また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※これは本編時空とは無関係の妄想章IFです。
黒執着春麗世界線のリュウの幕間です。


妄想章IF幕間:リュウは、勝ってきた黒を全部同じ勝利にはできない

 

 夜明け前。

 

 空はまだ暗かった。

 

 風はない。

 

 音も少ない。

 

 リュウは、一人で立っていた。

 

 拳を握る。

 

 開く。

 

 もう一度、握る。

 

 開く。

 

 いつもの動きだった。

 

 考える時、リュウはよくそうする。

 

 拳は、嘘をつかない。

 

 勝ったこと。

 

 負けなかったこと。

 

 届いたこと。

 

 届きかけられたこと。

 

 見たもの。

 

 見きれなかったもの。

 

 そういうものは、言葉より先に拳へ残る。

 

 今の拳には、いくつもの黒が残っていた。

 

 黒い力ではない。

 

 呪いでもない。

 

 春麗が、黒いドレスを使って作った戦い方。

 

 黒い裾。

 

 肩の角度。

 

 踏み込みの半拍。

 

 動かない間合い。

 

 見られる距離。

 

 近すぎる呼吸。

 

 それぞれ違う春麗。

 

 それぞれ違う黒。

 

 リュウは、拳を握った。

 

 重い。

 

 だが、その重さは一つではなかった。

 

 春麗の黒を受けてきた。

 

 何度も。

 

 何度も勝った。

 

 ぎりぎりで。

 

 いつも、ぎりぎりで。

 

 そう思っていた。

 

 だが、拳の中に残る重さは、同じ形をしていない。

 

 全部、春麗の黒だった。

 

 全部、リュウが勝った。

 

 だが。

 

 全部、同じではなかった。

 

「……違うな」

 

 リュウは小さく言った。

 

 誰に聞かせる言葉でもない。

 

 ただ、自分の拳に向けた言葉だった。

 

「全部、同じ勝ちではない」

 

 拳を開く。

 

 掌には何もない。

 

 当然だ。

 

 それでも、残っている。

 

 あの日の黒い裾。

 

 あの日の肩の角度。

 

 あの日の沈黙。

 

 あの日の距離。

 

 あの日の半拍。

 

 春麗が変えてきたものが、拳の奥に残っている。

 

 リュウは目を閉じた。

 


 

 最初に戻ってきたのは、黒い裾の遅れだった。

 

 春麗が踏み込む。

 

 足が動く。

 

 蹴りが来る。

 

 その後から、黒い裾が半拍遅れて揺れる。

 

 目が追った。

 

 見てはいけないわけではない。

 

 見なければならない。

 

 だが、見た瞬間、判断が遅れた。

 

 春麗の足はもう動いている。

 

 裾は遅れてくる。

 

 リュウの拳は、その遅れに引っかかった。

 

 肩に掌底が入る。

 

 痛み。

 

 呼吸が乱れる。

 

 春麗は言った。

 

 遅いわ、と。

 

 リュウは覚えている。

 

 あの日、自分は遅れた。

 

 黒い裾に、半拍遅れた。

 

 だが、最後は勝った。

 

 春麗の蹴りを受け、踏み込み、拳を届かせた。

 

 勝った。

 

 けれど。

 

 リュウは拳を握る。

 

「あの半拍は、残っている」

 

 勝ったから消えるものではない。

 

 負けなかったからなかったことになるものでもない。

 

 春麗は、あの日、裾の遅れを戦いに入れてきた。

 

 それは確かに、自分の拳を遅らせた。

 

 リュウは息を吐く。

 

 次の記憶が戻る。

 


 

 次は、肩だった。

 

 春麗の肩が、わずかに落ちる。

 

 掌底か。

 

 蹴りか。

 

 その前の呼吸か。

 

 判断が散る。

 

 黒い裾だけを見ていると遅れる。

 

 だから、肩を見る。

 

 肩を見れば、腰が隠れる。

 

 腰を見れば、足が消える。

 

 その一瞬に、春麗は入ってくる。

 

 リュウの脇腹に蹴りが入った。

 

 深かった。

 

 あの日は、呼吸が止まった。

 

 もう少しで膝が落ちた。

 

 春麗は勝てると思っただろう。

 

 リュウも、負けるかもしれないと思った。

 

 だが、最後は立った。

 

 春麗の肩ではなく、重心へ踏み込んだ。

 

 拳が届いた。

 

 勝った。

 

 だが。

 

 リュウは、拳の奥に残る痛みを思い出す。

 

「あの日の春麗は、裾だけではなかった」

 

 黒いドレス。

 

 その輪郭。

 

 肩。

 

 腰。

 

 呼吸。

 

 全部を使って、こちらの判断を散らしてきた。

 

 勝った。

 

 だが、簡単ではなかった。

 

 同じ黒ではなかった。

 


 

 次は、動かない春麗だった。

 

 黒い裾が止まっている。

 

 揺れない。

 

 誘わない。

 

 ただ、そこに立っている。

 

 それが、逆に重かった。

 

 動くか。

 

 待つか。

 

 踏み込むか。

 

 相手が動かない時、こちらの拳が先に答えを求める。

 

 その瞬間を、春麗は待っていた。

 

 リュウが踏み込む。

 

 春麗が動く。

 

 蹴りが入る。

 

 深い。

 

 あの日も、危なかった。

 

 動かないことで作る圧。

 

 待つことで奪う半拍。

 

 リュウはそれを受けた。

 

 そして、最後に春麗が動く瞬間を見た。

 

 裾ではない。

 

 止まっている黒でもない。

 

 動き出す春麗。

 

 そこへ拳を置いた。

 

 勝った。

 

 しかし。

 

「待っていたのは、春麗だった」

 

 リュウは呟く。

 

 自分が耐えていたのではない。

 

 春麗が待っていた。

 

 こちらが動く半拍を。

 

 その黒は、前の黒とは違った。

 

 揺れる黒ではなく、動かない黒だった。

 

 勝った。

 

 だが、同じ勝ちではなかった。

 


 

 次は、近すぎる距離だった。

 

 春麗が、真正面に入ってくる。

 

 黒いドレス姿で。

 

 逃げない距離。

 

 見ないわけにはいかない距離。

 

 拳も、蹴りも、呼吸も、視線も、全部が近い。

 

 リュウは見た。

 

 黒い裾を。

 

 肩を。

 

 呼吸を。

 

 そして、春麗を。

 

 春麗は揺れた。

 

 ほんのわずかに。

 

 見せるために近づいた。

 

 だが、見られたことで揺れた。

 

 その揺れを見た。

 

 拳が出た。

 

 春麗の蹴りも入った。

 

 深かった。

 

 互いに倒れかけた。

 

 最後に立ったのは、リュウだった。

 

 勝った。

 

 だが。

 

 リュウは、拳を開いた。

 

「俺は、あの時も見ていた」

 

 黒いドレスだけではない。

 

 戦術だけでもない。

 

 見られることまで戦いに入れようとしている春麗。

 

 その春麗を見ていた。

 

 そして、春麗はそれを嫌がった。

 

 だが、逃げなかった。

 

 あの近さまで、来た。

 

 リュウは、少しだけ眉を寄せた。

 

「それも、春麗の黒だった」

 

 言葉にして、重さが増す。

 

 勝った。

 

 しかし、その黒も残っている。

 


 

 記憶は続いた。

 

 黒い裾を大きく見せた日。

 

 逆に、小さく使った日。

 

 視線を足元へ落とさせた日。

 

 視線を上へ戻させ、その隙に入ってきた日。

 

 動かずに待った日。

 

 踏み込ませてから沈めた日。

 

 近づきすぎた日。

 

 離れて、リュウの拳を誘った日。

 

 どれも春麗だった。

 

 どれも黒だった。

 

 どれも違った。

 

 そして、どれも勝った。

 

 リュウが。

 

 ぎりぎりで。

 

 最後には立っていた。

 

 だから、勝った。

 

 だが。

 

 その勝利を、同じ一つの勝利として扱うことはできなかった。

 

 リュウは拳を握る。

 

 今まで、自分は勝ってきた。

 

 春麗の黒を受けた。

 

 見た。

 

 逃げなかった。

 

 立った。

 

 それは間違っていない。

 

 だが、拳の中に残っているものを、勝ったという一言で閉じてはいけない。

 

 春麗は、毎回変えてきた。

 

 毎回、違う黒で来た。

 

 毎回、違う半拍を作った。

 

 毎回、リュウの拳を止めようとした。

 

 毎回、あと少しまで届いた。

 

 そして、毎回負けた。

 

 それでも、同じではなかった。

 

「俺は」

 

 リュウは静かに言った。

 

「毎回、違う春麗と戦っていた」

 

 言葉が朝の空気に落ちる。

 

 その言葉は、軽くなかった。

 

 強い相手と戦った。

 

 勝った。

 

 それだけでは足りない。

 

 リュウは、少しずつ見えてきていた。

 

 春麗に必要なのは、勝たせる拳ではない。

 

 拒む拳でもない。

 

 押し返す拳でもない。

 

 持ち続ける拳でもない。

 

 そして。

 

 ただ勝ってきた拳でも、足りない。

 


 

 リュウは構えた。

 

 拳を前へ出す。

 

 止める。

 

 戻す。

 

 もう一度、出す。

 

 その拳に、過去の春麗たちが重なる。

 

 裾の遅れ。

 

 肩の角度。

 

 待機圧。

 

 近すぎる距離。

 

 半拍。

 

 どれか一つを相手にする拳では、足りない。

 

 春麗が積み重ねてきた黒を、一つの黒として雑に受けてはいけない。

 

 それでは、春麗が変えてきた時間を見落とす。

 

 勝った事実だけで終われば、春麗の黒はまたリュウの拳に置かれたままになる。

 

 春麗は、また言うだろう。

 

 あと少しだった。

 

 次はもっと深くする。

 

 もっと残す。

 

 もっと沈める。

 

 もっと黒で届く。

 

 それは、間違いではない。

 

 だが、それだけでは春麗は終われない。

 

 リュウは拳を下ろした。

 

「勝つだけでは、足りない」

 

 その言葉は、前よりはっきりしていた。

 

 ただ受けるだけでは足りない。

 

 ただ勝つだけでも足りない。

 

 勝たせることは違う。

 

 拒むことも違う。

 

 返すことは、まだ完全にはわからない。

 

 だが、一つだけわかる。

 

 次に春麗と向き合う時。

 

 春麗が持ってくる黒を、今日だけのものとして見るのでは足りない。

 

 春麗が変えてきた黒ごと見る。

 

 裾も。

 

 肩も。

 

 待つ間合いも。

 

 見られる距離も。

 

 半拍も。

 

 負け続けた時間も。

 

 それらを、勝敗の向こう側へ押しやらずに見る。

 

 リュウは、拳を見る。

 

「全部、同じ黒ではなかった」

 

 春麗も、そう思っているだろうか。

 

 わからない。

 

 だが、もし春麗がそれを持ち始めているなら。

 

 自分も、同じように見なければならない。

 

 勝った拳としてではなく。

 

 春麗が毎回変えてきた黒を受けた拳として。

 

 リュウは、目を閉じた。

 

 春麗の姿が浮かぶ。

 

 黒いドレス。

 

 鋭い目。

 

 悔しさ。

 

 怒り。

 

 勝ちたいという意志。

 

 リュウに残したいという執着。

 

 返されたくない恐怖。

 

 そして、最近少しだけ変わったもの。

 

 負けた黒を、少しずつ自分の手に戻そうとしている春麗。

 

 リュウは息を吐く。

 

「春麗」

 

 名前を呼ぶ。

 

 誰もいない朝に。

 

「次は、ただ勝つためだけには行かない」

 

 拳を握る。

 

「だが、負けるためにも行かない」

 

 開く。

 

「勝たせるためでもない」

 

 もう一度、構える。

 

「拒むためでもない」

 

 朝の光が、少しずつ差してくる。

 

「春麗が持ってきた黒を」

 

 一拍。

 

「春麗が変えてきた黒ごと見る」

 

 言葉にしても、まだ答えにはならない。

 

 返す拳の形は、まだ完全ではない。

 

 だが、前よりは近い。

 

 リュウは拳を出した。

 

 まっすぐに。

 

 速く。

 

 だが、ただ勝つためだけの拳ではない。

 

 拳の奥に、過去の春麗たちがいる。

 

 黒い裾を遅らせた春麗。

 

 肩で誘った春麗。

 

 動かずに待った春麗。

 

 近づきすぎた春麗。

 

 負けた春麗。

 

 それでも変えてきた春麗。

 

 その全部を忘れない拳。

 

 持ち続けるためではない。

 

 閉じ込めるためでもない。

 

 次に向き合う春麗へ、春麗自身の戦いとして返すために。

 

 リュウは拳を止めた。

 

 まだ違う。

 

 まだ、完成ではない。

 

 だが、前よりも押し返していない。

 

 前よりも拒んでいない。

 

 前よりも、勝利だけに閉じていない。

 

 リュウは、静かに息を吐いた。

 

「まだだな」

 

 小さく言う。

 

 それでも、拳は少しだけ軽い。

 

 軽いというより、余計な力が抜けている。

 

 春麗の黒を一つの重さとして握りしめるのではなく、いくつもの重さとして覚えている。

 

 その違いが、拳に出ている。

 

 リュウは、空を見た。

 

 夜が明ける。

 

 朝が来る。

 

 黒は消えない。

 

 春麗の黒いドレスでの戦いは、消えない。

 

 勝ったことも、消えない。

 

 だが、それだけではない。

 

 あの黒たちは、全部違った。

 

 全部、春麗が変えてきたものだった。

 

 リュウは、最後にもう一度拳を握った。

 

「次は」

 

 静かに言う。

 

「春麗が積み上げた黒ごと見る」

 

 朝の光の中で、拳を開く。

 

 掌には何もない。

 

 それでも、残っている。

 

 裾。

 

 肩。

 

 待機圧。

 

 近さ。

 

 半拍。

 

 敗北。

 

 変化。

 

 春麗。

 

 リュウは、それを忘れない。

 

 だが、自分のものにはしない。

 

 次に向き合う時。

 

 それを、春麗の戦いとして返すために。

 

 まだ知らない拳の形を探しながら。

 

 リュウは、朝の中へ歩き出した。

 




Q:今回の妄想章IFの幕間について解説して?

A:

はい。今回の 「リュウは、勝ってきた黒を全部同じ勝利にはできない」 は、黒執着春麗救済ルートにおける重要な リュウ側の認識更新回 です。

一言で言うなら、

黒執着春麗が“全部同じ失敗ではなかった”と見始めたのに対応して、リュウ側も“全部同じ勝利ではなかった”と拳で確認する幕間

です。

今回の核は、

春麗は毎回違う黒で来ていた。
リュウは毎回勝っていた。
でも、それを全部同じ勝利として扱ってはいけない。

ここです。

今回の一番大きな意味

前回まで、黒執着春麗側ではかなり大きな変化が起きていました。

彼女は、負け続けた黒を、

全部、負けた黒。
全部、届かなかった黒。
全部、リュウに勝てなかった黒。

としてまとめていました。

でも、残響を通じて見直した結果、

裾の遅れを使った黒
肩の角度を使った黒
動かない待機圧の黒
近すぎる距離まで踏み込んだ黒
視線、呼吸、半拍を変えてきた黒

があったと気づきました。

つまり、黒執着春麗側では、

全部同じ失敗ではなかった

まで進んだ。

今回のリュウ幕間は、その対になる回です。

リュウ側も、

全部同じ勝利ではなかった

と認識する。

この対称性が非常に綺麗です。

リュウが「勝った」で閉じないのが重要

今回のリュウは、これまでの戦いを振り返って、

自分は勝ってきた

という事実を否定しません。

ここは大事です。

リュウが過剰に反省して、

「俺は春麗を傷つけていた」
「俺が間違っていた」
「俺は勝つべきではなかった」

のように行くと、リュウらしさが崩れます。

今回のリュウは、そこには行っていません。

勝った。
逃げなかった。
見た。
受けた。
立った。

それは間違っていない。

でも、

勝ったという一言だけでは、春麗が変えてきた黒を見落とす

と気づく。

これがリュウらしいです。

反省ではなく、拳で確認している。

後悔ではなく、次に向けて精度を上げている。

ここが良いです。

「毎回、違う春麗と戦っていた」が最大打点

今回の最大打点は、やはりこの認識です。

「俺は、毎回、違う春麗と戦っていた」

これはかなり重要です。

リュウは春麗に毎回勝ってきました。

でも、その春麗は同じではなかった。

黒い裾の遅れを使った春麗。
肩で誘った春麗。
動かず待った春麗。
見られる距離まで踏み込んだ春麗。
半拍を作った春麗。
それを越えられた春麗。

全部違う。

つまりリュウは、同じ黒執着春麗を毎回倒していたのではありません。

毎回、少しずつ戦い方を変えてきた春麗と戦っていた。

これをリュウが認識したことで、最終再戦の土台がかなり強くなりました。

黒返却の準備として非常に重要

黒返却は、単にリュウが、

これはおまえの黒だ

と言えば完了するものではありません。

それはもう過去に失敗しかけています。

なぜなら、黒執着春麗からすれば、それは押し返しや拒絶に見えるからです。

今回リュウが進んだのは、その前段階です。

春麗が積み上げてきた黒を、一つの黒として雑に扱わない。

これが重要です。

「春麗の黒」と一言でまとめると、便利です。

でも、それだけでは足りない。

裾の黒。
肩の黒。
待機圧の黒。
近さの黒。
半拍の黒。
負け続けても変えてきた黒。

それらを全部見たうえで返す必要がある。

だから今回のリュウは、

春麗が積み上げた黒ごと見る

というところまで来ました。

これは黒返却の完成にかなり近いです。

「勝つだけでは足りない」が前より明確になった

リュウは以前から、

受けるだけでは足りない
持ち続けるだけでは違う
勝たせる拳では返せない
拒む拳でも違う

と少しずつ整理してきました。

今回、そこにさらに一つ加わりました。

ただ勝つだけでも足りない。

これが今回の大きな進行です。

リュウは勝つことを否定していません。

むしろ、次も負けるためには行かない。

でも、勝つだけで終わると、黒執着春麗はまたこうなります。

あと少しだった。
次はもっと深くする。
もっと残す。
もっと黒で届く。

つまり、勝利だけでは黒執着の循環を止められない。

だから次の再戦では、リュウは勝つとしても、

春麗が積み上げた黒を見たうえで勝つ必要がある。

この整理が入りました。

リュウの拳がまだ完成していないのが良い

今回のリュウは、答えを出し切っていません。

最後も、

まだだな

で止まっています。

これが良いです。

ここでリュウが、

「これが返す拳だ」

と完成させてしまうと、最終再戦の緊張がなくなります。

今はまだ、

前より近づいた。
でも完成ではない。

くらいがちょうどいい。

黒執着春麗側も、まだ全部は持てていません。

リュウ側も、まだ返す拳を完成させていません。


黒執着春麗との対比が綺麗

黒執着春麗側は、前回こうでした。

全部、負けた。
でも、全部同じ黒ではなかった。

今回のリュウ側は、こうです。

全部、勝った。
でも、全部同じ勝利ではなかった。

これは非常に綺麗です。

同じ戦いを、敗者側と勝者側が別々に見直している。

黒執着春麗は、自分の負けを「ただの失敗」から「変えてきた黒」へ再分類している。

リュウは、自分の勝ちを「ただの勝利」から「違う春麗を受けてきた拳」へ再分類している。


今回のリュウは春麗を救おうとしすぎていない

ここも大事です。

リュウは、春麗を救うために戦うとは言っていません。

これは正しいです。

リュウは武人なので、

「救済する」
「癒やす」
「救ってやる」

という言葉に寄せすぎるとキャラが崩れます。

今回のリュウは、あくまで拳の文脈で考えています。

春麗を見る。
黒を見る。
勝つ。
でも、勝つだけでは足りない。
春麗が持ってきた黒ごと見る。

このくらいがリュウらしいです。

リュウの優しさは、言葉で救う優しさではなく、

次に立つ相手を、前回と同じものとして扱わないこと

に出ています。


今回の到達点

今回の到達点は、

リュウが、春麗の黒を一つの重さとして握りしめるのではなく、いくつもの重さとして覚え始めたこと

です。

最後の、

裾。
肩。
待機圧。
近さ。
半拍。
敗北。
変化。
春麗。

この並びがかなり良いです。

勝敗だけではなく、技術と時間と春麗自身が並んでいる。

これにより、リュウの拳は前よりも「返す拳」に近づきました。

まだ完成していない。

でも、前より押し返していない。
前より拒んでいない。
前より勝利だけに閉じていない。

ここが今回のゴールです。


結論

今回のエピソードは、黒執着春麗救済ルートにおける リュウ側の勝利再分類回 です。

一言でまとめるなら、

リュウは、黒執着春麗に何度も勝ってきた。しかし拳に残る黒を見直すことで、それらが全部同じ黒ではなく、春麗が毎回変えてきた戦いだったと確認する。そして、次はただ勝つだけではなく、春麗が積み上げた黒ごと見る拳で向き合おうとする回

です。

まだ答えは完成していない。

でも、間違える場所は確実に減っています。

次に春麗と向き合う時、リュウはもう、

黒を一つの執着としてだけ見る拳

ではなく、

春麗が積み上げた黒の変化ごと見る拳

で立てる。
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