また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
春麗会議の円卓に、新しい記録板が置かれていた。
前回の鑑賞会では、結論が出ていた。
勝てばいいわけではない。
負けなければいいわけでもない。
春麗会議で重要なのは、次が生まれるかどうか。
黒ドレス余裕勝利十連勝は、勝っているのにリュウが届かないため、関係進行評価が伸びなかった。
引き分け十連敗は、勝っていないのに毎回次が生まれるため、春麗会議的には高評価だった。
では。
黒ドレスで十回勝つ。
ただし、余裕勝ちではない。
十回とも紙一重。
十回ともリュウは届きかける。
十回とも春麗は危うくされる。
それでも十回とも、最後に立つのは春麗。
その場合、どう評価されるのか。
記録板には、こう表示されていた。
春麗会議・妄想IFルート鑑賞会 第二回
議題:黒ドレス紙一重勝利十連勝ルート
副題:春麗は、紙一重の勝利に酔っている
自覚前春麗は、表題を見て眉をひそめた。
「……また黒ドレス十連勝?」
本編春麗は、議長席で資料を整えながら言った。
「前回とは違うわ」
「何が違うのよ」
黒ドレス特化春麗が、静かに答えた。
「前回は余裕勝利。今回は紙一重の勝利」
通常救済版春麗が頷く。
「リュウが届かない十連勝ではなく、リュウが毎回届きかける十連勝なのね」
行き遅れ恐怖版春麗は、少し緊張したように記録板を見た。
「十回勝っているのに、十回危ない……」
グランドフィナーレ済み春麗が静かに言う。
「勝利と継続が、かなり近い場所にあるルートね」
自覚前春麗は腕を組む。
「それなら、かなり強いでしょう。勝っているし、リュウも届きかけている。前回の余裕勝利より評価は上のはずよ」
本編春麗が、少し笑った。
「では、それを確認しましょう」
記録板が光った。
黒いドレスの春麗が、夜明け前の修行場に立っていた。
一戦目。
黒いドレスが揺れる。
リュウは、その黒に一瞬だけ呼吸を乱す。
春麗はそこを逃さない。
黒で視線を奪い、足元をずらし、掌底を入れる。
リュウは受けた。
受けて、踏み込んだ。
春麗の肩先を拳がかすめる。
会議室の自覚前春麗が小さく言う。
「……届きかけている」
黒ドレス特化春麗は頷いた。
「ええ」
最後は、春麗の蹴りが先に止まった。
春麗の勝ち。
だが、リュウの拳も、ほとんど届いていた。
記録板に表示される。
第一戦:春麗勝利
春麗HP:5 / 100
リュウHP:2 / 100
備考:リュウ、初戦から到達寸前
本編春麗が資料に書き込む。
「勝利。ただし余裕なし」
通常救済版春麗が言う。
「前回の余裕勝利とは、まったく違うわね」
黒ドレス特化春麗は、少しだけ満足そうに言った。
「リュウが届きかけている。だから黒が濃い」
二戦目。
リュウは、黒いドレスの揺れから目を戻すのが早くなっていた。
春麗はそれを見て、少し笑う。
黒で誘う。
リュウは誘われる。
しかし、ただ遅れるだけではない。
拳が、春麗の逃げる先に置かれる。
春麗の呼吸が乱れる。
それでも、最後の一瞬で春麗が上回る。
勝利。
第二戦:春麗勝利
春麗HP:4 / 100
リュウHP:1 / 100
行き遅れ恐怖版春麗が小さく言った。
「勝っているのに、怖いわね」
グランドフィナーレ済み春麗が頷く。
「勝利が安全ではないのね」
自覚前春麗は、画面から目を逸らさなかった。
「……でも、勝っているわ」
本編春麗が横目で見る。
「そこが刺さる?」
「刺さっていない。資料として見ているだけ」
黒ドレス特化春麗が淡々と言う。
「否認部門代表、鑑賞姿勢強め」
「その肩書きで呼ばないで!」
三戦目。
リュウは、黒の視線誘導の先に拳を置いてきた。
春麗が誘った場所へ、リュウは踏み込む。
春麗の目が、わずかに揺れる。
見られた。
読まれた。
捕まる。
その直前、春麗は黒い裾を反転させ、間合いをずらした。
リュウの拳が空を切る。
春麗の掌が胸元に止まる。
勝利。
ただし、春麗の手首には、リュウに捕まえられかけた感触が残っていた。
第三戦:春麗勝利
春麗HP:3 / 100
リュウHP:1 / 100
備考:リュウ、黒の誘導先へ対応開始
通常救済版春麗が言う。
「リュウは進んでいるわね」
本編春麗も頷く。
「ええ。毎回、春麗の勝利を削っている」
黒ドレス特化春麗は、目を細めた。
「でも最後に勝つのは春麗」
自覚前春麗が小さく言う。
「……それが危ないのよ」
本編春麗がすかさず反応する。
「今、危ないと言ったわね」
「資料として!」
四戦目。
五戦目。
六戦目。
春麗は勝ち続けた。
ただし、毎回傷ついていた。
肩に拳の重さが残る。
脇腹に浅い痛みが残る。
手首に捕まえられかけた痺れが残る。
呼吸は乱れ、黒いドレスの裾には土がつく。
それでも春麗は勝つ。
勝った後、毎回リュウを見る。
リュウは悔しそうに拳を握る。
届きかけた。
でも届かなかった。
その顔を見て、春麗は満たされる。
記録板の中の春麗が言う。
また届きかけたわね、リュウ。
リュウは黙っている。
春麗は笑う。
でも、届きかけただけ。
会議室が静かになった。
自覚前春麗が、ぽつりと言った。
「これは……煽りというより、勝者の確認ね」
黒ドレス特化春麗が頷く。
「ええ。相手の強さを認めたうえで、最後に自分が立っていることを示している」
通常救済版春麗が少し苦笑する。
「甘いけれど、かなり強いわね」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「リュウは悔しいでしょうね」
グランドフィナーレ済み春麗が静かに言う。
「届きかけたからこその悔しさね」
本編春麗は資料に書く。
紙一重勝利による双方高揚。
七戦目。
春麗は、勝った直後に息を乱していた。
余裕ではない。
なのに笑っている。
リュウは片膝をついている。
だが、目は折れていない。
春麗は、その目を見る。
危なかったわ。
リュウが顔を上げる。
春麗は黒いドレスの裾を払う。
でも、危なかっただけじゃ私は倒せない。
その言葉に、会議室の黒ドレス特化春麗が少しだけ目を伏せた。
「この春麗は、勝利に酔っているわ」
本編春麗が頷く。
「ただの勝利ではなく、危なかったうえで勝ったことに酔っている」
自覚前春麗が腕を組む。
「それ、勝者としては当然じゃないの?」
通常救済版春麗が優しく言う。
「当然ではあるわ。でも、かなり濃いわね」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「負ける可能性があるから、勝利が甘くなっている」
行き遅れ恐怖版春麗が少し震えるように言った。
「次は本当に負けるかもしれないのに、次を待っているのね」
黒ドレス特化春麗が、静かに答える。
「それがこのルートの春麗ね」
八戦目。
九戦目。
リュウはさらに迫る。
もう黒ドレスにただ揺らされるだけではない。
春麗が逃げる先を読む。
視線を誘った先に拳を置く。
勝者の顔が崩れかける瞬間を狙う。
春麗は焦る。
本当に焦る。
けれど、最後だけ上回る。
八戦目も勝利。
九戦目も勝利。
記録板には数値が並ぶ。
第八戦:春麗勝利
春麗HP:2 / 100
リュウHP:1 / 100
第九戦:春麗勝利
春麗HP:1 / 100
リュウHP:0判定
自覚前春麗は、もう茶化さなかった。
本編春麗が声をかける。
「どうしたの?」
「……勝っているのに、ほとんど引き分けみたい」
「ええ」
「でも、引き分けではない」
「ええ」
「最後に立つのは春麗」
「ええ」
自覚前春麗は、少し悔しそうに言った。
「……これは、危険よ」
黒ドレス特化春麗が微笑む。
「否認部門代表、被弾確定」
「確定しないで!」
十戦目。
夜明け前の修行場。
黒いドレスの裾には土がついている。
春麗は痛んでいる。
肩も、手首も、脇腹も。
息も乱れている。
だが、勝者として立っている。
リュウは片膝をついていた。
拳を握っている。
悔しそうだった。
それでも、目は折れていない。
春麗は、その目を見る。
また届きかけた。
また捕まえられかけた。
また負けるかもしれないと思った。
それでも勝った。
十度目の勝利。
十度目の余裕ではなく、十度目の危うさ。
春麗は、ゆっくり息を吐く。
また届きかけたわね、リュウ。
リュウの拳が、わずかに強く握られる。
春麗は、その反応を見て胸の奥を熱くする。
でも、届きかけただけ。
黒いドレスの裾が風に揺れる。
最後に立っているのは、私よ。
会議室は、完全に静かだった。
その春麗は、勝っていた。
確かに勝っていた。
だが、支配しているのではなかった。
圧倒しているのでもなかった。
十回勝った。
けれど十回とも危なかった。
リュウは十回とも届きかけた。
春麗は十回とも、負けるかもしれないと思った。
そして十回とも、最後の最後で自分が上回った。
記録板の映像は、山道を歩く春麗へ移る。
黒いドレスは汚れている。
身体は痛い。
けれど春麗は満たされていた。
これが欲しかったのね、私は。
会議室の自覚前春麗が、息を止めた。
記録板の春麗は続ける。
負けたいわけではない。
でも、負けるかもしれないところまで来てほしい。
そのうえで、最後に立つ自分が見たい。
本編春麗は、小さく言った。
「かなり面倒ね」
自覚前春麗が即座に反応する。
「私じゃないわよ」
「誰もあなたとは言っていないわ」
「今の流れは言っていたわ!」
黒ドレス特化春麗が静かに言う。
「でも、これは黒ドレス特化側から見てもかなり濃いわ」
通常救済版春麗が頷く。
「簡単に勝ちたいわけじゃない。安全に勝ちたいわけでもない。リュウに危うくされたい。でも最後は自分が勝ちたい」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「次が怖いのに、次を待っている」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「勝利が終わりではなく、次を呼んでいる」
記録板の春麗は、夜明け前の空気の中で静かに笑った。
でも、最後に立つのは私。
一拍。
十一度目も、あなたにそう教えてあげる。
映像が止まった。
記録板に最終評価が表示される。
黒ドレス紙一重勝利十連勝ルート
戦闘結果:春麗十勝、リュウ零勝
戦闘評価:九十九点
黒ドレス運用評価:九十八点
リュウ到達度:九十五点
春麗高揚度:最大
勝利陶酔度:最大
次回生成評価:九十六点
総合評価:九十八点
自覚前春麗は目を見開いた。
「九十八点……」
本編春麗は頷く。
「前回の黒ドレス余裕勝利十連勝より、かなり高いわ」
黒ドレス特化春麗が言う。
「当然ね。リュウが届きかけているもの」
通常救済版春麗が言う。
「それに、春麗が勝って終わっていない。もう次を待っている」
グランドフィナーレ済み春麗が頷く。
「勝利が次を生んでいる」
行き遅れ恐怖版春麗が少し不安そうに言う。
「でも、これは危険でもあるわね」
本編春麗は資料に書き込む。
高評価。ただし危険。
自覚前春麗が言う。
「どうして危険なの?」
黒ドレス特化春麗が答えた。
「酔っているからよ」
通常救済版春麗が補足する。
「勝利そのものではなく、リュウが届きかけて、それでも自分が勝つ瞬間に酔っている」
本編春麗が言う。
「しかも、その酔いが次を作っている」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「次は本当に負けるかもしれないのに、次を待っている」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「勝利が継続を生む。けれど、敗北の可能性も濃くなっている」
自覚前春麗は、黙って記録板を見ていた。
黒ドレス十連勝。
勝っている。
十回とも勝っている。
でも余裕ではない。
十回とも危ない。
十回ともリュウは届きかけている。
そして春麗は、その危うさに酔っている。
「……資料としては」
本編春麗が即座に見る。
「ええ」
自覚前春麗は、少し悔しそうに言った。
「これは、引き分け十連敗とは別の危険さがあるわ」
黒ドレス特化春麗が頷く。
「続けて」
「引き分け十連敗は、次が生まれることに満たされる危険」
「ええ」
「でもこれは、勝ったまま次を欲しがる危険」
会議室が静かになった。
本編春麗が、少し嬉しそうに資料へ書き込む。
「良い整理ね」
「資料としてよ!」
通常救済版春麗が微笑む。
「でも、その通りだと思うわ」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「勝っているのに終わらない。怖いけど、強いわね」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「終わらない勝利ね」
黒ドレス特化春麗が言う。
「黒側としては、かなり高評価。ただし、自分の酔いに飲まれないことが条件ね」
本編春麗は、結論を読み上げた。
春麗会議・第二回妄想IF鑑賞会 結論
一、黒ドレス紙一重勝利十連勝は、余裕勝利十連勝より高評価。
二、理由は、リュウが毎回届きかけ、春麗も毎回危うくされているため。
三、勝利が一方通行ではなく、リュウの到達と春麗の高揚を伴っている。
四、春麗は勝利そのものではなく、“リュウが届きかけて、それでも自分が勝つ瞬間”に酔っている。
五、このルートは次回生成評価も高い。ただし、勝利陶酔に飲まれる危険あり。
資料が光った。
本編春麗が言う。
「総合評価、九十八点」
自覚前春麗が思わず聞く。
「九十九点ではないの?」
本編春麗は頷いた。
「九十九点にしない理由は、酔いが強すぎるから」
通常救済版春麗が言う。
「自分で制御できているうちは高評価。でも、酔いに飲まれたら危ない」
黒ドレス特化春麗が言う。
「十一戦目が鍵ね」
行き遅れ恐怖版春麗が小さく言う。
「十一戦目で、本当に負けるかもしれない」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「あるいは、勝っても何かが変わる」
自覚前春麗は、記録板を見つめながら言った。
「……でも、十一戦目を見たくなるわ」
全員が見た。
自覚前春麗は慌てる。
「資料として!」
本編春麗が満足そうに言う。
「正式記録ね」
「違う!」
黒ドレス特化春麗が微笑む。
「否認部門代表、紙一重勝利ルートに興味あり」
「記録しないで!」
通常救済版春麗が言う。
「でも、見たくなるのは自然よ。勝っているのに次があるもの」
行き遅れ恐怖版春麗が頷く。
「勝ち続けても次があるなら、怖いけれど羨ましい」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「勝利が終わりではなく、次の入口になっている」
本編春麗は、最後に資料へ副題を加えた。
補足:勝利してなお、次を待つ春麗。
自覚前春麗は小さく呟いた。
「……それ、かなり面倒じゃない」
本編春麗が見る。
「ええ」
黒ドレス特化春麗も頷く。
「かなり面倒ね」
通常救済版春麗も微笑む。
「でも、かなり春麗らしいわ」
自覚前春麗は顔を赤くした。
「私のことじゃないわよ!」
本編春麗は笑った。
「誰もあなたとは言っていないわ」
「言っているような空気だった!」
会議室が笑いに包まれる。
記録板の光が少しずつ薄れていく。
最後に表示されたのは、今回の最終文だった。
春麗は、紙一重の勝利に酔っている。
そして、その酔いは、十一度目を呼んでいる。
自覚前春麗は、その文を見て黙った。
勝つこと。
危うくされること。
それでも最後に立つこと。
次を待つこと。
どれも、否定しきれない。
「……資料としては、かなり危険ね」
本編春麗は静かに頷いた。
「ええ。今回のあなたの結論として記録するわ」
「しないで!」
夢がほどけていく。
朝。
自覚前春麗は目を覚ました。
胸の奥に、黒い余韻が残っていた。
黒ドレス紙一重勝利十連勝。
勝っていた。
十回とも。
でも、余裕ではなかった。
十回とも、リュウは届きかけた。
十回とも、春麗は危なかった。
そして十回とも、最後に春麗が勝った。
自覚前春麗は布団の中で顔を覆う。
「……勝っているなら、いいじゃない」
一拍。
「でも、危ないからいいのよね」
言ってから、固まった。
「違う」
慌てて起き上がる。
「今のは違うわ」
鏡の前に立つ。
そこには、自分をめんどくさい女と認めたくない春麗がいる。
勝ちたい。
でも簡単に勝ちたいわけではない。
届きかけてほしい。
でも最後は自分が勝ちたい。
そして次も欲しい。
春麗は鏡の中の自分を睨んだ。
「……面倒すぎるでしょう」
言ってしまった。
すぐに顔を赤くする。
「私のことじゃないわ」
誰も聞いていない部屋で否定する。
だが、鏡の中の春麗は、少しだけ笑っていた。
春麗は小さく息を吐く。
「次は勝つ」
いつもの言葉。
そして、少しだけ間を置いてから付け足した。
「でも、危なくない勝ちは……資料としては薄いわね」
また言ってしまった。
春麗は、鏡の前で頭を抱えた。
「……違う。本当に違う」
けれど、その否認はもう、春麗会議に提出される未来しか見えなかった。
Q:今回の妄想章IFについて解説して?
A:
はい。執筆者として見ると、今回のエピソードはかなり重要な**「勝利の快楽」と「次回生成」の中間にある危険な回**です。
前回のリライトでポイントになったのは、添付の原文にある通り、春麗が単に十回勝ったことではなく、十回ともリュウが届きかけ、それでも最後の一瞬で自分が上回ったことに酔っている点です。つまりこれは「余裕勝ち十連勝」ではなく、「紙一重の勝利十連勝」です。
今回の核は「勝っているのに、次が生まれている」こと
このエピソードの面白さは、前回までの評価軸を一段ずらしたところにあります。
以前の鑑賞会では、
余裕勝利十連勝
→ 春麗は勝っているが、リュウが届かない。関係進行は弱い。
引き分け十連敗
→ 勝てていないが、毎回届き合い、次が生まれる。関係進行は強い。
という整理でした。
今回の黒ドレス紙一重勝利十連勝は、その中間ではなく、むしろ第三の型です。
春麗は勝っている。
リュウも届きかけている。
春麗は危うくされている。
でも最後は春麗が立っている。
そして十一度目を待っている。
つまり、勝利が終わりではなく、次を呼んでいる。
ここが今回の最大の価値です。
「勝利陶酔」がテーマになっている
今回の春麗は、勝利に酔っています。
ただし、勝った回数に酔っているのではありません。
十回勝ったから偉い。
十回リュウを倒したから満足。
十回見下ろしたから支配した。
そういう単純な勝利陶酔ではない。
彼女が酔っているのは、
リュウが本当に届きかけた。
自分は本当に危なかった。
それでも最後だけ自分が上回った。
この瞬間です。
だから、勝利が濃い。
安全な勝利ではない。
余裕の勝利でもない。
支配の勝利でもない。
リュウが強く、危うく、近いからこそ、最後に自分が勝つことが甘くなる。
これは黒ドレス春麗に非常に合っています。
黒ドレス特化春麗が高評価する理由
黒ドレス特化春麗から見ると、今回のルートはかなり高評価です。
なぜなら、リュウが黒に届きかけているからです。
前回の余裕勝利十連勝では、春麗は強かった。
でも、リュウは届かなかった。
黒が一方通行になっていました。
今回のルートでは違います。
リュウは毎回、黒を見ている。
女としての春麗も、格闘家としての春麗も、黒で立つ春麗も見ている。
しかも、届きかけている。
だから黒ドレス特化春麗は認める。
ただし同時に、危険もわかっています。
春麗がその紙一重の勝利に酔いすぎると、次第に「リュウと向き合う」より「危うくされて最後に勝つ快感」を追い始める可能性がある。
だから九十九点ではなく、九十八点が妥当です。
自覚前春麗に刺さる理由
今回、一番おいしいのはやはり自覚前春麗です。
彼女は、これまでに、
青でギリギリ勝つ快感。
黒でギリギリ勝つ快感。
黒で引き分ける充足。
青で引き分ける充足。
これらを知ってしまっています。
だから今回の「黒ドレスで紙一重勝利を重ねる春麗」は、非常に刺さります。
彼女にとって、このルートは否定しづらい。
勝っている。
危ない。
次がある。
リュウが届きかけている。
でも最後に自分が勝つ。
これは、自覚前春麗の中の「勝ちたい」と「次がほしい」が同時に満たされる構造です。
だから彼女は、
勝っているなら、いいじゃない。
でも、危ないからいいのよね。
と言いかけてしまう。
これはかなり危険です。
本人は即座に否認しますが、春麗会議的には完全に記録対象です。
「引き分け十連敗」との違い
引き分け十連敗は、勝敗がつかないことで次が生まれるルートでした。
対して今回の紙一重勝利十連勝は、勝っているのに次が生まれるルートです。
この違いは大きいです。
引き分け十連敗では、春麗は「勝てなかったから次」を求める。
今回のルートでは、春麗は「勝ったのに次」を求める。
つまり、今回の方がある意味で贅沢です。
勝利も得ている。
危うさも得ている。
リュウの到達も得ている。
さらに次も求めている。
これが「面倒」なのです。
本編春麗が「かなり面倒ね」と言ったのは正しいです。
リュウ側の価値も大きい
このルートのリュウは十連敗しています。
でも、余裕負けではありません。
十回とも春麗の勝利を削っている。
十回とも春麗を焦らせている。
十回とも、あと少しまで届いている。
だから春麗は酔える。
このリュウは、春麗の勝利を濃くしている存在です。
ただ負けているだけではない。
春麗を危うくし、春麗の黒を本気にさせ、春麗に「次」を欲しがらせている。
この点で、リュウの到達度は非常に高い。
だから今回の会議評価で、リュウ到達度九十五点という扱いは妥当です。
なぜ九十九点ではないのか
今回の総合評価は九十八点でした。
かなり高い。
でも九十九点ではない。
理由は、春麗が「酔っている」からです。
酔いは魅力ですが、同時に危険です。
春麗が紙一重の勝利を楽しむところまでは良い。
リュウが届きかけることで勝利が濃くなるのも良い。
次を待つのも良い。
でも、その酔いに飲まれると、リュウを見るよりも、自分が最後に勝つ瞬間を追い始める。
そうなると、関係進行より勝利陶酔が前に出る。
だから、九十八点。
極めて高評価だが、危険性を含む点数です。
今回の春麗会議の結論が重要
今回の結論は、
勝利は悪くない。
むしろ強い。
ただし、勝利が次を生むかどうかが重要。
です。
前回は「勝てばいいわけではない」でした。
今回はそこから進んで、
勝っていても、次を生む勝ちなら高評価。
ただし、その勝利に酔いすぎると危険。
になりました。
これは春麗会議の評価軸がかなり精密になった証拠です。
結論
今回のエピソードは、黒ドレス春麗が紙一重の勝利に酔い、その酔いが十一度目を呼ぶ鑑賞会です。
余裕勝利十連勝よりも関係性は濃い。
引き分け十連敗よりも春麗の勝利欲が満たされる。
ただし、勝利陶酔に飲まれる危険がある。
一言でまとめるなら、
春麗は勝っている。
リュウも届きかけている。
だから春麗は酔う。
そして、勝ったのに、もう次が欲しくなる。
これはかなり春麗会議らしい、危険で甘い高評価ルートだったと思います。