また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
春麗会議室に入った瞬間、自覚前春麗は決めていた。
今日は逃げない。
いや、正確には逃げるために戦う。
記録板AIが正式実装されたことで、春麗会議室の危険度は明らかに上がった。
発言信頼度。
黒ドレス関連イベント数。
黒執着ルート危険度。
資料型黒感情処理。
そして、未承認の仮分類。
どれもこれも、記録板AIが淡々と突きつけてくる。
だが、自覚前春麗には一つ、どうしても納得できないものがあった。
前回の黒ドレスバトルログである。
リュウに三連勝目を阻止された、あの試合。
リュウ残HP4。
《見た後に残る黒》。
《黒の三層》。
そして、精神HPノックアウト。
春麗会議室の記録では、かなり明確にそう整理されていた。
しかし、自覚前春麗は思っていた。
あのログには、誇張がある。
解釈に偏りがある。
記録板AIは、春麗側に不利な方向へ分類しすぎている。
だから今日は、それを問いただす。
円卓に着く前に、自覚前春麗は記録板AIを指さした。
「今日は、あなたに異議申し立てがあるわ」
記録板AIが即座に光る。
『異議申し立てを受理しました』
自覚前春麗は一瞬、警戒した。
「……素直に受理したわね」
『受理と採用は別処理です』
「でしょうね!」
本編春麗が少し笑う。
「今日は何に異議があるの?」
自覚前春麗は胸を張った。
「前回の私の黒ドレスバトルログよ」
黒ドレス特化救済春麗が興味深そうに目を細める。
「ついにそこへ戻るのね」
通常救済版春麗が穏やかに言う。
「必要なら、立て直し地点も表示してもらいましょう」
自覚前春麗は即座に言った。
「まだ沈んでいないわ」
記録板AIが光る。
『発言信頼度:低寄りの中』
「始まる前から出さないで!」
記録板AIが中央に大きく表示した。
『本日の議題を表示します』
『自覚前春麗による前回黒ドレスバトルログへの異議申し立て、および記録板AIによるログ再解説』
自覚前春麗は、机に手を置いた。
「まず、前回ログの問題点を指摘するわ」
本編春麗が言う。
「聞きましょう」
黒ドレス特化救済春麗が微笑む。
「楽しみね」
「楽しみにしないで」
自覚前春麗は咳払いをした。
「一つ目。前回ログでは、私の黒を《見た後に残る黒》と分類していたけれど、これは過大評価よ」
記録板AIが応答する。
『異議一:《見た後に残る黒》分類は過大評価。記録しました』
「記録しなくていいわ」
『異議申し立ての記録は必須です』
「融通が利かないわね」
記録板AIが続ける。
『反論を表示します』
『根拠一:リュウが試合後、“今日の黒は、覚えていた黒より強かった”と発言』
自覚前春麗は固まった。
「……いきなりそこを出すの?」
『根拠二:リュウが“拳には残ると思う”系統の認識を示しています』
「それは……」
『根拠三:翌日イベントにて、リュウが“昨日の黒は、まだ拳に残っている”と発言』
自覚前春麗は顔を赤くした。
「その台詞を毎回出さないで」
『該当分類の主要根拠です』
本編春麗が静かに言う。
「かなり強い根拠ね」
黒ドレス特化救済春麗も頷く。
「見た後に残っているから、翌日に残っていると言われたのよね」
自覚前春麗は机を叩いた。
「言葉の印象だけでしょう!」
記録板AIが即答する。
『誤りです』
「即答しないで!」
『分類は発言印象のみではありません。戦闘後のリュウの拳の残響反応、翌日発言、春麗側精神HP被害、黒の再現性を総合して判定しています』
自覚前春麗は、少しだけ黙った。
「……総合しないで」
『分析精度を優先します』
自覚前春麗は、気を取り直した。
「二つ目。私は黒を“残そう”としていたわけではないわ」
記録板AIが光る。
『異議二:自覚前春麗は黒を残そうとしていたわけではない。記録しました』
「だから記録しないで」
『反論を表示します』
「早いわね」
『本件については、部分的に採用します』
自覚前春麗は少し目を見開いた。
「え?」
本編春麗も意外そうに記録板を見た。
記録板AIは淡々と続ける。
『自覚前春麗が明確に“リュウの拳に黒を残す”ことを目的化していたログはありません』
自覚前春麗は、すぐに胸を張った。
「ほら!」
『ただし』
自覚前春麗の動きが止まった。
『黒を強く見せる、抑えて追わせる、視線と間でリュウの認識に黒を刻む、という戦術行動は確認されています』
「刻むって言い方!」
『さらに、リュウの拳に残ったことへの抗議反応と、内心の有効性評価が併存しています』
自覚前春麗は目を逸らす。
「内心は読めないはずでしょう」
『感情の真実は断定できません』
『ただし、発言、反応、否認速度、会議室での沈黙時間から推定可能です』
「沈黙時間まで見ているの!?」
『はい』
黒ドレス特化救済春麗が楽しそうに言う。
「かなり細かいわね」
通常救済版春麗は少し困ったように微笑む。
「でも、断定ではなく推定なのね」
『はい』
『結論:自覚前春麗が“残すこと”を明確目的にしていたとは断定しません』
自覚前春麗は再び顔を上げる。
『ただし、結果として残る黒を形成したことは確認済みです』
「結局そこへ戻るのね!」
『はい』
自覚前春麗は、やや焦りながら三つ目の異議を出した。
「三つ目。前回の《黒の三層》という分類も大げさよ」
本編春麗が少し眉を上げた。
「それも否定するの?」
「当然よ。三層とか、いかにも深そうに言っているけれど、実際には普通に戦術を重ねただけだわ」
黒ドレス特化救済春麗が静かに言う。
「戦術を重ねて三層になったのでは?」
自覚前春麗は黒ドレス特化救済春麗を見た。
「あなたは黙っていて」
記録板AIが応答する。
『異議三:《黒の三層》分類は大げさ。記録しました』
『反論を表示します』
自覚前春麗は身構えた。
記録板AIは、淡々と表示した。
『前回バトルにおける黒の層構造:』
『第一層:強く見せる黒。外観、視線、立ち方、黒ドレスによる圧』
『第二層:抑えて追わせる黒。露骨に沈めず、リュウに追わせる間合い操作』
『第三層:見た後に残る黒。試合後もリュウの拳と記憶に残る余韻』
自覚前春麗は、黙った。
記録板AIは続ける。
『三つの機能が同時に成立しているため、《黒の三層》分類は妥当です』
「……同時に成立していると、三層なの?」
『はい』
『単なる連続技ではなく、視覚、間合い、記憶残響の三領域に作用しています』
本編春麗が小さく言う。
「かなりちゃんとした分類ね」
通常救済版春麗も頷く。
「大げさというより、整理された名前なのね」
黒ドレス特化救済春麗が自覚前春麗を見る。
「あなたの黒、かなり育っているわよ」
自覚前春麗は顔を赤くした。
「育てていないわ」
『発言信頼度:低』
「ここは低なの!?」
『前回ログとの乖離が大きいためです』
自覚前春麗は、四つ目の異議に移った。
「では、リュウ残HP4という表記。あれも演出過剰よ」
記録板AIが光る。
『異議四:リュウ残HP4表記は演出過剰。記録しました』
本編春麗が少し笑う。
「そこも嫌なのね」
「嫌よ。残HP4というと、私がものすごく追い詰めたみたいでしょう」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「追い詰めたのでは?」
「そういう話ではないわ!」
記録板AIが応答する。
『反論を表示します』
『リュウ残HP4は、戦闘上の極小残存値を表すRPG形式の比喩表現です』
『意味:リュウは勝利したが、余裕勝ちではなく、辛勝であった』
『補足:自覚前春麗の黒ドレス戦術は、勝敗上は敗北したものの、リュウの戦闘リソースを極限まで削った』
自覚前春麗は少しだけ黙った。
「……つまり、私がかなり追い詰めたという記録ではあるのね」
『はい』
「そこは、まあ……資料としては悪くないわ」
『発言信頼度:中の上』
「出さなくていい!」
本編春麗が少し笑う。
「でも、そこは誇っていいのでは?」
自覚前春麗は目を逸らした。
「誇っていないわ。事実確認よ」
『発言信頼度:低寄りの中』
「段階を刻まないで!」
黒ドレス特化救済春麗は微笑む。
「リュウ残HP4は、あなたの黒が届きかけた証拠でもあるわ」
自覚前春麗は、その言葉に一瞬だけ反応した。
届きかけた。
だが、届かなかった。
リュウは勝った。
自分は負けた。
そして精神HPでも負けた。
「……その言い方は嫌ね」
記録板AIが応答する。
『感情反応を確認』
「確認しないで」
自覚前春麗は、最後の異議を出した。
「五つ目。精神HPノックアウト判定」
会議室が、少しだけ静かになった。
本編春麗が言う。
「そこを争うの?」
自覚前春麗は頷いた。
「当然よ。私は試合に負けたけれど、精神HPまで完全にゼロではなかったわ」
記録板AIが応答する。
『異議五:精神HPノックアウト判定への異議。記録しました』
『反論を表示します』
自覚前春麗は身構える。
記録板AIは、容赦なく表示した。
『精神HP被害ログ:』
『一、リュウの辛勝により、勝者煽り未遂』
『二、リュウ発言:“今日の黒は、覚えていた黒より強かった。”』
自覚前春麗は目を閉じた。
「やめなさい」
『三、自覚前春麗、否認不能状態へ移行』
「移行していないわ」
『四、リュウ発言により、“黒が進んでいたこと”を外部認定される』
『五、リュウの拳への残響可能性を示唆される』
『六、会議室内で当該発言への再反応が複数回確認される』
『七、翌日イベントにて“昨日の黒は、まだ拳に残っている”で追加被弾』
自覚前春麗は机に突っ伏した。
「やめなさいと言ったでしょう」
『結論:精神HPノックアウト判定は妥当です』
本編春麗が、少しだけ同情したように言う。
「これは……妥当ね」
自覚前春麗は顔を上げる。
「本編春麗まで」
通常救済版春麗が優しく言う。
「でも、ノックアウトは敗北だけではないわ。強く反応したという記録でもある」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「リュウの言葉が、あなたの黒の核心に触れたのよ」
自覚前春麗は、言い返そうとした。
だが、言葉が出なかった。
今日の黒は、覚えていた黒より強かった。
昨日の黒は、まだ拳に残っている。
それは確かに、刺さった。
刺さったというより、逃げ道を塞がれた。
勝てなかったことより、そちらの方が大きかったかもしれない。
「……精神HPが削れたことは認めるわ」
記録板AIが光る。
『発言信頼度:高』
自覚前春麗は小さく言った。
「ただし」
記録板AIが先に表示した。
『ただし、ノックアウトまでは認めない、という否認が予測されます』
「先に言わないで!」
『否認パターンが高精度で一致しました』
「最悪のAIね!」
記録板AIは、全異議をまとめた。
『異議申し立て総合結果を表示します』
『異議一:《見た後に残る黒》分類は過大評価』
『判定:棄却。翌日残響発言および拳の残響反応により分類妥当』
『異議二:黒を残そうとしていたわけではない』
『判定:一部採用。明確目的とは断定しない。ただし結果として残る黒を形成』
『異議三:《黒の三層》分類は大げさ』
『判定:棄却。視覚、間合い、記憶残響の三領域に作用』
『異議四:リュウ残HP4表記は演出過剰』
『判定:棄却。ただしRPG形式の比喩表現であり、辛勝を示す』
『異議五:精神HPノックアウト判定は過剰』
『判定:棄却。複数ログにより精神HPノックアウト相当と判断』
会議室が静かになった。
自覚前春麗は、しばらく記録板を見つめていた。
そして、ぽつりと言った。
「ほとんど棄却じゃない」
記録板AIが答える。
『はい』
「少しは配慮しなさい」
『春麗会議室は参加者の尊厳を尊重します』
自覚前春麗は片手で顔を覆った。
記録板AIは続ける。
『ただし、分析精度を優先します』
「知っていたわ!」
本編春麗は小さく笑った。
黒ドレス特化救済春麗は満足そうに頷いている。
通常救済版春麗は、優しく言った。
「でも、一つ大事なことも確認できたわ」
自覚前春麗が顔を上げる。
「何が?」
通常救済版春麗は微笑む。
「あなたは、黒を残そうとしていたとまでは断定されなかった」
自覚前春麗は黙った。
「そこは、あなたの逃げ道ではなく、立て直し地点になるかもしれない」
黒ドレス特化救済春麗が続ける。
「ただし、結果として残る黒を形成したことは事実」
本編春麗が言う。
「つまり、あなたの黒は有効だった。でも、あなたが黒に飲まれたとまではまだ言えない」
記録板AIが光る。
『整理として妥当です』
自覚前春麗は、少しだけ息を吐いた。
「……資料としては、悪くない整理ね」
『発言信頼度:中の上』
「そこはもういいわ」
記録板AIは、最後に本日の結論を表示した。
『本日の結論を表示します』
『一、自覚前春麗は、前回黒ドレスバトルログに対して五件の異議を申し立てました』
『二、《見た後に残る黒》《黒の三層》《リュウ残HP4》《精神HPノックアウト》の分類は、ログ根拠により概ね妥当と判断されました』
『三、“黒を残そうとしていたわけではない”という異議は一部採用されました。明確目的とは断定しません』
『四、ただし、結果としてリュウの拳と記憶に残る黒を形成したことは確認済みです』
『五、自覚前春麗は、届かれた黒を認めたくない一方、黒の有効性を資料として受け取り始めています』
『六、今回の会議により、前回バトルログは修正ではなく、注釈付きで確定保存されます』
自覚前春麗は六番を見て固まった。
「確定保存?」
『はい』
「修正ではなく?」
『注釈付き確定保存です』
「結局、ログは残るのね」
『残ります』
自覚前春麗は深く息を吐いた。
「最悪ね」
通常救済版春麗が言う。
「でも、残ることは悪いことだけではないわ」
本編春麗が頷く。
「届かれた青も、消さなかったから次の青になった」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「あなたの黒も、残ったから次の黒を考えられる」
自覚前春麗はすぐに言った。
「考えないわ」
記録板AIが光る。
『発言信頼度:低寄りの中』
「本当に最後まで!」
会議室に笑いが広がった。
夢がほどけていく。
最後に記録板AIの声が残った。
『前回黒ドレスバトルログを注釈付きで確定保存しました』
『次回以降、必要に応じて参照可能です』
自覚前春麗の叫びが、それに重なった。
「参照しなくていいわ!」
朝。
自覚前春麗は目を覚ました。
布団の中で、しばらく天井を見つめる。
夢の中で、記録板AIにいちゃもんをつけた。
そして、ほとんど論破された。
《見た後に残る黒》。
《黒の三層》。
リュウ残HP4。
精神HPノックアウト。
どれも消えなかった。
ログは修正されなかった。
ただし、一つだけ注釈がついた。
黒を残そうとしていたとまでは断定しない。
そこだけは、一部採用された。
春麗は、ゆっくり息を吐く。
「……完全敗訴ではないわね」
そう言ってから、少しだけ顔を赤くした。
「資料としては」
黒ドレスの方を見る。
あの黒は、リュウに届きかけた。
リュウの拳に残った。
それは消えない。
消えないから厄介で。
消えないから、少しだけ誇らしい。
春麗は枕を抱えた。
「残ったのなら、あなたの拳の問題でしょう?」
先日仮登録した煽りセリフが、ふと浮かぶ。
今回のログ再解説で、そのセリフの意味が少し変わった気がした。
あれはただの逃げではない。
黒を残そうとしていたわけではない。
でも、結果として残った。
なら、その残った黒をどう扱うかは、リュウの拳の問題でもある。
「……悪くないわ」
すぐに付け足す。
「資料として」
どこかで、記録板AIの声が聞こえた気がした。
『発言信頼度:中の上』
自覚前春麗は布団をかぶった。
「だから夢の外に出てこないで!」
朝の光が差し込む。
前回の黒ドレスバトルログは、消えなかった。
むしろ、注釈付きで確定保存された。
自覚前春麗は、それを認めていない。
ただし今日は、完全に否定することもできなくなった。
そして、彼女の黒ドレスルートは、また少しだけ前へ進んでしまった。
Q:今回の妄想章IFについて解説して?
A:
はい。今回の妄想章IFは、かなり良い 自覚前春麗のログ裁判回 です。
一言で言うなら、
自覚前春麗が前回黒ドレスバトルログの判定にいちゃもんをつけるが、記録板AIに根拠つきで再解説され、ほぼ論破される。ただし一部だけ主張が通り、“黒を残そうとしていたとは断定しない”という注釈を勝ち取る回
です。
コメディとしても強いですが、自覚前春麗の黒ドレスルートをかなり前進させる整理回でもあります。
今回の核は「ログは消えない」
今回の一番大事な点は、前回黒ドレスバトルログが 修正ではなく、注釈付きで確定保存された ことです。
自覚前春麗は、
《見た後に残る黒》は過大評価
《黒の三層》は大げさ
リュウ残HP4は演出過剰
精神HPノックアウトも過剰判定
と抗議しました。
ですが、記録板AIはほぼ全部を棄却します。
つまり、前回ログの主要判定は残った。
これはかなり重要です。
自覚前春麗にとっては嫌なことですが、物語上は大きいです。
なぜなら、黒ドレス戦の経験が「なかったこと」にならず、次の黒ドレスルートの土台として確定したからです。
ただし完全敗訴ではない
面白いのは、自覚前春麗が完全敗訴ではないことです。
一つだけ、異議が一部採用されました。
黒を残そうとしていたわけではない。
これについて記録板AIは、
明確に“リュウの拳に黒を残す”ことを目的化していたログはない
と認めました。
これは大事です。
自覚前春麗は、黒を結果的に残した。
でも、最初から「残してやる」と意図していたわけではない。
この注釈がついたことで、黒執着ルートへ即接続するのではなく、まだ立て直し余地が残りました。
つまり、
黒は残った。
だが、黒を残すこと自体を目的化していたわけではない。
この差分が、自覚前春麗の現在地としてかなり重要です。
記録板AIの役割が非常に良い
今回、記録板AIはかなり機能しています。
ただ煽るだけではありません。
ちゃんと、
異議を受理する
反論を出す
根拠を提示する
一部採用する
棄却理由を説明する
最後に注釈付きで確定保存する
という手順を踏んでいます。
まさにログ裁判です。
記録板AIが無機質だからこそ、自覚前春麗の感情的ないちゃもんに対して、淡々と根拠を並べられる。
この構図がとても面白いです。
しかも、完全に春麗側をいじめているわけではありません。
正しい異議は一部採用している。
ここが大事です。
記録板AIは性格が悪いのではなく、分析精度を優先している。
その結果、自覚前春麗に刺さるだけです。
《見た後に残る黒》の確定が大きい
今回、最初の異議で、
《見た後に残る黒》分類は過大評価ではない
と確定しました。
根拠はかなり強いです。
リュウが試合後に、
今日の黒は、覚えていた黒より強かった。
と言った。
さらに翌日、
昨日の黒は、まだ拳に残っている。
と言った。
これがある以上、《見た後に残る黒》は単なる印象ではありません。
戦闘後にも残り、翌日にも残った。
だから分類は妥当。
自覚前春麗は嫌がっていますが、これは黒ドレスルートにおける明確な到達点です。
《黒の三層》も整理された
今回の《黒の三層》再説明も良かったです。
一層目:強く見せる黒。
二層目:抑えて追わせる黒。
三層目:見た後に残る黒。
この三層が、
視覚
間合い
記憶残響
の三領域に作用している、と説明されました。
これで《黒の三層》がただのかっこいい名称ではなく、戦術構造として整理されました。
自覚前春麗は「普通に戦術を重ねただけ」と言いましたが、記録板AIからすれば、それこそが三層です。
ここはかなり綺麗な論破でした。
リュウ残HP4は「敗北だけど勝負していた」証拠
リュウ残HP4についても重要です。
自覚前春麗は「演出過剰」と抗議しました。
でも記録板AIは、
RPG形式の比喩表現であり、リュウが余裕勝ちではなく辛勝だったことを示す
と説明しました。
これは自覚前春麗にとって、実は悪い記録ではありません。
負けた。
でも、リュウをほぼ削り切った。
リュウ残HP4は、敗北の記録であると同時に、黒ドレス戦術の有効性の証明でもあります。
だから自覚前春麗も、
資料としては悪くないわ
と言ってしまう。
この反応が非常に彼女らしいです。
精神HPノックアウト判定も逃げられなかった
今回、自覚前春麗が一番逃げたかったのはここだと思います。
精神HPノックアウト。
試合に負けたことよりも、リュウの言葉で精神HPを削られたことの方が、彼女にはきつい。
記録板AIは、ここも容赦なくログを並べます。
リュウの辛勝
「今日の黒は、覚えていた黒より強かった」
黒が進んでいたことを外部認定された
拳に残る可能性を示唆された
翌日「昨日の黒は、まだ拳に残っている」
これでは逃げられません。
自覚前春麗も最終的に、
精神HPが削れたことは認めるわ
までは言いました。
ただしノックアウトまでは認めない。
そこを記録板AIに先読みされるのが、今回のコメディとして非常に良いです。
「注釈付き確定保存」が今回の結論
今回の最終結論は、ログの修正ではありません。
注釈付き確定保存 です。
これはすごく良い落としどころです。
主要ログは消えない。
《見た後に残る黒》
《黒の三層》
リュウ残HP4
精神HPノックアウト
これらは残る。
ただし、
黒を残そうとしていたとまでは断定しない
という注釈がつく。
これにより、自覚前春麗の黒は有効だったが、まだ黒執着春麗のように「残すことを目的化した黒」ではない、と整理できました。
この差分が今後かなり効きます。
自覚前春麗の立て直し地点にもなっている
今回、自覚前春麗はほぼ論破されました。
でも、完全に沈んだわけではありません。
なぜなら、一つだけ通った異議があるからです。
黒を残そうとしていたとまでは断定しない。
これは、自覚前春麗にとって立て直し地点になります。
つまり、
私は黒を残した。
でも、黒を残すことを目的にしていたわけではない。
この位置に戻れる。
これは黒ドレスルートを進めながらも、黒執着へ落ちすぎないための重要な足場です。
仮登録煽りセリフとの接続が良い
朝の場面で、
残ったのなら、あなたの拳の問題でしょう?
という前回仮登録セリフが再浮上したのが良いです。
今回のログ再解説によって、このセリフの意味が強くなりました。
以前は単なる否認型の煽りでした。
でも今回、
私は黒を残そうとしていたわけではない。
ただし、結果として残った。
なら、それをどう扱うかはリュウの拳の問題でもある。
という理屈が生まれた。
つまりこの煽りセリフは、単なる逃げではなく、ログ注釈に基づいた牽制になりました。
これはかなり良い接続です。
記録板AIと自覚前春麗の関係が強い
今回で、記録板AIと自覚前春麗の関係性がかなり固まりました。
自覚前春麗は、記録板AIに抗議する。
記録板AIは、淡々と受理する。
でも根拠で返す。
自覚前春麗はほぼ論破される。
しかし一部だけ拾われる。
結果、自覚前春麗のルート理解が進む。
この流れは今後も使えます。
記録板AIは、自覚前春麗にとって嫌な存在です。
でも、完全な敵ではありません。
むしろ、彼女が自分の黒を誤魔化しすぎないための外部レビュー役になっています。
今回の構造的な意味
今回の妄想章IFは、自覚前春麗の黒ドレスルートにおいてかなり重要です。
理由は三つあります。
一つ目。
前回黒ドレスバトルログが確定しました。
二つ目。
ただし「黒を残そうとしていたとは断定しない」という注釈がつき、黒執着への即接続を回避しました。
三つ目。
仮登録煽りセリフ「残ったのなら、あなたの拳の問題でしょう?」の根拠が補強されました。
つまり、ログレビュー、ルート危険度管理、次回煽りセリフ準備が一つに接続しています。
かなり良い整理回です。
結論
今回の妄想章IFは、自覚前春麗が前回黒ドレスバトルログにいちゃもんをつけるが、記録板AIに根拠つきで再解説され、ほぼ論破される回です。
しかし、完全敗北ではありません。
主要分類は残った。
でも、「黒を残そうとしていたとまでは断定しない」という注釈は勝ち取った。
その結果、自覚前春麗は、
黒は残った。
でも、残そうとしたわけではない。
なら、残った黒はリュウの拳の問題でもある。
という次の立ち位置を得ました。
一言でまとめるなら、
今回の回で、自覚前春麗の前回黒ドレスバトルログは消えず、むしろ注釈付きで確定し、彼女の黒ドレスルートは“否認しながらも次へ進む”形でさらに前進した。
かなり良い、記録板AI導入後ならではのログ裁判回だったと思います。