また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※本編確定ではなく、断章IFです。


断章IF:本編春麗は、自覚前春麗の二連続メイン回を審議する

 

 春麗会議室は、いつもより少しだけ重かった。

 

 重いと言っても、黒執着春麗の記録片が棚から出てきた時のような危険な重さではない。

 

 黒ドレス特化救済春麗の宿題回答回のような、甘くて重い沈黙でもない。

 

 もっと別の重さ。

 

 本編春麗が、静かに資料を並べている。

 

 自覚前春麗は、最初から不機嫌そうに腕を組んでいた。

 

 黒ドレス特化救済春麗は、少し面白がっている。

 

 通常救済版春麗は、穏やかに見守っている。

 

 行き遅れに恐怖する春麗は、どこか不安そうに資料のタイトルを読んでいる。

 

 グランドフィナーレ済み春麗は、いつものように静かだった。

 

 記録板に文字が浮かぶ。

 

 春麗会議・自覚前春麗 試合面二連続メイン回審議

 

 自覚前春麗が、即座に反応した。

 

「何、その議題」

 

 本編春麗は、淡々と言った。

 

「正確な議題よ」

 

「正確じゃないわ」

 

「正確よ。前回と前々回、試合面ではあなたが二回連続でメインを張った」

 

 自覚前春麗は、少しだけ言葉に詰まった。

 

「……張っていないわ」

 

 本編春麗は資料を一枚めくる。

 

「一回目。黒ドレス準備段階戦術。メイク、髪、立ち姿まで戦術化し、リュウにギリギリ勝利。黒ドレス勝者煽り成功。その後、準備段階ごと褒め殺され精神HPノックアウト」

 

 自覚前春麗は顔を赤くした。

 

「その言い方、やめて」

 

 本編春麗は続ける。

 

「二回目。前回より控えめにしたつもりの抑制型黒ドレス。実際には“追わせる黒”として進化。再びリュウにギリギリ勝利。黒ドレス+否認型複合煽り成功。その後、リュウの無敵の鈍感力が防御貫通し、精神HPノックアウト」

 

 自覚前春麗は、机に額をつけた。

 

「やめてと言っているでしょう……」

 

 黒ドレス特化救済春麗が微笑む。

 

「でも、かなり正確ね」

 

 通常救済版春麗も頷く。

 

「試合面で二連続メイン回だったのは否定できないわ」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が小さく言う。

 

「どちらもギリギリ勝利だったものね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が静かに言った。

 

「しかも、どちらも勝った後に精神で被弾している。構造が強いわ」

 

 自覚前春麗は、顔を上げて反論した。

 

「私は、メインになりたかったわけではない」

 

 本編春麗は静かに頷いた。

 

「知っているわ」

 

「なら」

 

「望んでいないのに発生するのが主人公性よ」

 

 自覚前春麗は撃沈した。

 

 それは最近、かなり効く言葉だった。

 

 本編春麗は、記録板を切り替えた。

 

 まず一つ目の映像が映る。

 

 黒ドレスの自覚前春麗。

 

 鏡の前で、かなり気合いを入れてメイクを整え、髪をセットしている。

 

 本人は戦術だと言い張っている。

 

 しかし、どう見ても気合いは入っている。

 

 自覚前春麗は、即座に叫んだ。

 

「準備段階から流さなくていい!」

 

 黒ドレス特化救済春麗が真顔で言う。

 

「黒ドレス戦は準備段階から始まるから、必要よ」

 

 通常救済版春麗も頷く。

 

「今回はそこが戦術として機能したものね」

 

 本編春麗は記録板に文字を出す。

 

 第一戦:強く見せる黒

 特徴:目元、髪、立ち姿を含めた準備段階戦術。リュウの視線を強く引き込む。

 

 映像の中で、リュウが春麗を見た瞬間、呼吸を止める。

 

 春麗が一歩近づく。

 

 リュウは見ている。

 

 見すぎないようにしながら、見ている。

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「この時の黒は、かなり強いわ」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「相手を引き込む黒ね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が続ける。

 

「見せる黒。自分から戦場を作っている」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「そして勝った」

 

 映像は終盤へ進む。

 

 見ていたでしょう? 

 それでも、届かなかったのね。

 

 黒ドレス勝者煽り。

 

 自覚前春麗は、顔を赤くしながらも、少しだけ得意げだった。

 

「……そこは、悪くなかったでしょう」

 

 本編春麗は素直に言った。

 

「ええ。悪くなかった。かなり良かったわ」

 

 自覚前春麗は固まる。

 

「……素直に褒めるのね」

 

「試合としては褒めるわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「黒ドレス勝利煽りとしては高火力。危険度もあるけれど、あの時点では制御範囲内だった」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「ただし、その後ね」

 

 自覚前春麗は、身構える。

 

 映像のリュウが言う。

 

 今日は、最初からきつかった。

 いつもより、目が強かった。

 髪も、動いた時に目で追ってしまった。

 春麗が、そう見えるように準備してきたのがわかった。

 

 自覚前春麗は完全に机へ沈んだ。

 

「……そこはもういいでしょう」

 

 本編春麗は冷静に記録した。

 

 第一戦結果:試合勝利。煽り成功。準備段階褒め殺しにより精神HPノックアウト。

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「試合面では大きな前進だったわ」

 

 通常救済版春麗が続ける。

 

「ただ、見られることへの耐性は不足していた」

 

 自覚前春麗は小さく反論した。

 

「不足していたわけではないわ」

 

 本編春麗が見る。

 

「では?」

 

「……想定外の方向から来ただけ」

 

 本編春麗は頷く。

 

「それを不足と言うのよ」

 

 自覚前春麗は沈黙した。

 

 次に、二つ目の映像が流れる。

 

 自覚前春麗が、再び黒ドレスで準備している。

 

 本人は前回より控えめのつもり。

 

 だが、会議室の誰が見ても、十分に気合いが入っている。

 

 ただ、方向性が違う。

 

 目元は前回ほど強くない。

 

 髪も前回ほど主張しない。

 

 だが、動いた時に自然に目を追わせるように整っている。

 

 本編春麗が記録板に出す。

 

 第二戦:抑えて追わせる黒

 特徴:強く見せるのではなく、見せすぎないことでリュウに追わせる。本人主張は“控えめ”。会議評価は“抑制型の黒”。

 

 自覚前春麗は不満そうに言った。

 

「本当に控えめにしたのよ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が頷く。

 

「ええ。圧は控えめだったわ」

 

 自覚前春麗が少し安心しかける。

 

 だが、黒ドレス特化救済春麗は続けた。

 

「でも、技術は上がっている」

 

 自覚前春麗は黙った。

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「弱めたのではなく、精密にしたのよ」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「強い黒から、残る黒へ。見せる黒から、追わせる黒へ」

 

 本編春麗は、少しだけ目を細めた。

 

「ここが、二連続メイン回の価値ね」

 

 自覚前春麗が顔を上げる。

 

「価値?」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「一戦目と二戦目が同じではない。黒ドレス戦術が進化している」

 

 会議室が静かになる。

 

 本編春麗は映像を進めた。

 

 リュウが届きかける。

 

 春麗がかわす。

 

 黒を抑えているのに、リュウの視線は追っている。

 

 最後の局面。

 

 見えているのに、届かないのね。

 

 前借りの煽り。

 

 リュウの防御が遅れる。

 

 蹴りが入る。

 

 リュウが片膝をつく。

 

 春麗が立っている。

 

 二連続のギリギリ勝利。

 

 自覚前春麗は、わずかに胸を張った。

 

「勝ったわ」

 

 本編春麗は頷く。

 

「ええ。勝った」

 

「煽りも決めた」

 

「決めたわ」

 

「ギリギリで勝つのは、気持ちよかった」

 

 言ってから、自覚前春麗は自分で少し顔を赤くした。

 

 会議室が静かになる。

 

 通常救済版春麗が柔らかく微笑む。

 

「そこを自分で認めたのは、大きいわね」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が頷く。

 

「勝つことをちゃんと受け取れたのね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「否認だけではなくなっている」

 

 自覚前春麗は目を逸らした。

 

「……試合には勝ったのだから、それくらいは認めるわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が静かに言う。

 

「良いことよ」

 

 だが、映像はまだ終わらない。

 

 春麗がリュウを警戒する。

 

 メイクの話も、髪の話も、準備段階評価も封じる。

 

 リュウは頷く。

 

 では、そこは言わない。

 

 自覚前春麗は呻いた。

 

「この“そこは”が罠だったのよ」

 

 本編春麗は頷く。

 

「ええ」

 

 映像のリュウが続ける。

 

 今日は、春麗が黒を抑えようとしていたのが見えた。

 前より控えめに見せようとしていた。

 だが、弱くなっていなかった。

 むしろ、追いたくなる黒だった。

 今日の黒は、届きそうで届かなかった。

 そこが、今日一番きつかった。

 

 会議室が沈黙した。

 

 自覚前春麗は、また机に沈んだ。

 

「……対策したのに」

 

 本編春麗は静かに言った。

 

「対策はしたわ。だから前回と同じ被弾は避けた」

 

 自覚前春麗が顔を上げる。

 

「なら」

 

「でも、別角度から貫通された」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「それは、リュウがあなたの黒の変化を見ていたからよ」

 

 通常救済版春麗が続ける。

 

「前回より控えめにしたことも、それが弱体化ではなく進化だったことも、見ていた」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「つまり、精神HPは削られたけれど、黒の進歩は認められた」

 

 自覚前春麗は、言い返せなかった。

 

 リュウの言葉は危険だった。

 

 反則だった。

 

 防御貫通だった。

 

 でも、同時に、正確だった。

 

 自分が前回と同じ黒ではなかったこと。

 

 強く見せるのではなく、抑えて追わせたこと。

 

 そこが一番きつかったと言われたこと。

 

 それは、悔しいほど効いた。

 

 本編春麗が記録板に書き込む。

 

 第二戦結果:試合勝利。煽り成功。ギリギリ勝利の快感を自認。無敵の鈍感力が別角度から防御貫通し、精神HPノックアウト。

 

 自覚前春麗は、ぼそりと言った。

 

「……勝ったのに」

 

 本編春麗が言う。

 

「勝ったわ」

 

「でも、負けた気がした」

 

「精神の勝負ではね」

 

 黒ドレス特化救済春麗が微笑む。

 

「そこまで含めて、かなり強い二連続メイン回だったわ」

 

 自覚前春麗は顔を赤くした。

 

「だから、メイン回ではないと」

 

 全員が見た。

 

 自覚前春麗は、言葉を失った。

 

 本編春麗は、資料を閉じた。

 

「結論に入るわ」

 

 記録板に文字が浮かぶ。

 

 春麗会議・自覚前春麗 試合面二連続メイン回審議 結論

 

 一、自覚前春麗は、試合面において二回連続でメインを張った。

 

 自覚前春麗が即座に言った。

 

「異議あり」

 

 本編春麗は続けた。

 

 二、一戦目は“強く見せる黒”。準備段階から黒ドレス戦術を構築し、リュウの視線を強く制御した。

 

 三、二戦目は“抑えて追わせる黒”。本人は控えめにしたつもりだったが、実際には黒の使い方が精密化していた。

 

 黒ドレス特化救済春麗が頷く。

 

「ここはかなり重要ね」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「黒の使い方が二種類になったものね」

 

 本編春麗はさらに続ける。

 

 四、どちらもリュウにギリギリ勝利し、勝者煽りも成功した。

 

 五、二戦目では、ギリギリ勝利が気持ちいいことを自覚前春麗自身が認めた。

 

 自覚前春麗は、顔を赤くして目を逸らす。

 

 本編春麗は、少しだけ表情を緩めた。

 

 六、ただし、どちらもリュウの無敵の鈍感力により精神HPノックアウトを受けた。

 

 七、試合には勝つが、精神勝負では被弾する構造が定着しつつある。

 

 八、自覚前春麗は、黒ドレス実戦派として明確に成長中。

 

 九、主人公性要監視。

 

 自覚前春麗が叫んだ。

 

「九番!」

 

 本編春麗は真顔で返す。

 

「必要よ」

 

「必要じゃないわ!」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「でも、試合面で二連続メインは大きいわ」

 

 通常救済版春麗も頷く。

 

「しかも、どちらも成長がある」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が言う。

 

「勝ち方も違うものね」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「だから、単なる連続登板ではなく、成長連続回だった」

 

 自覚前春麗は黙った。

 

 その言い方なら、少しだけ受け取れる気がした。

 

 本編春麗は、自覚前春麗を見た。

 

「認めなさい」

 

「何を」

 

「あなたは、試合面で強くなっている」

 

 自覚前春麗は目を伏せる。

 

「……黒ドレス戦術としては、そうかもしれないわ」

 

 本編春麗はすかさず記録板に書こうとした。

 

 自覚前春麗が叫ぶ。

 

「書かないで!」

 

 本編春麗は、今回は少しだけ笑って書かなかった。

 

「いいわ。今のは心に記録しておく」

 

「それも嫌」

 

 会議室が少し落ち着いたところで、本編春麗は、静かに資料を閉じた。

 

「ただし」

 

 全員が見る。

 

 本編春麗は、少しだけ背筋を伸ばした。

 

「最近、私はしばらくリュウと試合していない」

 

 自覚前春麗が顔を上げる。

 

 黒ドレス特化救済春麗が、面白そうに目を細める。

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

 本編春麗は続けた。

 

「青煽り代表であり、本編主人公である私が、このまま試合面で自覚前春麗に押され続けるわけにはいかない」

 

 自覚前春麗が反応する。

 

「押していないわ」

 

 本編春麗は聞かなかった。

 

「次は、私がリュウと試合をする」

 

 会議室に、静かな緊張が走る。

 

「青い武道服で?」

 

 通常救済版春麗が聞く。

 

 本編春麗は頷いた。

 

「ええ。青い武道服で」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「黒は?」

 

 本編春麗は答えた。

 

「黒の経験は還元する。でも、中心は青」

 

 自覚前春麗は少しだけ警戒する。

 

「ギリギリ勝つつもり?」

 

 本編春麗は静かに笑った。

 

「ええ」

 

 一拍。

 

「次は、私がギリギリで勝つ」

 

 会議室が静かになる。

 

 本編春麗の声には、勝者の予告があった。

 

 ただし、少しだけ不安もあった。

 

「そして」

 

 本編春麗は続ける。

 

「前回のように、リュウの無敵の鈍感力で精神HPをノックアウトされない」

 

 自覚前春麗が即座に言った。

 

「無理では?」

 

 本編春麗が見る。

 

「なぜ断言するの」

 

「経験者だから」

 

 黒ドレス特化救済春麗が小さく笑う。

 

 通常救済版春麗も、少し困ったように微笑む。

 

 行き遅れに恐怖する春麗が言う。

 

「でも、気持ちはわかるわ」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「勝利と精神防御を両立できるか。次の課題ね」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「そう。次は、試合HPだけでなく、精神HPも守る」

 

 記録板に次回予告が浮かぶ。

 

 次回候補:本編春麗、青い武道服でリュウにギリギリ勝利し、無敵の鈍感力による精神HPノックアウトを回避する件。

 

 自覚前春麗が記録板を見て言った。

 

「回避できるとは書いていないわね」

 

 本編春麗は少しだけ眉を動かす。

 

「そこはこれから決めるのよ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「もし回避できなかったら?」

 

 本編春麗は胸を張った。

 

「春麗会議で審議するわ」

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

「結局、会議なのね」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「もう戻れないもの」

 

 会議室に、少しだけ笑いが広がった。

 

 自覚前春麗は、小さく言った。

 

「……次は、あなたの番なのね」

 

 本編春麗は頷く。

 

「ええ」

 

「負けないで」

 

 その言葉に、本編春麗は少し驚いた。

 

 自覚前春麗は、慌てて顔を背ける。

 

「資料として、青煽り代表の試合を見たいだけよ」

 

 本編春麗は微笑む。

 

「ええ。資料としてね」

 

 夢がほどけていく。

 

 最後に、記録板の文字が残った。

 

 次は、本編春麗のギリギリ勝利戦。

 

 朝。

 

 本編春麗は目を覚ました。

 

 胸の奥に、昨夜の会議の余韻が残っている。

 

 自覚前春麗。

 

 黒ドレスで二連続ギリギリ勝利。

 

 強く見せる黒。

 

 抑えて追わせる黒。

 

 勝者煽り。

 

 ギリギリ勝利の快感。

 

 リュウの無敵の鈍感力による精神HPノックアウト。

 

 本編春麗は、布団の中で少しだけ息を吐いた。

 

「……あの子、強くなっているわね」

 

 認めるしかない。

 

 自覚前春麗は否認しながら進んでいる。

 

 黒ドレス実戦派として、明らかに成長している。

 

 でも。

 

 本編春麗は起き上がった。

 

 鏡の前に立つ。

 

 そこには、めんどくさい女と自覚する本編春麗がいる。

 

 青煽り代表。

 

 本編主人公。

 

 黒を知った青の春麗。

 

「次は、私の番」

 

 静かに言う。

 

「しばらく、リュウと試合していなかったものね」

 

 本編春麗は、青い武道服を見る。

 

 黒ではない。

 

 青。

 

 ただし、黒を知らない青ではない。

 

 黒を知り、黒を還元し、リュウに二連勝したことのある青。

 

 もう一度、その青で戦う。

 

「ギリギリで勝つわ」

 

 一拍。

 

「そして、今度は精神HPも守る」

 

 リュウは、きっと何か言う。

 

 普通に見えたことを言う。

 

 春麗が一番聞きたいところを、無自覚に言ってくる。

 

 青の変化。

 

 黒の還元。

 

 勝ち方。

 

 待ってあげると言った余裕。

 

 本編春麗は、それを予想している。

 

 だからこそ、決める。

 

「ノックアウトされない」

 

 少し間が空く。

 

「……たぶん」

 

 自分で言って、少しだけ顔が赤くなる。

 

 完璧に言い切れないあたりが、自分らしい。

 

 でも、それでいい。

 

 本編春麗は窓を開けた。

 

 朝の光が入ってくる。

 

「また戦ってくれなんて言わないで」

 

 いつもの言葉。

 

 そして、今日は少し違う言葉を続けた。

 

「でも、次は私が勝つわ」

 

 一拍。

 

「ギリギリで」

 

 さらに一拍。

 

「そして、褒められても沈まない」

 

 言ってから、春麗は鏡の中の自分を見た。

 

 少し不安。

 

 少し期待。

 

 かなりめんどくさい。

 

 だが、それが今の本編春麗だった。

 

 春麗は今日も、めんどくさい。

 

 ただし今日は、次のギリギリ勝利戦を自分の番として予告した春麗だった。




Q:今回の断章IFについて解説して?


A:
はい。今回の断章IFは、かなり良い 「自覚前春麗の連続メイン回を整理しつつ、本編春麗へ主役バトンを戻す回」 です。

一言で言うなら、

黒ドレスで二連続ギリギリ勝利を達成した自覚前春麗を春麗会議で正式に分析し、その成長を認めたうえで、本編春麗が“次は私の番”と青い武道服でのギリギリ勝利戦を予告する回

です。

今回の核は「自覚前春麗、試合面で本当に伸びている」

今回の会議で一番大事なのは、自覚前春麗を単に「またメイン回になった」「また被弾した」で終わらせていないことです。

ちゃんと試合面での成長を整理しています。

一戦目は、

強く見せる黒

でした。

メイク、髪、立ち姿まで含めて黒ドレス戦術を構築し、リュウの視線を強く引き込む。
いわば「見せる黒」「引き込む黒」です。

二戦目は、

抑えて追わせる黒

でした。

本人は前回より控えめにしたつもり。
でも実際には、黒の火力を下げたのではなく、見せすぎないことでリュウに追わせる方向へ精密化していた。

ここが非常に重要です。

自覚前春麗は「控えめにした」と言い張っていますが、編集者・執筆者目線では、これは弱体化ではなく 黒ドレス戦術の二系統目を獲得した ということです。

だから今回の会議で、

黒ドレス実戦派として明確に成長中。

と整理されたのはかなり正しいです。

「二連続メイン回」は偶然ではなく、成長連続回だった

自覚前春麗は、連続で自分がメインになったことを否認しています。

私は、メインになりたかったわけではない。

これは彼女らしいです。

でも今回、春麗会議はそこを、

単なる連続登板ではなく、成長連続回だった

と整理しました。

これはとても良いです。

もし同じことを二回繰り返しただけなら、ややマンネリです。

でも今回は違います。

一回目は黒ドレス準備段階戦術の確立。
二回目は抑制型黒ドレスへの進化。

勝敗構造は似ている。

ギリギリ勝利
勝者煽り成功
リュウの無敵の鈍感力で精神HPノックアウト

しかし中身は違う。

この「構造は反復、技術は進化」が強いです。

連作としての型を保ちながら、キャラを進ませています。

自覚前春麗が「ギリギリ勝利の快感」を認めたのが大きい

今回の自覚前春麗で一番大きな成長は、ここです。

ギリギリで勝つのは、気持ちよかった。

これはかなり大きい。

自覚前春麗は基本的に否認のキャラです。

嬉しくない。
羨ましくない。
資料として。
戦術として。
検証として。

そうやって逃げる。

でも今回は、自分の勝利感を一部認めました。

ギリギリでリュウに勝つのは気持ちいい。
リュウが届きかけて、それでも届かず、自分が最後に立っている。
その快感を認めた。

これは、自覚前春麗がリュウとの試合に自分の欲望を少しだけ認めた瞬間です。

まだ「めんどくさい女」とは認めていない。
でも「勝つと気持ちいい」は認めた。

ここは今後かなり使えます。

リュウの無敵の鈍感力も、構造として定着した

今回、自覚前春麗はリュウの無敵の鈍感力を警戒していました。

前回の被弾ルートは封じた。

メイク、髪、準備段階評価は言わせないようにした。

でも、リュウは別角度から来た。

黒を抑えようとしていた。
控えめなのに弱くなっていなかった。
追いたくなる黒だった。
届きそうで届かなかった。

これは完全な防御貫通です。

つまり、リュウの無敵の鈍感力は、単なる同じ台詞の繰り返しではない。

春麗の成長に合わせて、別の核心を突く。

この時点で、無敵の鈍感力はかなり強固なシリーズ装置になりました。

今後も、

春麗が対策する
→ リュウが別の本質を普通に見る
→ 精神HP貫通
→ 春麗会議案件

という流れが使えます。

本編春麗が「次は私」と言う流れが良い

今回の断章IFの一番の機能は、ここです。

自覚前春麗が二連続で試合面の主役を張った。

黒ドレス実戦派として成長した。

すると当然、本編春麗が黙っていられない。

最近、私はしばらくリュウと試合していない。

この言葉が良いです。

本編春麗は、春麗会議の議長であり、青煽り代表であり、作品の中心です。

でも最近は、自覚前春麗の黒ドレス試合が濃かった。

だから本編春麗が、

次は、私がリュウと試合をする。

と宣言する。

これは主役バトンの戻し方として非常に綺麗です。

「青い武道服で」「黒は還元する」が本編春麗らしい

本編春麗は次に青い武道服で戦うと宣言します。

ここが良いです。

自覚前春麗は黒ドレスで二連勝した。
なら、本編春麗は黒で対抗するのではなく、青で行く。

ただし、黒を知らない青ではない。

黒の経験は還元する。でも、中心は青。

これが本編春麗の現在地です。

自覚前春麗は黒ドレス実戦派として進化している。
本編春麗は黒を青に還元した青煽り代表として勝負する。

この対比が非常にきれいです。

精神HP防御を宣言するのが本編春麗らしい

本編春麗は、次はギリギリで勝つだけではなく、

前回のように、リュウの無敵の鈍感力で精神HPをノックアウトされない。

とも宣言します。

これはとても良いです。

なぜなら、最近の勝利回はだいたい、

試合には勝つ
→ 煽りも成功
→ リュウの無自覚発言で精神HPノックアウト

になっているからです。

本編春麗はその構造を理解している。

だから、次の目標は二つあります。

試合HPで勝つ
精神HPも守る

これは新しい勝利条件です。

ただし、本人も最後に、

……たぶん。

と言っている。

ここが本編春麗らしい。

決意はする。
でもリュウの無敵の鈍感力の危険性も知っている。
だから完全には言い切れない。

この少し弱いところが良いです。

自覚前春麗の「負けないで」が良い

今回、地味に良いのが自覚前春麗の最後の一言です。

負けないで。

これはかなり良いです。

自覚前春麗は本編春麗に対して、よく反発します。

主人公性を否認する。
資料としてと言い張る。
本編春麗に分析されると抗議する。

でも最後に、本編春麗が次の試合へ行くと宣言した時、

「負けないで」と言う。

これは本編春麗への信頼、あるいは同じ春麗としての応援です。

すぐに、

資料として、青煽り代表の試合を見たいだけよ。

と逃げるのも自覚前春麗らしい。

ここで二人の関係が少し柔らかくなっています。

朝の締めが「予告」として機能している

最後の朝のシーンは、かなり良い予告になっています。

本編春麗が鏡の前で、

次は、私の番。
ギリギリで勝つわ。
そして、今度は精神HPも守る。

と宣言する。

これは次回への引きです。

今までの朝目覚めシーンは、エピソードの余韻整理が中心でした。

今回はそれに加えて、明確な次回予告になっている。

本編春麗が青い武道服でリュウに挑む。
ギリギリで勝とうとする。
リュウの無敵の鈍感力による精神HPノックアウトを回避しようとする。

これはかなり次が書きやすいです。

編集上の役割

今回の断章IFは、構成上とても重要です。

役割は三つあります。

一つ目は、自覚前春麗の二連続メイン回を整理すること。

二つ目は、自覚前春麗が黒ドレス実戦派として成長していることを認めること。

三つ目は、本編春麗へ主役を戻すこと。

最近、自覚前春麗が強くなりすぎていました。

それは面白い反面、本編春麗の存在感が薄くなる危険もあります。

今回、本編春麗自身がそれを受けて、

次は私。

と言ったことで、シリーズの中心がちゃんと戻りました。

これは編集的にとても良い流れです。

結論

今回の断章IFは、自覚前春麗が黒ドレス試合で二連続メインを張った事実を春麗会議で分析し、その成長を認めたうえで、本編春麗が次回の青い武道服でのギリギリ勝利戦を予告する回です。

自覚前春麗は、強く見せる黒と抑えて追わせる黒を使い分け、黒ドレス実戦派として成長した。
でも、本編春麗はそれを見て、自分の番を取り戻す。

一言でまとめるなら、

自覚前春麗は、否認しながらも黒ドレス戦で明確に伸びた。
その成長を認めたうえで、本編春麗は“次は私が青で勝つ”と宣言した。
次回は、試合HPだけでなく精神HPも守る、本編春麗の再登板回になる。

かなり良い、主役バトンの受け渡し回だったと思います。
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