気がしたけれど、 今の私には、珍しく焦っているヤクモの方が面白かった。

 

「あー、ずるい!私も泳ぐ!」

「泳いでない!いいから早く変わってくれ!」

 

そこへかぐやも一緒にはしゃぎ、まさにカオスといった状況が広がっていて、その光景に思わず笑みが零れた。

こんな騒がしい日々も悪くないな、とそう思えた気がした。




Blu-ray再受注されたらしいですね。
私は最初の時点で予約出来たので、高みの見物を決め込みます。
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