また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※これは本編時空とは無関係の妄想章IFです。


妄想章IF:自覚前春麗は、自分の黒の残響を使われたことに抗議する

 

 春麗会議室に入った瞬間、自覚前春麗は腕を組んでいた。

 

 すでに怒っている。

 

 本編春麗は、その様子を見て小さく息を吐いた。

 

 黒ドレス特化救済春麗は、どこか面白そうに目を細めている。

 

 通常救済版春麗は、穏やかに座っている。

 

 行き遅れに恐怖する春麗は、少し不安そうに全員を見ていた。

 

 グランドフィナーレ済み春麗は、静かに記録板を見上げていた。

 

 記録板には、すでに議題が表示されている。

 

 春麗会議・自覚前春麗の黒の残響流用疑惑について

 

 自覚前春麗は、机を叩いた。

 

「疑惑ではないわ。ほぼ確定よ」

 

 本編春麗が見る。

 

「まだ確定ではないわ。ログ上は推定よ」

 

「推定でも十分よ!」

 

 黒ドレス特化救済春麗が微笑む。

 

「かなり怒っているわね」

 

「怒るに決まっているでしょう」

 

 自覚前春麗は、記録板を指さした。

 

「私の黒ドレス戦で生まれた、強く見せる黒と、抑えて追わせる黒。それがリュウの拳に残響として残って、本編春麗攻略に使われた可能性がある。そういう話でしょう?」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「そうね」

 

「つまり、私の黒を勝手に本編春麗攻略に使われたということよ」

 

「勝手に、という言い方は少し違うわ」

 

「違わないわ!」

 

 自覚前春麗は、本編春麗を見た。

 

「あなた、私の黒を使って勝たれたのよ?」

 

 本編春麗は少し眉を寄せる。

 

「私は負けた側だけれど」

 

「だから問題なのよ!」

 

 通常救済版春麗が、やわらかく言う。

 

「自覚前春麗としては、自分の黒が本編春麗の敗北に関わったように感じるのね」

 

「そこまで言うと、私が悪いみたいでしょう」

 

「違うの?」

 

「違うわ!」

 

 黒ドレス特化救済春麗が、楽しそうに言った。

 

「でも、あなたの黒が有効だったから、リュウの拳に残ったのよね」

 

 自覚前春麗は一瞬止まった。

 

「……そこは今、議題ではないわ」

 

 本編春麗が言う。

 

「かなり議題だと思うけれど」

 

「違うわ。私は抗議に来たの」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が静かに言った。

 

「では、まず抗議内容を整理しましょう」

 

 記録板が切り替わった。

 

 抗議内容:自覚前春麗側主張

 

 一、強く見せる黒は、自覚前春麗の黒ドレス戦術である。

 

 二、抑えて追わせる黒も、自覚前春麗の黒ドレス戦術である。

 

 三、それらがリュウの拳に残響として残り、本編春麗攻略へ流用された可能性がある。

 

 四、自覚前春麗は、許可なく自分の黒を本編春麗攻略に利用されたと感じている。

 

 五、よって抗議する。

 

 自覚前春麗は大きく頷いた。

 

「完璧ね」

 

 本編春麗は記録板を見ながら言う。

 

「四番がかなり主観的ね」

 

「抗議とは主観から始まるものよ」

 

「便利な理屈ね」

 

 通常救済版春麗が少し笑う。

 

 黒ドレス特化救済春麗は、指先で机を軽く叩きながら言った。

 

「でも、リュウはあなたの黒を盗んだわけではないわ」

 

 自覚前春麗は眉を寄せる。

 

「では何?」

 

「残ったのよ」

 

「同じでは?」

 

「違うわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗は、静かに続けた。

 

「リュウは、あなたの黒を完全に記憶して使ったわけではない。あなたの黒に遅れた感覚、追わされた半歩、届かなかった距離が、拳の残響として残っただけ」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「それは、あなたの黒を奪ったというより、あなたの黒がリュウに届いたということだと思うわ」

 

 自覚前春麗は言葉に詰まった。

 

「……届いた?」

 

 本編春麗が静かに言う。

 

「ええ。あなたの黒は、リュウの拳に残る程度には有効だった」

 

 自覚前春麗は、顔を赤くした。

 

「今、その方向に持っていかないで」

 

「でも事実よ」

 

「事実でも、言い方というものがあるでしょう」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言う。

 

「記録は優しくないものね」

 

 自覚前春麗は、嫌そうに目を閉じた。

 

「その言葉、本当に嫌いになりそう」

 

 記録板が、過去ログを呼び出した。

 

 自覚前春麗は即座に立ち上がる。

 

「待ちなさい。なぜログが出るの」

 

 本編春麗は当然のように言った。

 

「議題に必要だから」

 

「必要ないわ」

 

「必要よ」

 

「精神HPログまで出すつもりでしょう」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「今回は戦術部分が中心よ」

 

 自覚前春麗は少し安心しかけた。

 

 記録板が表示する。

 

 参照ログ一

 

 自覚前春麗《黒ドレス・強く見せる黒》

 

 事前スキル:《黒ドレス準備段階戦術》

 効果:

 ・目元、髪、立ち姿を含めて試合前から戦場を構築

 ・リュウの初動反応を低下

 ・視線制御成功率上昇

 

 戦闘分類:

《強く見せる黒》

 

 自覚前春麗は、口元を引き結んだ。

 

 本編春麗が言う。

 

「これは見事だったわ」

 

「褒めても抗議は取り下げないわ」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「でも、これがリュウの初動遅れとして拳に残った可能性があるのよね」

 

 記録板が補足を出す。

 

 リュウ側残響推定:

 ・黒を強く見せられた時の初動遅れ

 ・視線を奪われた時の迷い

 ・試合前から戦場が作られていた感覚

 

 自覚前春麗は、少しだけ黙った。

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「あなたの黒は、リュウの拳に一度遅れを刻んだ」

 

「……言い方」

 

「事実よ」

 

 本編春麗が言う。

 

「その遅れが、四戦目で“黒を追いすぎない”という形に変わった可能性がある」

 

 自覚前春麗は複雑そうな顔をした。

 

「つまり、私がリュウを一度遅らせたから、リュウが次に遅れないようになった?」

 

「そういうことね」

 

「……納得いかないわ」

 

「でも、かなり重要な成長経路よ」

 

「私にとっては複雑なの!」

 

 記録板が次のログを表示した。

 

 参照ログ二

 

 自覚前春麗《抑制型黒ドレス・抑えて追わせる黒》

 

 新規スキル:《抑制型の黒》

 効果:

 ・黒を強く押し出さず、リュウに追わせる

 ・視線誘導の初速は下がるが、持続力が上がる

 ・リュウの「もう少し見たい」という追跡反応を誘う

 

 戦闘分類:

《抑えて追わせる黒》

 

 自覚前春麗は、少し目を逸らした。

 

「それは……控えめにしただけよ」

 

 本編春麗が言う。

 

「ログ上は、控えめではなく抑制型よ」

 

「ログ上の私、余計なことばかり言うわね」

 

 黒ドレス特化救済春麗が楽しそうに言う。

 

「ログ上のあなたは正直ね」

 

「私が正直ではないみたいに言わないで」

 

 通常救済版春麗が、記録板を読む。

 

 リュウ側残響推定:

 ・抑えられた黒を追った半歩

 ・届きそうで届かなかった距離

 ・黒を探しすぎると遅れるという身体的学習

 

 会議室が少し静かになる。

 

 本編春麗は、ゆっくりと言った。

 

「四戦目のリュウは、ここを使っていた気がする」

 

 自覚前春麗が見る。

 

「どこを?」

 

「黒を探しすぎなかった。青だけを見たわけでもない。ただ、春麗を見ていた」

 

 黒ドレス特化救済春麗が頷く。

 

「あなたの抑制型黒で、リュウは追わされる経験をした。だから、四戦目では追いすぎない方向へ進んだ」

 

 自覚前春麗は、腕を組み直した。

 

「……私のせいみたいじゃない」

 

 通常救済版春麗が優しく言う。

 

「せい、ではないわ。影響よ」

 

「影響も困るわ」

 

 本編春麗が少し笑う。

 

「でも、あなたの黒は影響を残した」

 

 自覚前春麗は、また顔を赤くした。

 

「だから、その言い方はやめなさい」

 

 本編春麗は、静かに言った。

 

「それに、あなたばかりが使われているわけではないわ」

 

 自覚前春麗が眉を上げる。

 

「どういうこと?」

 

 本編春麗は記録板を操作した。

 

 次の項目が表示される。

 

 春麗側共有ログ状況

 

 一、本編春麗は、自覚前春麗の黒ドレス二連戦ログを参照済み。

 

 二、自覚前春麗は、本編春麗の青武道服三連勝ログを参照済み。

 

 三、春麗会議室は、過去確定済みログを共有可能。

 

 四、つまり春麗側も、互いの戦闘経験を会議室で分析に利用している。

 

 自覚前春麗は固まった。

 

「……」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「お互い様ね」

 

 自覚前春麗は即座に反論した。

 

「お互い様ではないわ」

 

 本編春麗が言う。

 

「どう違うの?」

 

「私たちは春麗同士でしょう」

 

「リュウも試合相手でしょう」

 

「そういう問題ではないわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が微笑む。

 

「では、どういう問題?」

 

 自覚前春麗は少し詰まった。

 

「……私の黒を、私の許可なく、リュウが身体で覚えて、本編春麗に使うのが問題なの」

 

 本編春麗は静かに言う。

 

「でも、リュウは許可を取って残響を残しているわけではないわ。残ってしまうのよ」

 

 自覚前春麗は黙る。

 

 グランドフィナーレ済み春麗が言った。

 

「それは、春麗会議室のログが残ってしまうのと似ているわね」

 

「似ていないわ」

 

「似ているわ」

 

 グランドフィナーレ済み春麗は続ける。

 

「春麗会議室に記録が残る。リュウの拳に残響が残る。どちらも、体験が消えずに次へ影響する仕組みよ」

 

 自覚前春麗は、言い返せなかった。

 

 それは、少しだけ正しかった。

 

 記録板が、四戦目の該当ログを表示する。

 

 参照ログ三

 

 本編春麗 青武道服四戦目 リュウ辛勝戦

 

 リュウパッシブ:《黒を探さない》

 効果:

 ・黒の所在を探して遅れない

 ・青を見ながら、黒の残響を拳に残したまま踏み込む

 

 リュウスキル:《届きかけた場所ではなく、勝ち筋の場所で待つ》

 効果:

 ・春麗が勝つために入る位置を読む

 ・過去の到達未遂を残響として補正

 ・最終ターンの先手判定上昇

 

 自覚前春麗は、じっと記録板を見つめた。

 

「……黒を探さない」

 

 本編春麗が言う。

 

「ええ」

 

「私の黒を探しすぎて遅れた残響があったから?」

 

「可能性は高いわ」

 

「抑えて追わせる黒を追いすぎたから?」

 

「それもあると思う」

 

 自覚前春麗は、しばらく黙った。

 

 そして、少し悔しそうに言った。

 

「やっぱり使われているじゃない」

 

 通常救済版春麗が優しく言う。

 

「影響している、の方が正確ね」

 

「正確でも嫌よ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「でも、誇ってもいいことよ」

 

 自覚前春麗は、思わず黒ドレス特化救済春麗を見る。

 

「誇る?」

 

「ええ。あなたの黒は、リュウの拳を変えた。強く見せる黒も、抑えて追わせる黒も、ただの妄想ではなかった。実戦でリュウに残る程度には効いた」

 

 自覚前春麗は目を逸らす。

 

「……実戦で効いたことは認めるわ」

 

 本編春麗が、すぐに反応する。

 

「認めるのね」

 

「試合には勝っているもの」

 

「精神HPは?」

 

「今その話はしていないわ」

 

 自覚前春麗は、少しだけ胸を張った。

 

「少なくとも、私の黒はリュウを変えた。そこは事実よ」

 

 本編春麗は、穏やかに頷いた。

 

「ええ。事実よ」

 

 自覚前春麗は、そこで少し満足しかけた。

 

 しかし、すぐに顔を引き締める。

 

「でも、抗議は取り下げないわ」

 

 通常救済版春麗が苦笑する。

 

「まだ?」

 

「まだよ。納得と抗議は別」

 

 黒ドレス特化救済春麗が笑う。

 

「便利な理屈ね」

 

「春麗会議ではよくあることでしょう」

 

 誰も否定しなかった。

 

 本編春麗は、自覚前春麗に向き直った。

 

「では、あなたの抗議への回答をまとめるわ」

 

 記録板に文字が浮かぶ。

 

 春麗会議・回答案

 

 一、自覚前春麗の黒ドレス戦術は、リュウの拳に残響を残した可能性が高い。

 

 二、その残響は、本編春麗四戦目におけるリュウの到達に影響した可能性がある。

 

 三、ただし、リュウは自覚前春麗の黒を完全記憶・流用したわけではない。

 

 四、リュウの拳に残ったのは、黒に遅れた感覚、追わされた半歩、届かなかった距離である。

 

 五、春麗側も春麗会議室で互いの過去ログを参照しているため、一方的な不公平とは言えない。

 

 六、自覚前春麗の黒は、リュウに残る程度には有効だった。

 

 七、よって、抗議は受理するが、流用禁止は不可。

 

 自覚前春麗は、六番と七番を交互に見た。

 

「六番は余計」

 

 本編春麗は言う。

 

「大事よ」

 

「七番も納得いかないわ」

 

「でも、流用禁止は無理ね」

 

「なぜ」

 

「リュウの拳に残るものを、こちらから禁止できないから」

 

 自覚前春麗は、非常に不満そうにした。

 

「では、私はどうすればいいの」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「さらに黒を更新すればいいのよ」

 

 自覚前春麗は顔を上げる。

 

「更新?」

 

「リュウに残った黒が過去のあなたの黒なら、次のあなたは別の黒を見せればいい」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「強く見せる黒、抑えて追わせる黒。その次を考える余地があるわ」

 

 本編春麗が続ける。

 

「私も、届かれた青を次の青にする必要がある。あなたも、残響として使われた黒を次の黒へ進めればいい」

 

 自覚前春麗は黙った。

 

 それは、少しだけ面白い考えだった。

 

 自分の黒が使われた。

 

 なら、次の黒にする。

 

 残響として残った黒を、古いものにする。

 

 そう考えると、抗議だけでは終わらなくなる。

 

 自覚前春麗は、ぽつりと言った。

 

「……つまり、私の黒は、リュウに残る程度には有効だったということね」

 

 会議室が静かになった。

 

 本編春麗が微笑みかける。

 

 自覚前春麗は、すぐに付け足した。

 

「資料として」

 

 黒ドレス特化救済春麗が笑った。

 

「出たわね」

 

 通常救済版春麗も微笑む。

 

「でも、ちゃんと受け取ったわね」

 

「受け取っていないわ。資料として確認しただけ」

 

 本編春麗が言う。

 

「では、資料として次の黒を検討する?」

 

 自覚前春麗は、少しだけ目を逸らした。

 

「……検討くらいなら」

 

 記録板が光る。

 

 発言記録:次の黒を検討

 

 自覚前春麗は叫んだ。

 

「記録しないで!」

 

 グランドフィナーレ済み春麗が静かに言った。

 

「記録は優しくないものね」

 

 自覚前春麗は机に沈んだ。

 

「本当に嫌いになりそう、その言葉」

 

 記録板に、本日の結論が表示された。

 

 本日の結論:

 自覚前春麗は、自分の黒の残響が本編春麗攻略に使われた可能性に抗議した。

 春麗会議は、リュウが黒を完全記憶・流用したわけではなく、拳に残った残響として本編春麗戦に影響した可能性が高いと整理した。

 春麗側も過去ログを共有しているため、一方的な不公平とは言えない。

 自覚前春麗の黒は、リュウに残る程度には有効だった。

 今後、自覚前春麗は“次の黒”を検討する可能性あり。

 

 自覚前春麗は、最後の一文を見て小さく呻いた。

 

「可能性あり、にしているところが嫌ね」

 

 本編春麗は言う。

 

「確定ではないから優しい方よ」

 

「優しくないわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「でも、次の黒は楽しみね」

 

 自覚前春麗は即座に言う。

 

「楽しみにしないで」

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

「でも、あなたも少し考えているでしょう?」

 

 自覚前春麗は黙る。

 

 その沈黙で、会議室の全員が理解した。

 

 考えている。

 

 かなり考えている。

 

 自分の黒がリュウに残るなら。

 

 その残響が本編春麗攻略に使われるなら。

 

 次は、残った黒では足りない黒を見せればいい。

 

 もちろん、そんなことを素直には言わない。

 

 自覚前春麗は、顔を赤くしたまま立ち上がった。

 

「今日の会議は不満が残るわ」

 

 本編春麗が言う。

 

「抗議は受理されたわよ」

 

「流用禁止が通っていない」

 

「通らないわ」

 

「不満よ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「でも、資料としては有益だった?」

 

 自覚前春麗は、少しだけ間を置いた。

 

「……資料としては、ね」

 

 会議室に笑いが広がった。

 

 夢がほどけていく。

 

 最後に、自覚前春麗は小さく呟いた。

 

「次の黒なんて、考えていないわ」

 

 誰も答えない。

 

 ただ、記録板だけが光った。

 

 発言信頼度:低

 

「それも記録しないで!」

 

 

 

 朝。

 

 自覚前春麗は目を覚ました。

 

 目覚めた瞬間、昨夜の会議の記録板が頭に浮かんだ。

 

 強く見せる黒。

 

 抑えて追わせる黒。

 

 リュウに残る程度には有効。

 

 次の黒を検討。

 

 発言信頼度:低。

 

 春麗は布団を握った。

 

「……最後の機能、絶対に不要だわ」

 

 それでも、胸の奥に残っているものがあった。

 

 不満。

 

 抗議。

 

 納得できなさ。

 

 それから、少しだけの誇らしさ。

 

 自分の黒は、リュウに残った。

 

 残響として。

 

 本編春麗攻略に使われた可能性があるほどに。

 

 それは腹立たしい。

 

 非常に腹立たしい。

 

 けれど。

 

「有効だった、ということではあるのよね」

 

 小さく呟く。

 

 言ってから、すぐに顔が熱くなる。

 

「資料として」

 

 いつもの逃げ道を置く。

 

 春麗は起き上がり、黒ドレスの方を見た。

 

 強く見せる黒。

 

 抑えて追わせる黒。

 

 その二つは、もうリュウの拳に少し残っているのかもしれない。

 

 なら。

 

 次は。

 

 春麗は、そこまで考えて首を振った。

 

「次ではないわ」

 

 一拍。

 

「再検証よ」

 

 便利な言葉だった。

 

 自覚前春麗は、鏡の前に立つ。

 

 そこには、自分をめんどくさい女と認める前の春麗がいた。

 

 まだ認めていない。

 

 けれど、自分の黒がリュウに残ったことを、完全には嫌がっていない春麗がいた。

 

「私の黒を勝手に使わないで」

 

 そう言ってから、少しだけ続ける。

 

「使うなら、次はもっと困らせてあげるわ」

 

 言ってしまった。

 

 春麗は鏡の中の自分を見て固まった。

 

「……今のは、戦術的発言よ」

 

 誰もいない朝に、言い訳だけが残る。

 

 春麗は今日も、まだ認めていない。

 

 ただし今日は、自分の黒の残響がリュウに残ったことに抗議しながら、次の黒を少しだけ考え始めてしまった春麗だった。




Q:今回の妄想章IFについて解説して?

A:
はい。今回の妄想章IFは、かなり良い 自覚前春麗の成長整理回 です。

一言で言うなら、

自覚前春麗が「自分の黒の残響をリュウが本編春麗攻略に使った」と抗議しながら、最終的には“自分の黒はリュウに残る程度には有効だった”ことを、否認しつつ受け取ってしまう回

です。

今回の良さは、抗議回でありながら、実質的には自覚前春麗の黒ドレス戦術の価値確認回になっているところです。

今回の核は「抗議しているのに、成長を認めさせられる」構造

自覚前春麗の主張はかなり明確です。

私の黒を勝手に本編春麗攻略に使わないで。

これは非常に彼女らしいです。

自分の黒ドレス戦で生まれた、

強く見せる黒
抑えて追わせる黒

がリュウの拳に残響として残った。

その残響が、本編春麗四戦目でリュウが勝つ要因になったかもしれない。

自覚前春麗からすると、自分の戦術が勝手に別の春麗攻略へ流用されたように感じる。

だから抗議する。

しかし会議が進むと、その抗議はだんだん、

あなたの黒はリュウに残るほど有効だったのよね

という方向へ変換されてしまう。

ここが非常においしいです。

自覚前春麗は怒っていたはずなのに、最後には自分の黒の有効性を認めざるを得なくなる。

しかも、いつものように、

資料として。

で逃げる。

これは自覚前春麗らしい、かなり綺麗な落としどころです。

「流用」ではなく「残響」と整理したのが良い

今回、春麗会議側はかなり重要な整理をしています。

リュウは自覚前春麗の黒を完全記憶して、意図的にコピーしたわけではない。

そうではなく、

黒を強く見せられた時の初動遅れ
視線を奪われた迷い
抑えて追わせる黒を追った半歩
届きそうで届かなかった距離
黒を探しすぎると遅れるという身体的学習

が拳に残った。

だから「流用」ではなく「残響」です。

これはかなり大事です。

もしリュウが自覚前春麗の黒を技術としてコピーしたなら、自覚前春麗の抗議はかなり正当になります。

でも残響なら、話が違う。

リュウは勝手に盗んだのではない。
春麗と戦った結果、身体に残ってしまった。

これは春麗会議室にログが残るのと対応しています。

つまり、

春麗側には記録が残る。
リュウ側には残響が残る。

この構造を、自覚前春麗の抗議を通して再確認した回でもあります。

自覚前春麗の黒ドレス戦が「実戦的価値」を持った

今回、自覚前春麗の黒ドレス二連戦が、改めて価値づけされました。

一戦目の、

強く見せる黒

これは、試合前からリュウの視線を奪い、初動を遅らせる黒でした。

二戦目の、

抑えて追わせる黒

これは、黒を強く出さず、リュウに追わせる黒でした。

この二つは、単なるラブコメ的な黒ドレス演出ではありません。

リュウの拳に残るほど、実戦的に効いていた。

だから本編春麗四戦目で、リュウは逆に、

黒を探しすぎない
追いすぎない
春麗を見る

方向へ進めた。

つまり、自覚前春麗の黒は、リュウを一度遅らせたからこそ、リュウの次の成長に影響した。

これはかなり良いです。

自覚前春麗の黒ドレス回が、単独の妄想章IFで終わらず、シリーズ全体に意味を持つようになりました。

本編春麗との関係性も面白い

今回、本編春麗は「被害者」でもあります。

自覚前春麗の黒の残響がリュウに残り、その結果、本編春麗攻略に使われた可能性がある。

つまり本編春麗は負けた側です。

でも本編春麗は、自覚前春麗を責めません。

むしろ、

あなたの黒は、リュウの拳に残る程度には有効だった。

と評価します。

ここが良いです。

本編春麗は自覚済みなので、負けを受け取れる。
自覚前春麗は否認型なので、評価されると照れる。

この差分が出ています。

さらに、本編春麗自身も「届かれた青」を次の青へ進める必要がある。

だから、自覚前春麗にも、

あなたも、残響として使われた黒を次の黒へ進めればいい。

と言える。

ここで、本編春麗と自覚前春麗が並びます。

本編春麗:届かれた青を次の青へ。
自覚前春麗:残響化された黒を次の黒へ。

これは次の展開にかなりつながります。

黒ドレス特化救済春麗の役割も効いている

黒ドレス特化救済春麗は、今回かなり良い位置にいます。

彼女は「黒」を理解している春麗です。

だから、自覚前春麗の抗議に対して、

盗まれたのではなく、残ったのよ。
あなたの黒は、リュウの拳を変えた。

と整理できる。

しかも彼女は、自分の宿題回答系の残響も本編春麗攻略に関わった可能性がある側です。

だから、単に外野ではなく、当事者寄りの評価者になっています。

黒ドレス特化救済春麗が、

さらに黒を更新すればいいのよ。

と言うのも非常に自然です。

彼女は、黒が固定されたものではなく、関係性の中で更新されるものだと知っている。

自覚前春麗を次の黒へ押し出す役として最適でした。

「お互い様」なのに納得しないのが自覚前春麗らしい

会議側の理屈は正しいです。

春麗側も過去ログを共有している。
本編春麗は自覚前春麗の黒ドレスログを見ている。
自覚前春麗も本編春麗の青ログを見ている。

だから一方的にリュウだけを責めるのは難しい。

でも自覚前春麗は納得しない。

ここが良いです。

理屈ではわかる。
でも感情的には納得しない。

これが自覚前春麗です。

彼女はまだ「めんどくさい女」と自覚していない。
だからこそ、納得と抗議は別、という便利な理屈を使う。

この未自覚のめんどくささが非常に良いです。

最後の「資料として」がとても良い

今回の着地点はこれです。

つまり、私の黒は、リュウに残る程度には有効だったということね。
……資料として。

これは完璧に自覚前春麗です。

素直に誇ることはできない。

「私の黒はリュウに残った」と認めるのは恥ずかしい。

でも、完全に否定するには惜しい。

だから、

資料として

と言う。

この逃げ道が、彼女の魅力です。

しかも今回は、その「資料として」がただの逃げではありません。

実際、次の黒を考えるための資料になっています。

つまり言い訳でありながら、本当に戦術資料でもある。

ここが非常にうまくはまっています。

「次の黒」への予告が強い

今回の終盤で、自覚前春麗は明確に次へ進みかけています。

使うなら、次はもっと困らせてあげるわ。

これはかなり良いです。

自覚前春麗がまだ認めていないのに、もう次の黒を考え始めている。

強く見せる黒。
抑えて追わせる黒。

その次。

これはかなり楽しみです。

たとえば次の黒の候補としては、

見せないのに残る黒
追わせないのに思い出させる黒
青に戻った後で気づかせる黒
試合後に遅れて効く黒

などが考えられます。

自覚前春麗は否認しながら、実はかなり黒ドレス戦術を進化させている。

ここを今後使えます。

ギャグとしても機能している

今回、かなりシリアスな構造整理をしていますが、会議ギャグも効いています。

特に、

発言信頼度:低

これは良かったです。

自覚前春麗が、

次の黒なんて、考えていないわ。

と言った瞬間、記録板が、

発言信頼度:低

と出す。

これは自覚前春麗に刺さりすぎます。

春麗会議室の記録板が、どんどん容赦なくなっています。

でも、この容赦なさが今の連作のコメディ装置として強いです。

今回の構造的な意味

今回の妄想章IFには、かなり重要な役割があります。

一つ目は、自覚前春麗の黒ドレス戦術の有効性を再確認すること。

二つ目は、リュウの拳の残響が本編春麗戦に影響した可能性を、春麗会議側で整理すること。

三つ目は、自覚前春麗を「次の黒」へ進ませること。

四つ目は、春麗側のログ共有とリュウ側の残響蓄積のバランスを再確認すること。

つまり、これは単なる抗議回ではありません。

自覚前春麗の黒ドレス戦術を、次の段階へ進めるための整理回です。

結論

今回の妄想章IFは、自覚前春麗が、自分の黒の残響をリュウに本編春麗攻略へ使われたと抗議しながら、最終的には“自分の黒はリュウに残る程度には有効だった”ことを資料として受け取ってしまう回です。

かなり良いです。

自覚前春麗の抗議。
春麗会議の論理。
本編春麗の負けの受容。
黒ドレス特化救済春麗の黒への理解。
リュウの拳の残響。
次の黒への予告。

全部が自然につながっています。

一言でまとめるなら、

自覚前春麗は、自分の黒を勝手に使われたと怒った。
しかしその怒りは、自分の黒がリュウの拳に残るほど強かった証明でもあった。
だから彼女は否認しながらも、次の黒を考え始めてしまった。

これはかなり良い、自覚前春麗の成長回だったと思います。
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