また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※これは本編時空とは無関係の妄想章IF後日談です。
裏ルートで通常救済された春麗のエピソードになります。


妄想章IF後日談:裏ルート通常救済版春麗は、青い武道服で戦う

 春麗会議では、最近ずっと黒が続いていた。

 

 黒ドレスでギリギリ勝利。

 黒ドレスで引き分け。

 黒ドレス特化春麗の九十九点回答。

 十回のお仕置き。

 黒を受け取る。

 見せない黒には触れない。

 

 どれも悪くない。

 

 むしろ、重要だった。

 

 黒は春麗会議にとって大きな議題だ。

 

 黒を否定しないこと。

 黒を救済対象にしないこと。

 黒を自分で選ぶこと。

 黒で勝つこと。

 黒で沈めること。

 黒を見せる範囲を春麗が決めること。

 

 どれも、大切だった。

 

 けれど。

 

 裏ルート・通常救済版の春麗は、鏡の前で青い武道服を見ていた。

 

「……そろそろ、青の議題も必要ね」

 

 前回、自分は青で戦わなかった。

 

 リュウと歩いた。

 手をつないだ。

 黒でも青でも見ると言われた自分が、青で戦わないことを選んだ。

 

 それは、よかった。

 

 青には、戦わない親密さがある。

 

 でも、それだけではない。

 

 青は、歩くためだけの色ではない。

 青は、待つためだけの色でもない。

 

 青は、春麗の基本だ。

 

 最初から身体に馴染んでいる色。

 蹴り、踏み込み、戻り、呼吸。

 格闘家としての春麗が、真正面から立つ色。

 

 戦わないことを選べるなら、戦うことも選べる。

 

 黒を排除するための青ではなく、黒を知ったうえで、それでも基本の青い武道服を選ぶ。

 

 春麗は、青い武道服に手を伸ばした。

 

 黒ドレスではない。

 飾るための衣装でもない。

 

 動くための服。

 戦うための服。

 春麗が春麗として、最初から鍛えてきた身体を包む服。

 

 けれど、黒を知らない頃の青でもない。

 

「今日は、戦う青」

 

 春麗は静かに言った。

 

「でも、黒を消すわけじゃない」

 

 黒を知っている。

 黒を否定しない。

 黒を選ぶこともできる。

 

 だからこそ、今日は青い武道服を選ぶ。

 

 それが、通常救済版春麗の答えだった。

 

 リュウは、いつもの場所にいた。

 

 春麗が青い武道服で現れると、リュウは静かに顔を上げた。

 

「春麗」

 

「リュウ」

 

「今日は、青か」

 

「ええ」

 

「歩くのか」

 

 春麗は少しだけ笑った。

 

「前回なら、そうだったわね」

 

 リュウは見る。

 

「今日は違うのか」

 

「ええ」

 

 春麗は青い武道服の袖を軽く整えた。

 

「今日は、戦うわ」

 

 リュウの目が少し変わった。

 

「その青でか」

 

「ええ」

 

「いいのか」

 

 春麗は首を傾げる。

 

「何が?」

 

「前は、戦わない青だった」

 

「覚えているのね」

 

「ああ」

 

 春麗は、少し嬉しそうに目を細めた。

 

「でも、青は戦わないためだけの色ではないわ」

 

 リュウは黙って聞いている。

 

 春麗は続けた。

 

「黒でも青でも見る。あなたはそう言った」

 

「ああ」

 

「だから私は、青で戦わないことも選べた」

 

「ああ」

 

「でも今日は、青で戦うことを選ぶ」

 

 リュウは頷いた。

 

「そうか」

 

 春麗は一歩近づいた。

 

「ただし、前の青とは違うわ」

 

「違う?」

 

「ええ」

 

 春麗は胸に手を置く。

 

「黒を知らない青ではない」

 

 リュウの視線が静かになる。

 

「黒が混じるのか」

 

「混じるというより、消していない」

 

 春麗は言った。

 

「私は黒を持っている。黒を選ぶこともできる。黒であなたを沈める私もいる」

 

「ああ」

 

「でも、今日は青い武道服を選ぶ」

 

 リュウは静かに答えた。

 

「春麗が選ぶなら、見る」

 

 春麗は、少しだけ息を止めた。

 

 前にも似た言葉を聞いた。

 

 春麗が選ぶ。

 

 それは通常救済版の春麗にとって、とても大事な言葉だ。

 

「……相変わらず、良いところを突くわね」

 

「そうか」

 

「ええ」

 

 春麗は構えた。

 

 青い武道服の袖が、風に揺れる。

 

「今日は採点しないわ」

 

 リュウは少しだけ首を傾げた。

 

「そうなのか」

 

「ええ」

 

 一拍。

 

「たぶん」

 

 リュウは何も言わなかった。

 

 春麗は少し笑った。

 

「復唱しないのね」

 

「しない方がいいと思った」

 

「正解よ」

 

 春麗の構えが深くなる。

 

「来なさい、リュウ」

 

 リュウも構えた。

 

「ああ」

 

 最初の一撃は、春麗からだった。

 

 青い武道服が揺れる。

 

 だが、それは黒ドレスのような誘いではない。

 

 まっすぐな踏み込み。

 

 ただし、ただの青ではない。

 

 一歩目は青。

 

 二歩目に、黒の記憶が混じる。

 

 リュウの視線が、衣服の揺れではなく重心を追う。

 

 春麗はそれを見て、ほんの少し笑った。

 

「学習しているわね」

 

 掌底。

 

 リュウが受ける。

 

 重い音。

 

 春麗はすぐに回り込む。

 

 蹴り。

 

 リュウが腕で受ける。

 

「でも」

 

 春麗は近い。

 

「今日は、黒ではないわ」

 

 リュウの反応が半拍ずれる。

 

 春麗は、その隙に掌を入れる。

 

 リュウの胸に浅く入った。

 

 リュウが一歩下がる。

 

 春麗は追わない。

 

 青の距離で止まる。

 

「どう?」

 

 リュウは息を吐く。

 

「青だ」

 

「ええ」

 

「だが、黒を知っている」

 

 春麗の胸が小さく鳴った。

 

「……そう」

 

「違ったか」

 

「いいえ」

 

 春麗は微笑む。

 

「かなり良いわ」

 

 リュウは構える。

 

「点数か」

 

「つけないと言ったでしょう」

 

「そうだった」

 

「でも」

 

 春麗は一歩踏み込む。

 

「今のは、少し高いわ」

 

 リュウの拳が返る。

 

 春麗は避ける。

 

 黒なら、そこで誘う。

 

 青なら、そこで進む。

 

 今日は、その両方を知っている青。

 

 春麗は、リュウの拳を外しながら、近づきすぎない距離を保った。

 

「リュウ」

 

「何だ」

 

「黒が怖い?」

 

 リュウは答える。

 

「怖い」

 

 春麗は少しだけ目を見開いた。

 

「そう言うのね」

 

「ああ」

 

「前より、正直ね」

 

「黒は重い」

 

 春麗は、静かに息を吐く。

 

「ええ」

 

 リュウは続ける。

 

「だが、春麗が青を選んだなら、今は青を見る」

 

 春麗は止まりかけた。

 

 だが止まらない。

 

 青で踏み込む。

 

 掌底。

 

 リュウが受ける。

 

「……今のは、かなり危ない答えよ」

 

「危ないのか」

 

「ええ」

 

「減点か」

 

「いいえ」

 

 春麗は笑った。

 

「加点よ」

 

 中盤。

 

 リュウが押し返してきた。

 

 青の春麗は速い。

 

 しかし黒ほど絡め取らない。

 

 リュウは、そこを見ている。

 

 黒を警戒しながら、青に踏み込む。

 

 青だからといって軽く見ない。

 黒が消えていないからといって怯えすぎない。

 

 その両方が必要だった。

 

 リュウの拳が春麗の肩に届く。

 

 浅い。

 

 けれど、春麗は少しバランスを崩す。

 

 リュウは追わない。

 

 前回の戦わない青なら、そこで歩く距離になったかもしれない。

 

 でも今日は戦う青。

 

 春麗は自分から戻った。

 

「追わないの?」

 

「今の春麗は、自分で戻る」

 

 春麗は息を止めた。

 

「……どうしてわかるの」

 

「そういう足だった」

 

 春麗は、少しだけ笑った。

 

「あなた、戦闘中は本当に余計なことまで見るわね」

 

「余計か」

 

「余計ではないわ」

 

 春麗は構え直す。

 

「効くの」

 

 リュウは頷いた。

 

「ああ」

 

 春麗は足を沈める。

 

 青い武道服の袖が揺れる。

 

「でも、戻ったわ」

 

「ああ」

 

「なら、来なさい」

 

 リュウが踏み込む。

 

 拳。

 

 春麗は避ける。

 

 今度は、少しだけ黒の間合いを使った。

 

 視線を引く。

 

 ただし、沈めない。

 

 誘うだけ。

 

 リュウが反応する。

 

 その瞬間、春麗は青へ戻る。

 

 蹴り。

 

 リュウが受ける。

 

 しかし、体勢が崩れた。

 

 春麗は掌底を打たない。

 

 一歩引いた。

 

 リュウが見る。

 

「なぜ止めた」

 

「今、黒に寄りすぎた」

 

 リュウは黙った。

 

 春麗は言う。

 

「今日は、黒で勝つ日じゃない。黒を知った青で戦う日」

 

 リュウは静かに頷いた。

 

「そうか」

 

「ええ」

 

 リュウは構え直した。

 

「なら、今の春麗に合わせる」

 

 春麗の胸が、深く鳴った。

 

 合わせる。

 

 それは、ただ受けるでもない。

 

 黒を恐れないでもない。

 

 青だけを見るでもない。

 

 春麗が今どちらを選んでいるかを見て、そこに合わせる。

 

 甘い。

 

 戦闘中なのに、甘い。

 

 けれど、重すぎない。

 

 青の甘さだ。

 

 春麗は、少しだけ頬が熱くなるのを感じた。

 

「……九十四点」

 

 リュウが目を動かす。

 

「採点しないのではなかったか」

 

 春麗は顔を逸らした。

 

「今のは例外」

 

「そうか」

 

「ええ」

 

 終盤。

 

 二人の呼吸は荒くなっていた。

 

 春麗の青い武道服は、戦闘で乱れている。

 

 それでも、黒ドレスほど重くない。

 

 しかし、黒を知らない軽さでもない。

 

 春麗は思った。

 

 これが、自分の青だ。

 

 救済後の青。

 

 黒をなかったことにしない青。

 

 黒を捨てたふりをしない青。

 

 黒を選ぶこともできる春麗が、それでも今は青で戦う。

 

 リュウは、それを見ている。

 

 そして、合わせている。

 

「リュウ」

 

「何だ」

 

「今日は、黒を使えば勝てる場面が何度かあったわ」

 

「ああ」

 

「気づいていた?」

 

「ああ」

 

「なぜ、そこに踏み込まなかったの」

 

 リュウは構えたまま言う。

 

「春麗が、今日は青を選んでいた」

 

 春麗は黙った。

 

 リュウは続ける。

 

「黒で来るなら、黒を見る」

 

「ああ」

 

「青で来るなら、青を見る」

 

「ああ」

 

「だが、黒がそこにあることは忘れない」

 

 春麗は、ゆっくり息を吐いた。

 

 かなり良い。

 

 非常に良い。

 

 自分が欲しかった答えに近い。

 

「……リュウ」

 

「何だ」

 

「それを戦闘前に言われていたら、私は今日の試合を始められなかったかもしれないわ」

 

「なぜ」

 

「満足してしまうから」

 

 リュウは少しだけ黙った。

 

「今は?」

 

 春麗は微笑む。

 

「今は、まだ足りない」

 

「そうか」

 

「戦っているから」

 

「ああ」

 

「最後まで見届けなさい」

 

 リュウは静かに頷いた。

 

「見る」

 

 最後の交差。

 

 春麗は青で踏み込んだ。

 

 黒の気配を完全には消さない。

 

 だが、最後の選択は青。

 

 リュウはそれを見た。

 

 黒に備えながら、青へ合わせる。

 

 春麗の蹴り。

 

 リュウの拳。

 

 春麗は寸前で身体をひねる。

 

 リュウの拳が肩をかすめる。

 

 春麗の足先が、リュウの脇腹の前で止まる。

 

 しかし、リュウのもう一方の手も、春麗の胸元の前で止まっていた。

 

 どちらも届いている。

 

 だが、春麗は微笑んだ。

 

「……引き分け?」

 

 リュウは見る。

 

「いや」

 

 春麗は足を下ろす。

 

「今のは、私の勝ちではないわ」

 

「ああ」

 

「あなたの勝ちでもない」

 

「ああ」

 

「でも、ただの引き分けでもない」

 

 リュウは少しだけ首を傾げた。

 

 春麗は言った。

 

「あなたが、私の選択に合わせた」

 

「ああ」

 

「私は、黒を消さずに青を選んだ」

 

「ああ」

 

「最後まで、それを崩さなかった」

 

「ああ」

 

 春麗は、穏やかに息を吐いた。

 

「なら、今日は満足よ」

 

 リュウは黙った。

 

「満足か」

 

「ええ」

 

 通常救済版の春麗は、はっきり言えた。

 

 黒ドレス特化春麗のような重さではない。

 

 本編春麗のような照れ隠しでもない。

 

 自覚前春麗のような否認でもない。

 

 穏やかに、満足と言える。

 

「勝敗は?」

 

 リュウが聞く。

 

 春麗は微笑む。

 

「青の勝ちね」

 

 リュウは少し考えた。

 

「俺は負けたのか」

 

「いいえ」

 

「では」

 

「黒を消さない青が、ちゃんと戦えた」

 

 春麗は言った。

 

「だから、青の勝ち」

 

 リュウはしばらく考えた。

 

 そして、頷いた。

 

「そうか」

 

「納得した?」

 

「ああ」

 

「本当に?」

 

「ああ」

 

 リュウは静かに言った。

 

「今日の春麗は、青で強かった」

 

 春麗は、目を伏せた。

 

「……そう」

 

「黒もあった」

 

「ええ」

 

「だが、青を選んだ」

 

「ええ」

 

「その青が、強かった」

 

 春麗は、少しだけ笑った。

 

「九十九点はつけないわ」

 

 リュウは首を傾げる。

 

「高くないのか」

 

「高いわ」

 

「なら」

 

「これは、九十七点くらいがいい」

 

「なぜ」

 

 春麗は穏やかに答えた。

 

「まだ、青には続きがあるから」

 

 リュウは頷いた。

 

「そうか」

 

 春麗は一歩近づく。

 

「でも、私は満足しているわ」

 

「ああ」

 

「今日の青は、会議案件よ」

 

 リュウは少しだけ間を置いた。

 

「困らないように考えた方がいいか」

 

 春麗は笑った。

 

「今日は大丈夫」

 

「そうか」

 

「黒ドレス特化の私ほど沈めないわ」

 

 リュウは真面目に言った。

 

「それは助かる」

 

 春麗は声を出して笑った。

 

 青い武道服の袖が揺れる。

 

 それは、黒を知らない青ではない。

 

 黒を消した青でもない。

 

 黒を含んだまま、それでも青を選んだ春麗の色だった。

 

 その夜。

 

 春麗会議は、いつもより少し落ち着いた空気で始まった。

 

 ただし、本編春麗はすでに資料を持っている。

 

 自覚前春麗、否認部門代表は警戒している。

 

 黒ドレス特化春麗は腕を組んでいる。

 

 行き遅れ恐怖版春麗は少し興味深そうにしている。

 

 グランドフィナーレ済み春麗は静かに微笑んでいる。

 

 そして、通常救済版春麗は青い武道服のまま席に着いた。

 

 本編春麗が資料の表題を読み上げる。

 

 春麗会議・青案件特別審議

 議題:裏ルート通常救済版春麗、黒を消さない青い武道服でリュウと甘いバトルを行い、青でも戦えることを示す

 

 自覚前春麗が言った。

 

「久しぶりに青案件ね」

 

 本編春麗が頷く。

 

「最近、黒が続いていたもの」

 

 黒ドレス特化春麗が少し笑う。

 

「黒案件に不満?」

 

 通常救済版春麗は穏やかに首を振った。

 

「不満ではないわ。黒は大事。でも、青も春麗だから」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が微笑む。

 

「良い言葉ね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「今回は戦ったのね」

 

 通常救済版春麗は頷く。

 

「ええ。前回は戦わない青だった。今回は、戦う青」

 

 本編春麗が資料をめくる。

 

「ただし、通常救済版らしく、黒を排除しない青」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「そこは評価したいわ」

 

 自覚前春麗が少し意外そうに見る。

 

「黒ドレス特化のあなたが?」

 

「ええ」

 

 黒ドレス特化春麗は言った。

 

「青が黒をなかったことにしないなら、私は認めるわ」

 

 通常救済版春麗は微笑む。

 

「ありがとう」

 

 本編春麗が読み上げる。

 

 黒で来るなら、黒を見る。

 青で来るなら、青を見る。

 だが、黒がそこにあることは忘れない。

 

 会議室が静かになった。

 

 自覚前春麗が小声で言う。

 

「これは……かなり良いわね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が頷く。

 

「忘れない、が安心するわ」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「青を見ると言いながら黒を消さない。かなり良い」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「救済後の青らしいわ」

 

 本編春麗が採点する。

 

「私は九十七点」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「九十八点」

 

 通常救済版春麗は少し驚く。

 

「高いのね」

 

「黒を忘れない青だから」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「九十七点」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「九十八点」

 

 自覚前春麗が言う。

 

「……九十六点。資料として」

 

 本編春麗がまとめる。

 

「会議総合、九十八点」

 

 通常救済版春麗は、静かに受け取った。

 

「十分高いわ」

 

 本編春麗は次の台詞を読む。

 

 今日の春麗は、青で強かった。

 黒もあった。

 だが、青を選んだ。

 その青が、強かった。

 

 黒ドレス特化春麗が、少しだけ目を細めた。

 

「これは青の九十八点ね」

 

 通常救済版春麗は微笑む。

 

「九十九点ではないの?」

 

 黒ドレス特化春麗は答える。

 

「あなた自身が九十七点と言ったのでしょう?」

 

「ええ」

 

「なら、九十九点にはまだしない方がいいわ。青には続きがある」

 

 本編春麗が少し悔しそうに言う。

 

「あなた、良い整理をするわね」

 

 黒ドレス特化春麗は涼しい顔で答える。

 

「黒ドレス特化だから」

 

 自覚前春麗が呟く。

 

「便利ね、その言葉」

 

 本編春麗が言う。

 

「それ、私の“本編だから”と同じ枠ね」

 

 通常救済版春麗は笑った。

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「戦っても、穏やかな青なのね」

 

 通常救済版春麗は頷く。

 

「ええ。戦っても、選ぶ青だった」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「黒を消さず、青を選ぶ。救済後の静けさに近いわ」

 

 本編春麗が結論を書き込む。

 

 結論:裏ルート通常救済版春麗、青い武道服でも戦えることを提示。

 ただし、黒を否定する青ではなく、黒の存在を認めたうえで選ぶ青。

 リュウは、黒がそこにあることを忘れずに青を見ると回答。

 青案件として高評価。

 会議総合九十八点。

 通常救済版春麗、満足。

 

 資料が淡く光った。

 

 通常救済版春麗は、その光を見つめる。

 

「満足よ」

 

 自覚前春麗が少し驚く。

 

「あなたは、素直に言うのね」

 

「ええ」

 

 通常救済版春麗は穏やかに微笑んだ。

 

「私は、救済後だから」

 

 本編春麗が言う。

 

「ずるいわね」

 

「あなたは、次を作れるでしょう?」

 

「それもずるい返しね」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「今回の青案件は認めるわ」

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

「黒から認められる青なら、十分ね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が小さく言った。

 

「青でも戦えるなら、青で待つだけじゃないのね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が頷く。

 

「どの色も、止まっていない」

 

 自覚前春麗が少し考え込む。

 

「黒を消さない青……」

 

 本編春麗がすかさず見る。

 

「否認部門代表、気になる?」

 

「その肩書きで呼ばないで」

 

「でも気になるのね」

 

「……資料としてなら」

 

 全員が笑った。

 

 会議室が淡くほどけ始める。

 

 通常救済版春麗は、最後に言った。

 

「黒が続いてもいい。青が続いてもいい。でも、どちらかだけでは春麗会議は足りないわ」

 

 本編春麗が頷く。

 

「ええ」

 

 黒ドレス特化春麗も。

 

「異議なし」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「黒も青も、その後も、全部続くのね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「次があるのは、いいわね」

 

 自覚前春麗が小声で言う。

 

「……青でも戦えるのは、少し良いと思う」

 

 本編春麗が笑う。

 

「資料として?」

 

 自覚前春麗は顔を赤くする。

 

「資料として!」

 

 夢が消える。

 

 朝。

 

 通常救済版春麗は目を覚ました。

 

 胸の奥に、青の余韻が残っている。

 

 前回の青は、歩く青だった。

 

 手をつなぐ青。

 戦わない青。

 

 今回の青は、戦う青だった。

 

 けれど、黒を消した青ではなかった。

 

 黒を知っている。

 黒を持っている。

 黒を選ぶこともできる。

 

 それでも、今日は青い武道服を選んだ。

 

 そしてリュウは、それを見た。

 

 黒もあった。

 だが、青を選んだ。

 その青が、強かった。

 

 春麗は静かに微笑んだ。

 

「九十七点」

 

 満足している。

 

 でも、九十九点ではない。

 

 それでいい。

 

 青には、まだ続きがある。

 

 春麗は青い武道服を見た。

 

 戦わない青。

 戦う青。

 黒を消さない青。

 

 どれも、自分の青だ。

 

「次は、どの青にしようかしら」

 

 その声は穏やかで。

 

 少し甘くて。

 

 確かに、春麗の声だった。




Q:今回の妄想章IF後日談とバトル内容について解説して?

A:
はい。執筆者として見ると、今回の妄想章IFはかなり重要な青の復権回です。

これは単なる「通常救済版春麗が青で戦う話」ではなく、黒案件が続いた春麗会議に対して、“青も戦える。しかも黒を消さずに戦える”と提示した回です。

一言で言うなら、

通常救済版春麗は、前回の“戦わない青”を否定せず、その先として“黒を知ったうえで青を選んで戦う春麗”を見せた。

という回です。

今回の核は「黒を消さない青」

今回の青は、以前の青武道服回とは違います。

前回の通常救済版春麗の青は、

戦わない青
歩く青
手をつなぐ青
選べる青

でした。

あの青は、黒ドレスの重さから距離を取り、リュウと穏やかに隣を歩くための青でした。

しかし今回は違います。

今回は、

戦う青
黒を知っている青
黒を消さない青
それでも自分で青を選ぶ春麗

です。

ここが非常に大きいです。

黒が続いた後だからこそ、「青に戻る」と言っても、黒をなかったことにはできません。

黒を知らなかった頃の青には戻れない。

でも、黒を知ったから青が弱くなるわけではない。

むしろ、黒を知ったうえで青を選ぶからこそ、その青は強くなる。

今回の通常救済版春麗は、それを示しました。

通常救済版春麗らしい満足の仕方

本編春麗なら、勝敗にこだわります。

自覚前春麗なら、勝ったのに否認し、引き分けても否認します。

黒ドレス特化春麗なら、黒として受け取らせたかどうかを重視します。

でも通常救済版春麗は違います。

彼女は、勝敗そのものより、

私は今日、黒を消さずに青を選べたか。
リュウはそれを見届けたか。

を重視しています。

だから最後に明確な勝敗をつけません。

春麗の蹴りも届く。
リュウの手も届く。
結果としては引き分けに近い。

でも春麗は言います。

青の勝ちね。

これはリュウに勝ったという意味ではありません。

黒を消さない青が、ちゃんと戦えた。
だから青の勝ち。

この言い方が、通常救済版春麗らしいです。

リュウの回答が非常に良い

今回のリュウで一番良かったのは、この一連の答えです。

黒で来るなら、黒を見る。
青で来るなら、青を見る。
だが、黒がそこにあることは忘れない。

これは、今回の青案件に対する非常に適切な回答です。

黒を警戒しすぎると、青が見えなくなる。
青だけを見ると、黒をなかったことにしてしまう。

だからリュウは、

今は青を見る。
でも、黒があることは忘れない。

と言う。

これは救済後の通常ルートにかなり合います。

黒を否定しない。
黒に呑まれない。
青を選んだ春麗を見る。

かなり高得点です。

「青で強かった」が九十九点ではない理由

最後のリュウの言葉、

今日の春麗は、青で強かった。
黒もあった。
だが、青を選んだ。
その青が、強かった。

これはかなり良いです。

ただし、春麗は九十九点にはしません。

九十七点くらいでよい、と判断します。

これが非常に通常救済版らしい。

黒ドレス特化春麗なら、九十九点を求めます。
本編春麗も、自分専用回答なら九十九点をつけます。
行き遅れ恐怖版春麗も、救済台詞には九十九点をつけます。

でも通常救済版春麗は、満足していても九十九点にはしない。

理由は、

まだ、青には続きがあるから。

です。

これは美しい判断です。

不満だから低いのではない。
満足しているからこそ、青の余白を残した。

これが通常救済版春麗の安定感です。

HP表記あり:RPG的バトル解説
初期ステータス
裏ルート通常救済版春麗《黒を消さない青》
HP:100 / 100
心理HP:100 / 100

状態:
・救済後
・青い基本の武道服装備
・前回は戦わない青を経験済み
・今回は戦う青を選択
・黒を否定しない
・黒を使えるが、今日は青を選ぶ

バフ:
・青の選択権:高
・救済後の安定感:高
・黒の記憶保持:有効
・戦わない青の経験:有効
・リュウへの信頼:高

デバフ:
・黒案件続きによる青の出番不足感
・黒を使えば勝てる場面での制御負荷
・甘い言葉への静かな被弾

リュウ
HP:100 / 100
心理HP:100 / 100

状態:
・黒も青も見る姿勢
・春麗の選択を見届ける
・今回は青に合わせる意識

バフ:
・春麗観察補正
・黒を忘れない視点
・青への対応
・選択尊重

デバフ:
・黒を警戒しすぎると青への反応が遅れる
・青だけを見ると黒を見落とす危険

今回の戦闘は、単純な勝敗戦ではありません。

目的は、

春麗が黒を消さずに青を選べるか
リュウが黒を忘れずに青を見られるか

です。

この二つが達成されれば、春麗側の満足条件は満たされます。

フェーズ1:青の先制、黒の残響
春麗 HP:96 / 100
リュウ HP:84 / 100
戦況:春麗やや優勢

春麗は青で踏み込みます。

ただし、黒を知らない頃の青ではありません。

一歩目は青。
二歩目に黒の記憶が混じる。
しかし、黒には沈めない。

春麗スキル:《黒を消さない青》
効果:
・青の速度上昇
・黒の残響によるリュウの反応遅延
・ただし黒に寄りすぎると自己制御負荷発生

攻撃結果。

春麗攻撃:《青掌底》
リュウ HP:100 → 92

春麗攻撃:《青回り込み蹴り》
リュウ HP:92 → 84

ここでリュウは、

青だ。
だが、黒を知っている。

と見抜きます。

リュウ特殊行動:《青だが黒を知っている》
効果:
・春麗 心理HP:100 → 88
・春麗 満足度+
・リュウの観察精度上昇

春麗にかなり刺さっています。

なぜなら、この言葉は今回のテーマをほぼ言い当てているからです。

フェーズ2:リュウの適応と黒への警戒
春麗 HP:78 / 100
リュウ HP:70 / 100
戦況:互角

中盤、リュウは青に対応し始めます。

ただし、青だけを見ていません。

黒がそこにあることを忘れず、春麗が今どちらを選んでいるかを見ています。

リュウパッシブ:《黒を忘れず青を見る》
効果:
・黒フェイント耐性上昇
・青への反応速度上昇
・春麗の選択変化を察知

リュウの反撃。

リュウ攻撃:《肩への拳》
春麗 HP:96 → 86

リュウ攻撃:《踏み込み返し》
春麗 HP:86 → 78

ここで春麗は一度、黒に寄りすぎます。

リュウの体勢を崩せる場面で、春麗は掌底を打たずに一歩引きます。

春麗行動:《黒への過接近を中断》
効果:
・攻撃チャンス放棄
・心理HP回復
・青選択の維持

これは戦術的にはダメージ機会を逃しています。

でも物語的には重要です。

春麗 心理HP:88 → 104
状態:《青を選び直した》発動

春麗は、黒で勝てる場面をあえて青へ戻した。

今回の勝利条件にとって、これは大きな加点です。

フェーズ3:甘いバトル化
春麗 HP:62 / 100
リュウ HP:58 / 100
戦況:互角、心理満足度上昇

リュウが言います。

春麗が、今日は青を選んでいた。
なら、今の春麗に合わせる。

これは非常に高得点。

リュウ特殊行動:《今の春麗に合わせる》
効果:
・春麗 心理HP:104 → 82
・春麗 満足度+大
・リュウの選択尊重バフ発動

心理HPは一度下がっています。

なぜなら、効いているからです。

ただし、満足度は上がります。

春麗状態:《甘い被弾・青》
効果:
・心理HP低下
・満足度上昇
・戦闘継続意欲上昇

ここで春麗が、

九十四点。

と採点してしまいます。

通常救済版でも、やはり会議由来の採点文化は少し入っています。

フェーズ4:終盤、黒と青の選択
春麗 HP:28 / 100
リュウ HP:30 / 100
戦況:最終局面

終盤、春麗は自覚します。

黒を使えば勝てる場面が何度かあった。

しかし、今日は黒で勝つ日ではない。

黒を知ったうえで青を選ぶ日です。

ここでリュウが決定的な回答をします。

黒で来るなら、黒を見る。
青で来るなら、青を見る。
だが、黒がそこにあることは忘れない。

リュウ特殊行動:《黒があることは忘れない》
効果:
・春麗 心理HP:82 → 58
・春麗 満足度+特大
・青選択の最終判定解放

春麗はこれにかなり満足しかけます。

でも、まだ戦闘中なので止まりません。

春麗状態:《満足寸前》
効果:
・戦闘終了後満足度判定にボーナス
・最終攻撃精度上昇
最終ターン:青の選択
春麗 HP:28 / 100
リュウ HP:30 / 100

春麗は最後、黒の気配を完全には消しません。

しかし決め手として選ぶのは青です。

春麗スキル:《黒を含んだ青の踏み込み》
効果:
・黒の警戒を残す
・最終攻撃は青で実行

春麗の蹴り。

春麗攻撃:《青選択蹴り》
リュウ HP:30 → 3
寸止め判定:脇腹前

リュウも合わせます。

リュウ攻撃:《選択を見届ける手》
春麗 HP:28 → 3
寸止め判定:胸元前

判定としては、ほぼ同時です。

最終判定:
春麗の青蹴り:到達
リュウの手:到達

通常勝敗:引き分け相当
物語判定:青の勝ち

なぜ「青の勝ち」なのか。

リュウに勝ったからではありません。

春麗が最後まで黒に流されず、黒を消さず、青を選び切ったからです。

勝者:
戦闘勝敗:なし
概念勝利:青
最終ステータス
春麗 HP:3 / 100
リュウ HP:3 / 100

戦闘結果:
引き分け相当

概念結果:
青の勝ち

理由:
・春麗が黒を排除せず青を選び切った
・リュウが黒を忘れず青を見届けた
・救済後ルートの青が戦闘でも成立した

今回のHP3同士は、穏やかな紙一重です。

自覚前春麗の黒引き分けはHP1同士で、かなり危険な熱でした。

今回はHP3同士。

ギリギリだけれど、破滅感は薄い。

救済後ルートらしい安定があります。

心理HPの推移
春麗 心理HP推移:

開始時:100
青で戦う決意:100 → 112
リュウ「青だ。だが黒を知っている」:112 → 88
黒に寄りすぎた場面で自制:88 → 104
リュウ「今の春麗に合わせる」:104 → 82
リュウ「黒があることは忘れない」:82 → 58
最終的に青を選び切る:58 → 126
リュウ「その青が強かった」:126 → 94
最終満足:94 → 118

通常救済版春麗は、被弾しても大崩れしません。

本編春麗や自覚前春麗なら大騒ぎになります。

でも通常救済版は救済後なので、

効いた。
でも受け取れる。

という形になります。

これが安定感です。

春麗会議での評価

今回の会議では、青案件として高評価です。

特に評価されたのはこのリュウの言葉。

黒で来るなら、黒を見る。
青で来るなら、青を見る。
だが、黒がそこにあることは忘れない。

会議総合は九十八点。

理由は、今回の青に対する最適回答にかなり近いからです。

ただし、九十九点ではありません。

通常救済版春麗自身が、

青にはまだ続きがある。

と判断しているからです。

もう一つの評価対象。

今日の春麗は、青で強かった。
黒もあった。
だが、青を選んだ。
その青が、強かった。

これも非常に高評価。

ただし、やはり九十七〜九十八点帯。

今回の青は満足回ではあるが、最終到達回ではない。

ここが大事です。

黒ドレス特化春麗が認めた意味

春麗会議で、黒ドレス特化春麗が今回の青案件を認めたことも重要です。

彼女は言います。

青が黒をなかったことにしないなら、私は認めるわ。

これはかなり大きい。

黒ドレス特化春麗は、黒を軽視する青なら認めなかったはずです。

でも今回の青は、黒を消していない。

黒を知ったうえで、青を選んでいます。

だから黒ドレス特化春麗も認める。

これは春麗会議内のバランスとして非常に良いです。

自覚前春麗への影響

自覚前春麗も、今回の青案件に反応しています。

黒を消さない青……

これは、かなり危険な反応です。

自覚前春麗は青で勝った。
黒で勝った。
黒で引き分けた。

そこへ今回、通常救済版から「黒を消さない青」という安定した概念が提示された。

これは彼女にとって、新しい資料になります。

おそらく今後、自覚前春麗は、

黒を消さない青を、資料として確認する

と言い出せます。

かなり便利な火種です。

今回の物語上の意味

今回の妄想章IFは、春麗会議全体にとって重要です。

黒案件が続くと、どうしても春麗会議は重くなります。

黒は魅力的ですが、責任・沈める・境界・見せる黒・見せない黒と、テーマが重い。

そこへ今回、青が戻ってきました。

ただし、軽い青ではない。

黒を知った青。

救済後の青。

戦える青。

この青が入ったことで、春麗会議の色のバランスが戻りました。

結論

今回の妄想章IFは、裏ルート通常救済版春麗が、黒案件続きの春麗会議に対して、“青でも戦える。しかも黒を消さずに戦える”と示した青の復権回です。

RPG的には、

春麗 HP3、リュウ HP3。
戦闘結果は引き分け相当。
ただし概念判定では、黒を消さずに青を選び切ったため“青の勝ち”。
会議総合は九十八点。通常救済版春麗は満足。

です。

一言でまとめるなら、

青は、黒の反対ではない。
黒を知った春麗が、それでも選べる色。
そして今回、その青はちゃんと戦えた。

この回で、通常救済版春麗の青はかなり強くなったと思います。
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