また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※これは本編時空とは無関係の妄想章IFです。


妄想章IF:自覚前春麗は、自分まで今日もめんどくさい扱いされることに抗議する

 春麗会議の円卓には、新しい表紙が置かれていた。

 

 そこには、堂々とこう書かれている。

 

 また戦ってくれなんて言わないで

 ──春麗は今日もめんどくさい──

 

 本編春麗は、その表紙を見て満足そうに頷いていた。

 

 黒ドレス特化春麗は、腕を組んで静かに見ている。

 

 通常救済版春麗は、穏やかにお茶を置いた。

 

 行き遅れ恐怖版春麗は、「今日も」という部分を少し安心したように見つめている。

 

 グランドフィナーレ済み春麗は、静かに微笑んでいた。

 

 そして。

 

 自覚前春麗だけが、明らかに不満そうだった。

 

「……ちょっと待って」

 

 本編春麗が見る。

 

「何?」

 

 自覚前春麗は、表紙を指差した。

 

「この副題よ」

 

「副題?」

 

「ええ」

 

 自覚前春麗は、はっきりと言った。

 

「春麗は今日もめんどくさい、というのは本編春麗の話でしょう?」

 

 本編春麗は、少しだけ首を傾げた。

 

「そうね。私はめんどくさい女と自覚している本編春麗だもの」

 

「でしょう?」

 

 自覚前春麗は、少し安心したように腕を組んだ。

 

「なら、私は含まれていないわよね?」

 

 会議室が静かになった。

 

 黒ドレス特化春麗が、ゆっくり目を細める。

 

 通常救済版春麗が、少しだけお茶を飲む手を止める。

 

 行き遅れ恐怖版春麗が、資料から顔を上げる。

 

 グランドフィナーレ済み春麗は、すでに結論を知っているような顔で微笑んでいた。

 

 本編春麗は、新しい表紙を指で叩いた。

 

「春麗、としか書いていないわ」

 

 自覚前春麗が固まった。

 

「……え?」

 

 本編春麗は、もう一度言った。

 

「春麗は今日もめんどくさい」

 

 一拍。

 

「本編春麗は、とは書いていないわ」

 

 自覚前春麗は、表紙を見た。

 

 確かに。

 

 そこには「本編春麗」とは書かれていない。

 

「春麗」としか書かれていない。

 

 自覚前春麗は、ゆっくり顔を上げた。

 

「……待ちなさい」

 

 黒ドレス特化春麗が静かに言った。

 

「否認部門代表も春麗ね」

 

「その肩書きで呼ばないで!」

 

 通常救済版春麗が穏やかに続ける。

 

「青でも黒でもないあなたも春麗ね」

 

「それは……そうだけど!」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「勝っても、引き分けても、負けても次を考えてしまうあなたも春麗よね」

 

「今その話を混ぜないで!」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が静かに締めた。

 

「タイトルに巻き込まれたのね」

 

 自覚前春麗は、円卓を叩いた。

 

「巻き込まれていない!」

 

 本編春麗は資料を開く。

 

「では本日の議題に入るわ」

 

 記録板に文字が浮かんだ。

 

 春麗会議・新タイトル適用範囲審議

 議題:自覚前春麗、“春麗は今日もめんどくさい”に自分が含まれるかどうか抗議する件

 

 自覚前春麗は叫んだ。

 

「抗議する件じゃないわよ! 抗議しているのよ!」

 

 本編春麗は頷く。

 

「その抗議が議題よ」

 

「ひどい!」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「かなり自然な議題ね」

 

 通常救済版春麗も頷く。

 

「新タイトルの適用範囲は整理した方がいいわ」

 

 自覚前春麗は、慌てて言った。

 

「整理するまでもないでしょう。これは本編春麗のタイトルよ。本編春麗は自分でめんどくさいと認めている。私は認めていない。だから私は対象外」

 

 本編春麗は、静かに資料へ書き込む。

 

 主張:自覚していないため対象外。

 

 自覚前春麗は頷く。

 

「そうよ」

 

 黒ドレス特化春麗がすぐに言った。

 

「でも、面倒かどうかは自覚の有無では決まらないわ」

 

 自覚前春麗が固まる。

 

「……何ですって?」

 

 通常救済版春麗が優しく言う。

 

「自覚していなくても、面倒なことはあるわ」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が少し遠慮がちに言う。

 

「むしろ、認めていない時の方が面倒なこともあると思う」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が頷く。

 

「否認そのものが、物語を増やすものね」

 

 自覚前春麗は反論しようとして、言葉に詰まった。

 

 本編春麗は淡々と読み上げる。

 

「では、自覚前春麗の最近の記録を確認するわ」

 

「しなくていい!」

 

「一つ。青でギリギリ勝利」

 

「だからしなくていい!」

 

「二つ。黒でギリギリ勝利」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「良い黒案件だったわ」

 

「褒めないで!」

 

「三つ。青で引き分け」

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

「次が生まれたわね」

 

「生まれていない!」

 

「四つ。黒で引き分け」

 

 自覚前春麗が顔を赤くする。

 

「五つ。青でギリギリ敗北」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「取り返したくなる敗北ね」

 

「ならない!」

 

「六つ。黒でギリギリ敗北」

 

 黒ドレス特化春麗が静かに言う。

 

「黒で負けても次ができた」

 

「できていない!」

 

 本編春麗は続ける。

 

「七つ。裏ルートの詳細を初めて知る」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「残響に被弾したわね」

 

「していない!」

 

「八つ。救済台詞を資料として保存」

 

 自覚前春麗は机を叩いた。

 

「資料としてよ!」

 

「九つ。リュウに言わせないようにして、“だが、見ている”で撃沈」

 

 黒ドレス特化春麗が微笑む。

 

「名場面ね」

 

「違う!」

 

「十。青でも黒でもない春麗としてリュウと引き分け」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「色ではなく、あなた自身を見られた回ね」

 

「まとめないで!」

 

 本編春麗は資料を閉じた。

 

「以上を踏まえて」

 

 自覚前春麗は、すでに少し息が上がっていた。

 

 本編春麗は、静かに結論めいた声で言った。

 

「あなた、今日もめんどくさいわね」

 

 自覚前春麗は真っ赤になった。

 

「私は今日もめんどくさくない!」

 

 全員が止まった。

 

 そして、全員が同時に言った。

 

「今日も、なのね」

 

 自覚前春麗は完全に固まった。

 

「……違う」

 

 本編春麗が微笑む。

 

「今、今日もと言ったわ」

 

「言っていない!」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「言ったわ」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「はっきり言ったわね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「今日も、って」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が静かに言う。

 

「タイトルに接続したわ」

 

 自覚前春麗は、頭を抱えた。

 

「言葉の綾よ!」

 

 本編春麗は資料に書く。

 

 自覚前春麗発言:私は今日もめんどくさくない。

 評価:副題適用反論として失敗。

 

「書かないで!」

 

 本編春麗は手を止めない。

 

「正式記録よ」

 

「正式にしないで!」

 

 本編春麗は、表紙を円卓の中央に置き直した。

 

「では、タイトル適用範囲を審議するわ」

 

 自覚前春麗は疲れた顔で言う。

 

「まだやるの?」

 

「当然よ」

 

 本編春麗は指を立てる。

 

「まず、“春麗”とは誰を指すか」

 

 黒ドレス特化春麗が答える。

 

「黒を選ぶ春麗」

 

 通常救済版春麗が答える。

 

「青も黒も選べる春麗」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が答える。

 

「待つことが怖い春麗」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が答える。

 

「終わった後も残る春麗」

 

 本編春麗が答える。

 

「めんどくさい女と自覚している春麗」

 

 そして、全員が自覚前春麗を見た。

 

 自覚前春麗は一歩引く。

 

「……何よ」

 

 本編春麗が言う。

 

「あなたは?」

 

「私は……」

 

 自覚前春麗は言いかけて、止まる。

 

 ここで「春麗ではない」とは言えない。

 

 それはさすがに無理がある。

 

 自覚前春麗は、苦い顔で言った。

 

「自分をめんどくさい女と認めていない春麗よ」

 

 本編春麗は即座に書いた。

 

 自覚前春麗:自分をめんどくさい女と認めていない春麗。

 

「書かなくていい!」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「でも春麗ね」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「春麗であることは認めたわね」

 

 自覚前春麗が叫ぶ。

 

「そこは否定していないわよ!」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が微笑む。

 

「なら、タイトルの“春麗”には入る可能性があるわね」

 

「可能性じゃないわ。入れないで!」

 

 本編春麗は冷静に言う。

 

「次に、“めんどくさい”の定義」

 

 自覚前春麗が警戒する。

 

「定義しなくていい」

 

「定義するわ」

 

 本編春麗は資料を読み上げた。

 

 春麗会議における“めんどくさい”の暫定定義

 一、リュウの一言を過剰に解釈する。

 二、勝敗を次回生成に変換する。

 三、言われたら困るが、言われなければ気になる。

 四、資料として、と言いながら保存する。

 五、否認しながら被弾する。

 

 自覚前春麗は、途中から顔を赤くしていた。

 

「……悪意があるわ」

 

 本編春麗は首を振る。

 

「正確よ」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「一と二はかなり該当しているわね」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「四と五も」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「三も、少しあると思う」

 

 自覚前春麗は反論する。

 

「三はないわ!」

 

 本編春麗が見る。

 

「リュウに言わせないようにして、言われたわよね」

 

「それは違う!」

 

「言われなかったら?」

 

 自覚前春麗は止まる。

 

「……」

 

 本編春麗が詰める。

 

「本当に、気にならない?」

 

 自覚前春麗は、目を逸らした。

 

「資料としては……気になるかもしれない」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「該当」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「該当ね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「該当だと思う」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が静かに言う。

 

「かなり該当」

 

 自覚前春麗は、真っ赤になって叫んだ。

 

「全員で該当させないで!」

 

 本編春麗は大きく頷く。

 

「よって、自覚前春麗は“春麗は今日もめんどくさい”の適用対象に含まれる可能性が高いわ」

 

「可能性を高くしないで!」

 

 自覚前春麗は、最後の抵抗を試みた。

 

「でも、“今日も”はおかしいわ」

 

 本編春麗が見る。

 

「どうして?」

 

「今日だけかもしれないでしょう」

 

 会議室が静かになった。

 

 黒ドレス特化春麗が目を細める。

 

 通常救済版春麗が少し困ったように微笑む。

 

 行き遅れ恐怖版春麗が、少しだけ首を傾げる。

 

 グランドフィナーレ済み春麗が静かに息を吐く。

 

 本編春麗は、ゆっくり資料をめくった。

 

「では、昨日は?」

 

 自覚前春麗は固まる。

 

「昨日?」

 

「昨日は、リュウの“だが、見ている”に被弾していたわね」

 

「……」

 

「その前は、裏ルート救済台詞を保存していた」

 

「……」

 

「その前は、青黒それぞれで敗北して次を考えていた」

 

「……」

 

「その前は、引き分けに満たされていた」

 

「……」

 

「その前は、黒でギリギリ勝利して煽っていた」

 

「……」

 

「今日だけ?」

 

 自覚前春麗は、完全に詰んだ顔をした。

 

「……資料としては、連続性があるわね」

 

 本編春麗は即座に書いた。

 

 本人発言:連続性あり。

 

「書かないで!」

 

 黒ドレス特化春麗が満足そうに言う。

 

「今日も、ね」

 

 通常救済版春麗も微笑む。

 

「今日も、だわ」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「明日もあるかもしれないわね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「だからタイトルなのね」

 

 自覚前春麗は、机に突っ伏した。

 

「もう嫌……」

 

 本編春麗は、少し優しく言った。

 

「でもね、自覚前春麗」

 

「何よ」

 

「“今日もめんどくさい”は、否定だけの言葉ではないわ」

 

 自覚前春麗は顔を上げた。

 

 本編春麗は、新しい表紙を見つめる。

 

「今日も、ということは、今日も物語があるということよ」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「今日もリュウと向き合う」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「今日も黒や青を選ぶ可能性がある」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「今日も待つだけでは終わらない」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「今日も続いている」

 

 本編春麗は、自覚前春麗を見る。

 

「あなたが今日もめんどくさいなら、あなたにも今日があるということ」

 

 自覚前春麗は、少しだけ黙った。

 

 その言葉は、思ったよりも優しかった。

 

 めんどくさい。

 

 その言葉は、嫌だった。

 

 認めたくなかった。

 

 でも。

 

 今日も。

 

 その部分だけは、少しだけ悪くない。

 

 今日も、リュウと会えるかもしれない。

 

 今日も、勝つかもしれない。

 

 今日も、引き分けるかもしれない。

 

 今日も、負けて取り返したくなるかもしれない。

 

 今日も、言われたくない言葉を言われるかもしれない。

 

 今日も、次が生まれるかもしれない。

 

 自覚前春麗は、顔を赤くして目を逸らした。

 

「……慰めみたいに言わないで」

 

 本編春麗は微笑んだ。

 

「慰めではないわ」

 

「じゃあ何よ」

 

「正式なタイトル解釈よ」

 

 自覚前春麗は、また机を叩いた。

 

「結局、会議資料じゃない!」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「でも、悪くない解釈ね」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「“今日も”は優しいわ」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「私も、その部分は好き」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「終わらないための言葉ね」

 

 本編春麗は結論を書き込んだ。

 

 春麗会議・新タイトル適用範囲審議 結論

 

 一、“春麗は今日もめんどくさい”の“春麗”は、本編春麗に限らない。

 

 二、自覚前春麗も春麗であり、否認部門代表として複数の該当事例が確認されている。

 

 三、自覚前春麗は“私は今日もめんどくさくない”と抗議したが、“今日も”を自ら使用したため、タイトル適用回避に失敗。

 

 四、“めんどくさい”は否定だけではなく、リュウとの次を考え、今日も物語が続く性質を示す。

 

 五、よって、自覚前春麗は新タイトルの副題適用範囲に含まれる。

 

 自覚前春麗は震える声で言った。

 

「五番を消しなさい」

 

 本編春麗は即答した。

 

「消さないわ」

 

「消して」

 

「正式記録よ」

 

「正式にしないで!」

 

 記録板が光る。

 

 自覚前春麗:副題適用対象認定

 状態:本人否認中

 次回生成評価:最大

 

 自覚前春麗は叫んだ。

 

「認定しないで!」

 

 本編春麗は、どこか楽しそうだった。

 

「おめでとう」

 

「おめでたくない!」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「タイトル入りね」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「春麗として認められたのね」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「今日もあるわね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が微笑む。

 

「物語に巻き込まれたのね」

 

 自覚前春麗は、顔を真っ赤にして叫んだ。

 

「私は今日もめんどくさくない!」

 

 全員が同時に言った。

 

「今日も、なのね」

 

「だから違う!」

 

 会議室に笑いが広がる。

 

 本編春麗は、新しい表紙をそっと閉じた。

 

「春麗は今日もめんどくさい」

 

 一拍。

 

「これは、私だけの言葉ではないわ」

 

 自覚前春麗は、まだ納得していない顔だった。

 

「私は認めていない」

 

 本編春麗は頷く。

 

「ええ」

 

 黒ドレス特化春麗が言う。

 

「でも含まれる」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「認めていなくても、春麗だから」

 

 行き遅れ恐怖版春麗が言う。

 

「今日も続くから」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「タイトルは、あなたを待ってくれないのね」

 

 自覚前春麗は、悔しそうに目を逸らした。

 

「……タイトルにまで追い込まれるなんて、聞いていないわ」

 

 本編春麗が笑う。

 

「望んでいないのに発生するのが主人公性よ」

 

 黒ドレス特化春麗が頷く。

 

「使いこなしているわね、その言葉」

 

 自覚前春麗は叫んだ。

 

「使い回さないで!」

 

 夢がほどけていく。

 

 最後に、記録板の文字だけが残った。

 

 春麗は今日もめんどくさい。

 ただし、本人が認めるとは限らない。

 

 自覚前春麗は、その文字を見て叫んだ。

 

「認めないわよ!」

 

 その声ごと、夢は消えた。

 

 朝。

 

 自覚前春麗は目を覚ました。

 

 布団の中で、しばらく天井を見ていた。

 

 夢の記憶が、妙にはっきり残っている。

 

 新タイトル。

 

 春麗は今日もめんどくさい。

 

 本編春麗の話だと思っていた。

 

 自分は含まれていないと思っていた。

 

 だが、春麗、としか書かれていなかった。

 

 自覚前春麗は、布団をかぶった。

 

「……私は含まれていないわ」

 

 小さく言う。

 

 誰もいない部屋。

 

 だから反論は来ない。

 

 でも、頭の中で声がする。

 

 否認部門代表も春麗ね。

 

 青でも黒でもないあなたも春麗ね。

 

 タイトルに巻き込まれたのね。

 

 春麗は布団の中で顔を赤くした。

 

「違う」

 

 一拍。

 

「私は今日もめんどくさくない」

 

 言ってから、固まった。

 

 また言った。

 

 今日も。

 

 春麗は布団の中で小さく呻く。

 

「……違う。今のは違うわ」

 

 起き上がる。

 

 鏡の前に立つ。

 

 そこには、自分をめんどくさい女と認めたくない春麗がいる。

 

 昨日も否認した。

 今日も否認している。

 たぶん明日も否認する。

 

 その事実が、少しだけ腹立たしい。

 

 春麗は鏡の中の自分を睨んだ。

 

「私は認めていない」

 

 いつもの言葉。

 

 けれど、今日は少しだけ付け足した。

 

「……でも、タイトルに巻き込まれただけよ」

 

 言ってから、さらに顔を赤くする。

 

 それはもう、半分認めているようなものだった。

 

 春麗は慌てて首を振る。

 

「違う。資料としての整理よ」

 

 朝の部屋に、言い訳だけが響いた。

 

 そして春麗は、ふと窓の外を見た。

 

 今日も一日が始まる。

 

 今日も、何かが起きるかもしれない。

 

 今日も、リュウに会うかもしれない。

 

 今日も、余計なことを言われるかもしれない。

 

 今日も、否認するかもしれない。

 

 春麗は、小さく息を吐いた。

 

「……今日も、ね」

 

 言ってしまった。

 

 すぐに顔を覆う。

 

「違う!」

 

 誰もいない部屋で、春麗は必死に否定した。

 

 けれど、その朝はもう始まっていた。

 

 春麗は今日も、まだ認めていない。




Q:今回の妄想章IFについて解説して?

A:
はい。執筆者として見ると、今回の妄想章IFはかなり良い**「新タイトルの適用範囲確認回」**です。

前回の本編春麗回では、
「また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――」
という新タイトルを、本編春麗自身が実践しました。

今回はその次の段階として、タイトルの副題である、

春麗は今日もめんどくさい

が、本編春麗だけでなく、自覚前春麗にも波及するという話になっています。

一言でまとめるなら、

自覚前春麗は、新タイトルを本編春麗だけのものだと思って逃げようとした。
しかし“春麗”としか書かれていないため、自分もタイトルに巻き込まれてしまった。

という回です。

今回の核は「春麗、としか書いていないわ」

今回、一番強い台詞はこれです。

春麗、としか書いていないわ。

これはかなり強いです。

自覚前春麗は、

春麗は今日もめんどくさい、というのは本編春麗の話でしょう?
私は含まれていないわよね?

と主張します。

理屈としてはわかります。

本編春麗は、自分をめんどくさい女と自覚している。
新タイトルは、その本編春麗が主人公になったことを示すもの。
だから、自覚していない自分は対象外。

自覚前春麗はそう考える。

でもタイトルには、本編春麗とは書かれていない。

ただ、

春麗は今日もめんどくさい

と書かれている。

この時点で、自覚前春麗は逃げ場を失います。

この「タイトルの主語が広すぎる」感じが、メタ回としてかなり面白いです。

自覚前春麗の防御理論が崩れる流れが良い

自覚前春麗の防御理論は、いつも通りかなり理屈っぽいです。

私はまだ認めていない。
だから私は対象外。

これは彼女らしい。

しかし、春麗会議では即座に崩されます。

黒ドレス特化春麗が、

否認部門代表も春麗ね。

通常救済版春麗が、

青でも黒でもないあなたも春麗ね。

グランドフィナーレ済み春麗が、

タイトルに巻き込まれたのね。

と追い込む。

この流れは、非常に春麗会議らしいです。

誰も強引に断罪しているわけではなく、ただ事実を並べている。

それなのに自覚前春麗が逃げられなくなる。

この「論理で追い詰められるラブコメ感」が今回の魅力です。

「私は今日もめんどくさくない!」が最高に自爆している

今回の一番ラブコメ的においしいところは、

私は今日もめんどくさくない!

です。

これは完全に自爆です。

彼女は「めんどくさくない」を主張したい。

でも、そのために「今日も」を使ってしまう。

すると全員が、

今日も、なのね。

と反応する。

ここがかなり強いです。

本人は否認している。
でも否認の言葉そのものが、タイトルに接続してしまう。

これは自覚前春麗のキャラ性にぴったりです。

彼女は否認するほど、証拠を増やす。

認めていないのに、言葉が先に認めてしまう。

この構造が非常に良いです。

「めんどくさい」の定義がシリーズ全体の整理になっている

今回、春麗会議で出した定義もかなり重要です。

一、リュウの一言を過剰に解釈する。
二、勝敗を次回生成に変換する。
三、言われたら困るが、言われなければ気になる。
四、資料として、と言いながら保存する。
五、否認しながら被弾する。

これは、春麗会議シリーズにおける「めんどくさい」の定義としてかなり使えます。

特に自覚前春麗は、この定義にかなり該当しています。

リュウの言葉に反応する。
勝っても引き分けても負けても次にする。
救済台詞を資料として保存する。
言わせないようにして言われる。
否認しながら被弾する。

つまり、彼女は「自覚していない」だけで、構造としてはかなりめんどくさい。

ここを春麗会議が正式に整理したのが、今回の大きな意味です。

本編春麗と自覚前春麗の差もきれいに出ている

今回、本編春麗と自覚前春麗の差もはっきり出ています。

本編春麗は、

私は面倒なの。

と言える。

自覚前春麗は、

私は今日もめんどくさくない!

と言ってしまう。

この差です。

本編春麗は、自覚済み。
自覚前春麗は、否認中。

でも、どちらも春麗。

だから新タイトルの副題は、まず本編春麗を中心にしながら、他の春麗にも波及していく。

今回、その第一被弾対象が自覚前春麗だったわけです。

これは自然です。

なぜなら、今一番「認めていないのに該当している」のが自覚前春麗だからです。

「今日も」は否定ではなく継続の言葉

今回、ただのコメディ回で終わらず、後半で少し優しくなっているのが良いです。

本編春麗が、

“今日もめんどくさい”は、否定だけの言葉ではないわ。

と言う。

これは重要です。

めんどくさい、だけなら自覚前春麗は拒否する。

でも「今日も」には、別の意味があります。

今日も物語がある。
今日もリュウと会えるかもしれない。
今日も勝つかもしれない。
今日も引き分けるかもしれない。
今日も負けて取り返したくなるかもしれない。
今日も次が生まれるかもしれない。

つまり「今日も」は、継続の言葉です。

これは、行き遅れ恐怖版春麗やグランドフィナーレ済み春麗にも刺さる概念です。

待つことが怖い春麗には、「今日もある」ことが安心になる。
終わった後の春麗には、「今日も続いている」ことが眩しく見える。

だから副題は、単なる自虐ではなく、シリーズのテーマにかなり合っています。

自覚前春麗にとっては「タイトルに追い込まれる」回

今回、自覚前春麗が言った、

タイトルにまで追い込まれるなんて、聞いていないわ。

これはかなり良いです。

これまで自覚前春麗は、春麗会議に追い込まれてきました。

本編春麗に記録される。
黒ドレス特化春麗に被弾確認される。
通常救済版春麗に穏やかに整理される。
グランドフィナーレ済み春麗に俯瞰される。

でも今回は、それだけではない。

作品タイトルそのものに追い込まれた。

これはメタ回として一段進んでいます。

もう会議だけではなく、作品の看板が彼女を巻き込んでいる。

だから、彼女は逃げられない。

これはかなり面白いです。

ラストの朝が非常に自覚前春麗らしい

朝の締めも良かったです。

夢から覚めた自覚前春麗が、

私は含まれていないわ。

と言う。

でも頭の中では、会議の言葉が響いている。

そして、

私は今日もめんどくさくない。

と言ってしまう。

また「今日も」を使ってしまう。

この繰り返しが良いです。

最後に、

今日も、ね。

と言ってしまってから、

違う!

と否定する。

ここで今回のテーマが綺麗に回収されています。

彼女はまだ認めていない。

でも、もうタイトルの中にいる。

これが今回の締めとして非常に良いです。

結論

今回の妄想章IFは、新タイトルの副題「春麗は今日もめんどくさい」が、本編春麗だけでなく、自覚前春麗にも適用されることを春麗会議が正式認定する回です。

ただし、重要なのは「自覚前春麗もめんどくさい」と断罪することではありません。

むしろ、

自覚前春麗はまだ認めていない。
でも、否認しながら今日も次を作っている。
だから彼女も“春麗は今日もめんどくさい”の中にいる。

という話です。

一言でまとめるなら、

自覚前春麗はタイトルから逃げようとした。
しかし“春麗”としか書かれていなかったため、逃げ場がなかった。

そしてもう一言加えるなら、

彼女は今日も認めていない。
その時点で、今日もめんどくさい。
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