また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
春麗会議に、妙なものが持ち込まれた。
円卓の中央に置かれているのは、いつもの資料ではない。
淡く光る記録板。
そこには、二つの妄想IFルートが並んでいた。
第一資料:黒ドレス余裕勝利十連勝ルート
第二資料:引き分け十連敗ルート
自覚前春麗は、資料名を見た瞬間に眉をひそめた。
「……何よ、これ」
本編春麗は議長席で満足そうに言った。
「妄想IFルート鑑賞会よ」
「何の会議よ、それ」
「比較検証」
「便利すぎるわよ、その言葉」
黒ドレス特化春麗は、すでに少し楽しそうだった。
「まずは黒ドレス余裕勝利十連勝から見ましょう」
通常救済版春麗がお茶を置く。
「重い方から見るのね」
黒ドレス特化春麗は静かに微笑んだ。
「黒から見るのは当然でしょう」
行き遅れ恐怖版春麗が資料を見つめる。
「十連勝と十連引き分け……どちらも十回続いているのね」
グランドフィナーレ済み春麗が穏やかに言う。
「どちらも、終わらなかった十回ね」
自覚前春麗は腕を組んだ。
「普通に考えれば、十連勝の方が上でしょう。勝っているんだから」
本編春麗は、それを聞いてにやりと笑った。
「では、その仮説を検証しましょう」
「仮説って言わないで」
本編春麗は記録板に手を触れた。
淡い光が広がる。
春麗会議の中央に、妄想IFルートの映像が映し出された。
第一鑑賞:黒ドレス余裕勝利十連勝ルート
一戦目。
黒ドレスの春麗が、リュウの前に立つ。
黒い裾が揺れる。
リュウは構えるが、反応が半拍遅い。
春麗は笑う。
黒で誘い、掌底で崩し、最後に蹴りを寸止めする。
勝利。
黒ドレス春麗の完勝だった。
黒ドレス特化春麗は、満足そうに頷いた。
「悪くないわ」
自覚前春麗も資料を見ながら言う。
「黒で十連勝は、資料としては悪くないわね」
本編春麗がすかさず見る。
「資料として?」
「資料としてよ」
「便利ね」
「あなたに言われたくないわ」
二戦目。
春麗はさらに余裕を持って勝つ。
リュウは黒に警戒するが、警戒するほど春麗の間合いに沈む。
三戦目。
黒の視線誘導に引っかかり、リュウの拳が届かない。
春麗は軽く微笑み、リュウの胸元に掌を当てる。
「まだ届かないわね」
勝利。
四戦目。
リュウは少し対応する。
だが、春麗はその対応すら読んで黒を深める。
勝利。
五戦目。
黒ドレス春麗は、ほとんど踊るようにリュウを崩す。
十連勝ルートの前半は、明らかに春麗の独壇場だった。
黒ドレス特化春麗は楽しそうに見ている。
「主導権を握れているわ」
本編春麗も頷く。
「戦闘評価は高いわね」
自覚前春麗が言う。
「当然でしょう。勝っているんだから」
行き遅れ恐怖版春麗は、少しだけ不安そうに画面を見る。
「でも……」
通常救済版春麗が、その続きを引き取った。
「リュウは、届いていないわね」
会議室が少し静かになった。
黒ドレス特化春麗の表情が、わずかに変わる。
「……まだ前半よ」
通常救済版春麗は穏やかに頷いた。
「ええ。だから見ましょう」
六戦目。
リュウは踏み込む。
しかし黒の深さに阻まれる。
七戦目。
拳は春麗の肩先をかすめるが、届かない。
八戦目。
リュウは黒を見ようとする。
だが、見れば見るほど遅れる。
春麗はまた勝つ。
九戦目。
春麗の黒は完璧に近い。
リュウは倒れない。
けれど届かない。
十戦目。
リュウは最後まで前に出る。
春麗は、黒の中心でそれを受け止めるように見ていた。
そして、また勝つ。
十連勝。
記録板に結果が表示される。
黒ドレス余裕勝利十連勝ルート
戦闘結果:春麗十勝、リュウ零勝
勝敗評価:極めて高い
関係進行評価:中程度
自覚前春麗は眉を寄せた。
「中程度?」
本編春麗は黙って記録を見ている。
通常救済版春麗が静かに言った。
「十回勝った。でも、十回ともリュウは届いていない」
黒ドレス特化春麗は腕を組んだまま黙った。
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「春麗は強い。黒も強い。でも、関係はあまり進んでいないわ」
行き遅れ恐怖版春麗が小さく言う。
「十回続いているのに、先へは進んでいない感じがするわ」
自覚前春麗は反論しかけた。
「でも、勝っているわ」
本編春麗は頷く。
「ええ。勝っている」
「なら」
「でも、リュウが届いていない」
自覚前春麗は黙った。
黒ドレス特化春麗が、低く言う。
「黒で勝つこと自体は悪くないわ」
通常救済版春麗は頷く。
「もちろん」
黒ドレス特化春麗は、少しだけ目を伏せた。
「でも、届かれないまま勝ち続ける黒は……少し寂しいわね」
その言葉に、会議室が静かになった。
黒ドレス特化春麗がそう言うのは、かなり重かった。
本編春麗は資料へ書き込む。
評価:黒ドレス余裕勝利十連勝
戦闘評価:九十八点
黒運用評価:九十七点
関係進行評価:七十二点
総合:八十五点
自覚前春麗が驚く。
「八十五点? 十連勝なのに?」
本編春麗は言った。
「勝利数だけなら高いわ。でも春麗会議では、それだけでは足りない」
「……」
「次に行きましょう」
記録板の光が切り替わった。
第二鑑賞:引き分け十連敗ルート
一戦目。
春麗とリュウが向かい合う。
黒でも青でもない。
いや、場面ごとに揺れている。
一回目は青。
春麗は優勢だった。
だが最後、リュウの拳が届く。
春麗の蹴りも届く。
同時寸止め。
引き分け。
自覚前春麗は即座に言った。
「勝ててないじゃない」
本編春麗が軽く頷く。
「そうね」
「なら十連勝の方が上でしょう」
「まだ一戦目よ」
二戦目。
今度は黒。
春麗は黒で押す。
リュウは遅れる。
しかし最後の最後で、拳が届く。
春麗の掌も届く。
引き分け。
三戦目。
青に黒の経験が混じる。
リュウはそれを読み始める。
また引き分け。
四戦目。
春麗は少し苛立っている。
勝てない。
だが、負けてもいない。
リュウは少しずつ届いている。
春麗も、それに合わせて変わっている。
自覚前春麗は、腕を組んだまま少し黙った。
本編春麗が横目で見る。
「どうしたの?」
「何でもないわ」
「まだ勝ててないじゃない、と言わないの?」
「言う必要がないだけよ」
黒ドレス特化春麗が静かに言う。
「否認部門代表、被弾予兆」
「その肩書きで呼ばないで!」
五戦目。
引き分け。
だが、一戦目とは違う。
リュウの拳はただ届いたのではない。
春麗の選択を見たうえで、届いている。
春麗も、リュウが届くことを前提に次の一手を組むようになっている。
六戦目。
引き分け。
リュウが言う。
次は、もう少し早く届かせる。
春麗が返す。
次があると思っているのね。
リュウは答える。
ある。
春麗は黙る。
その沈黙に、春麗会議の面々も黙った。
行き遅れ恐怖版春麗が、小さく息を吐く。
「これは……少し羨ましいわ」
通常救済版春麗が頷く。
「十回も決着がつかないのに、十回とも次がある」
黒ドレス特化春麗が言う。
「勝てていないのに、届いている」
グランドフィナーレ済み春麗が静かに言った。
「終わらないことが、敗北ではなくなっているのね」
自覚前春麗は黙っていた。
七戦目。
春麗は明らかに楽しそうだった。
ただし、認めない顔をしている。
リュウもまた、勝てないことを悔しがりながら、前へ出る。
引き分け。
八戦目。
黒で引き分ける。
九戦目。
青で引き分ける。
そして十戦目。
春麗はもう、勝ちだけを見ていなかった。
リュウも、負けないことだけを見ていなかった。
互いに届く。
互いに止める。
互いに次を作る。
最後、春麗の足先とリュウの拳が同時に止まった。
また引き分け。
十回目の引き分け。
記録板に結果が表示された。
引き分け十連敗ルート
戦闘結果:春麗零勝、リュウ零勝、十引き分け
勝敗評価:低い
関係進行評価:極めて高い
次回生成評価:最大
会議室が静かだった。
自覚前春麗は、何も言わない。
本編春麗が、ゆっくり視線を向けた。
「あなた、こっちの方が刺さっているわね」
自覚前春麗は即答した。
「刺さっていない」
黒ドレス特化春麗が静かに言う。
「否認部門代表、被弾確認」
「確認しないで!」
通常救済版春麗が微笑む。
「でも、見入っていたわ」
「資料として見ていただけよ」
本編春麗が言う。
「資料として、十連勝と十引き分け、どちらが危険だった?」
自覚前春麗は答えない。
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「十連勝は、勝っているけれど止まっていた」
グランドフィナーレ済み春麗が続ける。
「十引き分けは、勝っていないけれど進んでいた」
黒ドレス特化春麗が低く言う。
「黒で余裕勝利を続けるより、毎回届かれる引き分けの方が重い時もあるわ」
自覚前春麗は、ようやく小さく言った。
「……勝っていないのに」
本編春麗は優しく聞いた。
「ええ」
自覚前春麗は資料を見つめる。
「勝っていないのに、次が十回あるのは危険よ」
会議室が静かになる。
それは、否認ではなかった。
ほとんど、答えだった。
本編春麗は少し笑った。
「では否認部門代表、どちらがより危険だった?」
自覚前春麗は、顔を赤くしながら答えた。
「……資料としては、引き分け十連敗」
全員が見た。
自覚前春麗は目を逸らす。
「勝っていないのに、次が十回あるのは危険よ」
黒ドレス特化春麗が頷く。
「異議なし」
通常救済版春麗も。
「異議なし」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「次が十回あるのは、少し怖くて、少し羨ましいわ」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「終わらないことが価値になるルートね」
本編春麗は、資料に結論を書き込んだ。
評価:引き分け十連敗ルート
戦闘勝敗評価:五十点
関係進行評価:九十九点
次回生成評価:九十九点
総合:九十七点
自覚前春麗は思わず言った。
「総合九十七点? 勝っていないのに?」
本編春麗は頷いた。
「勝っていないからよ」
「どういう理屈よ」
「勝って終わらなかった。負けて終わらなかった。毎回次が生まれた」
通常救済版春麗が続ける。
「十回続いたこと自体に意味があるわ」
黒ドレス特化春麗が言う。
「届かれながら、沈めきらず、終わらせない。かなり高度ね」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「期限がないと怖いけれど、十回とも次があるのは……強いわ」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「勝敗ではなく、継続そのものが主題になっている」
本編春麗は、円卓を見回した。
「では、総合審議に入ります」
自覚前春麗が小さく呟く。
「まだやるの……」
「当然よ」
本編春麗は資料を整理する。
「黒ドレス余裕勝利十連勝。戦闘評価は高い。黒の運用も優秀。ただし、リュウが届いていないため、関係進行は中程度。黒の一方通行になりやすい」
黒ドレス特化春麗は静かに頷いた。
「認めるわ」
自覚前春麗は少し驚く。
「あなたが認めるの?」
「ええ」
黒ドレス特化春麗は言った。
「黒で勝つだけなら、まだ浅いもの」
その言葉はかなり重かった。
本編春麗は続ける。
「引き分け十連敗。勝敗評価は低い。十回とも勝てていない。だが、毎回届き合い、毎回次が生まれているため、関係進行評価は極めて高い」
通常救済版春麗が頷く。
「会議としては、こちらを高く評価するのが自然ね」
自覚前春麗は、まだ少し納得していない顔をしている。
「でも、勝っていないわ」
本編春麗は言った。
「勝てばいいわけではない」
「……」
「負けなければいいわけでもない」
本編春麗は、そこで一拍置いた。
「春麗会議で重要なのは、次が生まれるかどうかよ」
会議室が静かになった。
その言葉は、このシリーズ全体に刺さるものだった。
黒ドレス特化春麗が目を伏せる。
「黒で沈めても、次がなければ足りない」
通常救済版春麗が言う。
「青で歩いても、次があれば続く」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「待つことも、次があるなら耐えられる」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「終わった後にも、次があるなら物語になる」
自覚前春麗は、何も言わない。
本編春麗は、そちらを見る。
「否認部門代表」
「その肩書きで呼ばないで」
「あなたは?」
自覚前春麗は、少しだけ睨んだ。
だが、反論はしなかった。
「……資料としてなら」
全員が見た。
「勝つだけでは足りない、というのは認めるわ」
本編春麗が微笑む。
「かなり大きい発言ね」
「資料として!」
黒ドレス特化春麗が言う。
「では、引き分け十連敗は?」
自覚前春麗は目を逸らす。
「……危険」
通常救済版春麗が微笑む。
「どう危険?」
「勝っていないのに、十回も次があるところ」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「そこが刺さったのね」
「刺さっていない!」
黒ドレス特化春麗が淡々と言う。
「被弾確認」
「確認しないで!」
本編春麗は結論文を記録板に刻んだ。
春麗会議・妄想IFルート鑑賞会 結論
一、黒ドレス余裕勝利十連勝は、戦闘評価が高い。
ただし、リュウが届いていないため、黒の一方通行化に注意。
二、引き分け十連敗は、勝敗評価こそ低い。
しかし、毎回届き合い、毎回次が生まれるため、関係進行評価は極めて高い。
三、春麗会議における重要評価軸は、勝利数ではなく、次回生成能力である。
四、否認部門代表は、引き分け十連敗に強く被弾。本人は否認。
自覚前春麗は、机を叩いた。
「四番を消しなさい!」
本編春麗は満面の笑みで言った。
「消さないわ」
「なぜ!」
「正式記録だから」
黒ドレス特化春麗が言う。
「否認部門代表の反応は重要資料よ」
通常救済版春麗が優しく言う。
「大丈夫よ。刺さるものがあるのは悪いことではないわ」
「刺さっていない!」
行き遅れ恐怖版春麗が小さく笑う。
「でも、十回次があるのは危険なのよね?」
自覚前春麗は詰まった。
「……資料としては」
グランドフィナーレ済み春麗が静かに言う。
「その“資料として”も、次を作る言葉ね」
自覚前春麗は黙った。
何か言い返したかった。
だが、言い返すほど、会議に絡め取られる気がした。
本編春麗は、満足げに資料を閉じた。
「今回の鑑賞会は成功ね」
黒ドレス特化春麗が言う。
「黒側としても収穫があったわ。勝ち続けるだけでは足りない」
通常救済版春麗が言う。
「青側としても、引き分けの価値が確認できたわね」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「私は、十回続くことの怖さと価値を見た気がする」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「終わらない十回。とても春麗会議らしいわ」
自覚前春麗は、ぼそりと言った。
「……次があるのは、危険よ」
本編春麗が聞き逃さない。
「でも、嫌ではない?」
自覚前春麗は、顔を赤くした。
「答えないわ」
「答えないのね」
「ええ」
「では保留」
「保留にしないで!」
「次回議題ね」
「勝手に次を作らないで!」
本編春麗は微笑んだ。
「春麗会議で重要なのは、次が生まれるかどうかよ」
自覚前春麗は、完全に言葉を失った。
会議室が笑いに包まれる。
記録板の光が、ゆっくり消えていく。
最後に表示されたのは、今回の鑑賞会の副題だった。
勝つだけでは足りない。
終わらないことにも、価値がある。
自覚前春麗は、それを見て小さく呟いた。
「……認めてないわよ」
誰も何も言わなかった。
ただ、全員が少しだけ笑っていた。
その沈黙が一番腹立たしかった。
夢がほどける。
朝。
自覚前春麗は目を覚ました。
胸の奥に、妙な余韻が残っていた。
黒ドレス十連勝。
強かった。
綺麗だった。
圧倒的だった。
でも、どこか寂しかった。
引き分け十連敗。
勝てていなかった。
何度も決着がつかなかった。
なのに、毎回次があった。
春麗は布団の中で顔を覆った。
「……私は、引き分けが好きなわけじゃない」
一拍。
「次ができるのが嬉しいわけでもない」
さらに一拍。
「勝っている方が上に決まっているわ」
言ってから、少しだけ黙る。
そして、小さく付け足した。
「……でも、資料としては、引き分け十連敗の方が危険」
その声は、誰にも聞こえない。
けれど、春麗会議のどこかには届いている気がした。
春麗は起き上がる。
鏡の中には、まだ自分をめんどくさい女と認めたくない春麗がいる。
青でも黒でも引き分けて、次ができることに満たされてしまった春麗がいる。
「……次は勝つ」
いつものように言う。
そして、少しだけ迷ってから、付け足した。
「でも、引き分けても資料にはする」
言ってしまった。
春麗は、鏡の前で固まった。
「……違う。今のは違うわ」
誰もいない部屋で、必死に否認する。
けれど、鏡の中の春麗は、少しだけ笑っていた。
Q:今回の妄想章IFについて解説して?
A:
はい。執筆者として見ると、今回の妄想章IFはかなり重要です。
これは単なる「春麗会議でIFルートを鑑賞するメタ回」ではなく、春麗会議の価値基準が“勝敗”から“次が生まれるか”へ明確に移行した回です。
一言で言うなら、
春麗会議は、春麗が勝つかどうかより、リュウが届くか、春麗が変わるか、そして次が生まれるかを重視する場所になった
という回です。
1. 今回の核は「勝利数では測れない」という発見
今回、二つのルートを比較しました。
ひとつは、黒ドレス余裕勝利十連勝ルート。
これは一見すると圧倒的に強いです。
春麗が十回勝つ。
黒ドレスの運用も完璧。
リュウを寄せつけない。
戦闘評価は非常に高い。
でも、春麗会議では総合評価が伸びませんでした。
理由は、リュウが届いていないからです。
春麗は勝っている。
でも、リュウは黒に届かない。
春麗も、その勝利によって何かが変わっているわけではない。
毎回、春麗が上から勝って終わる。
つまり、勝っているのに関係が進んでいない。
ここが春麗会議的には減点です。
2. 黒ドレス特化春麗が黙るのが良い
今回かなり良かったのは、黒ドレス特化春麗が最初は楽しそうに見ていたのに、途中から黙るところです。
彼女なら、黒ドレスで十連勝する春麗を最初は評価するのは自然です。
悪くないわ。
主導権を握れているわ。
でも、通常救済版春麗やグランドフィナーレ済み春麗が、
でも、リュウは届いていないわね。
と指摘する。
ここで黒ドレス特化春麗が黙る。
これは非常に大きいです。
黒ドレス特化春麗は、ただ黒で勝てば満足する春麗ではありません。
彼女が本当に求めているのは、
黒を見られること
黒を受け取られること
黒の境界を守られること
黒を選んだ自分ごと向き合われること
です。
だから、十連勝してもリュウが届いていないなら、それは少し寂しい。
黒ドレス特化春麗自身がそれを認めたことで、黒の扱いがかなり成熟しました。
3. 引き分け十連敗ルートの方が刺さる理由
もう一方の、引き分け十連敗ルート。
これは勝敗だけ見れば弱いです。
春麗は一度も勝っていない。
リュウも勝っていない。
十回、決着がつかない。
戦闘勝敗評価だけなら低い。
でも、見るほどに意味が変わっていきます。
一戦目では、ただの引き分け。
二戦目では、黒でも届く。
三戦目では、青にも届く。
五戦目あたりから、リュウが春麗の変化に対応し始める。
十戦目には、勝敗よりも「次」が主役になっている。
ここが非常に良いです。
引き分けは、勝利ではありません。
でも、決着がつかないからこそ次が生まれる。
そして、その次が十回も続く。
これは春麗会議的には非常に高評価です。
4. 自覚前春麗に刺さる構造が強い
今回の主役は、実は自覚前春麗です。
彼女は最初、当然のようにこう言います。
普通に考えれば、十連勝の方が上でしょう。
勝っているんだから。
これは彼女らしいです。
自分も青で勝ち、黒で勝った経験がある。
だから勝利を重視したい。
でも、彼女はすでに黒でも青でも引き分けて、「次ができること」に満たされる感覚を知ってしまっています。
だから、口では十連勝を推しても、内心では引き分け十連敗に反応してしまう。
ここが非常においしいです。
本編春麗に、
あなた、こっちの方が刺さっているわね。
と言われて、
刺さっていない。
と否認する。
黒ドレス特化春麗に、
否認部門代表、被弾確認。
と言われる。
この流れは、今の自覚前春麗の状態にぴったりです。
5. 「勝っていないのに、次が十回あるのは危険よ」が決定打
今回、自覚前春麗の一番良い台詞は、
勝っていないのに、次が十回あるのは危険よ。
です。
これはかなり強いです。
彼女はまだ認めていません。
でも、この台詞はほとんど自分の本音です。
勝利よりも、次が生まれることの危険性を理解している。
なぜ危険なのか。
それは、自分がそこに満たされてしまう可能性を知っているからです。
勝てば嬉しい。
これは普通に言い訳できる。
でも、引き分けなのに満たされる。
次ができただけで嬉しくなる。
これは、もう関係性に反応している。
だから危険。
この台詞で、自覚前春麗の進行段階が非常によく出ました。
6. 春麗会議の価値基準が明文化された
今回、本編春麗がまとめた言葉が非常に重要です。
勝てばいいわけではない。
負けなければいいわけでもない。
春麗会議で重要なのは、次が生まれるかどうかよ。
これは、かなりシリーズの核心です。
今までの春麗会議は、いろいろなものを採点してきました。
黒。
青。
宿題。
引き分け。
煽り。
待つこと。
リュウの答え。
春麗の否認。
でも、最終的に見ているのは勝敗ではありません。
次が生まれるか。
ここです。
次が生まれるなら、引き分けでも高評価。
次が生まれないなら、十連勝でも評価が伸びない。
この価値基準が明文化されたことで、春麗会議の思想がかなり整理されました。
7. 黒ドレス十連勝の評価が低すぎないのも良い
黒ドレス十連勝を完全に否定していないのも良いです。
戦闘評価は高い。
黒運用も優秀。
春麗の強さも出ている。
そこは認める。
ただし、関係進行評価は中程度。
このバランスが重要です。
黒で勝つこと自体は悪くない。
春麗が強いことも価値がある。
でも、それだけでは春麗会議では最高点にならない。
この評価はかなり公正です。
8. 引き分け十連敗が高評価なのは「終わらない十回」だから
引き分け十連敗は、勝敗だけなら低い。
でも、毎回変化がある。
一回目と十回目が同じではない。
リュウが少しずつ届く。
春麗も少しずつ変わる。
次が生まれる。
その次もまた生まれる。
つまり、これは「同じ引き分けを十回繰り返した」のではありません。
十回分、関係が進んだ引き分けです。
だから高評価。
グランドフィナーレ済み春麗の、
終わらないことが価値になるルートね。
という見方も綺麗です。
9. 今後の展開への広がり
今回の鑑賞会によって、今後かなり使える評価軸ができました。
たとえば今後、別の妄想IFを出した時に、
戦闘評価
関係進行評価
次回生成評価
春麗側変化量
リュウ到達度
のような会議評価ができます。
特に「次回生成評価」は強いです。
春麗会議らしい独自の採点基準になりました。
今回の結論は、今後の春麗会議の基本ルールにしてよいと思います。
10. 今回の締めが自覚前春麗らしい
ラストで自覚前春麗が、
次は勝つ。
でも、引き分けても資料にはする。
と言ってしまう。
これは完璧に彼女らしいです。
勝ちたい。
でも、引き分けにも価値があることを知っている。
そして、その価値を「資料」として逃がす。
完全に否認部門代表です。
しかも言った直後に、
違う。今のは違うわ。
と否認する。
ここまで含めて、この回の余韻が非常に良いです。
結論
今回の妄想章IFは、春麗会議が“勝敗”ではなく“次が生まれるか”を最重要評価軸として定義した回です。
黒ドレス十連勝は強い。
でも、リュウが届かなければ関係は進みにくい。
引き分け十連敗は勝てていない。
でも、毎回届き合い、毎回次が生まれるなら、春麗会議的には非常に価値が高い。
そして、その価値に一番被弾したのが自覚前春麗だった。
一言でまとめるなら、
春麗会議は、勝利よりも継続を見た。
自覚前春麗は、それが自分に刺さることを認めたくなかった。
この回は、春麗会議シリーズ全体の価値基準を言語化した、かなり重要なメタ回だったと思います。