また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※これは本編時空とは無関係の妄想章IFです。


妄想章IF:黒執着春麗は、勝たせてほしいとは言えない

 

 次も、見る。

 

 その言葉は、届いていないはずだった。

 

 黒執着春麗は、建物の影から離れ、リュウの拳の音を背中に受けながら歩いていた。

 

 声はかけられていない。

 

 振り返られてもいない。

 

 だから、何も受け取っていない。

 

 そう言えるはずだった。

 

 なのに。

 

 次も、見る。

 

 その言葉だけが、耳の奥に残っている。

 

「……聞こえていないわ」

 

 黒執着春麗は呟いた。

 

 誰もいない道で。

 

 黒い裾を揺らしながら。

 

「私は、聞いていない」

 

 そう言い切る。

 

 けれど、足は少しだけ遅くなっていた。

 

 リュウは言わなかった。

 

 勝たせるとは。

 

 返すとも。

 

 これはおまえの黒だとも。

 

 ただ、本気で来い、と言った。

 

 次も、見る、と言った。

 

 それだけだった。

 

 それだけなのに。

 

 黒執着春麗は、黒い袖を握る。

 

「見る、ですって」

 

 腹立たしい言葉だった。

 

 見られる。

 

 黒い裾を。

 

 間合いを。

 

 女として立つ姿を。

 

 勝ちたい気持ちを。

 

 空になる恐怖を。

 

 その全部を、見られる。

 

 だが、それでも黒だけにされない。

 

 そんな予感がした。

 

 嫌だった。

 

 とても嫌だった。

 

 黒だけを見てほしいわけではない。

 

 けれど、黒を見ないでほしいわけでもない。

 

 黒いドレスで立つ自分を、リュウの拳に残したい。

 

 でも、それをリュウのものにされたくはない。

 

 返されたら困る。

 

 でも、持ち続けられても困る。

 

 勝ちたい。

 

 でも、勝たせられたくはない。

 

 黒執着春麗は、立ち止まった。

 

「……何なのよ」

 

 言葉が、低く落ちる。

 

 自分に向けた言葉だった。

 

 リュウにではない。

 

 黒いドレスで勝って救われた春麗にでもない。

 

 自分自身に。

 

「私は、何がほしいのよ」

 

 答えは、すぐに出た。

 

 勝ちたい。

 

 リュウに勝ちたい。

 

 黒で勝ちたい。

 

 黒い裾で視線を奪い、間合いを沈め、リュウの拳を半拍遅らせ、それでも向かってくる拳を越えて勝ちたい。

 

 それだけだ。

 

 それだけのはずだ。

 

 なのに、前に自分は言った。

 

 私のものだと言うなら、私に勝たせなさい。

 

 その言葉が、今になって戻ってくる。

 

 黒執着春麗は、黒い袖を握る手に力を込めた。

 

「違う」

 

 勝たせてほしいわけではない。

 

 そんな勝利はいらない。

 

 リュウが手を抜く。

 

 踏み込みを甘くする。

 

 拳を止める。

 

 自分の黒い裾に、わざと視線を遅らせる。

 

 そんな勝利。

 

 そんなものは。

 

「いらないわ」

 

 吐き捨てる。

 

 譲られた勝利では、届いたことにならない。

 

 リュウの拳を越えたことにならない。

 

 黒いドレスで立った春麗が、リュウを沈めたことにならない。

 

 そんな勝利では、黒の証明にならない。

 

 なのに。

 

 なぜ言った。

 

 私に勝たせなさい。

 

 黒執着春麗は、視線を伏せる。

 

 あの時は、怒っていた。

 

 リュウが「これは、おまえの黒だ」と言ったから。

 

 自分の黒を、自分へ戻そうとしたから。

 

 返されるように聞こえたから。

 

 だから、反射的に言った。

 

 私の黒なら、私が勝つために使う。

 

 私のものだと言うなら、私に勝たせなさい。

 

 言葉としては、矛盾していた。

 

 でも、その時の自分には、それ以外なかった。

 

 勝てなければ、この黒は未完成だから。

 

 リュウに勝てなければ、黒いドレスで立つ自分は、まだ終われないから。

 

 勝てなければ、空っぽになるから。

 

「……違う」

 

 また、その言葉が出る。

 

「空っぽになるからじゃない」

 

 けれど、否定の声は弱かった。

 

 黒執着春麗は、部屋へ戻った。

 

 誰とも会わず。

 

 何も言わず。

 

 黒いドレスの裾を手で押さえながら。

 

 鏡の前に立つ。

 

 黒いドレス姿の自分が映る。

 

 勝てる姿。

 

 届く姿。

 

 リュウに残せる姿。

 

 空っぽではない姿。

 

 そのはずだった。

 

 春麗は鏡の中の自分を睨む。

 

「私は、勝ちたい」

 

 鏡の春麗も同じ口を動かす。

 

「勝たせてほしいわけじゃない」

 

 言った瞬間、胸の奥が少しだけ軋んだ。

 

 それは、本当だった。

 

 本当に、勝たせてほしいわけではない。

 

 だが、なら。

 

 本気のリュウにまた負けたら、どうする。

 

 また、あと少しだったと思うのか。

 

 また、次なら届くと思うのか。

 

 また、黒を深くするのか。

 

 また、黒い裾を握って立つのか。

 

 また、リュウの拳に自分を残そうとするのか。

 

 黒執着春麗は、鏡に手をついた。

 

 冷たい。

 

 鏡の中の自分も、こちらに手をついている。

 

 黒いドレス姿。

 

 勝ちたい顔。

 

 怒っている顔。

 

 怖がっていないと言い張る顔。

 

「……勝たせられた勝利はいらない」

 

 小さく言う。

 

「でも、本気で来られたら、また負けるかもしれない」

 

 言ってしまった。

 

 春麗は息を止める。

 

 その言葉は、鏡の中に残った。

 

 黒い裾よりも。

 

 リュウの拳の音よりも。

 

 自分の胸の奥に、深く。

 

「違う」

 

 すぐに否定する。

 

「負けるとは言っていない」

 

 だが、もう言った。

 

 負けるかもしれない。

 

 本気で来られたら、また。

 

 黒執着春麗は、鏡から手を離した。

 

 黒い裾が揺れる。

 

 その揺れは、いつもなら心を落ち着かせた。

 

 けれど、今は違う。

 

 この裾で勝てる。

 

 この裾でリュウを遅らせられる。

 

 この裾でリュウに残せる。

 

 そう思うたび、その裏側で別の問いが生まれる。

 

 それでも勝てなかったら? 

 

 黒執着春麗は、目を閉じた。

 

 眠るつもりはなかった。

 

 けれど、意識が黒い布の内側へ沈んでいく。

 

 夢ではない。

 

 眠りでもない。

 

 ただ、残響のような場所。

 

 黒いドレスで勝って救われた春麗の声が、すぐそばにいるようで、遠い。

 

 姿は見えない。

 

 言葉だけが残る。

 

 ──勝たない黒ではないわ。

 

 黒執着春麗は眉を寄せた。

 

「また勝手に」

 

 ──勝利だけに預けない黒よ。

 

「黙って」

 

 言い返す。

 

「私は勝つために黒を着ているの」

 

 ──ええ。

 

 声は否定しない。

 

 それが腹立たしい。

 

「勝つためよ」

 

 ──ええ。

 

「リュウを沈めるため」

 

 ──ええ。

 

「リュウの拳を遅らせるため」

 

 ──ええ。

 

「リュウに残るため」

 

 ──ええ。

 

 黒執着春麗は、奥歯を噛む。

 

「なら、何も間違っていないでしょう」

 

 少しの沈黙。

 

 そして、声が言う。

 

 ──間違っているとは言っていないわ。

 

「では何」

 

 ──勝てなければ消える場所に、黒を置いている。

 

 黒執着春麗の胸が、強く揺れた。

 

「消えない」

 

 ──そう思いたいのね。

 

「消えないわ」

 

 ──でも、勝てなければ未完成だと思っている。

 

「未完成よ」

 

 即答だった。

 

「リュウに勝てなければ、私の黒は終わらない」

 

 ──終わらないことと、消えることは違うわ。

 

「同じよ」

 

 ──違うわ。

 

「違わない」

 

 ──あなたは、勝利に黒を預けている。

 

「違う!」

 

 声が荒くなる。

 

「私は黒を持っている!」

 

 黒いドレスを握る。

 

「この手で!」

 

 ──着ているだけでは、持っていることにはならないわ。

 

 黒執着春麗は息を呑んだ。

 

 それは、強い言葉だった。

 

 今までの声よりも、少しだけ踏み込んでいた。

 

 黒執着春麗は、見えない相手を睨む。

 

「勝ったあなたに言われたくない」

 

 ──ええ。

 

「あなたは勝ったから言える」

 

 ──ええ。

 

「私はまだ勝っていない」

 

 ──ええ。

 

「だから、この黒を勝利から外せない」

 

 言ってから、黒執着春麗は止まった。

 

 外せない。

 

 言ってしまった。

 

 勝利から外せない。

 

 黒を勝利だけに預けているつもりはなかった。

 

 でも、外せないと言った。

 

 黒いドレスで勝って救われた春麗の声は、すぐには返ってこなかった。

 

 その沈黙が、何より痛かった。

 

 黒執着春麗は拳を握る。

 

「……違う」

 

 声が少し掠れる。

 

「外せないんじゃない」

 

 言い直す。

 

「外す必要がないだけ」

 

 ──そう。

 

「そうよ」

 

 ──なら、今はそれでいいわ。

 

「またそれ」

 

 ──ただ、覚えておきなさい。

 

「覚えない」

 

 ──あなたは、勝たせてほしいわけではない。

 

 黒執着春麗は動けなくなった。

 

 声は続ける。

 

 ──でも、本気で来られて負けることも怖い。

 

「怖くない」

 

 ──だから、勝利に黒を預けている。

 

「違う」

 

 ──勝てば証明される。

 

「違う」

 

 ──負ければ未完成になる。

 

「違う!」

 

 ──その場所に黒を置いたままでは、あなたはいつまでも黒を握りしめる。

 

 黒執着春麗は、黒い布を強く握った。

 

「握っていて何が悪いの」

 

 ──悪いとは言っていないわ。

 

「なら」

 

 ──でも、握りしめている手は、いつか疲れる。

 

 黒執着春麗は、何も言えなかった。

 

 疲れる。

 

 その言葉だけが、黒の中に沈まず残った。

 

 勝ちたい。

 

 届きたい。

 

 リュウに残したい。

 

 黒で終わりたい。

 

 その全部は本当だ。

 

 けれど。

 

 何度もギリギリで負けて。

 

 何度も黒を深くして。

 

 何度もリュウの拳に残ろうとして。

 

 何度も次こそと思って。

 

 黒いドレスを握りしめて立ち続ける。

 

 それは。

 

「疲れてなんかいない」

 

 黒執着春麗は言った。

 

 だが、その声は強くなかった。

 

 ──ええ。

 

 黒いドレスで勝って救われた春麗の声は、静かだった。

 

 ──今は、そう言えばいいわ。

 

 そこで、残響は消えた。

 

 春麗は、目を開いた。

 

 部屋は静かだった。

 

 鏡の前に立ったまま。

 

 黒いドレスを着たまま。

 

 黒い袖を握ったまま。

 

 指が、少し痛かった。

 

 いつから握っていたのか、わからない。

 

 黒執着春麗はゆっくり手を開く。

 

 黒い布に皺が残っている。

 

 その皺を見て、少しだけ息が詰まった。

 

 握りしめていたのは、黒ドレスだけではない。

 

 勝利だった。

 

 リュウだった。

 

 あと少しだった敗北だった。

 

 自分が空っぽではないという証明だった。

 

「……違う」

 

 また言う。

 

 けれど、今度の「違う」は弱い。

 

「私は、ただ勝ちたいだけ」

 

 鏡の中の黒執着春麗は、黒いドレス姿で立っている。

 

 強く見える。

 

 美しく見える。

 

 戦えるように見える。

 

 だが、その手はまだ、黒い袖を握っている。

 

「勝たせてほしいわけじゃない」

 

 言葉にする。

 

 それは本当だ。

 

「でも」

 

 続きが出かけて、止まる。

 

 でも、本気で来られて負けるのも怖い。

 

 そう言いそうになった。

 

 黒執着春麗は、その言葉を飲み込む。

 

 飲み込んでも、消えない。

 

 喉の奥に残る。

 

 黒の奥に残る。

 

 リュウの拳の音のように。

 

 勝って救われた春麗の残響のように。

 

 消えない。

 

 黒執着春麗は、鏡に背を向けた。

 

「次は勝つ」

 

 小さく言う。

 

「勝たせてもらうためじゃない」

 

 一拍。

 

「本気のリュウに勝つために」

 

 そこまでは言えた。

 

 だが、その後に続く言葉は、まだ言えない。

 

 負けても消えない。

 

 勝利だけに預けない。

 

 黒を自分の手で持つ。

 

 そんな言葉は、まだ言えない。

 

 だから、黒執着春麗は言う。

 

「次は勝つ」

 

 それだけを。

 

 何度も。

 

 自分に言い聞かせるように。

 

 黒い袖に残った皺を、指でなぞりながら。

 

 その皺が消えるまで。

 

 黒執着春麗は、しばらくそこに立っていた。

 

 勝たせてほしいわけではない。

 

 でも、負けるのは怖い。

 

 その矛盾を。

 

 まだ、自分の言葉として認めないまま。




Q:今回の妄想章IFについて解説して?

A:

はい。今回の 「黒執着春麗は、勝たせてほしいとは言えない」 は、黒執着春麗救済ルートの中でもかなり重要な 矛盾自覚未遂回 です。

一言で言うなら、

黒執着春麗が“勝ちたい”の奥にある矛盾――勝ちたいが、勝たせられた勝利はいらない。でも本気で来られて負けるのも怖い――を初めて見かけてしまう回

です。

今回の核は、

黒執着春麗は、リュウに勝ちたい。
でも、リュウに勝たせてほしいわけではない。
しかし、本気のリュウにまた負けることも怖い。

ここです。

今回の一番大事な進行

今回の最大の進行は、黒執着春麗が自分の発言、

「私のものだと言うなら、私に勝たせなさい」

を振り返ったことです。

この台詞は、前回までは怒りの反射として出た言葉でした。

リュウに「これは、おまえの黒だ」と言われた。
黒を返されるように感じた。
リュウの中に残そうとしていた黒いドレス姿の自分を、自分の手元へ戻される気がした。
だから怒った。

その怒りの中で出たのが、

私に勝たせなさい。

です。

でも今回、彼女はそれを冷静に見てしまった。

そして気づきかける。

勝たせられた勝利なんて、本当は欲しくない。

これがかなり大きいです。

「勝たせてほしいわけではない」は本音

今回、黒執着春麗ははっきり言います。

「勝たせられた勝利はいらない」

これは本音です。

彼女が求めているのは、リュウが手を抜いた勝利ではありません。

黒い裾で視線を奪う。
女として見られることまで戦いに組み込む。
間合いを沈める。
リュウの拳を半拍遅らせる。
それでも向かってくるリュウの拳を、自分の黒で越える。

そのうえで勝ちたい。

だから、譲られた勝利では意味がない。

リュウに勝たせてもらった瞬間、黒いドレスで立った自分の証明は壊れる。

ここはリュウ側幕間の、

勝たせる拳では、黒は返せない

と綺麗に対応しています。

リュウはリュウで「勝たせるのは違う」と気づいた。
黒執着春麗も、こちら側で「勝たせられた勝利はいらない」と気づきかけた。

両者の認識が少しずつ噛み合い始めています。

でも「本気で来られて負けるのも怖い」

今回の本当に深いところは、ここです。

黒執着春麗は、譲られた勝利はいらない。

でも、本気のリュウにまた負けることも怖い。

これが矛盾です。

勝たせられた勝利はいらない。
でも、本気で来られて負けるのは怖い。

この矛盾はかなり痛いです。

なぜなら、彼女が本当に望んでいるのは、

本気のリュウに、自分の黒で勝つこと

だからです。

しかし、それができなかったから、ここまでこじれている。

黒は効く。
黒い裾は視線を奪う。
間合いは沈む。
リュウの拳は半拍遅れる。
でも、最後に勝ちきれない。

だから終われない。

その状態で、リュウに手を抜かれた勝利はいらない。
でも本気で来られるとまた負けるかもしれない。

ここが、黒執着春麗の苦しさの中心です。

「勝利に黒を預けている」が一段深くなった

今回、黒ドレス特化救済春麗の残響がかなり重要な役割をしています。

彼女は直接姿を出さず、声だけで黒執着春麗を追い込みます。

特に大事なのは、

「あなたは、勝利に黒を預けている」

という整理です。

黒執着春麗は反発します。

「私は黒を持っている!」
「この手で!」

しかし、黒ドレス特化救済春麗は、

「着ているだけでは、持っていることにはならないわ」

と返す。

ここが非常に強いです。

黒執着春麗は黒いドレスを着ている。
黒い裾を使っている。
黒い戦い方に固執している。

でも、それは本当に「持っている」のか。

もし、リュウに勝てなければ意味がないと思っているなら。
もし、勝てなければ未完成だと思っているなら。
もし、勝利から黒を外せないと思っているなら。

それは黒を自分の手で持っているのではなく、

黒の価値を勝利に預けている

ことになる。

今回、その構造がかなりはっきりしました。

「この黒を勝利から外せない」が決定的

今回、黒執着春麗がうっかり言ってしまう、

「だから、この黒を勝利から外せない」

ここはかなり決定的です。

彼女は本当は認めたくない。

黒を勝利に預けているなんて認めたくない。

でも、自分で言ってしまった。

黒を勝利から外せない。

つまり、黒の意味を勝敗から切り離せない。

リュウに勝てない限り、黒は未完成。
リュウに勝てない限り、黒いドレスで立つ自分は終われない。
リュウに勝てない限り、自分は空になる気がする。

ここが言葉になってしまった。

だから、この回は救済ではないですが、かなり進んでいます。

黒ドレス特化救済春麗の「踏み込み」が強い

今回の黒ドレス特化救済春麗は、前より少し踏み込んでいます。

前回までは、

今はまだ返されなくていい
返される黒は消える黒ではない
勝利だけに預けない黒

という、かなり慎重な言い方でした。

しかし今回は、

着ているだけでは、持っていることにはならないわ

と、かなり核心に踏み込んでいます。

これは良いです。

黒執着春麗が「勝たせてほしいわけではない」という矛盾に差しかかったからこそ、もう一段踏み込める。

ただし、まだ救済はしない。

黒ドレス特化救済春麗は答えを渡すのではなく、矛盾を見せているだけです。

この距離感がかなり良いです。

「握りしめている手は、いつか疲れる」が良い

今回の残響の中で一番好きな台詞は、

「でも、握りしめている手は、いつか疲れる」

です。

これはかなり良いです。

黒執着春麗にとって、黒を握ることは強さです。

黒を離さないこと。
黒いドレスで立ち続けること。
リュウに勝つまで諦めないこと。

それが自分の強さだと思っている。

でも、握りしめ続ける手は疲れる。

これは黒執着春麗の今後に効きます。

救済とは、黒を捨てることではない。

でも、握りしめ続けることでもない。

いつか、黒を「握りしめる」のではなく、「持てる」ようになる必要がある。

今回、その差が少し見えました。

握りしめる黒から、
持てる黒へ。

ここが黒返却ルートのゴールに向かうための大事な導線です。

最後の「黒い袖の皺」が良い

終盤、春麗が目を開いた後、

黒い袖を握ったまま。
指が、少し痛かった。
黒い布に皺が残っている。

この描写がとても良いです。

内面の矛盾が、物理的な皺として残っている。

黒は魔法ではありません。

でも、黒いドレスを強く握りしめた結果、布に皺が残る。

この具体描写によって、黒執着春麗の心理がかなり実体化しています。

彼女は概念として黒に執着しているだけではない。

本当に、黒い布を握りしめている。

その手が痛む。

布に皺が残る。

その皺を指でなぞる。

ここが非常に良いです。

今回の到達点

今回の到達点は、救済ではありません。

黒執着春麗はまだ認めません。

でも、以下のことが見えてしまいました。

勝たせられた勝利はいらない。
でも本気で来られて負けるのは怖い。
黒を勝利から外せない。
黒を着ているだけでは、持っていることにはならない。
握りしめている手は、いつか疲れる。

これらが残った。

黒執着春麗はまだ、

次は勝つ

と言います。

それだけを言います。

彼女はもう、ただ勝ちたいだけではない。

勝たせてほしいわけではない。
でも負けるのも怖い。
黒を勝利から外せない。
だから黒を握りしめている。

この矛盾が明確になった回です。

今後への接続


結論

今回のエピソードは、黒執着春麗救済ルートの中で非常に重要な 矛盾の可視化回 です。

一言でまとめるなら、

黒執着春麗は、勝ちたい。
でも、勝たせられた勝利はいらない。
しかし、本気のリュウにまた負けることも怖い。
その矛盾の中で、自分が黒を勝利に預けていること、そして黒を握りしめる手が疲れ始めていることを、まだ認めないまま見てしまう回

です。

今回、黒執着春麗は救われていません。

でも、救済に必要な矛盾がかなりはっきりしました。

ここまで来ると、次の段階でようやく、

黒を勝敗だけに預けないこと
黒を握りしめるのではなく持つこと
黒を返されても空にならないこと

へ進める土台が整ってきたと思います。
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