また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
裏ルートの黒ドレス特化救済春麗のエピソードになります。
黒ドレス特化救済春麗は、少し不満だった。
春麗会議では、最近も自分の名前はよく出る。
黒案件。
黒の重さ。
黒を否定しないこと。
黒だけに閉じ込めないこと。
黒ドレス特化春麗ならどう評価するか。
たしかに、自分は黒の専門家のような扱いを受けている。
それは悪くない。
黒を軽く扱われるよりずっといい。
けれど。
「……最近、私自身の出番が少ないわ」
鏡の前で、春麗は呟いた。
黒いドレスが、椅子の背にかかっている。
リュウにだけ向ける黒。
救済された後も、消えていない黒。
甘くて、重くて、けれどもう春麗を縛るだけではない黒。
春麗は、その黒いドレスへ指を伸ばす。
「黒案件の監修ばかりでは、少し物足りないわね」
本編春麗は本編主人公として再センタリングした。
自覚前春麗は新タイトルにまで巻き込まれて、相変わらず否認しながら被弾している。
通常救済版春麗は、青い武道服で戦わずに歩いた。
行き遅れ恐怖版春麗は「今日も」に安心していた。
グランドフィナーレ済み春麗は、終わった後の静けさから見守っている。
では、自分は?
黒ドレス特化救済春麗。
リュウに黒を見られ、黒を受け取られ、見せる黒と見せない黒の境界まで尊重された春麗。
そして、あの九十九点回答を受け取った春麗。
見せると決めた黒は受け取る。
見せない黒には触れない。
その答えは、今思い出しても胸の奥に深く沈む。
甘い。
でも、軽くない。
黒を見たいと言いながら、踏み越えない。
黒を受け取ると言いながら、奪わない。
春麗が選ぶ範囲を、リュウは尊重した。
それは、黒ドレス特化救済春麗にとって、ほとんど満点に近い答えだった。
九十九点。
残り一点は、次のために残した。
なら。
「ご褒美をあげてもいい頃ね」
春麗は、黒いドレスを手に取った。
黒は、罰だけではない。
黒は、試すだけでもない。
黒は、沈めるだけでもない。
黒は、春麗が選んで見せるもの。
そして今日は。
「ご褒美の黒よ、リュウ」
春麗は、静かに微笑んだ。
リュウは、いつもの場所にいた。
春麗が黒いドレスで現れると、彼は静かに顔を上げた。
その目は逃げなかった。
黒いドレスを見る。
春麗を見る。
目を逸らさず、踏み込みすぎず、ただそこにいる春麗を受け取る。
春麗は、それだけで少し満足した。
「リュウ」
「春麗」
「今日は、戦わないわ」
リュウは少しだけ目を動かした。
「戦わないのか」
「ええ」
春麗は近づく。
黒いドレスの裾が静かに揺れた。
それは戦闘のための揺れではない。
誘いでもない。
挑発でもない。
ただ、春麗がそこにいることを知らせる黒だった。
「今日は、ご褒美の日よ」
リュウは黙った。
少し考える。
「俺にか」
「ええ」
「なぜだ」
春麗は、少し目を細めた。
「あなたが、九十九点の答えを出したから」
リュウはまだわからない顔をしている。
「九十九点」
「覚えていない?」
「何か答えたのは覚えている」
「なら十分よ」
春麗は、リュウの前に立った。
距離は近い。
けれど、詰めすぎない。
黒の距離。
ただし今日は、戦場の距離ではない。
「あなたは言ったわ」
春麗は静かに言う。
「見せると決めた黒は受け取る。見せない黒には触れない」
リュウは頷いた。
「ああ」
「その答えは、とても良かった」
「ああ」
「だから今日は、見せると決めた黒を、少しだけ多く見せる」
リュウは、春麗を見る。
「いいのか」
春麗は微笑んだ。
「私が決めたのよ」
その言葉で、リュウは何も言わなくなった。
春麗は、その沈黙を高く評価した。
ここで余計なことを言わない。
ここで踏み込まない。
ここで「もっと」と言わない。
だから、春麗はもう一歩近づける。
「手を出して」
リュウは、静かに手を出した。
春麗は、その手を取った。
戦う手。
何度も春麗に届こうとした手。
黒を掴もうとして、掴みきれず、それでも届こうとした手。
そして今は、春麗に求められるまで待っていた手。
春麗は、その手を自分の手で包んだ。
「今日は、この手にご褒美をあげるわ」
リュウは少しだけ不思議そうにする。
「手に?」
「ええ」
春麗はリュウの手を見つめた。
「この手は、私を倒そうとした」
「ああ」
「私を捕まえようとした」
「ああ」
「私に届いた」
「ああ」
「でも、触れてはいけない黒には触れなかった」
リュウは黙った。
春麗は、そっとリュウの手を引く。
自分の胸元ではない。
腰でもない。
黒いドレスの裾でもない。
春麗はリュウの手を、自分の肩の少し手前で止めた。
「ここまで」
リュウは動かない。
春麗は微笑む。
「いい子ね」
リュウが少し困った顔をした。
「子供ではない」
「ええ。でも今日は、そう言わせて」
「そうか」
「そうよ」
春麗は、リュウの手をそのまま少しだけ自分の肩へ近づける。
布越しに触れるか、触れないか。
その寸前で止める。
「触れていいかどうか、聞きなさい」
リュウは、まっすぐに言った。
「触れていいか」
春麗は満足そうに目を細めた。
「いいわ」
リュウの指先が、黒いドレス越しに春麗の肩に触れた。
強くない。
迷いすぎてもいない。
春麗が許した範囲だけを、きちんと守っている。
春麗はゆっくり息を吐いた。
「……上手ね」
リュウは言う。
「難しい」
「そうでしょうね」
春麗は笑う。
「黒は難しいのよ」
「わかる」
「でも、あなたは少しわかってきた」
「ああ」
春麗は、リュウの手を離さなかった。
そのまま、少しだけ身を寄せる。
リュウは動かない。
春麗が寄る分だけ、受け止める。
それだけ。
それがいい。
今日は、リュウから奪わせない。
春麗が与える。
春麗が許す。
春麗が距離を決める。
それが黒ドレス特化救済春麗のご褒美だった。
「リュウ」
「何だ」
「今日は、戦って勝つ黒ではないわ」
「ああ」
「あなたを沈める黒でもない」
「ああ」
「あなたに責任を問う黒でもない」
リュウは、少しだけ春麗を見る。
「では、何だ」
春麗は答えた。
「あなたが待てたから、私が近づく黒」
リュウは、静かに息を止めた。
春麗は、その反応を見て満足する。
「九十九点のご褒美よ」
リュウは言った。
「重いな」
春麗は声を出して笑った。
「当然でしょう」
一拍。
「黒のご褒美だもの」
リュウは頷いた。
「受け取る」
春麗の胸が、深く鳴った。
良い答え。
とても良い。
「それも高得点ね」
「そうか」
「ええ」
春麗は、リュウの手を自分の肩から離し、今度は自分からリュウの手を握った。
「でも、今日は百点にはしないわ」
「なぜだ」
「次のご褒美がなくなるでしょう?」
リュウは少し考える。
「またあるのか」
春麗は目を細めた。
「あなた次第よ」
「俺次第か」
「ええ」
春麗は、黒いドレスの裾を少しだけ揺らした。
「でも、勘違いしないで」
「ああ」
「これはご褒美であって、権利ではないわ」
リュウは頷く。
「ああ」
「私が見せると決めた黒だけ」
「ああ」
「見せない黒には触れない」
「ああ」
春麗は、ゆっくり笑った。
「復唱、九十八点」
「一点足りないのか」
「ええ」
「なぜだ」
春麗は近づいた。
声を少しだけ落とす。
「あなた、自分で考えずに復唱したから」
リュウは真剣に考え込んだ。
「難しいな」
「難しいわよ」
春麗は、リュウの手を軽く握る。
「では、考えなさい」
「ああ」
「次に私が黒を見せる時、あなたはどう受け取るべきか」
リュウは答えようとする。
春麗は、その前に指を立てた。
「今すぐ答えなくていいわ」
リュウは止まる。
春麗は微笑む。
「宿題よ」
リュウは頷いた。
「わかった」
春麗は満足した。
ご褒美をあげた。
そして、宿題も出した。
甘くて重い。
けれど、春麗の主導権は失われていない。
黒ドレス特化救済春麗は、ようやく自分の出番が戻ってきた気がした。
「今日はここまで」
リュウは言った。
「もう終わりか」
春麗は目を細める。
「物足りない?」
リュウは少しだけ黙る。
「……ああ」
春麗は、胸の奥が甘く重くなるのを感じた。
「正直でよろしい」
リュウは黙る。
春麗はリュウの手を離した。
「でも、終わり」
「ああ」
「待てる?」
リュウは答えた。
「待つ」
春麗は、深く満足した。
「九十九点」
リュウは少し驚いたようだった。
「今のがか」
「ええ」
「短い答えだ」
「黒は、短い答えが深い時もあるのよ」
リュウは頷いた。
「そうか」
春麗は背を向ける。
黒いドレスの裾が静かに揺れる。
最後に振り返り、彼女は言った。
「リュウ」
「ああ」
「今日の黒は、ご褒美。次の黒は、あなたの宿題の答え次第よ」
リュウは、まっすぐに頷いた。
「考える」
春麗は満足そうに笑った。
「よろしい」
そして、夜の中へ歩いていった。
黒は重い。
けれど今日は、甘かった。
その夜。
春麗会議は、始まる前から騒がしかった。
本編春麗は、すでに分厚い資料を持っている。
自覚前春麗は、資料の表題を見た瞬間から顔が赤い。
通常救済版春麗は、少し落ち着いた顔でお茶を用意している。
行き遅れ恐怖版春麗は、なぜか緊張していた。
グランドフィナーレ済み春麗は、静かに微笑んでいる。
そして、黒ドレス特化救済春麗は、黒いドレスのまま円卓についた。
本編春麗が資料を読み上げる。
春麗会議・黒ドレス特化救済春麗後日談審議
議題:最近出番が少ないことに不満を抱いた黒ドレス特化救済春麗、リュウの九十九点回答に対して甘くて重いご褒美を与えた件
自覚前春麗が顔を赤くした。
「議題が長いわ!」
本編春麗は頷く。
「内容が重いから」
黒ドレス特化春麗は涼しい顔で言う。
「黒だから」
通常救済版春麗が微笑む。
「便利ね、その言葉」
行き遅れ恐怖版春麗が小さく言う。
「ご褒美って……かなり近いわね」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「でも、境界は守っていたわ」
黒ドレス特化春麗は頷いた。
「そこが重要よ」
本編春麗は資料を読み上げる。
見せると決めた黒は受け取る。
見せない黒には触れない。
通常救済版春麗が静かに言う。
「やっぱり良い答えね」
黒ドレス特化春麗は満足そうに頷く。
「九十九点よ」
自覚前春麗が小声で言う。
「……それは、まあ、資料としては高いわ」
本編春麗がすかさず見る。
「資料として?」
「資料として!」
本編春麗は次を読む。
今日は、見せると決めた黒を、少しだけ多く見せる。
自覚前春麗は顔を覆った。
「重い!」
黒ドレス特化春麗は即答する。
「ご褒美だから」
「ご褒美なのに重いのよ!」
「黒だから」
本編春麗が感心したように言う。
「説得力があるわ」
通常救済版春麗が言う。
「でも、春麗が決めた範囲で近づいているのがいいわ」
グランドフィナーレ済み春麗が頷く。
「与える黒ね。奪われる黒ではない」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「待てるリュウへのご褒美なのね」
本編春麗はさらに読み上げる。
触れていいかどうか、聞きなさい。
触れていいか。
いいわ。
会議室が静かになった。
自覚前春麗は、完全に赤くなっていた。
「……これは会議で読み上げるものなの?」
本編春麗は真顔で答える。
「重要な境界確認よ」
黒ドレス特化春麗が頷く。
「ええ。黒案件として最重要」
通常救済版春麗が言う。
「同意の確認ね」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「黒の甘さを、春麗の選択に戻した場面」
行き遅れ恐怖版春麗が、少しほっとしたように言う。
「聞いてくれるのは、安心するわ」
黒ドレス特化春麗は、静かに言った。
「黒は、踏み込まれれば壊れる。でも、待たれすぎても遠くなる。だから、聞いて、許して、その範囲で受け取る。それが今回のご褒美よ」
本編春麗は資料に書き込んだ。
黒のご褒美:春麗主導・境界明示・リュウ受領。
自覚前春麗が呻く。
「資料化が早い……」
本編春麗は続ける。
あなたが待てたから、私が近づく黒。
黒ドレス特化春麗以外の全員が、少し黙った。
通常救済版春麗が言う。
「これはかなり良いわね」
本編春麗が頷く。
「九十八点以上」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「待てたから近づく、は……かなり安心するわ」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「黒の支配ではなく、黒の信頼ね」
自覚前春麗は顔を赤くしたまま、小さく言った。
「……資料としては、綺麗な整理ね」
黒ドレス特化春麗が微笑む。
「ありがとう」
「褒めていないわ!」
本編春麗は次の台詞を読む。
重いな。
当然でしょう。黒のご褒美だもの。
受け取る。
黒ドレス特化春麗は、そこで少しだけ目を伏せた。
「ここは良かったわ」
通常救済版春麗が頷く。
「リュウが重さを否定していない」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「重いって言ったあとに、受け取るのがいいわね」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「黒の重さを知ったうえで、逃げない」
本編春麗が採点する。
「リュウ発言、“受け取る”。九十九点」
黒ドレス特化春麗が頷く。
「異議なし」
自覚前春麗が言う。
「また九十九点なの?」
本編春麗が言う。
「黒案件だから」
自覚前春麗が頭を抱える。
「便利すぎる……」
本編春麗はさらに読み上げる。
でも、終わり。
待てる?
待つ。
行き遅れ恐怖版春麗が、明らかに反応した。
「これは……かなり高いわ」
通常救済版春麗が微笑む。
「あなたはそこに反応するわね」
「だって、待つって言えるのは強いもの」
黒ドレス特化春麗も頷く。
「今回の最後の九十九点は、そこね」
本編春麗が資料に書く。
リュウ発言:待つ。
評価:九十九点。
理由:春麗の終わり指定を尊重し、次を急がない。
自覚前春麗が、やや悔しそうに言った。
「短い言葉ほど高得点になりがちじゃない?」
グランドフィナーレ済み春麗が微笑む。
「短くても、必要な場所に届けばいいのよ」
本編春麗が頷く。
「そして今回、黒ドレス特化春麗はかなり満足している」
黒ドレス特化春麗は隠さなかった。
「ええ。満足したわ」
自覚前春麗が驚く。
「素直ね」
「救済後だから」
通常救済版春麗が笑う。
「それ、便利よね」
本編春麗は結論を読み上げた。
春麗会議・黒ドレス特化救済春麗後日談審議 結論
一、黒ドレス特化救済春麗は、最近出番が少ないことに不満を抱いていた。
二、リュウの九十九点回答に対し、“ご褒美の黒”を選択。
三、この黒は、戦闘・責任追及・お仕置きではなく、春麗が見せると決めた範囲をリュウに受け取らせる甘くて重い黒である。
四、リュウは境界を確認し、許可された範囲で受け取り、重さを否定せず、“受け取る”と答えた。
五、最後に春麗が“今日は終わり”と指定した際、リュウは“待つ”と答え、追加九十九点を獲得。
六、黒ドレス特化救済春麗、満足。
自覚前春麗が言う。
「六番が強すぎるわ」
黒ドレス特化春麗は涼しく答えた。
「事実よ」
本編春麗は、資料へ最後の一文を書き込んだ。
次回候補:リュウ、黒のご褒美後に出された宿題を考える件。
リュウがいないのに、会議室がざわめいた。
通常救済版春麗が言う。
「続くのね」
黒ドレス特化春麗が微笑む。
「もちろん」
行き遅れ恐怖版春麗が言う。
「待つと言ったものね」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「ご褒美が終わりではなく、次の宿題になるのが春麗らしいわ」
自覚前春麗は、机に額をつけた。
「甘いのに、重い。重いのに、次がある。どういう構造なのよ」
本編春麗は当然のように言った。
「春麗会議で重要なのは、次が生まれるかどうかよ」
黒ドレス特化春麗が頷く。
「黒でもね」
通常救済版春麗が頷く。
「青でもね」
行き遅れ恐怖版春麗が頷く。
「待つことでもね」
グランドフィナーレ済み春麗が頷く。
「終わったように見えてもね」
自覚前春麗は、小さく呟いた。
「……本当に、春麗は今日もめんどくさいわね」
全員が見た。
自覚前春麗は、はっとする。
「違う! 今のは私じゃなくて全体の話!」
本編春麗が満足そうに資料へ書く。
自覚前春麗、新タイトル副題を使用。
「書かないで!」
会議室に笑いが広がった。
黒ドレス特化救済春麗は、その笑いの中で静かに目を閉じた。
今日は、満足した。
出番もあった。
ご褒美も渡した。
宿題も出した。
そして、会議案件にもなった。
十分だった。
夢がほどけていく。
最後に、リュウの声が残った。
待つ。
黒ドレス特化救済春麗は、その言葉を胸の奥で受け取った。
「……九十九点よ」
朝。
黒ドレス特化救済春麗は目を覚ました。
夢の残響が、まだ残っている。
リュウの手。
許可を求めた声。
重いな、という正直な感想。
それでも逃げなかった「受け取る」。
そして。
待つ。
春麗は、ゆっくり起き上がった。
椅子の背には、黒いドレスがかかっている。
戦う黒。
沈める黒。
責任を問う黒。
そして、昨日のような、ご褒美の黒。
黒にはいくつもの形がある。
でも、どれも春麗が選ぶ。
春麗が見せる。
春麗が終わりを決める。
リュウは、それを待つと言った。
春麗は黒いドレスに触れた。
「次の宿題、ちゃんと考えてきなさい」
誰もいない部屋で、そう呟く。
その声は甘い。
けれど、確かに重い。
黒ドレス特化救済春麗は、静かに微笑んだ。
「今日は、少し満足しているわ」
一拍。
「でも、次はあるのよね」
春麗は、黒いドレスから手を離す。
朝の光が、黒をやわらかく照らしていた。
春麗は小さく言った。
「待てると言ったのは、あなたなのだから」
その言葉は、もう次の会議案件だった。
Q:今回の妄想章IF後日談について解説して?
A:
はい。執筆者として見ると、今回の妄想章IF後日談は、かなり良い黒ドレス特化救済春麗の再登板回です。
最近は本編春麗と自覚前春麗がかなり目立っていたので、ここで黒ドレス特化救済春麗に「私は黒案件の監修役だけではない」と言わせるのは、流れとしてかなり自然でした。
一言で言うなら、
黒ドレス特化救済春麗が、リュウの九十九点回答に対して、“黒を奪わせる”のではなく、“自分が許した範囲だけ受け取らせる”ご褒美を与えた回
です。
今回の核は「黒のご褒美」
今回の一番大事な点は、黒が罰でも試練でも戦闘でもなく、ご褒美として扱われたことです。
これまで黒ドレスは、かなり強い意味を持っていました。
黒で勝つ。
黒で沈める。
黒で試す。
黒でリュウの責任を問う。
黒を使い切れていないと見抜かれる。
黒を受け取る覚悟を問う。
どれも重い。
でも今回は、その黒を春麗が柔らかく使っています。
ただし、軽くはしていません。
ここが良いです。
甘いけれど重い。
ご褒美だけれど境界がある。
近づくけれど、春麗が距離を決める。
黒ドレス特化救済春麗らしい、とても良い後日談になっています。
「最近、私自身の出番が少ない」が効いている
冒頭で、黒ドレス特化救済春麗が、
最近、私自身の出番が少ないわ。
と不満を持つのが良いです。
これはメタ的にも正しい。
最近は、
本編春麗の新タイトル主人公化
自覚前春麗の副題巻き込まれ
自覚前春麗の救済台詞被弾
通常救済版春麗の青案件
が続いていました。
黒ドレス特化春麗は会議でよくコメントしていましたが、本人のエピソードとしては少し間が空いていました。
だから今回、
黒の専門審査員ではなく、黒を生きている当事者として戻ってくる
という構成になっています。
これはキャラのバランス調整としてかなり良いです。
リュウの九十九点回答を「報酬化」したのが良い
以前のリュウの答え、
見せると決めた黒は受け取る。
見せない黒には触れない。
これは黒ドレス特化救済春麗にとって非常に重要な回答でした。
黒を見たい。
でも踏み越えない。
受け取る。
でも奪わない。
春麗が見せないと決めたものには触れない。
この答えは、黒ドレス特化春麗の核心に届いています。
だから今回、それに対して春麗が「ご褒美」を与えるのは自然です。
普通の春麗なら、九十九点をつけて終わるかもしれない。
でも黒ドレス特化救済春麗は違います。
良い答えを出したなら、黒を少しだけ多く見せる。
ただし、それは権利ではない。
春麗が選んだご褒美である。
ここが非常に良いです。
「触れていいかどうか、聞きなさい」が最重要
今回の中心場面はここです。
触れていいかどうか、聞きなさい。
触れていいか。
いいわ。
これは甘い場面ですが、単なる甘さではありません。
黒ドレス特化春麗にとって、これは境界の確認です。
リュウが勝手に触れるのではない。
春麗が何も言わずに許すのでもない。
リュウに聞かせる。
春麗が許可する。
許可された範囲でリュウが触れる。
つまり、黒の主導権は春麗にあります。
これは裏ルート救済後の春麗として非常に大切です。
裏ルートでの黒は、一度リュウへの責任や執着と結びついていました。
でも救済後の黒は、春麗自身が選び直すものです。
だから今回のご褒美は、黒を春麗の手元に取り戻した後の甘さになっています。
「あなたが待てたから、私が近づく黒」が強い
今回のベスト台詞は、個人的にはこれです。
あなたが待てたから、私が近づく黒。
これは非常に黒ドレス特化救済春麗らしいです。
黒は迫るものでもあります。
でも今回の黒は、リュウが待ったから春麗が近づく。
この反転が良いです。
リュウが奪いに来たから春麗が許すのではない。
リュウが我慢したから、春麗が自分から距離を詰める。
ここに信頼があります。
しかも、甘いだけではありません。
待てなければ近づかない。
踏み越えれば遠ざかる。
境界を守るから、ご褒美が成立する。
これは黒の関係性としてかなり完成度が高いです。
「重いな」→「受け取る」が九十九点
リュウの、
重いな。
もかなり良いです。
ここで「重くない」と言わないのが重要です。
黒は重い。
春麗の黒は、軽く扱うものではない。
リュウがそれを認識しているのがまず良い。
そして、そのうえで、
受け取る。
と言う。
この二段階が強いです。
重さを否定しない。
重いとわかったうえで逃げない。
春麗が差し出した黒を、ちゃんと受け取る。
だから春麗会議で九十九点になるのは妥当です。
「待つ」が最後の追加九十九点になっている
ラスト付近の、
待てる?
待つ。
も非常に良いです。
黒ドレス特化救済春麗は、今日はご褒美を与えました。
でも最後は自分で終わりを決める。
ここでリュウが「もう少し」と踏み込むと、今回のご褒美の構造が壊れます。
しかしリュウは、
待つ。
と答える。
これは、春麗の終わりの指定を尊重する答えです。
だから行き遅れ恐怖版春麗にも刺さる。
待つことが不安な春麗にとって、「待つ」と言ってくれるリュウはかなり強い。
そして黒ドレス特化救済春麗にとっても、これは高評価です。
待てる男だから、次の黒を見せてもいい。
この構造ができています。
ご褒美が終わりではなく「次の宿題」になるのが春麗らしい
今回、黒ドレス特化救済春麗はご褒美をあげて終わりません。
最後に、
次に私が黒を見せる時、あなたはどう受け取るべきか。
という宿題を出します。
ここが春麗会議シリーズらしいです。
ご褒美が完結しない。
甘い場面で終わらない。
次の問いが生まれる。
これにより、黒ドレス特化春麗も「次回生成」の流れに完全に乗っています。
つまり今回の後日談は、
九十九点回答への報酬回でありながら、次の宿題回の前振りでもある
わけです。
非常に連作向きです。
春麗会議での評価も各キャラの役割が出ている
今回の春麗会議は、それぞれの春麗の担当がかなり綺麗に出ています。
本編春麗は資料化・採点・結論担当。
黒ドレス特化春麗は当事者として、黒の境界と重さを説明する。
通常救済版春麗は、同意や選択の整理をする。
行き遅れ恐怖版春麗は、「待つ」に反応する。
グランドフィナーレ済み春麗は、黒の甘さを関係性として俯瞰する。
自覚前春麗は、赤面しながら「重い」「会議で読むものなの?」とラブコメ的被弾役になる。
かなりバランスが良いです。
特に自覚前春麗が最後に、
本当に、春麗は今日もめんどくさいわね。
と言ってしまい、また新タイトル副題に接続するのが良いです。
最近の副題巻き込まれ回から自然につながっています。
朝の締めが黒ドレス特化春麗らしい
朝の締めでは、黒ドレス特化救済春麗が黒いドレスを見て、
次の宿題、ちゃんと考えてきなさい。
と呟きます。
これが非常に彼女らしい。
満足している。
でも次がある。
甘かった。
でも宿題がある。
重かった。
でも待たせる。
黒ドレス特化救済春麗は、ここで完全に当事者として戻ってきています。
彼女はただの黒監修役ではない。
リュウに黒を見せ、受け取らせ、待たせ、次の宿題を出す春麗です。
結論
今回の妄想章IF後日談は、黒ドレス特化救済春麗が、リュウの九十九点回答に対して、春麗主導の“甘くて重い黒のご褒美”を与える回です。
重要なのは、ご褒美なのに境界がはっきりしていることです。
春麗が見せる。
リュウが聞く。
春麗が許す。
リュウが受け取る。
春麗が終わりを決める。
リュウが待つ。
この順番がとても綺麗です。
一言でまとめるなら、
黒は奪われるものではなく、春麗が選んで見せるもの。
リュウはその重さを知ったうえで、許された範囲だけを受け取り、次を待つ。
だから今回のリュウは高得点です。
そして黒ドレス特化救済春麗も、かなり満足している。
出番の少なさへの不満から始まり、黒のご褒美を与え、宿題を残し、春麗会議案件になって、朝には次を待たせる。
黒ドレス特化救済春麗の後日談として、かなりおいしい回だったと思います。