また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※この章は、本編時空とは異なります。
メタ要素強めの回になります。


妄想章IF:春麗会議、作品タイトル変更を審議する

 春麗会議:作品タイトル変更審議

『また戦ってくれなんて言わないで ──春麗は今日もめんどくさい──』

 

 春麗会議は、いつもより少しだけ静かに始まった。

 

 円卓。

 

 資料。

 

 記録板。

 

 そして中央には、いつもとは違うものが置かれていた。

 

 それは、一枚の表紙だった。

 

 古い表紙には、こう書かれている。

 

 また戦ってくれ

 ──リュウと春麗、紙一重のライバル譚──

 

 本編春麗は、それを見て少しだけ懐かしそうな顔をした。

 

「最初は、これだったのよね」

 

 黒ドレス特化春麗が頷く。

 

「リュウと春麗の、紙一重の勝負」

 

 通常救済版春麗も言う。

 

「勝つか、負けるか、引き分けるか。最初はかなり戦闘寄りだったわ」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が小さく言う。

 

「“また戦ってくれ”は、リュウ側の言葉だったのね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が静かに目を細める。

 

「始まりの言葉ね」

 

 自覚前春麗は腕を組んでいた。

 

「それで、今日は何の会議なの?」

 

 本編春麗は、黙ってもう一枚の表紙を出した。

 

 新しい表紙だった。

 

 そこには、こう書かれていた。

 

 また戦ってくれなんて言わないで

 ──春麗は今日もめんどくさい──

 

 会議室が止まった。

 

 自覚前春麗が、最初に声を上げた。

 

「……何よ、それ」

 

 本編春麗は、表紙を見つめたまま言った。

 

「新タイトルよ」

 

「新タイトル?」

 

「ええ」

 

 自覚前春麗は、椅子から半分立ち上がった。

 

「待ちなさい。前のタイトルから何がどうなったら、そうなるのよ」

 

 黒ドレス特化春麗が静かに答える。

 

「かなり正確な変化だと思うわ」

 

 通常救済版春麗も頷いた。

 

「物語の中心が、紙一重のライバル譚から、春麗の内面と面倒さに移ったということね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「“また戦ってくれ”が、嬉しいけれど困る言葉になったのね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が微笑む。

 

「そして、困る春麗が主人公になった」

 

 本編春麗は、ゆっくり息を吐いた。

 

「今日の議題はこれよ」

 

 記録板に文字が浮かぶ。

 

 春麗会議・作品タイトル変更審議

 議題:『また戦ってくれ』から『また戦ってくれなんて言わないで』へ。名実ともに、めんどくさい女と自覚する本編春麗が主人公になった件

 

 自覚前春麗は、目を見開いた。

 

「……本当に会議にするの?」

 

 本編春麗は即答した。

 

「するわ」

 

「メタすぎない?」

 

「春麗会議よ」

 

「便利すぎるのよ、その言葉!」

 

 黒ドレス特化春麗が、新しい表紙を見ながら言う。

 

「でも、確かに“また戦ってくれ”は最初、リュウの誠実な再戦要求だった」

 

 通常救済版春麗が続ける。

 

「春麗に届きたい、もう一度向き合いたい、という言葉」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が頷く。

 

「でも、何度も言われるうちに、春麗側では重くなっていった」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「勝っても、引き分けても、負けても、次が生まれる。その象徴になったのね」

 

 本編春麗は資料を開いた。

 

「最初のタイトルを整理するわ」

 

 記録板に、旧タイトルが表示される。

 

 旧題:また戦ってくれ

 ──リュウと春麗、紙一重のライバル譚──

 

 本編春麗は読み上げる。

 

「この時点では、物語の中心はリュウと春麗の勝負だった」

 

 黒ドレス特化春麗が頷く。

 

「紙一重の勝利。紙一重の敗北。引き分け。再戦」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「まだ、恋愛よりもライバル性が強い」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「“また戦ってくれ”は、次の約束だったのね」

 

 本編春麗は頷く。

 

「ええ。最初は素直に強い言葉だった」

 

 自覚前春麗が腕を組む。

 

「今でも強いでしょう」

 

 本編春麗は見る。

 

「強いわ。でも、今はそれだけじゃない」

 

「どういうことよ」

 

 本編春麗は新しい表紙を指で叩いた。

 

「今は、“また戦ってくれ”と言われると、春麗が面倒な反応をする」

 

 自覚前春麗は顔を赤くする。

 

「私のこと?」

 

「あなたも含むわ」

 

「含めないで!」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「黒で負けた後の“また戦ってくれ”は、挑戦者側に置かれる言葉だった」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「青で戦わない時には、次に歩く約束にもなる」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「待たされる不安にもなるし、来てくれる安心にもなる」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「終わった後にも残る、続きを呼ぶ言葉」

 

 本編春麗は静かに言った。

 

「そして私は、それを聞くたびに思うのよ」

 

 自覚前春麗が警戒する。

 

「何を?」

 

 本編春麗は、新タイトルを読んだ。

 

「また戦ってくれなんて言わないで」

 

 会議室が静かになった。

 

 本編春麗は続けた。

 

「言われたら、次ができる。次ができたら、考えてしまう。勝つのか、引き分けるのか、負けるのか。青で行くのか、黒で行くのか。宿題にするのか、採点するのか、会議に提出するのか」

 

 一拍。

 

「つまり、面倒になる」

 

 黒ドレス特化春麗が微笑む。

 

「自覚しているわね」

 

「ええ」

 

 本編春麗は、少し胸を張った。

 

「私は、めんどくさい女と自覚している春麗だから」

 

 自覚前春麗がぼそりと言う。

 

「それを堂々と言うのもどうなの」

 

 本編春麗は即答した。

 

「本編だから」

 

「便利に使いすぎ!」

 

 通常救済版春麗が穏やかに言う。

 

「でも、新タイトルはかなり正確ね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が頷く。

 

「“また戦ってくれ”を拒否しているようで、本当は拒否しきれていない」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「言わないで、と言いながら、その言葉で物語が続く」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「そして副題が決定的ね」

 

 本編春麗は、静かに副題を読んだ。

 

 春麗は今日もめんどくさい

 

 自覚前春麗は額を押さえた。

 

「ひどい副題ね」

 

 黒ドレス特化春麗は首を振る。

 

「正確な副題よ」

 

 通常救済版春麗も言う。

 

「かなり優しい副題でもあるわ」

 

「どこが?」

 

 通常救済版春麗は微笑む。

 

「“今日も”だから」

 

 自覚前春麗は黙った。

 

 本編春麗も少しだけ目を伏せた。

 

 通常救済版春麗は続ける。

 

「昨日だけではない。特別な一回だけでもない。春麗は今日も面倒で、それでも今日も続いている」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「今日も、というのは少し安心するわね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「日常になった面倒さね」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「黒でも青でも、勝っても負けても、春麗は今日も面倒。つまり、変わらず春麗」

 

 本編春麗は、新しい表紙を見ながら小さく言った。

 

「……悪くないわね」

 

 自覚前春麗が驚く。

 

「受け入れるの?」

 

「ええ」

 

「“めんどくさい”って書かれているのに?」

 

 本編春麗は、自覚前春麗を見る。

 

「あなたと違って、私は自覚しているもの」

 

 自覚前春麗は顔を赤くする。

 

「そこで差をつけないで!」

 

 本編春麗は微笑む。

 

「ここが本編春麗の強みよ」

 

 黒ドレス特化春麗が頷く。

 

「否認ではなく自覚」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「自覚したうえで続ける」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「面倒でも、今日がある」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「終わりではなく、毎日続く物語」

 

 本編春麗は、資料に新しい章立てを書き込んだ。

 

 旧構造:リュウと春麗、紙一重のライバル譚

 新構造:春麗が“また戦ってくれ”に毎回面倒な意味を見出してしまう物語

 

 自覚前春麗が言う。

 

「それ、かなり悪意ある整理じゃない?」

 

 本編春麗は首を振った。

 

「正確よ」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「勝負の結果より、春麗がそれをどう受け取るかが中心になった」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「つまり、外側のライバル譚から、内側の春麗譚へ移った」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「リュウが何を言うかより、それを春麗がどう待つか、どう怖がるか、どう受け取るか」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「タイトル変更は、物語の主語変更なのね」

 

 本編春麗は、その言葉に頷いた。

 

「主語変更」

 

 記録板に大きく表示される。

 

 主語変更:リュウと春麗 → 春麗

 

 会議室がまた静かになった。

 

 自覚前春麗が、少しだけ不満そうに言った。

 

「でも、リュウは?」

 

 本編春麗が見る。

 

「もちろん重要よ」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「むしろリュウがいないと、春麗はここまで面倒にならないわ」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「リュウが見るから、春麗が選ぶ」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「リュウが来るかどうかで、不安になる」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「リュウが“また戦ってくれ”と言うから、物語が続く」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「だから、リュウは相手役としてむしろ強くなっている」

 

 自覚前春麗が首を傾げる。

 

「主語が春麗になったのに?」

 

「ええ」

 

 本編春麗は言う。

 

「春麗が主人公になったことで、リュウの言葉が全部、春麗の内側に刺さるようになったのよ」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「“また戦ってくれ”が、ただの再戦要求ではなくなった」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「“今、見ている”も、“今日の春麗も強かった”も、全部春麗側の受け取りで意味が変わる」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「“来る”も“待つ”も、春麗側の問題になる」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「だから、リュウはさらに強い相手役になった」

 

 自覚前春麗は、少し黙った。

 

「……つまり、タイトルが変わってもリュウは薄くならないのね」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「薄くならないわ。むしろ、春麗を面倒にする中心因子よ」

 

 自覚前春麗が言う。

 

「言い方」

 

 黒ドレス特化春麗が静かに言う。

 

「正しいわ」

 

 通常救済版春麗も頷く。

 

「正しいわね」

 

 本編春麗は満足そうに資料へ書いた。

 

 リュウ:春麗を面倒にする中心因子。

 

 自覚前春麗は叫んだ。

 

「書かないで!」

 

 本編春麗は微笑む。

 

「正式記録よ」

 

「正式にしないで!」

 

 そこで、記録板が勝手に次の項目を表示した。

 

 主人公認定対象:本編春麗

 

 本編春麗が固まった。

 

 自覚前春麗が、にやりとした。

 

「出たわね」

 

 本編春麗は少しだけ身構える。

 

「何よ」

 

 自覚前春麗は資料を覗き込む。

 

「名実ともに、めんどくさい女と自覚する春麗が主人公になった件、でしょう?」

 

 本編春麗は顔を赤くした。

 

「自分で読むと、少し恥ずかしいわね」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「でも事実ね」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「本編春麗は、もう司会だけではないわ」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「前回、ちゃんとリュウに問いに行ったものね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「“今の春麗”として答えをもらった」

 

 本編春麗は、少しだけ目を伏せた。

 

 前回のリュウの言葉が蘇る。

 

 問いに来たのは、今の春麗だ。

 なら俺は、今の春麗に答える。

 

 それは、本編春麗への九十九点回答だった。

 

 問いに来た春麗。

 

 自分が面倒だと知っていて、それでも問いに来た春麗。

 

 その春麗に、リュウは答えた。

 

 だから、今回の新タイトルは自然なのかもしれない。

 

 本編春麗は、静かに言った。

 

「……認めるわ」

 

 会議室が止まった。

 

 自覚前春麗が目を見開く。

 

「何を?」

 

 本編春麗は、新しい表紙を手に取った。

 

「このタイトルを」

 

 黒ドレス特化春麗が微笑む。

 

「良いの?」

 

「ええ」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「“めんどくさい”って入っているわよ」

 

「知っているわ」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「“今日も”って入っているわ」

 

「それがいいのよ」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が微笑む。

 

「どうして?」

 

 本編春麗は、新タイトルを見つめる。

 

「また戦ってくれなんて言わないで」

 

 一拍。

 

「でも、言われなければ、それはそれで困る」

 

 自覚前春麗が小さく言う。

 

「面倒ね」

 

 本編春麗は即答した。

 

「ええ」

 

 自覚前春麗が固まる。

 

 本編春麗は続けた。

 

「私は面倒なの。言われたら困る。でも言われなければ寂しい。戦えば採点する。戦わなければそれも会議案件にする。勝てば次も勝ちたい。引き分ければ次で決めたい。負ければ取り返したい」

 

 黒ドレス特化春麗が静かに頷く。

 

 通常救済版春麗は微笑む。

 

 行き遅れ恐怖版春麗は、少しだけ胸に手を当てる。

 

 グランドフィナーレ済み春麗は、目を細めた。

 

 本編春麗は胸を張った。

 

「だから、この副題でいいわ」

 

 一拍。

 

「春麗は今日もめんどくさい」

 

 自覚前春麗は、何も言えなかった。

 

 それは、否認できる言葉ではなかった。

 

 なぜなら、本編春麗が先に認めてしまったからだ。

 

 本編春麗は、自分の面倒さを、恥ずかしさごと引き受けていた。

 

 自覚前春麗は小さく言う。

 

「……強いわね」

 

 本編春麗が見る。

 

「何が?」

 

「自分で言えるところ」

 

 本編春麗は少しだけ笑った。

 

「あなたも、そのうち言えるわ」

 

 自覚前春麗は真っ赤になった。

 

「言わない!」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「まだ、ね」

 

「拾わないで!」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「でも、良い会議ね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が頷く。

 

「タイトルが変わると、少し安心するわ。春麗が中心なら、待つのも春麗の物語になるから」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「終わりではなく、今日も続くタイトルね」

 

 本編春麗は、正式資料に結論を書き込んだ。

 

 春麗会議・作品タイトル変更審議 結論

 

 一、旧題『また戦ってくれ──リュウと春麗、紙一重のライバル譚──』は、リュウと春麗の勝負性・紙一重のライバル関係を示す初期タイトルとして妥当である。

 

 二、新題『また戦ってくれなんて言わないで ──春麗は今日もめんどくさい──』は、物語の主語が春麗へ移行した現段階を正確に示している。

 

 三、“また戦ってくれ”は単なる再戦要求ではなく、春麗にとって次回生成・動揺・期待・否認・採点・宿題化を引き起こす中核語となった。

 

 四、リュウは主人公から外れたのではなく、春麗の面倒さを引き出す最重要相手役として機能が強化された。

 

 五、名実ともに、めんどくさい女と自覚する本編春麗が主人公である。

 

 自覚前春麗が顔を赤くする。

 

「五番、すごいわね」

 

 本編春麗は静かに頷いた。

 

「ええ」

 

「恥ずかしくないの?」

 

「恥ずかしいわ」

 

「なら消せば?」

 

 本編春麗は微笑んだ。

 

「消さない」

 

 黒ドレス特化春麗が満足そうに言う。

 

「本編春麗ね」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「自覚して残すのね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「強いわ」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「これで、本当に主役になったのね」

 

 本編春麗は、新しい表紙を円卓の中央に置いた。

 

 表紙は淡く光った。

 

 また戦ってくれなんて言わないで

 ──春麗は今日もめんどくさい──

 

 その光を見ながら、本編春麗は言った。

 

「では、次回からこのタイトルで進行するわ」

 

 自覚前春麗が叫ぶ。

 

「進行するの!?」

 

「するわ」

 

「普通、タイトル変更で終わりじゃないの?」

 

 本編春麗は当然のように言った。

 

「春麗会議で重要なのは、次が生まれるかどうかよ」

 

 黒ドレス特化春麗が頷く。

 

「新タイトルが出たなら、新章ね」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「青も黒も、また扱えるわ」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「今日も続くなら、明日もあるのね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が微笑む。

 

「終わらないための改題ね」

 

 自覚前春麗は頭を抱えた。

 

「また次が増えた……」

 

 本編春麗は、少し得意げに言った。

 

「当然よ」

 

 一拍。

 

「春麗は今日もめんどくさいのだから」

 

 その瞬間、会議室全体が淡く光った。

 

 まるで、作品そのものが新しい名前を受け入れたように。

 

 自覚前春麗は小さく呟いた。

 

「……私まで巻き込まれている気がする」

 

 本編春麗が微笑む。

 

「巻き込まれているわ」

 

「認めない!」

 

「それも含めて、今日もめんどくさい」

 

「私のことじゃない!」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「でも、かなり近い」

 

 通常救済版春麗が笑う。

 

「今日も、ね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が安心したように言う。

 

「今日もあるなら、明日もあるわね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が静かに締めた。

 

「また戦ってくれ、と言われた物語は、また戦ってくれなんて言わないで、と返す春麗の物語になった」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「ええ」

 

 そして、最後にこう言った。

 

「でも、言われたら──たぶん、行くわ」

 

 会議室が静かになった。

 

 自覚前春麗が、ぽつりと言う。

 

「……面倒ね」

 

 本編春麗は笑った。

 

「今日もね」

 

 夢がほどけていく。

 

 新しい表紙の文字だけが、最後まで残っていた。

 

 また戦ってくれなんて言わないで

 ──春麗は今日もめんどくさい──




Q:今回の妄想章IFについて解説して?

A:
はい。執筆者として見ると、今回の断章IFはかなり重要なメタ改題回です。

単に作品タイトルを変えた、という話ではなく、物語の主語が完全に変わったことを春麗会議で正式承認する回になっています。

一言で言うなら、

この物語は、リュウと春麗が紙一重で戦うライバル譚から、リュウの言葉に毎回面倒な意味を見出してしまう本編春麗の物語へ変わった

という回です。

1. 旧タイトルは「外側の物語」だった

旧タイトルの、

また戦ってくれ
――リュウと春麗、紙一重のライバル譚――

これはかなり初期構造に合っています。

この段階では、中心にあるのは勝負です。

リュウが春麗に届くか。
春麗がリュウを上回るか。
紙一重で勝つか、負けるか、引き分けるか。
そして、リュウが「また戦ってくれ」と言う。

つまり、これは外側の物語です。

戦闘。
再戦。
ライバル関係。
紙一重の勝敗。

リュウと春麗の二人が並列に立つタイトルです。

この時点では、まだリュウも春麗も同じくらい主語でした。

2. 新タイトルは「春麗の内側の物語」になっている

新タイトルの、

また戦ってくれなんて言わないで
――春麗は今日もめんどくさい――

これは、完全に春麗側へ主語が移っています。

「また戦ってくれ」は、リュウの言葉です。

でも、新タイトルではそこに春麗が返しています。

また戦ってくれなんて言わないで。

つまり、リュウの言葉そのものではなく、その言葉を受け取った春麗の反応が中心になっています。

ここが大きいです。

リュウが何を言ったかではなく、春麗がそれをどう受け取って、どう面倒になるか。

この時点で、物語は完全に春麗主人公の内面譚になっています。

3. 「なんて言わないで」が非常に春麗らしい

このタイトルの強いところは、春麗が本当に拒否しているわけではないところです。

「また戦ってくれ」と言われたら困る。

なぜなら、次ができるから。
次ができると考えてしまうから。
勝つのか、引き分けるのか、負けるのか。
青で行くのか、黒で行くのか。
宿題にするのか、採点するのか、会議に提出するのか。

全部始まってしまう。

だから、

言わないで。

でも、本当に言われなかったら寂しい。

ここが本編春麗です。

拒否ではなく、受け取りすぎるから困る。

この面倒さが、タイトルに出ています。

4. 副題「春麗は今日もめんどくさい」が強い

この副題はかなり良いです。

春麗はめんどくさいではなく、
春麗は今日もめんどくさい。

ここが重要です。

「今日も」なので、これは一回きりの事件ではありません。

春麗は昨日も面倒だった。
今日も面倒。
たぶん明日も面倒。

でも、それは否定的な意味だけではありません。

むしろ、物語が続いている証拠です。

今日も春麗が悩む。
今日もリュウの言葉に反応する。
今日も会議案件になる。
今日も次が生まれる。

「今日も」は継続の言葉です。

つまりこの副題は、春麗会議の価値基準である、

次が生まれるかどうか

と非常に相性がいいです。

5. 本編春麗がこれを受け入れたのが大きい

今回、一番重要なのは、本編春麗が新タイトルを拒否しなかったことです。

自覚前春麗なら、絶対に拒否します。

私はめんどくさくないわ。
そんな副題は認めない。
資料としても不適切よ。

と言うはずです。

でも本編春麗は違います。

彼女は、

認めるわ。

と言う。

これはかなり大きいです。

本編春麗は、自分が面倒だと自覚している。

だから、タイトルに「めんどくさい」と書かれても、それを物語の核として受け入れられる。

ここが本編春麗の強さです。

自覚前春麗は、まだ否認することで物語を動かしています。
本編春麗は、認めたうえで物語を進めます。

今回、その差がはっきり出ました。

6. リュウが薄くならない整理も良い

タイトル変更で注意すべきなのは、「春麗主人公化」によってリュウが薄く見える危険です。

でも今回の会議では、そこをきちんと整理しています。

リュウは主人公から外れたのではありません。

むしろ、春麗を面倒にする中心因子になっています。

リュウが「また戦ってくれ」と言う。
リュウが「今、見ている」と言う。
リュウが「今日の春麗も強かった」と言う。
リュウが「今の春麗に答える」と言う。

その言葉が春麗の内側に刺さる。

つまり、春麗が主人公になったことで、リュウはより強い相手役になった。

これは非常に重要な整理です。

リュウは薄くなったのではなく、春麗の物語を発火させる存在になった。

7. 春麗会議の総決算感がある

今回の断章IFは、かなり総決算感があります。

これまでの積み重ねが全部入っています。

勝利。
引き分け。
敗北。
青。
黒。
裏ルート。
救済台詞。
「だが、見ている」。
「今の春麗に答える」。
手をつなぐ青。
黒の責任。
本編春麗の九十九点回答。

それらが全部、新タイトルの中に吸収されています。

つまり、タイトル変更は単なる表紙替えではありません。

連作全体の方向性を再定義する出来事です。

8. 自覚前春麗との対比も効いている

自覚前春麗がこの新タイトルを見て反応するのも良いです。

彼女は「めんどくさい」をまだ認めていない。

だから、本編春麗がそれを受け入れる姿を見ると、少し圧倒される。

今回、自覚前春麗が、

強いわね。
自分で言えるところ。

と言うのが良いです。

これはかなり大きい。

自覚前春麗にとって、本編春麗の強さは「勝てること」ではありません。

自分が面倒だと認められること。

ここにある。

この理解は、自覚前春麗の今後にもつながります。

9. 「でも、言われたら――たぶん、行くわ」が締めとして強い

ラストの本編春麗の、

でも、言われたら――たぶん、行くわ。

これが非常に良いです。

タイトルでは、

また戦ってくれなんて言わないで

と言っている。

でも、言われたら行く。

ここに本編春麗の全部があります。

言わないで。
でも言ってほしい。
困る。
でも行く。
面倒。
でも続く。

これが本作の新しい中心です。

まさに、

春麗は今日もめんどくさい。

です。

結論

今回の断章IFは、物語の主語がリュウと春麗の紙一重ライバル関係から、めんどくさい女と自覚する本編春麗の内面と受け取り方へ正式に移行したことを、春麗会議で承認する回です。

旧タイトルは、勝負の物語。
新タイトルは、春麗の反応の物語。

リュウは薄くなったのではなく、春麗を面倒にする最重要相手役になった。

そして本編春麗は、自分の面倒さを否認せずに引き受けた。

一言でまとめるなら、

「また戦ってくれ」と言うリュウの物語から、
「また戦ってくれなんて言わないで」と返しながら、結局行ってしまう春麗の物語になった。
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