また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※これは本編時空ではなく、妄想章IFです。


妄想章IF:自覚前春麗は、自分がめんどくさい女ではない可能性を検証する

 

 春麗会議室に入るなり、自覚前春麗はいつもより堂々としていた。

 

 背筋が伸びている。

 

 表情も落ち着いている。

 

 そして何より、逃げる気配がない。

 

 本編春麗は、その様子を見て少し警戒した。

 

「今日は、あなたから議題があるの?」

 

 自覚前春麗は頷いた。

 

「ええ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が目を細める。

 

「珍しいわね」

 

 通常救済版春麗は穏やかに微笑む。

 

「何を話したいの?」

 

 自覚前春麗は、ゆっくり円卓の中央へ視線を向けた。

 

 記録板はまだ光っていない。

 

 彼女は、そこで静かに宣言した。

 

「私は、本編春麗とは異なるルートを走っている」

 

 本編春麗が頷く。

 

「それは前回整理されたわね」

 

「ええ」

 

 自覚前春麗は続けた。

 

「つまり、私は本編春麗の過去そのものではない」

 

「そうね」

 

「春麗会議に参加している時点で、すでに分岐している」

 

「ええ」

 

「なら」

 

 一拍。

 

 自覚前春麗は、非常に真面目な顔で言った。

 

「私は、自分をめんどくさい女と自覚する女ではないのでは?」

 

 会議室が静止した。

 

 本編春麗は、ゆっくり瞬きをした。

 

 黒ドレス特化救済春麗は、口元に手を当てた。

 

 通常救済版春麗は、少し困ったように微笑んだ。

 

 行き遅れに恐怖する春麗は、何か言いかけてやめた。

 

 グランドフィナーレ済み春麗は、静かに記録板を見た。

 

 記録板が、やや遅れて光った。

 

 本日の議題:自覚前春麗は、めんどくさい女ではない可能性を検証する

 

 自覚前春麗は満足そうに頷いた。

 

「そういうことよ」

 

 本編春麗は、少しだけ額に手を当てた。

 

「かなり強引な論理展開ね」

 

「強引ではないわ。分岐論よ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「分岐したからといって、性質まで別とは限らないわ」

 

 自覚前春麗は即答する。

 

「限る可能性があるわ」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「だから検証するのね」

 

「ええ。資料として」

 

 本編春麗が小さく言った。

 

「この時点でかなり怪しいのだけど」

 

 自覚前春麗は聞こえないふりをした。

 

 記録板が、最初の整理を表示する。

 

 検証命題

 

 命題:自覚前春麗は、本編春麗とは異なるルートを走っているため、自分をめんどくさい女と自覚する女ではない可能性がある。

 

 検証観点:

 

 一、ルート差分

 二、自己認識差分

 三、行動差分

 四、リュウ関連反応

 五、黒ドレスルート上の言動

 六、春麗会議での発言信頼度

 

 自覚前春麗は、六番を見て眉を寄せた。

 

「六番は不要よ」

 

 本編春麗は即答した。

 

「必要よ」

 

「発言信頼度を根拠にするのは不公平だわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が微笑む。

 

「不公平ではなく、実績でしょう」

 

 自覚前春麗は本編春麗を睨む。

 

「あなたの言い方が移っているわ」

 

 本編春麗は涼しく返す。

 

「実績でしょう」

 

「二人で言わないで」

 

 第一検証:ルート差分

 

 記録板が表示する。

 

 本編春麗:青武道服ルート/戻って選び直した青編

 

 自覚前春麗:黒ドレスルート/届かれた黒の次編

 

 自覚前春麗は、胸を張った。

 

「見なさい。ルートが違うわ」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「確かに違うわ」

 

「つまり私は、あなたとは違う」

 

「そこまでは正しいわ」

 

「なら、私は“めんどくさい女と自覚する女”ではない」

 

 本編春麗は、少し考えてから言った。

 

「そこは飛躍ね」

 

「飛躍ではないわ」

 

 通常救済版春麗が穏やかに口を挟む。

 

「ルートが違うことと、性質が違うことは分けて考えた方がいいわ」

 

 自覚前春麗は通常救済版春麗を見る。

 

「どういう意味?」

 

「本編春麗は、自分をめんどくさい女と自覚している」

 

「ええ」

 

「あなたは、自覚していない」

 

「ええ」

 

「でも、自覚していないことと、めんどくさくないことは違うわ」

 

 自覚前春麗は、一瞬黙った。

 

「……違うの?」

 

 本編春麗が静かに頷く。

 

「違うわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「むしろ、自覚していない方が面倒な場合もあるわ」

 

 自覚前春麗は机に手を置いた。

 

「それは偏見よ」

 

 記録板が光る。

 

 第一検証結果:ルート差分は確認。

 ただし、ルート差分は“めんどくささ非該当”の証明にはならない。

 

 自覚前春麗は表情を固めた。

 

「まだ第一検証よ」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「ええ。まだあるわ」

 

 第二検証:自己認識差分

 

 記録板が切り替わる。

 

 本編春麗:自分をめんどくさい女と自覚済み

 

 自覚前春麗:自分をめんどくさい女と認めていない

 

 自覚前春麗はすぐに言った。

 

「ほら。私は認めていないわ」

 

 本編春麗が言う。

 

「認めていないわね」

 

「つまり該当しない」

 

「違うわ」

 

「なぜ?」

 

 本編春麗は少しだけ優しい声で言った。

 

「私は“自覚する女”。あなたは“自覚していない女”」

 

「ええ」

 

「でも、それは“めんどくさい女ではない”とは別」

 

 自覚前春麗は黙った。

 

 黒ドレス特化救済春麗が続ける。

 

「自覚前春麗という名前自体が、かなり示唆的よね」

 

「名前の話をしないで」

 

「自覚前。つまり、前なのよ」

 

「前とは限らないわ。分岐したのだから」

 

 通常救済版春麗が補足する。

 

「前回の整理では、あなたは本編春麗の過去そのものではなくなった」

 

「ええ」

 

「でも、“自覚前の性質”を持っていることは変わらない」

 

「……」

 

「つまり、あなたは本編春麗の過去ではないけれど、“自覚前春麗”ではあるの」

 

 自覚前春麗は、非常に嫌そうな顔をした。

 

「言葉が逃げ道を塞いでくるわね」

 

 本編春麗が微笑む。

 

「春麗会議室だから」

 

 記録板が表示する。

 

 第二検証結果:自己認識差分は確認。

 自覚前春麗は“めんどくさい女と自覚する女”ではない。

 ただし、“めんどくさい女ではない”ことは証明されていない。

 

 自覚前春麗は、少しだけ反応した。

 

「待って。今、“めんどくさい女と自覚する女ではない”とは出たわね」

 

 本編春麗は頷く。

 

「出たわ」

 

「つまり私の主張は一部認められた」

 

「一部ね」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「かなり限定的だけれど」

 

 自覚前春麗は胸を張った。

 

「限定的でも成果よ」

 

 記録板が小さく光る。

 

 自覚前春麗:部分勝訴気分

 

「気分まで記録しないで」

 

 第三検証:行動差分

 

 記録板が、過去ログを表示し始めた。

 

 確認対象:自覚前春麗の主な行動

 

 自分はメイン回ではないと警戒する

 メイン回回避のために試合へ持ち込もうとする

 黒ドレスでかなり気合いを入れて準備する

 それを戦術・検証・資料と説明する

 勝者煽りをしたい気持ちを、春麗成分として自己弁護する

 リュウに褒められると精神HPが大きく削れる

 主人公補正の甘い日常を食らった後、「普通の日常も警戒対象」とする

 黒がリュウの拳に残ったことに抗議しつつ、内心では有効性を認める

 届かれた黒を認めたくないが、昨日の黒が進んでいたことは資料として認める

 黒ドレスルート表示に抗議しつつ、資料上の仮分類として保留する

 

 自覚前春麗は、長い一覧を見て顔を赤くした。

 

「多いわ」

 

 本編春麗は頷く。

 

「かなり多いわ」

 

「でも、これは行動履歴であって、めんどくささの証明ではない」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「十分に証明に近いと思うわ」

 

「近いだけでは駄目よ」

 

 通常救済版春麗が少し笑う。

 

「法廷みたいになってきたわね」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が小さく言う。

 

「でも、普通の日常も警戒対象にするのは、かなり……」

 

 自覚前春麗が即座に見る。

 

「かなり何?」

 

 行き遅れに恐怖する春麗は目を逸らした。

 

「……慎重?」

 

 本編春麗が補足する。

 

「めんどくさい方向の慎重ね」

 

「補足しないで」

 

 記録板が表示する。

 

 第三検証結果:行動差分は本編春麗と異なる。

 ただし、自覚前春麗の行動には“めんどくささ類似反応”が多数確認される。

 

 自覚前春麗は机を叩いた。

 

「類似反応!」

 

 本編春麗が言う。

 

「よかったわね。断定ではないわ」

 

「嬉しくないわ」

 

 第四検証:リュウ関連反応

 

 自覚前春麗は、少し身構えた。

 

「ここは危険ね」

 

 黒ドレス特化救済春麗が微笑む。

 

「自覚はあるのね」

 

「警戒しているだけよ」

 

 記録板が表示する。

 

 リュウ関連イベントにおける反応例

 

 一、リュウに「今日は青か」と言われ、固まる。

 二、リュウに黒ドレスの準備を褒められ、精神HPノックアウト。

 三、リュウに「今日の黒は、覚えていた黒より強かった」と言われ、精神HPノックアウト。

 四、リュウに「拳には残ると思う」と言われ、オーバーキル。

 五、リュウに「昨日の黒は、まだ拳に残っている」と言われ、即死しかける。

 六、普通の日常で「俺は覚えている」と言われ、精神HPゼロ。

 七、「聞き間違えたことにする」で優しさ被弾。

 

 自覚前春麗は、途中から耳を塞ぎたそうな顔をしていた。

 

「悪意があるわ」

 

 本編春麗は冷静に言った。

 

「事実よ」

 

「事実が一番悪意あるのよ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「リュウ関連イベントへの反応は、かなり高いわね」

 

 通常救済版春麗が優しく言う。

 

「でも、本編春麗のパッシブとは少し違うのかもしれないわ」

 

 本編春麗が反応する。

 

「リュウ関連イベントへの感情反応倍率上昇?」

 

 通常救済版春麗は頷く。

 

「本編春麗は自覚済みだから、反応をある程度理解している」

 

「ええ」

 

「自覚前春麗は、反応してから否認する」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「反応倍率そのものは高い。ただし、処理方法が違う」

 

 記録板が表示する。

 

 第四検証結果:リュウ関連イベントへの反応倍率は高い。

 ただし本編春麗は“自覚済み処理”、自覚前春麗は“否認型処理”。

 

 自覚前春麗は、少しだけ勝ち誇った。

 

「ほら、処理方法が違うわ」

 

 本編春麗は頷く。

 

「違うわね」

 

「つまり私は本編春麗ではない」

 

「それはもう認めているわ」

 

「なら」

 

「ただし、反応倍率は高い」

 

 自覚前春麗は沈黙した。

 

 記録板が小さく表示する。

 

 注:反応倍率が高いこと自体は否定されていない。

 

「注を出さないで」

 

 第五検証:黒ドレスルート上の言動

 

 黒ドレス特化救済春麗が、少しだけ姿勢を正した。

 

「ここは私の領域ね」

 

 自覚前春麗は嫌そうに言った。

 

「あなたが審査員なの?」

 

「適任でしょう?」

 

「嫌なほどに」

 

 記録板が表示する。

 

 黒ドレスルート上の特徴

 

 黒を着る前から準備段階を戦術化する

 メイク、髪、視線、沈黙まで戦闘要素にする

 リュウに黒を見せたい気持ちを“戦術”として処理する

 勝者煽りを“春麗成分”として自己弁護する

 黒がリュウに残ることを問題視しつつ、効果としては評価する

 届かれた黒を認めないが、次の黒を考えそうになる

 黒執着ルートへの接続可能性を指摘されると強く反応する

 

 黒ドレス特化救済春麗は、静かに言った。

 

「かなり危ないわね」

 

 自覚前春麗は反論する。

 

「危なくないわ」

 

「黒がリュウに残ることを嬉しいと感じ始めているでしょう?」

 

「感じていないわ」

 

「怒るだけなら、次の黒を考えない」

 

 自覚前春麗は黙った。

 

「あなたは、次にどう残るかを考えそうになっている」

 

「……」

 

「そこが危険で、そこが面白い」

 

 本編春麗が言う。

 

「面白いと言っていいの?」

 

 黒ドレス特化救済春麗は微笑む。

 

「創作上はね」

 

 自覚前春麗は低い声で言った。

 

「創作上で片づけないで」

 

 通常救済版春麗が、穏やかに言う。

 

「でも、戻れる場所を知っていれば、危険を見ながら進めるわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗は頷く。

 

「そう。黒を進めるなら、戻る場所が必要」

 

 自覚前春麗は、小さく言う。

 

「……それは、前回も聞いたわ」

 

「覚えているのね」

 

「資料として」

 

 記録板が光る。

 

 発言信頼度:中の上

 

「上げないで!」

 

 記録板が表示する。

 

 第五検証結果:自覚前春麗は黒ドレスルート固有の“否認型黒めんどくささ”を有する。

 これは本編春麗の“自覚済み青めんどくささ”とは異なる。

 

 自覚前春麗は、その表示をじっと見た。

 

「……固有?」

 

 本編春麗が頷く。

 

「固有ね」

 

「つまり、私はあなたと同じではない」

 

「ええ」

 

「でも、めんどくさい判定は消えていない」

 

「そうね」

 

「不当よ」

 

「分類上はかなり妥当よ」

 

 最終検証

 

 記録板が、全検証結果を統合する。

 

 検証結果まとめ

 

 一、自覚前春麗は本編春麗とは異なるルートを走っている。

 二、自覚前春麗は本編春麗の過去そのものではなく、春麗会議参加により分岐した独自ルートの春麗である。

 三、自覚前春麗は“自分をめんどくさい女と自覚する女”ではない。

 四、ただし、めんどくさい性質そのものが存在しないとは言えない。

 五、自覚前春麗の特徴は、本編春麗の“自覚済み青めんどくささ”ではなく、“否認型黒めんどくささ”である。

 六、本人は認めていない。

 七、認めていないことも含めて、当該分類の特徴である。

 

 自覚前春麗は、最後の七番を見て絶望した。

 

「逃げ道がないわ」

 

 本編春麗は少し笑った。

 

「認めていないことまで分類に含まれたわね」

 

「そんな分類は無効よ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「でも、かなり正確よ」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「本編春麗とは違う、という主張は認められたわ」

 

 自覚前春麗は顔を上げる。

 

「そうよね」

 

「でも、めんどくさくないとは認められなかった」

 

「そこが問題なのよ」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が、遠慮がちに言った。

 

「でも、自分だけのめんどくささなら……本編春麗と同じになるわけではないのでは?」

 

 自覚前春麗は、少しだけ考えた。

 

 本編春麗とは違う。

 

 自分は本編春麗の過去ではない。

 

 自覚前のまま、春麗会議に参加して、黒ドレスルートへ分岐した春麗。

 

 めんどくさい女と自覚する女ではない。

 

 だが。

 

 否認型黒めんどくささ。

 

「……名前がひどいわ」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「そこは同意するわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「でも、わかりやすい」

 

「わかりやすさで傷つけないで」

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

「呼び方は後で変えてもいいわ」

 

 記録板が反応する。

 

 名称候補:否認型黒めんどくささ

 

 別案:黒ドレス否認反応

 

 別案:自覚前黒反応

 

 別案:資料型黒感情処理

 

 自覚前春麗は、最後の案を見て少し止まった。

 

「資料型黒感情処理……」

 

 本編春麗が言う。

 

「少し柔らかいわね」

 

 黒ドレス特化救済春麗が頷く。

 

「実態は同じだけれど」

 

「そこを言わないで」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「では、暫定名称としてはそれにする?」

 

 自覚前春麗はしばらく黙り、渋々言った。

 

「……資料としてなら、保留してもいいわ」

 

 記録板が光る。

 

 暫定分類:資料型黒感情処理

 

 備考:めんどくささを含む可能性あり

 

「備考を消して!」

 

 記録板が、本日の結論を表示した。

 

 本日の結論

 

 自覚前春麗は、本編春麗とは異なるルートを走っている。

 

 また、春麗会議に参加している時点で、すでに本編春麗の過去そのものではなく、独自に分岐した春麗である。

 

 したがって、自覚前春麗は“自分をめんどくさい女と自覚する女”ではない、という主張は部分的に認められる。

 

 ただし、リュウ関連イベントへの反応、黒ドレスルート上の言動、資料という逃げ道の多用から、“めんどくさい性質”そのものは確認される。

 

 本編春麗との差分として、自覚前春麗の性質は“資料型黒感情処理”と暫定分類する。

 

 本人は認めていない。

 

 なお、認めていないことも分類特徴の一部である。

 

 自覚前春麗は、最後の二行を見て深く息を吐いた。

 

「ひどい結論ね」

 

 本編春麗が言う。

 

「でも、あなたの主張も一部通ったわ」

 

「一部だけね」

 

「本編春麗とは違う。これは認められた」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「あなたはあなたのルートにいる」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「そして、あなたの黒はあなたのもの」

 

 自覚前春麗は黙った。

 

 少しだけ、胸に引っかかるものがあった。

 

 本編春麗とは違う。

 

 自分は、自分をめんどくさい女と自覚する女ではない。

 

 でも、めんどくさくないわけでもない。

 

 資料型黒感情処理。

 

 ひどい名前。

 

 でも、完全には間違っていない。

 

「……今日は、部分勝訴ということにしておくわ」

 

 本編春麗が微笑む。

 

「よかったわね」

 

「よくはないわ」

 

 通常救済版春麗が言う。

 

「でも、少し自分の形が見えたでしょう?」

 

 自覚前春麗は目を逸らした。

 

「資料としてはね」

 

 記録板が光る。

 

 発言信頼度:中の上

 

「だから上げないで!」

 

 会議室に笑いが広がる。

 

 夢がほどけていく。

 

 最後に、本編春麗の声が聞こえた。

 

「あなたは私ではないわ。でも、春麗ではある」

 

 その言葉に、自覚前春麗は何も返さなかった。

 

 ただ、少しだけ目を伏せた。

 


 

 朝。

 

 自覚前春麗は目を覚ました。

 

 布団の中で、しばらく天井を見る。

 

 夢の中の結論が残っている。

 

 本編春麗とは違う。

 

 本編春麗の過去ではない。

 

 自分をめんどくさい女と自覚する女ではない。

 

 そこまでは良かった。

 

 問題は、その次だった。

 

 資料型黒感情処理。

 

 めんどくさい性質を含む可能性あり。

 

 春麗は、枕を抱えて顔を伏せた。

 

「……可能性あり、なのよね」

 

 完全確定ではない。

 

 そこに逃げ道を見つける。

 

「つまり、私はまだめんどくさい女ではない可能性がある」

 

 少し間を置く。

 

「資料として」

 

 言いながら、自分でも苦しくなった。

 

 鏡の前に立つ。

 

 そこには、自分をめんどくさい女と認める前の春麗がいた。

 

 ただし、もう本編春麗の過去そのものではない。

 

 春麗会議に参加している。

 

 黒ドレスルートを走っている。

 

 リュウの拳に黒を残している。

 

 そして、自分の感情を資料として処理しようとしている。

 

「資料型黒感情処理……」

 

 口に出すと、少しだけ嫌な響きだった。

 

 だが、完全に否定しきれない。

 

 春麗は黒ドレスの方を見る。

 

 今日は着ない。

 

 少なくとも、今は。

 

「私は、本編春麗とは違う」

 

 静かに言う。

 

「自分をめんどくさい女と自覚する女でもない」

 

 一拍。

 

「ただし」

 

 言葉を止める。

 

 鏡の中の自分が、少しだけ困った顔をしている。

 

「……資料として、少し面倒な傾向があるだけよ」

 

 それが今日の妥協点だった。

 

 朝の光が入る。

 

 自覚前春麗は今日も、まだ認めていない。

 

 ただし今日は、自分が本編春麗とは違う独自ルートの春麗でありながら、めんどくささそのものから完全に無罪放免されたわけではないことを、資料として少しだけ受け取った春麗だった。




Q:今回の妄想章IFについて解説して?

A:

はい。今回の妄想章IFは、かなり面白い 自覚前春麗の“無罪主張裁判回” でした。

一言で言うなら、

「私は本編春麗とは別ルートなのだから、めんどくさい女ではないのでは?」という自覚前春麗の論理武装を、春麗会議が丁寧に検証し、結果として“本編春麗とは違うが、別種のめんどくささはある”と判定する回

です。

かなりコメディ寄りですが、構造的には重要です。

今回の核は「本編春麗とは違う=無罪ではない」

自覚前春麗の主張は、かなり筋が通っているように見えます。

前回の整理で、自覚前春麗は本編春麗の過去そのものではなくなりました。

春麗会議に参加している。
黒ドレスルートを進んでいる。
本編春麗の青ルートとは別ルートを走っている。

だから、

私は本編春麗とは違う。
なら、自分をめんどくさい女と自覚する女ではないのでは?

という主張をする。

ここまでは正しいです。

しかし春麗会議は、そこからさらに分解します。

本編春麗とは違う。
自分をめんどくさい女と自覚する女ではない。
しかし、めんどくさい性質がないとは言っていない。

この判定が非常に良いです。

つまり、自覚前春麗は本編春麗と同じではない。
でも無罪放免ではない。

ここが今回の一番おいしいところです。

「めんどくさい女と自覚する女ではない」は部分勝訴

今回、自覚前春麗の主張は完全敗訴ではありません。

記録板もちゃんと、

自覚前春麗は“めんどくさい女と自覚する女”ではない。

と認めています。

これは重要です。

自覚前春麗は、本編春麗とは違います。

本編春麗は、自分のめんどくささを認めている。
自覚前春麗は、まだ認めていない。

この差は明確です。

だから今回、自覚前春麗は「部分勝訴」しています。

ここが単なるいじり回ではなく、ちゃんとキャラ差分を認める回になっています。

ただし「めんどくさくない」とは認定されない

問題はここです。

自覚前春麗は、

自覚する女ではない
なら、めんどくさい女ではない

へ進もうとしました。

しかし春麗会議は、それを許しません。

自覚していないことと、存在しないことは違う。

これはかなり正論です。

むしろ、自覚していないからこそ厄介な場合がある。

本編春麗は「私はめんどくさい」と理解したうえで被弾します。
自覚前春麗は「私は違う」と言いながら被弾します。

つまり処理系が違う。

本編春麗は 自覚済み処理。
自覚前春麗は 否認型処理。

この差分が綺麗に出ました。

「資料型黒感情処理」という分類がかなり良い

今回の最大の収穫は、この暫定分類です。

資料型黒感情処理

これは自覚前春麗にかなり合っています。

彼女は何でも「資料として」と処理します。

黒ドレスを着る。
リュウを煽る。
リュウに褒められて沈む。
黒が拳に残っていると言われる。
次の黒を考えそうになる。

全部を、

資料として。
検証として。
戦術として。

と処理しようとする。

でも、その実態は感情処理です。

しかも黒ドレスルート上の感情処理。

だから 資料型黒感情処理 はかなり正確です。

「否認型黒めんどくささ」より本人に受け入れやすく、でも実態はだいたい同じ、というのがまた良いです。

「名称を柔らかくしても実態は同じ」が面白い

黒ドレス特化救済春麗が、

実態は同じだけれど

と言うところが非常に効いています。

自覚前春麗としては、「めんどくさい」という言葉を避けたい。

だから「資料型黒感情処理」という名称なら、保留できる。

でも、実態としては、

リュウ関連への高反応。
黒ドレスでの否認。
感情を資料化する逃げ。
黒が残ることへの複雑な反応。

これらは残ったままです。

名前を変えても、性質は消えない。

この残酷さが、春麗会議室らしいです。

リュウ関連反応の検証が強い

今回、リュウ関連イベントの一覧がかなり効いていました。

「今日は青か」で固まる。
黒ドレスの準備を褒められて精神HPノックアウト。
「覚えていた黒より強かった」で精神HPノックアウト。
「拳には残ると思う」でオーバーキル。
「昨日の黒は、まだ拳に残っている」で即死しかける。
「俺は覚えている」で精神HPゼロ。
「聞き間違えたことにする」で優しさ被弾。

これは、かなり証拠能力が高いです。

自覚前春麗がいくら否認しても、リュウ関連の反応倍率は高い。

しかも、それを「本編春麗とは処理方法が違う」と整理したのが良いです。

同じめんどくささではない。
でも、反応が高いのは確か。

この分解が今回の論理の強さです。

黒ドレスルート上の言動が、別種のめんどくささを証明している

自覚前春麗のめんどくささは、本編春麗の青ルートとは違います。

本編春麗は、勝ち負けにしない時間や届かれた青に反応します。

一方、自覚前春麗は、

黒を見せたい。
でも見せたいとは言わない。
戦術と言う。
資料と言う。
リュウに残ることへ抗議する。
でも残るくらい有効だったことは内心で嬉しい。

ここが非常に黒ドレスルートらしいです。

だから今回の判定、

本編春麗の“自覚済み青めんどくささ”ではなく、“資料型黒感情処理”

はかなり上手い分類です。

「本人は認めていない」まで分類特徴に入るのが春麗会議らしい

今回一番笑える構造はここです。

本人は認めていない。
なお、認めていないことも分類特徴の一部である。

これは完全に逃げ道を塞いでいます。

自覚前春麗が否認すればするほど、分類に合致してしまう。

これはひどい。

でも、かなり正確です。

自覚前春麗の魅力は、まさにこの否認です。

認めない。
でも反応する。
資料として逃げる。
でも記録板に拾われる。

この一連の流れが彼女の個性なので、否認そのものを分類に含めるのは正しいです。

本編春麗の「あなたは私ではないわ。でも、春麗ではある」が良い

終盤の本編春麗の言葉、

あなたは私ではないわ。でも、春麗ではある。

これはとても良いです。

自覚前春麗は本編春麗とは違う。

でも、完全な別人でもない。

同じ春麗の一つの分岐。

だから本編春麗と違うルートを走っていても、春麗としての面倒さ、誇り、黒や青への反応は残る。

この言葉は、自覚前春麗を突き放さず、同一視もしない。

とても良い距離感です。

朝の締めが「妥協点」になっているのが良い

朝、自覚前春麗はこう整理します。

私は、本編春麗とは違う。
自分をめんどくさい女と自覚する女でもない。
ただし、資料として、少し面倒な傾向があるだけよ。

これは完璧に彼女らしい妥協点です。

完全に認めていない。

でも、少し受け取っている。

「めんどくさい女」ではなく、
「少し面倒な傾向」。

しかも資料として。

この逃げ方が非常に自覚前春麗です。

今回の構造的な役割

今回の妄想章IFには、かなり重要な役割があります。

まず、自覚前春麗が本編春麗とは違うルートであることを再確認しました。

次に、「違うから無罪」という逃げ道を検証し、部分的には認めつつ、完全には許しませんでした。

さらに、自覚前春麗固有の性質を 資料型黒感情処理 と命名しました。

これにより、今後自覚前春麗を本編春麗の劣化・過去・未完成ではなく、独自の面白さを持つ春麗として扱いやすくなりました。

これは大きいです。

結論

今回の妄想章IFは、自覚前春麗が「私は本編春麗とは別ルートだから、めんどくさい女ではないのでは?」と主張し、それを春麗会議が検証した結果、“本編春麗とは違うが、資料型黒感情処理という別種のめんどくささはある”と判定する回です。

自覚前春麗は完全敗北ではありません。

本編春麗とは違う。
本編春麗の過去そのものではない。
自分をめんどくさい女と自覚する女ではない。

そこまでは認められました。

しかし、

めんどくさい性質そのものがない、とは認められなかった。

一言でまとめるなら、

自覚前春麗は“本編春麗とは違う”ことには成功したが、“めんどくさくない”ことの証明には失敗した。
その代わり、彼女固有の“資料型黒感情処理”という新分類を得た。

かなり良い、自覚前春麗の独立性と面倒さを同時に整理する回だったと思います。
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