超かぐや姫!~八千代の記憶に棲む者~   作:白豆男爵

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いつもより長く書かれております

続け様に誤字報告ありがとうございます。誤字多すぎだろぉ!


お狐様の隠し事

「あっ、今日作ろうと思ってた料理の食材がない!」

 

お昼過ぎの時間帯、突然かぐやが叫び出した。

どうやら今日の夜ご飯の分の食材を買うのを忘れていたらしい。

 

「別に冷蔵庫の余り物とか最悪コンビニとかでもいいよ...」

「ダメ!彩葉は体調良くないんだから、おいしいもの食べなきゃ!ネットショッピングじゃ間に合わないし~...今から買い物に行ってこようかな?」

「買い物行くの?なら私も...」

「彩葉は休んでてっ!まだ病み上がりっしょ?」

「でもかぐやだけで行かせるわけにも...」

 

かぐやの言う通り、体調は少しづつ回復しているが、まだ万全というわけじゃない。

だがかぐやだけで買い物に行かせると何が起こるか分からない。

何か余計な物を買ってくるかもしれないし、仮にも顔出し配信者として活動しているため、そのあたりの対策もしなければならない。

 

「買い物くらい大丈夫だから...!」

「病人なんだから安静にしてて!かぐやだけでも大丈夫だからっ!」

 

私が行く行かないの問答が始まり、なかなか決着がつかない。

そんな折、ヤクモが口を開いた。

 

『だったら、私が行くよ』

「「えっ?」」

『かぐやは彩葉に休んでてほしい、彩葉はかぐやのお目付け役が欲しい。なら私が彩葉の体を使ってかぐやを見張ってればいい。そうすれば彩葉は少なくとも精神的には休めるし、彩葉の要求も満たせる』

 

ヤクモのその提案に私たちはそれぞれ悩むそぶりを見せる。

確かにどっちの要求も満たせる提案であった。

 

「でも、それじゃあヤクモが面倒じゃない?」

『面倒なのは病み上がりの人間が無理してまたぶっ倒れることさ』

「そ、それならまぁ...」

「本当は体も休めてほしいけど~...それで彩葉が納得してくれるなら...」

『よし、そうと決まれば借りるよ、彩葉』

 

お互いに納得した所で私とヤクモが入れ替わる。

まあヤクモはしっかりしてるし、変なことになることもないだろう。

少なくとも、その時の私は本気でそう思っていた。

まさかその日のうちに、ヤクモの知られざる一面を見ることになるなんて思いもしなかった。

 

「それじゃあ行こうか」

「うん!」

 

そしてヤクモとかぐやは買い物をしに出かけるのだった。

 


 

「これとー...あっ、これおいしそー...」

「ダメだ。今の二つ目は不要だろう?」

「ちぇー、ヤクモのケチー!」

 

ヤクモとかぐやの買い物は思ったよりも順調に進んでいる。

なんだかんだヤクモもかぐやに甘いから少し心配だったけど、お目付け役としてしっかりしてくれてるし、かぐやもぶー垂れつつもヤクモの言うことに素直に従っている。

するとかぐやがふと思いついたように口を開く。

 

「そういえばヤクモとお出かけってしたことなかったね」

「そうだね、まぁ表に出ることも少ないからね」

「今日みたいにさ、たまにはヤクモともお出かけしたいなー」

 

かぐやはにしし、と笑みを浮かべる。

ヤクモとの初めてのお出かけが楽しかったのだろうか。

 

「...また機会があればね」

 

ヤクモは若干視線をそらしながらそう言った。

これは照れ隠しだな...今度イジってやろう。

そう思っているとヤクモが何かに気づいたようにふと呟いた。

 

「...こりゃまずいね」

「何?どうしt...」

ドカーン!

 

かぐやが疑問の言葉を放ち終わるよりも先に、何かが爆発したような大きな音が響き渡った。

 

『な、何!?爆発!?』

「何の音!?」

 

驚く私とかぐやをよそに、ヤクモはかぐやを物陰に押しやった。

 

「ヤクモ?」

「...かぐや、私が戻ってくるまで、ここを一歩も動くんじゃないよ」

 

とヤクモは真剣な声音でそう告げる。

ヤクモだけはこの状況を理解しているように冷静だった。

 

「で、でもヤクモは...?」

「私は大丈夫だ、すぐに戻る」

「な、何で!?かぐやも一緒に...」

「絶対に来るなっ!」

「っ!?」

 

ヤクモは大きな声で、かぐやを制止した。

かぐやはその様子に思わず肩をビクッと震わせた。

ここまで感情をあらわにしたヤクモは初めて見たかもしれない。

 

「...分かったね?絶対だよ」

 

ヤクモはその言葉を残して爆発音のした方へ駆け出す。

 

『ちょ、ちょっと!せめて何か説明してくれない!?』

「話すより見たほうが早い!」

 

やがてヤクモが走り辿り着いた先には、モグラのような風貌の怪人?がニ匹、破壊活動を行っていた。

 

『あれってもしかして...』

「ああ、私と同じ、イマジンだ」

『あれが...?』

 

私はその言葉を信じられなかった。

だって私の知っているイマジンはヤクモだけで、ヤクモはこんな衝動に任せたような破壊を行うことはない。

しかし目の前のモグラのイマジンは躊躇いもなくただ周囲の物をひたすらに破壊していた。

やがてそのモグラのイマジンはこちらに気づいたようで、二匹ともヤクモへと視線を飛ばす。

 

「お前、俺たちと同じ気配」

「さてはイマジンだな?ちょうどいい、カグヤがどこにいるか知っているか?」

『かぐや!?』

 

目の前のイマジンたちはかぐやの居場所を尋ねてきた。

あいつらの目的はかぐや?なんで?一体どうして...?

数々の疑問が私の脳内を駆け巡る。

そんな中、ヤクモは冷静にその問いに答えた。

 

「さあ?知らないね。そんなことよりも、探すだけならここまでする必要もないんじゃないかい?」

「どうだっていいだろ、人間の建物なんて」

「どうせカグヤを始末すれば消える時間だ。俺たちには関係ない」

 

かぐやを、始末...?

訳が分からない、こいつらは一体なんなの?

ヤクモはどこまで知っているの...?

 

「やっぱり話が通じないみたいだね。それにモールを寄越してくるとは、あっちも余裕がなくなっていると見た」

『モール?』

「こっちの話さ。気にしなくていい」

 

ずっと話についていけていない私をよそに、ヤクモはどこからかベルトのようなものを取り出し、腰に巻き付ける。

 

『な、何するつもりなの...?』

「少し、こいつらを黙らせるだけさ」

 

そしてヤクモはベルトについている一つ目のボタンを押し、電車のパスのようなものをかざした。

 

「変身」

<デュアルソード・フォーム!>

 

その瞬間ベルトが光を放ち、私の体を使っているヤクモがその光に包まれていく。

やがてその光は装甲となり、白色を基盤とした装甲に紫色のラインが妖しく光る。

胴体の所々は狐火のようなものが妖しく揺らめいており、狐のような仮面がその顔を包んだ。

腰に吊り下げられている二つの刃を上に放り投げ、持ち手のようなものを取り出してそれぞれに連結させる。

 

「お前、セツナだったのか!」

「セツナは俺らの...敵!」

『セツナ...?』

 

イマジンたちはヤクモを見て、セツナと呼んだ。

この姿を指す呼称なのだろうか...?

 

「あんたら、私に化かされてみるかい?」

 

その言葉を皮切りに、モグラのイマジンは一斉にこちらに向かってくるのだが、ヤクモは動く素振りを見せない。

 

『ちょっと、来てるよ!?』

「無駄に動く必要はない」

「舐めるなぁ!」

 

やがて一匹目がその大きな爪を振りかぶるが、爪が当たる寸前、ヤクモは半歩だけ身体をずらす。

それだけで攻撃が空を切り、すれ違いざまに斬撃を浴びせる。

続いて二匹目の攻撃も必要最低限の動きで躱し、再び斬撃を喰らわせる。

 

「ぐっ!?」

「こいつ、手ごわい...」

(何?今の動き...)

 

攻撃を避けたようには見えなかった。

相手の爪が勝手に空を切ったようにしか見えない。

以降もずっとその場からほとんど動かず、相手の攻撃をいなしながら斬撃を浴びせ続ける。

 

爪が振るわれる。

 

当たらない。

 

また振るわれる。

 

やはり当たらない。

 

ヤクモはほとんどその場から動いていないのに、どうしても攻撃が届かなかった。

 

『どうしてそんな保守的な戦い方...』

「無駄に体を動かすわけにはいかない」

『え?』

「怪我をするのは私じゃなくて彩葉だからね」

(もしかして、私の体調を心配して、最低限の動きだけで...?)

『なんでそこまでして...』

「せっかく治りかけてる身体を壊したら面倒だろう?」

「くそぉー!」

 

その状況にしびれを切らしたのか、モグラの内の一匹が大振りの攻撃を繰り出し、ヤクモはそれを避け、何度も斬撃をくらわせる。

そして目の前のモグラが膝をついたところにさらに追い打ちをかけようとする。

 

(入る!)

 

少なくとも私はそう思ったのだが、直後、ヤクモは突然右にステップを踏んだ。

 

『何で!?今入ったでしょ!?』

 

私がそう言った瞬間、元いた位置に二匹目の爪が地面に直撃した。

 

『えっ?』

「あいつは囮だったからね」

 

全く気づかなかった。

ヤクモはそこまで読んで...?

何というか、戦い慣れしすぎている感じがする。

 

「さて、長引かせたくないんでね」

<フルチャージ!>

 

そう思っていると、ヤクモがベルトにパスをかざし、双剣にエネルギーが収束していく。

やがて双剣の刃が持ち手から分離し、ヤクモが持ち手を振り被ると同時に刃が同じ軌跡を辿る。

 

「まずいっ!」

「ぐわっ!?」

「まずは一匹...」

 

その声だけが妙に冷たかった。

先ほどまでの余裕そうな態度とは違う。

まるで害獣を駆除するかのような声音だった。

それだけで、ヤクモが本気でキレていると分かった。

ヤクモの斬撃はイマジンのうちの一匹を捉え、ヤクモは宙を舞う刃を操る。

 

一撃。

 

二撃。

 

三撃。

 

紫色の軌跡が何度もイマジンの身体を切り裂き、最後に斜め十字に斬撃を振り下ろした。

 

「ギャァァァ!?」

 

それを諸にくらったイマジンはその攻撃に耐えられずに爆散した。

 

「三十六計逃げるに如かず...!」

 

それを見て不利を悟ったのか、二匹目のイマジンは逃走を図る。

 

『ヤクモ!逃げられちゃう!』

「逃がすわけないだろう?それに、もう一歩も動く必要はない」

『まさか届くの?』

「狐は獲物を逃さないものだよ」

<アローフォーム!>

 

ヤクモがそう言ってベルトの3つ目のボタンを押し、パスをかざすと、また違う姿へと変化した。

白銀の装甲が月光のように輝く。

先ほどまでの剣士の姿ではなく、獲物を射抜く狩人。

いや──

獲物を決して逃がさない狐そのものだった。

双剣の刃同士をぶつけて刃を分離すると、今度は持ち手同士を繋げてその両端に刃が連結。

すると弦が出現し、その武器はまるで弓矢のようになった。

 

<フルチャージ!>

 

ヤクモは先ほどと同じようにパスをかざし、エネルギーが弦に収束していき、エネルギーの矢が生成される。

ヤクモがその矢を放つと、途中で止まったかと思えば、突然その矢が複製され、一斉にイマジンに向かっていく。

当然、背を向けていたイマジンはそれをすべてくらい、再び爆散した。

 

「ガァーッ!?」

 

ヤクモは撃破したことを確認するとベルトを外す。

その途端に装甲は解除され、元の姿に戻った。

そしてかぐやを置いてきた方へ歩みを進めるヤクモに私は尋ねる。

 

『ヤクモ、あんた...』

「なんだい?」

『ずっと戦ってたの?私たちに黙って』

「まぁ、必要ならね」

『必要ならって...』

「放っておくわけにもいかないだろう?」

 

ただ淡々と、ヤクモはそう返事をする。

まるでそれが当たり前だと言わんばかりに。

 

『あいつら、かぐやを始末するって言ってたよね、何で?』

「さあ?何でだろうねぇ?」

『またそうやって誤魔化す...』

 

ヤクモはいつもこうだ。

都合が悪くなるとのらりくらりと話の腰を折って有耶無耶にされる。

こうなったら聞き出すのはほぼ不可能なので諦めることにした。

 

『話は変わるけどさ、なんで私の体なんか気にしたの?ヤクモならもっと早く倒せたんじゃないの?』

「借り物を壊したら面倒だからさ」

『またそれ...』

「事実だよ」

 

そう会話していると、気付けばかぐやを置いてきた場所まで戻ってきていた。

かぐやはヤクモを見るなり、勢いよく飛びついた。

 

「ヤクモ!無事!?」

「ああ、問題ない」

「爆発の方どうだったの!?」

「ただのガス爆発だったよ。ほら、ちょうど消防も来た」

 

ヤクモは明らかな嘘をつく。

しかし、これはかぐやには知られなくて正解だと思う。

根拠はないけど、なんとなくそんな気がした。

 

「そうだ!アイス買って帰ろ!」

「...アイスくらいならいいか。好きにしな」

『おい、何勝手にアイス買おうとしてんのよ』

 

ヤクモは先ほどまで命のやり取りをしていたとは思えないほど、いつも通りの態度でかぐやとともに帰路をたどる。

私はその意識の中から、寂しさを感じる背中を見つめていた。

ずっと隣にいたはずなのに、私はまだ、ヤクモのことを何も知らなかったのかもしれない。




補足しておくと、ヤクモの発言にあった「モールを寄越してくるとは」のモールはモグラ型のイマジンであるモールイマジンを指しています。
一応説明すると、彼らは所謂量産型の雑魚敵といった立ち位置で、それを見たヤクモは「量産型を寄越すってことは余裕がなくなっているんだな」と推察しています。

やっぱ戦闘書くと長くなりますね...
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