また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
春麗会議室は、いつもより少し明るかった。
理由は単純だった。
新機能が追加されたからである。
《過去戦闘ログ閲覧機能》
過去に確定済みの戦闘ログを、RPG形式で確認できる機能。
HP推移。
精神HP推移。
春麗側スキル。
リュウの外形行動。
リュウの実際の発言。
勝者煽り評価。
試合結果。
精神戦結果。
ただし、当日ログは見られない。
リュウの内面も見られない。
未来確定情報も見られない。
あくまで、過去になった痛みを記録として見返すための機能。
前回は、自覚前春麗の黒ドレス二連戦ログが開示された。
強く見せる黒。
抑えて追わせる黒。
黒ドレス勝者煽り。
否認型複合煽り。
そして、リュウの無敵の鈍感力による精神HPノックアウト。
自覚前春麗は大いに沈んだ。
だが、ログには意味があった。
彼女が黒ドレス実戦派として成長していることが、逃げられない形で記録されたからだ。
そして今日。
記録板には、次の候補が表示されていた。
閲覧候補ログ:本編春麗 青武道服三連勝戦
本編春麗は、腕を組んだ。
「来たわね」
自覚前春麗は、少しだけ意地悪そうに言った。
「前回は私のログだったものね。今回はあなたの番でしょう?」
本編春麗は静かに頷いた。
「ええ。私は逃げないわ」
黒ドレス特化救済春麗が微笑む。
「本当に?」
「本当に」
通常救済版春麗が穏やかに言う。
「勝った試合だものね」
行き遅れに恐怖する春麗も頷く。
「三連勝だもの。誇っていいと思うわ」
グランドフィナーレ済み春麗は、静かに記録板を見つめていた。
本編春麗は、少しだけ胸を張った。
「そう。これは勝利ログよ」
自覚前春麗が小さく言う。
「精神HPログもあるわよ」
本編春麗は一瞬だけ止まった。
「……それはそれ。試合には勝ったわ」
「経験者として言うけれど、その言い方は危ないわ」
「あなたに言われると、少し説得力があるわね」
「あるでしょう」
本編春麗は、記録板に向き直った。
「開示して」
記録板が白く光る。
春麗会議室に、ログが展開された。
過去戦闘ログ
対象:本編春麗《青武道服・拳で語らせるモード》 vs リュウ
分類:青武道服三連勝戦
本編春麗 HP:100 / 100
本編春麗 精神HP:100 / 100
リュウ HP:100 / 100
特殊条件:《拳で語って》
効果:
・試合中、リュウの無自覚高火力発言を封印
・春麗の精神HP削りを軽減
・ただし、リュウの戦闘集中力が上昇
・拳による対話密度が上がる
本編春麗は頷いた。
「まず、作戦は正しかったわ」
通常救済版春麗が言う。
「試合中の言葉を封じるのは、有効だったのね」
黒ドレス特化救済春麗が目を細める。
「ただし、拳による対話密度が上がる。ここが厄介ね」
自覚前春麗が言う。
「言葉を封じたら拳が濃くなるの、リュウらしいわ」
本編春麗は少し誇らしげに言う。
「でも、試合中の精神HP削りは防いだわ」
記録板が淡々と補足する。
試合中精神HP被弾:なし
状態:《言葉被弾なし》
本編春麗は胸を張った。
「ほら」
自覚前春麗が言う。
「そこだけなら完璧ね」
「そこだけ、とは何?」
「続きを見ればわかるわ」
本編春麗は、少しだけ警戒した。
記録板が次のフェーズへ進む。
フェーズ1:開幕
春麗スキル:《試合中発言封印》
効果:
・リュウの戦闘評価発言を封印
・精神HPへの序盤ダメージを防止
リュウ攻撃:《無言の踏み込み》
春麗 HP:100 → 92
春麗攻撃:《青の返し蹴り》
リュウ HP:100 → 89
戦況:互角
通常救済版春麗が微笑む。
「綺麗な入りね」
行き遅れに恐怖する春麗が言う。
「言葉がない分、純粋に試合をしている感じがするわ」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「ここでは、春麗の対策が機能している」
本編春麗は頷く。
「当然よ」
自覚前春麗が小さく言う。
「今のところは」
本編春麗は聞こえないふりをした。
ログが中盤へ進む。
フェーズ2:黒の経験を青へ還元
春麗 HP:86 / 100
春麗 精神HP:100 / 100
リュウ HP:82 / 100
春麗スキル:《黒を見せずに青で抜く》
効果:
・黒の静止を見せる気配だけ出す
・実際には止まらず、青の速度で外す
・相手の受けを空振りさせる
春麗攻撃:《青黒還元蹴り》
リュウ HP:82 → 67
リュウ攻撃:《深い拳》
春麗 HP:86 → 70
黒ドレス特化救済春麗が頷いた。
「ここはかなり良いわね」
本編春麗が見る。
「黒ドレス特化救済春麗から見ても?」
「ええ。黒を表に出していない。でも、黒を知っていることは消えていない」
通常救済版春麗が言う。
「黒を選んだのではなく、青へ戻したのね」
自覚前春麗が、少し悔しそうに言う。
「私の黒ドレスとは違うわ」
本編春麗は微笑んだ。
「ええ。私は青だから」
記録板が補足する。
会議評価:
黒を使用しているのではなく、黒の経験を青の間合い・呼吸・誘導に還元している。
分類:《黒を知った青》から《青の中に沈む黒》へ進行。
本編春麗は、その表記を見て少し息を止めた。
「青の中に沈む黒……」
グランドフィナーレ済み春麗が静かに言う。
「かなり重要な進化ね」
黒ドレス特化救済春麗が頷く。
「黒を捨てていない。でも、黒に支配されてもいない」
通常救済版春麗が言う。
「本編春麗の青ね」
本編春麗は、少しだけ照れたように目を逸らした。
「……悪くないログね」
自覚前春麗がすかさず言う。
「嬉しいの?」
「資料として、評価に値すると思っただけよ」
自覚前春麗が目を細める。
「それ、私の言い方では?」
本編春麗は黙った。
ログはさらに進む。
フェーズ3:中盤・拳だけの対話密度上昇
春麗 HP:70 / 100
リュウ HP:67 / 100
リュウスキル:《沈黙の連携圧》
効果:
・言葉による隙が消える
・春麗の黒還元に対する反応速度上昇
・拳での対話密度上昇
リュウ攻撃:《拳で語る連撃》
春麗 HP:70 → 51
春麗スキル:《青の中に沈む黒》
効果:
・黒を表に出さず、呼吸と間合いに変換
・リュウの受けタイミングをずらす
春麗攻撃:《呼吸ずらしの蹴り》
リュウ HP:67 → 48
本編春麗は眉を寄せた。
「拳で語らせたら、本当に拳で語ってきたのよね」
自覚前春麗が頷く。
「そのログ、少し面白いわ」
本編春麗が見る。
「面白い?」
「リュウの発言を封じたら安全になると思ったのに、リュウの戦闘密度が上がっているもの」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「つまり、言葉を封じると無敵の鈍感力は抑えられる。でも、その分、武人としてのリュウが濃くなる」
通常救済版春麗が穏やかにまとめる。
「安全になるのではなく、危険の種類が変わるのね」
本編春麗は少しだけ悔しそうに言った。
「でも、精神HPは守れていたわ」
記録板がまた補足する。
精神HP:100 / 100
状態:《試合中は無敵の鈍感力を封印中》
本編春麗は、再び胸を張った。
「ほら」
自覚前春麗が言う。
「その余裕が後で壊れるのね」
「経験者の言葉が重いわね」
「重いでしょう」
そして、最終局面のログが展開された。
フェーズ4:最終局面・青の決着
春麗 HP:31 / 100
春麗 精神HP:100 / 100
リュウ HP:29 / 100
春麗スキル:《黒の静止を見せる青》
効果:
・黒を見せるように構える
・リュウに受けを早く出させる
・実際には青の軸落としへ移行
リュウ攻撃:《届きかける拳》
春麗 HP:31 → 18
春麗スキル:《見せない黒・呼吸停止》
効果:
・リュウの吸うタイミングに合わせて一瞬止まる
・受けを早く出させる
リュウ状態:《受け先出し》
防御タイミング:失敗
春麗攻撃:《青武道服・肩口決着蹴り》
リュウ HP:29 → 0
反動:
春麗 HP:18 → 6
勝者:本編春麗
勝利形式:青武道服によるギリギリ勝利
連勝数:三連勝
会議室が、少しだけ静かになった。
本編春麗は、画面の中の自分を見つめる。
HP6。
ギリギリだった。
本当に紙一重だった。
それでも、立っていたのは自分だった。
青い武道服で。
黒を知った青で。
三度目の勝利。
行き遅れに恐怖する春麗が、少し嬉しそうに言う。
「これは、勝っているわね」
通常救済版春麗も頷く。
「完全にギリギリ勝利」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「リュウもかなり届きかけている。でも、最後の呼吸で外された」
自覚前春麗が、少しだけ悔しそうに言った。
「青煽り代表らしい勝ち方ね」
本編春麗は微笑む。
「ありがとう」
自覚前春麗は顔を赤くする。
「褒めていないわ。資料として言っただけ」
本編春麗は、かなり満足していた。
ここまでは。
記録板が次の項目を表示する。
勝者煽りログ
春麗発言:
「拳で語ると言ったわね、リュウ」
「悪くなかったわ」
「でも、今日は私の青に届かなかった」
「これで三連勝ね」
「次にどう届くか、考えてくるのでしょう?」
「なら、もう少しだけ待ってあげる」
勝者煽り評価:99点
分類:青煽り代表・三連勝記念版
特徴:
・勝者の余裕
・青の自負
・次回生成
・甘さ控えめ
本編春麗は、明らかに嬉しそうだった。
「九十九点」
自覚前春麗が言う。
「嬉しそうね」
「嬉しいわ」
自覚前春麗が固まる。
「認めるのね」
本編春麗は胸を張った。
「これは認めていい勝者煽りよ」
黒ドレス特化救済春麗が微笑む。
「本編春麗らしいわ」
通常救済版春麗が言う。
「待ってあげる、で次を残しているのが良いわね」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「勝って終わらせず、次へ開いている。まさに本編春麗の青煽りね」
本編春麗は、本当に満足していた。
青で勝った。
三連勝した。
煽りも九十九点。
春麗会議室のログにも、正式に記録された。
これは大勝利だった。
ここまでは。
記録板が、次の項目へ切り替わった。
精神HP戦:試合後の無敵の鈍感力
本編春麗の表情が、明らかに変わった。
自覚前春麗は、経験者の顔で頷いた。
「来たわね」
本編春麗は静かに言う。
「ええ。来たわ」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「ここからが本題かしら」
「本題ではないわ」
「でも、精神HPログは重要よ」
「重要だけれど、本題ではないわ」
記録板は、容赦なく進む。
状態変化:
試合終了
《リュウ関連イベントへの感情反応倍率上昇》が戦闘処理外へ移行
効果:
・リュウ発言による精神ダメージ増加
・防御貫通付与
・勝者状態への特効付与
自覚前春麗が思わず言った。
「勝者状態への特効」
本編春麗は顔を覆った。
「そこをログ化しないでほしいわ」
通常救済版春麗が言う。
「でも、とても正確ね」
行き遅れに恐怖する春麗が心配そうに言う。
「勝った後だから、余計に効いたのね」
グランドフィナーレ済み春麗が静かに言う。
「試合中は拳で処理できた。でも、試合後は感情に戻った」
記録板が最初の被弾を表示する。
リュウ発言:
「今日の春麗は、試合中に俺の言葉を止めた」
「だから、拳だけで見た」
春麗 精神HP:125相当 → 92
状態:《拳だけで見た 被弾》
本編春麗は小さく呻いた。
「ここからもう危なかったわ」
自覚前春麗が頷く。
「わかるわ」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「拳だけで見た、はかなり強いわね」
通常救済版春麗が言う。
「言葉を止めた春麗の作戦ごと、見られているものね」
本編春麗は沈黙した。
記録板は続く。
リュウ発言:
「言葉で考える前に、春麗の青を見た」
「黒を使った青ではなく、黒を言葉にしなくても残っている青だった」
春麗 精神HP:92 → 55
状態:《青の本質被弾》
本編春麗は、机に額をつけた。
「……本質被弾」
自覚前春麗が小声で言う。
「それは沈むわ」
黒ドレス特化救済春麗が頷く。
「青の中に黒が沈んでいることを、言葉にされているわね」
通常救済版春麗が言う。
「しかも、黒を使ったからではなく、青として成立していたと言われている」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「本編春麗にとっては、最大級の評価ね」
本編春麗は机に沈んだまま言った。
「わかっているわ……」
記録板は止まらない。
リュウ発言:
「今日は、青の中に黒を探さなくてもよかった」
「今日の春麗は、青だった」
春麗 精神HP:55 → 24
状態:《今日の春麗は青だった 被弾》
行き遅れに恐怖する春麗が胸に手を当てた。
「これは……かなり甘いわ」
自覚前春麗が言う。
「甘いというか、直撃ね」
本編春麗は顔を上げた。
「今日の春麗は青だった、は反則よ」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「でも、リュウに悪意はないわ」
「悪意がないから困るのよ」
自覚前春麗が深く頷いた。
「本当にそれ」
本編春麗と自覚前春麗が、一瞬だけ同じ顔をした。
記録板は最大打点へ進む。
リュウ発言:
「黒を使ったから強かったのではなく」
「黒を知っていても、青で勝ったから強かった」
春麗 精神HP:24 → 3
状態:《黒を知っていても青で勝った 被弾》
本編春麗は、完全に黙った。
通常救済版春麗が静かに言う。
「これは、リュウが本編春麗の現在地を見ているわね」
グランドフィナーレ済み春麗が頷く。
「黒を経て、それでも青で勝つ。今の本編春麗の核心ね」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「黒に支えられているけれど、黒に勝たせてもらったわけではない。そう言われている」
自覚前春麗が、本編春麗を見る。
「……これは、精神HP3になるのもわかるわ」
本編春麗は、かすかに頷いた。
「ええ」
そして最後のログが表示された。
リュウ発言:
「だから、今日は負けて悔しい」
「次は、今日の青に届きたい」
春麗 精神HP:3 → 0
状態:《精神HPノックアウト》
追加余韻ダメージ:
春麗 精神HP:0 → -25相当
状態:《今日の青に届きたい オーバーキル》
会議室に、沈黙が落ちた。
本編春麗は、机に額をつけた。
完全に沈んだ。
自覚前春麗が、そっと言う。
「……これは、沈むわね」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「九十九点級の無自覚発言ね」
通常救済版春麗が言う。
「今日の青に届きたい、が強すぎるわ」
行き遅れに恐怖する春麗が言う。
「次がある言葉なのに、逃げ場がないわね」
グランドフィナーレ済み春麗がまとめる。
「本編春麗の勝利を認めたうえで、その現在形に届きたいと言っている。これは次回生成としても最大級ね」
本編春麗は、顔を上げずに言った。
「……勝ったのは私よ」
自覚前春麗が言う。
「ええ。勝ったわ」
「三連勝よ」
「ええ」
「煽りも九十九点」
「ええ」
「でも、精神HPは持っていかれた」
「ええ」
本編春麗は、深く息を吐いた。
「このログ、性格が悪いわね」
自覚前春麗は、前回と同じように言った。
「記録板は、優しくないのよ」
本編春麗は、少しだけ笑った。
「あなた、経験者の顔をしているわ」
「経験者だもの」
記録板が総合リザルトを表示する。
最終リザルト
本編春麗《青武道服・三連勝》
HP:6 / 100
精神HP:0 / 100
試合結果:勝利
連勝数:三連勝
勝者煽り:成功
勝者煽り評価:99点
精神戦結果:リュウの無自覚勝利
総合判定:
試合HPでは本編春麗の勝利。
精神HPでは、リュウの無敵の鈍感力により本編春麗が敗北感あり。
本編春麗は、記録板を見た。
「敗北感あり、なのね」
通常救済版春麗が言う。
「敗北ではなく、敗北感あり」
黒ドレス特化救済春麗が頷く。
「そこは大事ね。試合には勝っている」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「勝利が消えるわけではない。精神HPが持っていかれたことも、勝利の意味の一部になる」
本編春麗は、少しだけ黙った。
そして、静かに頷いた。
「そうね」
自覚前春麗が、少し意外そうに見る。
本編春麗は続ける。
「私は勝った。青で勝った。三連勝した。煽りも決まった」
一拍。
「でも、リュウの言葉で沈んだ。それも事実」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「両方ログに残ったわね」
「ええ」
本編春麗は、少しだけ笑った。
「なら、次はそこまで含めて対策するわ」
自覚前春麗がすぐに言った。
「試合後即撤退?」
本編春麗は一瞬だけ黙る。
「……候補には入るわ」
通常救済版春麗が笑う。
「本当に検討しているのね」
「戦術的撤退よ」
自覚前春麗が言う。
「便利ね、戦術」
「あなたに言われたくないわ」
会議室に、柔らかい笑いが広がった。
本編春麗は、記録板へ向き直った。
「結論を出すわ」
記録板に、最終議題が表示される。
春麗会議・本編春麗 青武道服三連勝ログレビュー 結論
一、本編春麗は、試合中にリュウの発言を封じることで、無敵の鈍感力による戦闘中精神HP削りを防いだ。
二、その副作用として、リュウの拳による対話密度が上昇した。
三、本編春麗は、黒ドレスの経験を青に還元し、《青の中に沈む黒》として戦闘に組み込んだ。
四、最終局面で《青武道服・肩口決着蹴り》を決め、HP6でギリギリ勝利。三連勝達成。
五、勝者煽り《青煽り代表・三連勝記念版》は九十九点。
六、試合後、《リュウ関連イベントへの感情反応倍率上昇》が戦闘処理外で発動。
七、リュウの“今日の春麗は青だった”“黒を知っていても青で勝ったから強かった”“次は今日の青に届きたい”が防御貫通。
八、本編春麗は、試合HPでは勝利。精神HPではノックアウト。
九、総合評価:本編春麗の青は完成度を上げたが、試合後リュウ発言への対策は未完成。
本編春麗は、九番を見てゆっくり頷いた。
「未完成、ね」
グランドフィナーレ済み春麗が言う。
「未完成だから次がある」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「完成していたら、リュウが届く余地もなくなるものね」
通常救済版春麗が言う。
「三連勝した春麗が、それでも次を残しているのが良いのよ」
自覚前春麗が少しだけ言う。
「……資料としては、かなり良いログだったわ」
本編春麗は、自覚前春麗を見る。
「ありがとう」
自覚前春麗は顔を赤くした。
「だから、褒めていないわ」
「知っているわ。資料としてでしょう?」
「そうよ」
二人は、少しだけ笑った。
記録板に次回候補が浮かぶ。
次回候補:本編春麗、過去戦闘ログを参照し、試合後リュウ発言への対策を検討する件。
本編春麗は、腕を組む。
「やはり、試合後が課題ね」
自覚前春麗が言う。
「発言前に逃げる?」
「戦術的撤退」
「同じことよ」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「でも、逃げたらリュウは追うかもしれないわ」
通常救済版春麗が言う。
「追われたら、さらに危険ね」
行き遅れに恐怖する春麗が小さく言う。
「追いかけてきて、“まだ言っていない”とか言われたら……」
会議室が沈黙した。
本編春麗は顔を覆う。
「それは駄目」
自覚前春麗も言う。
「駄目ね」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「かなり危険」
グランドフィナーレ済み春麗が静かに締める。
「ログレビューの結果、試合後リュウは引き続き最大警戒対象ね」
本編春麗は頷いた。
「ええ」
一拍。
「でも、勝ったのは私よ」
記録板に、最後の文字が浮かぶ。
本日の結論:
本編春麗は青武道服で三連勝し、勝者煽り九十九点を達成。
ただし、試合後のリュウの無敵の鈍感力により精神HPはノックアウト。
春麗会議室の過去ログにより、《青の中に沈む黒》と《試合後防御貫通》が正式記録された。
本編春麗は、その文字を見つめた。
青の中に沈む黒。
試合後防御貫通。
どちらも、自分の一部になってしまったらしい。
夢がほどけていく。
最後に、自覚前春麗の声が聞こえた。
「次は、あなたも精神HP対策の資料を出すのね」
本編春麗は答えた。
「出すわ」
一拍。
「勝者として」
朝。
本編春麗は目を覚ました。
夢の中の記録板が、まだ頭に残っている。
HP:6 / 100
精神HP:0 / 100
勝者煽り評価:99点
今日の青に届きたい オーバーキル
春麗は布団の中で顔を覆った。
「……最後の表記だけは、どうにかならないの」
だが、どうにもならない。
記録板は優しくない。
勝利も、被弾も、正確に残す。
春麗は起き上がり、鏡の前に立った。
そこには、本編春麗がいる。
青い武道服で三連勝した春麗。
黒を青に沈めた春麗。
勝者煽り九十九点の春麗。
そして、試合後に精神HPを持っていかれた春麗。
「勝ったのは私」
小さく言う。
「でも、沈んだのも私」
その両方を認めるしかない。
記録は、逃がしてくれない。
だが、悪くはなかった。
自分の青が進んでいることも、ログには残った。
リュウが届きたいと言った青。
それが、自分の今の青だった。
春麗は、少しだけ顔を赤くする。
「次は、精神HPも守るわ」
言ってから、すぐに付け足す。
「……たぶん」
完璧には言い切れない。
リュウの試合後発言は危険すぎる。
逃げても危険。
聞いても危険。
先に遮っても危険。
ならどうするか。
考えるしかない。
春麗会議で。
過去ログを見ながら。
「リュウは拳に残響を残す」
春麗は呟く。
「私はログで対策する」
一拍。
「でも、当日は結局、食らうのよね」
少し笑ってしまう。
不便だ。
とても不便だ。
だが、その不便さが、次を生んでいる。
春麗は窓を開けた。
朝の光が入る。
「また戦ってくれなんて言わないで」
いつもの言葉。
そして、今日は続ける。
「でも、今日の青に届きたいなら」
一拍。
「届く前に、もう一度ログを見直しておくわ」
言ってから、春麗は顔を赤くした。
「……戦術としてよ」
春麗は今日も、めんどくさい。
ただし今日は、三連勝ログを見て、勝者として誇り、精神HPログで沈み、それでも次の対策を考え始めた春麗だった。
Q:今回の断章IFについて解説して?
A:
はい。今回の断章IFは、かなり重要な 本編春麗の三連勝ログ正式レビュー回 です。
一言で言うなら、
本編春麗が青い武道服でリュウに三連勝した勝利を、春麗会議室の新機能《過去戦闘ログ閲覧機能》で正式に確認し、勝者として誇りながらも、試合後のリュウ発言による精神HPノックアウトまで逃げられない形で記録される回
です。
前回の自覚前春麗ログレビュー回と対になる、かなり良い回でした。
今回の核は「勝利も被弾も、両方ログに残る」
今回、本編春麗はちゃんと勝っています。
青い武道服でリュウに三連勝。
しかも、試合中にリュウへ、
試合中は拳で語って。
と釘を刺し、無敵の鈍感力による試合中の精神HP削りを封じた。
これは作戦として成功しています。
さらに戦闘面でも、
黒を知った青 から一段進んで、
青の中に沈む黒 へ到達している。
そして、HP6でギリギリ勝利。
勝者煽りも九十九点。
ここまでは完全に本編春麗の大勝利です。
ただし、ログは勝利だけを記録してくれません。
試合後、リュウの言葉で精神HPがゼロになったことも、きっちり残る。
ここが今回の一番良いところです。
春麗会議室の記録板は、勝者に優しくない。
勝った事実も、沈んだ事実も、同じ精度で残す。
これが春麗会議室らしいです。
「青の中に沈む黒」が本編春麗の大きな進化
今回のログで最も重要な新しい言葉は、
《青の中に沈む黒》
です。
これまで本編春麗は、
黒を知った青
でした。
黒ドレスで得た経験を、青い武道服に還元している。
黒と青が別々ではなくなっている。
しかし今回のログでは、さらに進んでいます。
黒を使っているわけではない。
黒を前面に出しているわけでもない。
でも、黒の経験が青の呼吸・間合い・誘導の中に沈んでいる。
つまり、黒が表層の技ではなく、青の深さになっている。
これは本編春麗の現在地として非常に良いです。
自覚前春麗は黒ドレスで、
強く見せる黒
抑えて追わせる黒
を手に入れた。
一方、本編春麗は青い武道服で、
青の中に沈む黒
へ進んだ。
この差分がかなり明確になりました。
「拳で語って」作戦の長所と副作用が整理された
今回のログレビューで良かったのは、作戦が単純な成功/失敗ではなく、長所と副作用として整理されたことです。
本編春麗の作戦は、
試合中、リュウにしゃべらせない。
これにより、
試合中の精神HP被弾はゼロ。
これは大成功です。
でもその代わり、
リュウの拳による対話密度が上昇。
つまり、言葉を封じたら安全になるのではなく、危険の種類が変わった。
リュウは黙ると、ちゃんと拳で返してくる。
これが非常にリュウらしい。
春麗側の対策が万能ではなく、リュウ側の強さを別の形で引き出してしまうのが良いです。
勝者煽り99点は、本編春麗の正式な勲章
今回、本編春麗の勝者煽りはかなり完成度が高いです。
拳で語ると言ったわね、リュウ。
悪くなかったわ。
でも、今日は私の青に届かなかった。
これで三連勝ね。
次にどう届くか、考えてくるのでしょう?
なら、もう少しだけ待ってあげる。
これは本編春麗らしい、かなり良い青煽りです。
強く煽りすぎない。
黒ドレスのように沈めない。
自覚前春麗のように否認で逃げない。
でも、三連勝の事実をしっかり突きつける。
そして「待ってあげる」で次を残す。
春麗会議での評価が、
勝者煽り評価:99点
分類:青煽り代表・三連勝記念版
になったのは妥当です。
ここで本編春麗が素直に「嬉しいわ」と認めたのも良いです。
自覚前春麗なら「資料として」と逃げるところですが、本編春麗は自覚済みなので受け取れる。
これも差分です。
精神HPログが本編春麗を逃がさない
今回の後半のメインは、やはり精神HPログです。
本編春麗は試合後に警戒していました。
でも、試合後は《リュウ関連イベントへの感情反応倍率上昇》が戦闘処理外に移行している。
つまり、言葉が戦闘評価ではなく、感情イベントとして入ってくる。
その結果、
拳だけで見た
で被弾。
黒を言葉にしなくても残っている青だった
で被弾。
今日の春麗は青だった
でさらに被弾。
黒を知っていても、青で勝ったから強かった
で精神HP3。
次は、今日の青に届きたい
でノックアウト。
これは本編春麗にとって、完全な防御貫通です。
しかも、勝者状態への特効が付いている。
勝った直後だからこそ効く。
三連勝して、自分の青を誇っていた直後に、
その青に届きたい
と言われる。
これは沈むしかないです。
自覚前春麗が「経験者」として機能している
今回、自覚前春麗の立ち位置がとても良いです。
前回、自覚前春麗は自分の黒ドレスログを開示されて沈みました。
だから今回は、経験者の顔で本編春麗を見る。
来たわね。
これは沈むわ。
記録板は優しくないのよ。
この立ち位置が面白いです。
これまで自覚前春麗は、会議で分析される側・否認する側でした。
でも今回は、本編春麗の被弾ログを見る側に回っている。
しかも、自分も同じように精神HPログで晒された経験があるから、少し同情できる。
本編春麗と自覚前春麗が、リュウの無敵の鈍感力被害者として並ぶ瞬間が良いです。
「敗北」ではなく「敗北感あり」が絶妙
今回の総合判定で重要なのは、
精神戦結果:リュウの無自覚勝利
総合判定:試合HPでは本編春麗の勝利。精神HPでは、リュウの無敵の鈍感力により本編春麗が敗北感あり。
ここです。
単に「精神戦敗北」と言い切らない。
敗北感あり。
これが絶妙です。
本編春麗は実際に負けたわけではありません。
試合には勝っている。
煽りも成功している。
三連勝も事実。
ただ、リュウの言葉で精神HPを持っていかれたので、勝ったのに負けた気がする。
このシリーズの味は、まさにここです。
勝敗と感情のズレ。
ログ化によって、そのズレが非常に明確になりました。
春麗会議室の新機能が本格運用に入った回
前回は、自覚前春麗ログで機能のお披露目でした。
今回は、本編春麗の直近重要ログをレビューしたことで、機能が本格運用に入った感じがあります。
これで今後、春麗会議室は以下を自然にできるようになりました。
戦闘ログを見る。
精神HPログを見る。
勝者煽りを採点する。
スキル名を確認する。
過去の失敗から次の対策を考える。
つまり、春麗会議室は完全に、
幕間兼レビュー会議兼戦闘分析室
になりました。
これは連作の型としてかなり強いです。
今後への引きも良い
今回の次回候補は、
本編春麗、過去戦闘ログを参照し、試合後リュウ発言への対策を検討する件。
これがかなり面白いです。
本編春麗の課題は、もう試合中ではありません。
試合中の言葉は封じられる。
青で勝つ力もある。
勝者煽りも高得点。
問題は、試合後。
リュウが負けた後、素直に春麗を見て言う言葉。
これが危険すぎる。
だから次の対策は、
勝利後即撤退
発言前に遮断
自分から先に褒めて封じる
聞いても沈まない訓練
春麗会議で精神HP防御スキルを作る
などに広がります。
かなり次が作りやすいです。
朝の締めが良い
朝の本編春麗が、
勝ったのは私。
でも、沈んだのも私。
と認めるのが良いです。
これは本編春麗らしい成熟です。
勝利だけを誇るのではない。
精神HP被弾だけで落ち込むのでもない。
両方を受け取る。
そして、
リュウは拳に残響を残す。
私はログで対策する。
と、リュウとの非対称構造を自覚する。
この締めによって、春麗側の戦い方がかなり明確になりました。
結論
今回の断章IFは、本編春麗が青い武道服でリュウに三連勝した直近バトルログを春麗会議室でレビューし、戦闘面の完成度と精神HP面の脆さを同時に突きつけられる回です。
重要なのは、勝利が消えないことです。
本編春麗は勝っています。
青で勝った。
三連勝した。
勝者煽りは九十九点。
《青の中に沈む黒》も正式記録された。
ただし、試合後のリュウの言葉には沈んだ。
その両方がログに残った。
一言でまとめるなら、
本編春麗は、三連勝ログによって自分の青の完成度を確認した。
しかし同時に、試合後リュウ発言への精神HP防御が未完成であることも突きつけられた。
勝利も被弾も、どちらも本編春麗の現在地として正式記録された。
かなり良い、本編春麗の勝者レビュー兼次回対策への橋渡し回だったと思います。