また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※本編確定ではなく、断章IFです。


断章IF:本編春麗は、勝者煽りを自覚前春麗に取られた気がする

 

 本編春麗は、少し不満だった。

 

 かなり不満、というほどではない。

 

 怒っているわけでもない。

 

 嫉妬しているわけでもない。

 

 ただ、少しだけ。

 

 本当に少しだけ、引っかかっていた。

 

 春麗会議で、勝者煽りの適性を審議したのは自分だった。

 

 青勝利煽り。

 黒ドレス勝利煽り。

 自覚前否認煽り。

 黒執着危険煽り。

 本編甘さ控えめ煽り。

 

 それぞれを分類し、危険度を整理し、現在の本編春麗には甘さ控えめ勝者煽りが最適だと結論づけた。

 

 その後、自分は実践した。

 

 リュウに青い武道服で二連勝し、

 

 次にどう届くか、考えてきたのでしょう? 

 でも、今日はまだ少し足りなかったわね。

 だから、もう少しだけ待ってあげる。

 

 と言えた。

 

 勝者煽り実践成功。

 

 文句なし。

 

 本編春麗として、きちんと役割を果たした。

 

 はずだった。

 

 しかし。

 

 その後、自覚前春麗が黒ドレスでやった。

 

 準備段階からメイク、髪、立ち姿まで戦術化し、リュウの視線制御を強く効かせ、ギリギリで勝った。

 

 そして、黒ドレス勝利煽りを入れた。

 

 見ていたでしょう? 

 それでも、届かなかったのね。

 

 高火力。

 

 派手。

 

 黒ドレスとしてもかなり強い。

 

 さらにその後、リュウに準備段階ごと見抜かれて、

 

 今日は、最初からきつかった。

 

 と無自覚に褒め殺され、精神HPを持っていかれた。

 

 試合には勝った。

 煽りも成功した。

 精神では負けた気がした。

 

 非常に春麗会議向きの案件だった。

 

 非常においしかった。

 

 そして本編春麗は、鏡の前で腕を組んだ。

 

「……煽り回を開いたのは、私なのに」

 

 言ってから、少しだけ顔を赤くする。

 

 子どもっぽい。

 

 非常に子どもっぽい。

 

 だが、気になるものは気になる。

 

「黒ドレス煽りの見せ場を、自覚前春麗に取られた気がするわ」

 

 言ってしまった。

 

 本編春麗は、目を閉じた。

 

 これは会議案件だ。

 

 そして、会議案件だと思った瞬間。

 

 夢は始まっていた。

 

 春麗会議。

 

 円卓の中央には、すでに記録板が浮かんでいた。

 

 自覚前春麗は、警戒した顔で座っている。

 

 黒ドレス特化救済春麗は、どこか面白そうにしている。

 

 通常救済版春麗は穏やかに微笑み、行き遅れに恐怖する春麗は少し不安そうに資料を見ている。

 

 グランドフィナーレ済み春麗は静かに目を伏せていた。

 

 本編春麗は、議長席に座った。

 

 記録板に文字が浮かぶ。

 

 春麗会議・勝者煽り部門代表選定審議

 

 自覚前春麗が眉をひそめた。

 

「何、この議題」

 

 本編春麗は淡々と言った。

 

「必要な審議よ」

 

「本当に?」

 

「ええ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「かなり面白そうね」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「部門代表を決めるのね」

 

 自覚前春麗はますます警戒する。

 

「何のために?」

 

 本編春麗は、少しだけ視線を逸らした。

 

「整理のためよ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が、すぐに微笑んだ。

 

「本音は?」

 

 本編春麗は一拍置いた。

 

 そして、正直に言った。

 

「煽り回を開いたのは私なのに、黒ドレス煽りの見せ場を自覚前春麗に取られた気がするわ」

 

 会議室が静かになった。

 

 自覚前春麗が固まる。

 

 そして、慌てて言った。

 

「取っていないわ。資料として実践しただけよ」

 

 本編春麗は目を細める。

 

「資料として?」

 

「そうよ。黒ドレス勝利煽りの実地検証よ」

 

「かなり派手だったわ」

 

「派手にしたつもりはないわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「でも、かなり見せ場だったわね」

 

 自覚前春麗がそちらを見る。

 

「あなたまで」

 

 通常救済版春麗も微笑む。

 

「ギリギリ勝利、黒ドレス煽り、準備段階ごと見抜かれて精神ノックアウト。かなり強い一連の流れだったわ」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が小さく言う。

 

「しかも、リュウに“かなりきつかった”って言われたものね」

 

 自覚前春麗は耳まで赤くなった。

 

「そこは言わないで!」

 

 本編春麗は、資料をめくった。

 

「……やはり主人公性が強いわ」

 

 自覚前春麗が即座に反論する。

 

「私は主人公ではないわ」

 

 本編春麗は静かに言う。

 

「望んでいないのに発生するのが主人公性よ」

 

 自覚前春麗は撃沈した。

 

 その言葉は、最近かなり効く。

 

 本編春麗は、記録板を切り替えた。

 

 議題一:青煽り代表

 

 中央に映像が浮かぶ。

 

 青い武道服の本編春麗。

 

 リュウが片膝をついている。

 

 本編春麗が勝者として立ち、

 

 次にどう届くか、考えてきたのでしょう? 

 でも、今日はまだ少し足りなかったわね。

 だから、もう少しだけ待ってあげる。

 

 と言う。

 

 本編春麗は、少しだけ誇らしげに胸を張った。

 

「これは、私の担当でいいわね」

 

 自覚前春麗が言う。

 

「異議なし」

 

 黒ドレス特化救済春麗も頷く。

 

「青煽りはあなたでいいと思うわ」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「強すぎず、次を残す。今の本編春麗に合っているもの」

 

 行き遅れに恐怖する春麗も頷いた。

 

「待ってあげる、が安心するわ」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「勝って終わらせるのではなく、次を待つ煽り。青の本編春麗にふさわしいわ」

 

 記録板に決定が出る。

 

 青煽り代表:本編春麗

 代表技:甘さ控えめ勝者煽り

 特徴:勝者の余裕、次回生成、低危険度

 

 本編春麗は満足した。

 

「まず一つ」

 

 自覚前春麗が小声で言う。

 

「嬉しそうね」

 

「本編だから」

 

「便利ね、本編」

 

 次に記録板が切り替わる。

 

 議題二:黒煽り代表

 

 黒ドレスの映像が映る。

 

 最初に映ったのは、黒ドレス特化救済春麗だった。

 

 リュウに向かって、静かに立つ。

 

 黒の重さを知り、境界を知り、見せる範囲を自分で決められる春麗。

 

 彼女の黒は、深い。

 

 だが、危うくはない。

 

 黒ドレス特化救済春麗は言った。

 

 見ていたなら、届いてみなさい。

 ただし、私が見せるところまでよ。

 

 会議室に静かな緊張が走る。

 

 本編春麗が頷く。

 

「これは強いわね」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「境界がある黒ね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「見られることを許すが、奪わせない」

 

 黒ドレス特化救済春麗は、落ち着いた声で言った。

 

「黒煽り代表なら、基本は私でいいと思うわ」

 

 その瞬間、自覚前春麗がむっとした。

 

「待って」

 

 全員が見る。

 

 自覚前春麗は、少し顔を赤くしながら言った。

 

「私は代表を狙っているわけではないけれど」

 

 本編春麗が言う。

 

「けれど?」

 

「前回、黒ドレス勝利煽りを実践したのは私よ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が目を細める。

 

「ええ。かなり派手にね」

 

 自覚前春麗は顔を赤くする。

 

「派手ではないわ。資料として、実戦で検証しただけ」

 

 本編春麗が記録板に自覚前春麗の映像を出す。

 

 黒ドレス。

 

 勝利。

 

 リュウが片膝をつく。

 

 自覚前春麗が言う。

 

 見ていたでしょう? 

 それでも、届かなかったのね。

 

 会議室が少しざわめく。

 

 黒ドレス特化救済春麗は、静かに評価した。

 

「高火力ね」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「でも、境界管理は少し不安」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が言う。

 

「見られていたことに、本人もかなり反応していたものね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「煽りとしては強い。ただ、本人が煽りの余韻に耐えきれていない」

 

 自覚前春麗は言い返せない。

 

 リュウの「かなりきつかった」で沈んだ記憶がある。

 

 本編春麗は結論を書いた。

 

 黒煽り代表:黒ドレス特化救済春麗

 黒煽り実戦派:自覚前春麗

 補足:自覚前春麗は火力が高いが、精神HP被弾リスクが大きい。

 

 自覚前春麗が叫ぶ。

 

「補足が余計!」

 

 黒ドレス特化救済春麗が微笑む。

 

「代表ではないけれど、実戦派としては認められたわよ」

 

「嬉しくないわ!」

 

 本編春麗は少しだけ不満そうに言う。

 

「やっぱり見せ場は強いわね」

 

 自覚前春麗が反応する。

 

「だから取っていないわ!」

 

 記録板が切り替わる。

 

 議題三:否認煽り代表

 

 全員が、ほぼ同時に自覚前春麗を見た。

 

 自覚前春麗は即座に言った。

 

「私は違うわ」

 

 本編春麗は淡々と映像を流す。

 

 自覚前春麗が、勝利後に言う。

 

 別にあなたに勝って嬉しいわけじゃないわ。

 ただ、資料として、今日は私の方が上だっただけ。

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

「これ以上ないわね」

 

 黒ドレス特化救済春麗が頷く。

 

「否認、勝者感、甘さ、全部入っている」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が言う。

 

「資料として、が便利すぎるわ」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「否認しながら次を生む煽り。自覚前春麗にしか出せない味ね」

 

 自覚前春麗は真っ赤になった。

 

「味とか言わないで!」

 

 本編春麗は記録板に書く。

 

 否認煽り代表:自覚前春麗

 代表技:資料として今日は私の方が上だっただけ煽り

 特徴:本人無自覚の甘さ、反論不能な否認、会議案件発生率高

 

 自覚前春麗は机を叩いた。

 

「会議案件発生率高って何よ!」

 

 本編春麗は微笑む。

 

「実績よ」

 

「実績じゃない!」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「これは代表でいいわね」

 

 通常救済版春麗も頷く。

 

「異議なし」

 

 自覚前春麗は完全に敗北した。

 

 記録板が、わずかに暗くなる。

 

 議題四:危険煽り代表

 

 棚に置かれていた黒い記録片が、短く浮かび上がる。

 

 黒執着春麗。

 

 成熟した黒。

 

 勝っても終われない黒。

 

 リュウに勝っても、リュウが悔しそうでなければ満たされない春麗。

 

 映像の黒執着春麗は、静かに言う。

 

 やっと勝ったわ。

 でも、どうしてそんな顔をするの? 

 もっと悔しそうにしてくれないと、次が欲しくなるじゃない。

 

 会議室の空気が沈む。

 

 本編春麗が即座に言った。

 

「危険煽り代表は黒執着春麗。ただし常設不可」

 

 黒ドレス特化救済春麗も頷く。

 

「異議なし」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「選べなくなる煽りね」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が不安そうに言う。

 

「次があるのに、安心できないわ」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が静かに言う。

 

「勝っても終われない煽り。代表ではあるけれど、扱いは要注意」

 

 記録板に表示される。

 

 危険煽り代表:黒執着春麗

 代表技:もっと悔しそうにしてくれないと次が欲しくなる煽り

 特徴:火力最大、危険度最大、常設不可

 

 黒い記録片は、再び棚へ戻る。

 

 本編春麗は小さく息を吐いた。

 

「これは、補給用ではなく警告用ね」

 

 黒ドレス特化救済春麗が頷く。

 

「ええ」

 

 自覚前春麗も、小さく言った。

 

「……資料としても危険ね」

 

 本編春麗は、今回は書かなかった。

 

 自覚前春麗が少しだけ驚く。

 

 本編春麗は言う。

 

「今のは、書かないでおくわ」

 

 自覚前春麗は目を逸らした。

 

「……助かるわ」

 

 記録板に全体の表が浮かぶ。

 

 春麗会議・勝者煽り部門代表一覧

 

 青煽り代表:本編春麗

 黒煽り代表:黒ドレス特化救済春麗

 黒煽り実戦派:自覚前春麗

 否認煽り代表:自覚前春麗

 危険煽り代表:黒執着春麗

 

 自覚前春麗が眉をひそめた。

 

「私、二つ入っていない?」

 

 本編春麗は頷く。

 

「黒煽り実戦派と、否認煽り代表ね」

 

「多くない?」

 

「主人公性が強いから」

 

「違うわ!」

 

 本編春麗は少しだけ真顔になる。

 

「そこなのよ」

 

 会議室が静かになる。

 

 本編春麗は、記録板を見つめた。

 

「私は本編春麗。名実ともに主人公。自分をめんどくさい女と自覚している春麗」

 

 一拍。

 

「でも、自覚前春麗は最近、かなり強い」

 

 自覚前春麗は反論しようとしたが、言葉が出なかった。

 

 本編春麗は続ける。

 

「甘い散歩。黒を知ろうとしている青。黒ドレス準備段階戦術。黒ドレス勝利煽り。褒め殺し精神ノックアウト」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「確かにイベント密度は高いわね」

 

 通常救済版春麗も頷く。

 

「しかも、本人は望んでいないことが多い」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「望んでいないのに発生する。だから主人公性がある」

 

 自覚前春麗は小さく言った。

 

「私は望んでいないわ」

 

 本編春麗は微笑む。

 

「知っているわ」

 

 その声は、少し優しかった。

 

「だからこそ、あなたは面白い」

 

 自覚前春麗は顔を赤くした。

 

「面白くない」

 

「面白いわ」

 

「面白くない!」

 

 本編春麗は笑った。

 

「でも、今回は整理できた」

 

 記録板に最終結論が表示される。

 

 春麗会議・勝者煽り部門代表選定審議 結論

 

 一、青煽り代表は本編春麗。甘さ控えめ勝者煽りにより、勝者の余裕と次回生成を両立する。

 

 二、黒煽り代表は黒ドレス特化救済春麗。境界管理を含めた黒の煽りを担当する。

 

 三、自覚前春麗は黒煽り実戦派および否認煽り代表。火力と会議案件発生率が高い。

 

 四、黒執着春麗は危険煽り代表。ただし常設不可、警告用資料として扱う。

 

 五、本編春麗は、自覚前春麗に見せ場を取られた気がしたが、青煽り代表としての地位は揺らがない。

 

 六、自覚前春麗の主人公性は引き続き要監視。

 

 自覚前春麗が叫んだ。

 

「六番!」

 

 本編春麗は真顔で言う。

 

「重要よ」

 

「要監視って何!」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「実際、要監視ではあるわ」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「でも、危険というより、伸びている感じね」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が言う。

 

「次がたくさん生まれるものね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「それが、今の春麗会議を動かしている」

 

 本編春麗は少しだけ目を伏せた。

 

「そうね」

 

 一拍。

 

「だから、取られた気がしたのかもしれないわ」

 

 自覚前春麗が、本編春麗を見る。

 

 本編春麗は、素直に言った。

 

「私が主人公なのに、あなたの回がかなりおいしいから」

 

 自覚前春麗は固まった。

 

「……そんなことを言われても困るわ」

 

 本編春麗は微笑む。

 

「困りなさい。あなたは否認煽り代表なのだから」

 

「関係ない!」

 

 会議室に笑いが広がる。

 

 黒ドレス特化救済春麗が言った。

 

「本編春麗」

 

「何?」

 

「あなたは青煽り代表で、今の本編主人公よ。黒の見せ場を自覚前春麗が持っていても、それはあなたの場所が減ることではないわ」

 

 通常救済版春麗が続ける。

 

「むしろ、会議全体が豊かになる」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「本編が中心にあるから、分岐が映えるのよ」

 

 本編春麗は、少しだけ黙った。

 

 そして、小さく頷く。

 

「……そうね」

 

 自覚前春麗が恐る恐る言う。

 

「では、この議題は終わり?」

 

 本編春麗は記録板を見る。

 

 そこに次回候補が浮かんだ。

 

 次回候補:本編春麗、青煽り代表として再戦で格を見せる件。

 

 本編春麗は少しだけ笑った。

 

「悪くないわ」

 

 自覚前春麗が呆れる。

 

「また煽るの?」

 

「代表だから」

 

「便利ね、代表」

 

 黒ドレス特化救済春麗が微笑む。

 

「黒煽り代表としても、見ておくわ」

 

 自覚前春麗が小さく言う。

 

「資料として、私も見るわ」

 

 本編春麗はすぐに見る。

 

「資料として?」

 

 自覚前春麗は顔を赤くする。

 

「資料としてよ!」

 

 会議室がまた笑いに包まれた。

 

 夢がほどけていく。

 

 最後に、本編春麗は記録板を見た。

 

 青煽り代表:本編春麗。

 

 そこに自分の名前がある。

 

 それだけで、少し落ち着いた。

 

 朝。

 

 本編春麗は目を覚ました。

 

 夢の残響が、まだ胸に残っている。

 

 勝者煽り部門代表選定審議。

 

 青煽り代表。

 

 黒煽り代表。

 

 否認煽り代表。

 

 危険煽り代表。

 

 そして、自覚前春麗の主人公性要監視。

 

 春麗は布団の中で小さく笑った。

 

「……部門代表って何なの」

 

 自分たちで決めておいて、少しおかしい。

 

 だが、悪くなかった。

 

 本編春麗は起き上がり、鏡の前に立つ。

 

 そこには、めんどくさい女と自覚している春麗がいる。

 

 本編春麗。

 

 青煽り代表。

 

 中心にいる春麗。

 

 分岐を見て、少し不満になり、それでも自分の場所を確認した春麗。

 

「取られたわけではないのね」

 

 小さく呟く。

 

 自覚前春麗の黒ドレス煽りは、おいしかった。

 

 派手だった。

 

 主人公性も強かった。

 

 でも、それは本編春麗の場所を奪うものではない。

 

 むしろ、春麗会議を豊かにする分岐だ。

 

 本編があるから、分岐が映える。

 

 そう言われたことが、少し残っている。

 

 春麗は青い武道服を見る。

 

 今日は黒ではない。

 

 青。

 

 黒を知った青。

 

 勝者煽りを選べる青。

 

「青煽り代表、ね」

 

 言ってから、少し顔が赤くなる。

 

 肩書きとしては妙だ。

 

 だが、嫌ではない。

 

 春麗は窓を開けた。

 

 朝の空気が入る。

 

「また戦ってくれなんて言わないで」

 

 いつもの言葉。

 

 そして、少しだけ口元を緩める。

 

「でも、青煽り代表としてなら」

 

 一拍。

 

「少しくらい、待ってあげてもいいわ」

 

 言ってから、春麗は顔を赤くした。

 

「……代表としてよ」

 

 誰もいない部屋に、言い訳だけが残る。

 

 春麗は今日も、めんどくさい。

 

 ただし今日は、自分の主人公性を少しだけ再確認した春麗だった。




Q:今回の断章IFについて解説して?


A:
はい。今回の断章IFは、かなり良い メタ整理回+本編春麗の主人公性再確認回 です。

一言で言うなら、

本編春麗が、自覚前春麗に黒ドレス煽りの見せ場を取られたように感じたことで、春麗会議内の“勝者煽り担当領域”を整理し、自分の主人公としての立ち位置を再確認する回

です。

今回の核は「取られた気がする」という本編春麗の小さな嫉妬

今回の本編春麗は、かなり人間味があります。

自分で勝者煽り審議を開いた。
甘さ控えめ勝者煽りを定義した。
自分でも青い武道服でリュウに二連勝し、正式に煽りを実践した。

だから、本来は満足していい。

でも、その後に自覚前春麗が黒ドレスでかなり派手な勝者煽りを成功させた。

見ていたでしょう?
それでも、届かなかったのね。

しかも、黒ドレス準備段階から戦術化し、リュウに「かなりきつかった」と褒め殺される。

これは明らかにおいしい。

本編春麗が、

煽り回を開いたのは私なのに、黒ドレス煽りの見せ場を自覚前春麗に取られた気がするわ。

と思ってしまうのは、かなり自然です。

ここが良いです。

本編春麗は成熟している。
でも、完全に達観しているわけではない。

自分が主人公なのに、分岐春麗が強いイベントを起こすと少し焦る。
この小さな不満が、非常に本編春麗らしいです。

自覚前春麗の主人公性が再び浮き彫りになった

今回の自覚前春麗は、本人の意思とは関係なく、また強い存在感を出しています。

彼女は、

取っていないわ。資料として実践しただけよ。

といつものように否認します。

でも、実績が強すぎる。

甘い散歩。
黒を知ろうとしている青。
黒ドレス準備段階戦術。
黒ドレス勝利煽り。
リュウの褒め殺しによる精神ノックアウト。

これは、もう普通に主人公級のイベント密度です。

だから本編春麗の、

やはり主人公性が強いわ。

が効きます。

自覚前春麗は「私は主人公ではない」と否認する。

でも、本編春麗の返しが、

望んでいないのに発生するのが主人公性よ。

これはかなり今シリーズの定番に育っています。

自覚前春麗は、自分から望んでいない。
けれど事件が起こる。
甘いイベントも、黒ドレス戦術も、煽り回も発生する。
だから主人公性がある。

この構造が、今回また整理されました。

「勝者煽り部門代表」という整理がかなり便利

今回の会議で良かったのは、煽りを取り合いにせず、部門制にしたことです。

これにより、本編春麗の不満がかなり綺麗に整理されました。

青煽り代表:本編春麗

これは納得です。

本編春麗の甘さ控えめ勝者煽りは、青い武道服の本線に合っています。

次にどう届くか、考えてきたのでしょう?
でも、今日はまだ少し足りなかったわね。
だから、もう少しだけ待ってあげる。

これは強すぎない。

黒に沈めない。

リュウを突き放さず、次を生む。

今の本編春麗の成熟に合った煽りです。

だから、青煽り代表は本編春麗で揺るがない。

ここで本編春麗の場所が確保されます。

黒煽り代表:黒ドレス特化救済春麗

黒ドレス特化救済春麗は、境界管理ができます。

黒を見せる。
でも見せすぎない。
見られることを許す。
でも奪わせない。

だから、黒煽り代表として非常に安定しています。

自覚前春麗の黒煽りは派手ですが、まだ精神HP被弾リスクが大きい。

なので、

代表:黒ドレス特化救済春麗
実戦派:自覚前春麗

という整理がとても良いです。

否認煽り代表:自覚前春麗

これはもう満場一致です。

別にあなたに勝って嬉しいわけじゃないわ。
ただ、資料として、今日は私の方が上だっただけ。

この煽りは、自覚前春麗にしか出せない味です。

本人は否認している。
でも嬉しい。
煽っている。
でも「資料として」と逃げる。

これは完全に自覚前春麗の担当領域です。

危険煽り代表:黒執着春麗

黒執着春麗は、危険煽り代表。

ただし常設不可。

これは前回までの整理と一貫しています。

黒執着春麗の煽りは、勝者の余裕ではなく終われなさを強化する。

もっと悔しそうにしてくれないと、次が欲しくなるじゃない。

これは強いけれど、危ない。

だから警告用資料として棚に置く。

今回もその扱いが守られていて良いです。

本編春麗の不満が「奪われた」から「分担」に変わった

今回の一番重要な変化はここです。

最初、本編春麗は、

見せ場を取られた気がする。

と思っていました。

でも会議で整理した結果、

取られたわけではない。
自分には青煽り代表としての場所がある。
自覚前春麗には否認煽りと黒煽り実戦派の場所がある。
黒ドレス特化救済春麗には黒煽り代表の場所がある。

という形になります。

つまり、競合ではなく分担になった。

これはかなり良いです。

春麗会議は、春麗同士が主役を奪い合う場ではなく、各春麗の特性を分類して意味づける場になっています。

今回の本編春麗は、そのことを改めて理解した。

「本編が中心にあるから、分岐が映える」が良い

グランドフィナーレ済み春麗の、

本編が中心にあるから、分岐が映えるのよ。

これは今回の非常に重要な台詞です。

本編春麗は、自覚前春麗のイベント密度に少し焦っていた。

でも、そもそも本編春麗が中心にいるからこそ、自覚前春麗や黒ドレス特化春麗や黒執着春麗の差分が意味を持つ。

本編があるから分岐が比較できる。
本編春麗が主人公だから、春麗会議が成立する。
本編春麗が自分をめんどくさい女と自覚しているから、自覚前春麗の否認が面白くなる。

ここがかなり大事です。

今回、本編春麗は自分の場所を奪われたのではなく、自分が中心だからこそ他の春麗が輝いていると確認できた。

これは良い主人公再確認回です。

自覚前春麗が「二部門」に入っているのが面白い

自覚前春麗が、

私、二つ入っていない?

と気づくのも良いです。

黒煽り実戦派。
否認煽り代表。

これはかなりおいしい。

本人は望んでいないのに、部門代表級になっている。

しかも正式代表ではないところがまた良いです。

黒煽りでは「実戦派」。

否認煽りでは「代表」。

この微妙な位置づけが、自覚前春麗の現在地に合っています。

黒については、火力は高いが安定性はまだ足りない。
否認については、もう完成度が高い。

この差分もよく整理されています。

本編春麗の朝の締めが良い

最後に本編春麗が目覚めて、

取られたわけではないのね。

と呟くのが良いです。

ここで彼女は、自分の不満が解消されています。

自覚前春麗の黒ドレス煽りは派手だった。
でも、それは本編春麗の場所を奪ったわけではない。
むしろ、春麗会議を豊かにする分岐だった。

そして本編春麗は、自分が青煽り代表であることを受け入れる。

青煽り代表、ね。

変な肩書きです。

でも嫌ではない。

この「変だけど嫌ではない」が本編春麗らしいです。

最後の、

でも、青煽り代表としてなら、少しくらい、待ってあげてもいいわ。
……代表としてよ。

ここがとても良い締めです。

照れている。
でも勝者の余裕もある。
そしていつものように言い訳する。

春麗は今日もめんどくさい。

今回の断章IFの編集上の価値

今回の話は、単なるギャグ寄りのメタ会議ではありません。

編集上は、かなり重要です。

なぜなら、最近の連作では自覚前春麗の存在感がかなり強くなっていました。

このままだと、本編春麗が少し薄くなる危険がある。

そこで今回、本編春麗自身がその違和感を言語化しました。

見せ場を取られた気がする。

これは、メタ的にもかなり正直です。

そして、その不満を否定するのではなく、春麗会議で整理する。

結果、

本編春麗は青煽り代表として中心に戻る。
自覚前春麗は否認煽り代表として強みを持つ。
黒ドレス特化救済春麗は黒煽り代表として安定する。
黒執着春麗は危険煽り代表として棚に置かれる。

という構造ができた。

これは今後の話を作る上でも便利です。

結論

今回の断章IFは、本編春麗が自覚前春麗の黒ドレス煽り成功に少し嫉妬し、春麗会議で勝者煽り部門代表を整理することで、自分の主人公としての場所を再確認する回です。

重要なのは、本編春麗が嫉妬を完全否定しないことです。

少し不満。
少し焦る。
少し取られた気がする。

でも、会議を通じて、

取られたのではなく、分担された。
本編が中心にあるから、分岐が映える。

と理解する。

一言でまとめるなら、

本編春麗は、自覚前春麗に見せ場を奪われたのではなく、春麗会議という舞台の中で自分の担当領域を再確認した。
青煽り代表として、本編主人公の場所はちゃんと残っていた。
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