また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※これは本編時空ではなく、妄想章IFです。


妄想章IF:黒執着春麗は、最初の黒を塗り潰さない

 

 十一戦目を弱さにしないと決めた朝から、数日が過ぎた

 

 黒執着春麗は、毎朝のように棚の中の黒を見た。

 

 触れる日もあれば、触れない日もあった。

 

 それでも、もう椅子の背にかけっぱなしにはしなかった。

 

 今日の黒は、棚の中にある。

 

 その事実に、少しだけ慣れ始めた頃だった。

 

 棚の中に、畳んだ黒がある。

 

 負けた黒。

 

 置いていかなかった黒。

 

 畳めるようになった黒。

 

 黒執着春麗は、その棚の前に立っていた。

 

 十一戦目は、まだ畳めない。

 

 黒を着る前の敗北。

 

 十連勝した春麗が、十一戦目でリュウに負けた記憶。

 

 あの春麗は弱くなかった。

 

 それだけは、言えた。

 

 でも、持てたわけではない。

 

 自分のものとして受け取ったわけでもない。

 

 ただ、弱さにはしない。

 

 見なかったことにはしない。

 

 そこまでだった。

 

 春麗は、棚を開ける。

 

 畳んだ黒が見える。

 

 袖の端が、きちんと揃っている。

 

 黒いドレスは、そこにある。

 

 布として。

 

 戦闘服として。

 

 自分が洗い、整え、畳んだものとして。

 

 春麗は、その黒に指を伸ばしかけた。

 

 けれど、触れる前に、別の黒が浮かんだ。

 

 先日の黒ではない。

 

 もっと前。

 

 最初の黒。

 

 初めて黒ドレスを着た日。

 

 鏡の前に立った日。

 

 これは戦術よ、と自分に言い聞かせた日。

 

 リュウの視線を想像して、呼吸が乱れた日。

 

 黒い裾をどう使うかより先に、黒を着た自分をどう見られるかに心が引っかかった日。

 

 リュウに言われた日。

 

 お前は、その黒を全部使えていない。

 

 春麗の指が止まった。

 

「……今日は、そっちなの」

 

 声は低い。

 

 棚の中の畳んだ黒は、何も答えない。

 

 春麗は、黒い袖を見つめたまま息を吐いた。

 

「本当に、順番というものを知らないわね」

 

 先日の黒。

 

 十一戦目。

 

 そして、最初の黒。

 

 全部が順番に戻ってくる。

 

 こちらの都合など考えない。

 

 春麗は、棚から畳んだ黒を取り出した。

 

 広げない。

 

 ただ、畳んだまま膝の上に置く。

 

 今の黒を足場にするように。

 

 畳めた黒を、自分の手元に置いたまま。

 

 まだ畳めない最初の黒を、少しだけ見るために。

 

「最初の黒は」

 

 一拍。

 

「まだ、許していないわ」

 

 誰に向けた言葉でもない。

 

 けれど、言っておかなければならなかった。

 

「見られることを怖がった黒」

 

 指先が袖の端をなぞる。

 

「リュウに迷いを見抜かれた黒」

 

 一拍。

 

「使い切れなかった黒」

 

 胸の奥が痛む。

 

「負けた黒」

 

 それは事実だ。

 

 今でも、否定できない。

 

 最初の黒は、未完成だった。

 

 黒い裾は効いた。

 

 リュウの視線は遅れた。

 

 リュウの拳も、確かに半拍ずれた。

 

 でも、春麗自身が揺れていた。

 

 黒を戦術にしたいのに。

 

 見られることを利用したいのに。

 

 見られる自分を、まだ引き受けられていなかった。

 

 リュウはそこを見た。

 

 黒いドレスだけではなく。

 

 黒い裾だけではなく。

 

 その中で迷っている春麗を。

 

 それが、何より嫌だった。

 

「……あの黒を」

 

 春麗は、畳んだ黒を見下ろしながら言った。

 

「私は、塗り潰すつもりだった」

 

 言葉が落ちる。

 

 それは、以前の自分の言葉に近かった。

 

 今日の黒は、まだ私の黒じゃない。

 

 あなたが見た今日の黒を、私が塗り潰す。

 

 そう思った。

 

 そう言った。

 

 そうしなければ、次へ行けなかった。

 

 春麗は、ゆっくり息を吐く。

 

「最初の黒なんて、なかったことにして」

 

 一拍。

 

「もっと深い黒で上書きして」

 

 さらに一拍。

 

「リュウに、次の黒だけを見せればいいと思っていた」

 

 畳んだ黒の上に、指を置く。

 

「でも、それをしたら」

 

 声が少しだけ細くなる。

 

「最初に黒を着た私は、どこへ行くの」

 

 言ってしまった。

 

 春麗は、すぐに顔をしかめる。

 

「……余計なことを」

 

 それでも、言葉は残った。

 

 最初に黒を着た春麗。

 

 迷っていた春麗。

 

 見られることを怖がった春麗。

 

 それでも、黒でリュウに届こうとした春麗。

 

 その春麗を塗り潰したら。

 

 今の黒は、どこから始まったことになるのか。

 


 

 気づけば、鏡の前に立っていた。

 

 夢ではない。

 

 記憶でもない。

 

 それでも、鏡の中には、今の春麗ではない春麗が映っていた。

 

 最初の黒ドレスを着た春麗。

 

 髪を少しだけ下ろし、目元を整えかけて、途中で手を止めた春麗。

 

 黒いドレスを着ている。

 

 でも、黒にまだ慣れていない。

 

 肩が少し硬い。

 

 視線が少し逃げている。

 

 それでも、背筋は伸びている。

 

 戦うために立っている。

 

 黒執着春麗は、鏡の中の自分を睨んだ。

 

「その顔が嫌い」

 

 鏡の中の春麗は、何も答えない。

 

「怖がっているくせに、強がっている顔」

 

 一拍。

 

「見られることを戦術にするつもりで、見られることから逃げている顔」

 

 胸が痛む。

 

「でも、逃げきれていない顔」

 

 鏡の中の春麗は、黒い裾を確かめる。

 

 足を動かす。

 

 布の重さを確認する。

 

 蹴りは出せる。

 

 回れる。

 

 踏み込める。

 

 戦える。

 

 身体は、もう戦う準備をしている。

 

 心だけが、半歩遅れている。

 

 黒執着春麗は、その姿を見る。

 

 以前なら、切り捨てられた。

 

 未完成。

 

 失敗。

 

 私の黒ではない。

 

 そう言えた。

 

 でも、今は。

 

 棚の中に、畳んだ今日の黒がある。

 

 負けた黒を洗い、整え、畳めた今の自分がいる。

 

 その足場があるから、最初の黒も、少しだけ見え方が変わる。

 

「あなたは」

 

 黒執着春麗は、鏡の中の春麗へ言った。

 

「弱くはなかった」

 

 十一戦目の時と同じ言葉が出た。

 

 けれど、少し意味が違う。

 

「でも、使い切れていなかった」

 

 これは事実。

 

「見られることを怖がっていた」

 

 これも事実。

 

「リュウに見抜かれた」

 

 事実。

 

「負けた」

 

 事実。

 

 春麗は、そこで言葉を止めた。

 

 鏡の中の春麗は、何も言わない。

 

 ただ、黒い裾を持ち上げる。

 

 少しだけ、誇らしげに。

 

 少しだけ、不安そうに。

 

 戦うために。

 

 リュウの前に立つために。

 

 黒執着春麗は、目を伏せた。

 

「それでも」

 

 一拍。

 

「黒で行こうとはしていた」

 

 その言葉が、鏡の前に落ちた。

 

 春麗の胸が、痛む。

 

 使い切れていなかった黒。

 

 でも、使おうとした黒。

 

 見られることを怖がった黒。

 

 でも、見られる場所へ立とうとした黒。

 

 負けた黒。

 

 でも、リュウに届こうとした黒。

 

 春麗は、鏡の中の自分を見る。

 

「……本当に、腹が立つ」

 

 何に腹が立っているのか、もうわからない。

 

 過去の自分に。

 

 リュウに。

 

 それを見ている今の自分に。

 

 そして、塗り潰せなくなっている自分に。

 


 

 修行場の記憶が、鏡の奥に流れた。

 

 リュウが驚いた顔をする。

 

 過去の春麗が、笑おうとする。

 

 少し硬い笑み。

 

 どうしたの、リュウ。

 

 今日は驚いた?

 

 リュウは答える。

 

 驚いた。

 

 過去の春麗の呼吸が、一瞬だけ揺れる。

 

 黒執着春麗は、目を細めた。

 

「そこで揺れないで」

 

 声は届かない。

 

 届くはずもない。

 

 過去の春麗は、黒い裾を使う。

 

 視線を奪う。

 

 足元を隠す。

 

 青とは違うリズムで入る。

 

 リュウは遅れる。

 

 確かに遅れる。

 

 春麗の掌底が入る。

 

 蹴りが届く。

 

 黒は効いている。

 

 最初の黒でも、効いている。

 

 それを見るのが、今は痛い。

 

 効いていなかったなら、楽だった。

 

 完全な失敗だったなら、捨てられた。

 

 でも、違う。

 

 効いていた。

 

 届いていた。

 

 未完成でも、春麗はリュウを遅らせた。

 

 黒執着春麗は、拳を握る。

 

 過去のリュウが言う。

 

 お前は、その黒を全部使えていない。

 

 過去の春麗が固まる。

 

 今の春麗も、胸の奥が固まる。

 

「……言わないで」

 

 小さく呟く。

 

「そんなこと、言われなくてもわかっていたわ」

 

 だから痛かった。

 

 リュウに見抜かれたからではない。

 

 リュウに言われる前から、自分でわかっていたから痛かった。

 

 使い切れていない。

 

 見られることを利用すると言いながら、見られることに揺れている。

 

 黒を戦術にすると言いながら、黒を着た自分を認めきれていない。

 

 それを、リュウに言葉にされた。

 

 過去の春麗は怒って踏み込む。

 

 攻撃は鋭い。

 

 リュウを追い込む。

 

 黒い裾が大きく揺れる。

 

 リュウの拳が遅れる。

 

 あと少し。

 

 あと少しだった。

 

 それでも、最後にリュウが立った。

 

 過去の春麗は片膝をつく。

 

 黒い裾に土がつく。

 

 リュウは息を荒くしながら立っている。

 

 勝者の余裕などない。

 

 それでも、立っている。

 

 過去の春麗は言う。

 

 今日の黒は、まだ私の黒じゃない。

 

 あなたが見た今日の黒を、私が塗り潰す。

 

 黒執着春麗は、その言葉を聞いて、胸が痛んだ。

 

 懐かしい。

 

 腹立たしい。

 

 そして、少しだけ苦しい。

 

「あの時は」

 

 今の春麗は言う。

 

「そう言わなければ、立てなかった」

 

 過去の春麗は聞こえていない。

 

「あの黒を失敗のままにしておけなかった」

 

 一拍。

 

「でも、持つこともできなかった」

 

 だから、塗り潰すしかなかった。

 

 今日の黒はまだ私の黒じゃない。

 

 だから次の黒へ行く。

 

 もっと深くする。

 

 もっと強くする。

 

 もっとリュウに残す。

 

 そうしなければ、初回黒ドレス戦の春麗は、片膝をついたままになってしまう気がした。

 

 黒執着春麗は、目を伏せる。

 

「……不器用ね」

 

 それは、過去の自分へ向けた言葉だった。

 

 けれど、今の自分にも刺さる。

 

 塗り潰すことでしか、次へ行けなかった春麗。

 

 塗り潰せなくなって、ようやく過去を見ている春麗。

 

 どちらも、不器用だった。

 


 

 黒い場所に戻る。

 

 黒ドレス特化救済春麗が、少し離れて立っていた。

 

 黒執着春麗は、彼女を見てすぐに言った。

 

「何も言わないで」

 

 黒ドレス特化救済春麗は頷く。

 

「ええ」

 

「本当に言わないで」

 

「ええ」

 

「今、正解を言われたら腹が立つ」

 

「ええ」

 

「あなたが“それもあなたの黒よ”なんて言ったら、たぶん殴るわ」

 

「言わないわ」

 

 黒執着春麗は、少しだけ肩の力を抜いた。

 

 黒ドレス特化救済春麗は、静かに立っている。

 

 言わない。

 

 本当に言わない。

 

 それが少しだけ助かった。

 

 黒執着春麗は、ゆっくり口を開く。

 

「最初の黒は、まだ許せない」

 

「ええ」

 

「見られることを怖がった私も、許せない」

 

「ええ」

 

「使い切れなかった私も、許せない」

 

「ええ」

 

「リュウに見抜かれたことも、まだ腹が立つ」

 

「ええ」

 

「負けたことも」

 

「ええ」

 

「当然、腹が立つ」

 

「ええ」

 

 黒ドレス特化救済春麗は、ただ受ける。

 

 黒執着春麗は、胸の奥の言葉を探す。

 

「でも」

 

 一拍。

 

「あの黒を、塗り潰すだけでは」

 

 さらに一拍。

 

「もう、進めない」

 

 言った瞬間、黒い場所が静かになった。

 

 その言葉は、重かった。

 

 塗り潰すだけでは、もう進めない。

 

 黒ドレス特化救済春麗は、まだ何も言わない。

 

 黒執着春麗は続ける。

 

「塗り潰したら、消える」

 

「ええ」

 

「使い切れなかった私も」

 

「ええ」

 

「見られることを怖がった私も」

 

「ええ」

 

「それでも黒でリュウに届こうとした私も」

 

「ええ」

 

「全部、なかったことになる」

 

 声が少しだけ揺れた。

 

「それは」

 

 一拍。

 

「嫌」

 

 黒ドレス特化救済春麗は、ここでようやく静かに言った。

 

「ええ」

 

 たったそれだけ。

 

 でも、それで十分だった。

 

 黒執着春麗は、目を伏せる。

 

「最初の黒は、まだ持たない」

 

「ええ」

 

「まだ許さない」

 

「ええ」

 

「私の黒だった、なんて言わない」

 

「ええ」

 

「でも」

 

 喉が詰まる。

 

「塗り潰さない」

 

 その言葉が、黒い場所に落ちた。

 

 沈まずに残る。

 

 黒執着春麗は、すぐに顔を歪めた。

 

「……最悪」

 

 黒ドレス特化救済春麗が、少しだけ目を細める。

 

「ええ」

 

「本当に、最悪」

 

「ええ」

 

「どんどん、捨てられないものが増えていく」

 

「ええ」

 

「今日の黒も、十一戦目も、最初の黒も」

 

「ええ」

 

「全部、重い」

 

「ええ」

 

「でも」

 

 一拍。

 

「空ではない」

 

 黒ドレス特化救済春麗は、静かに頷いた。

 

「ええ」

 

 黒執着春麗は、少しだけ笑った。

 

 苦い笑いだった。

 

「あなたの言葉みたいで腹が立つ」

 

「そうね」

 

「そこは否定しなさいよ」

 

「似ているわ」

 

「最悪」

 

 黒ドレス特化救済春麗は、ほんの少しだけ笑った。

 

 黒執着春麗は顔を逸らす。

 

 それ以上見ていると、何かを認めてしまいそうだった。

 


 

 朝の部屋に戻る。

 

 棚の扉は閉じている。

 

 その中に、畳んだ黒がある。

 

 春麗は、棚の前に立っていた。

 

 今度は、開けなかった。

 

 黒を見なくても、そこにあるとわかる。

 

 今日の黒は、畳まれている。

 

 十一戦目は、まだ畳めない。

 

 最初の黒も、まだ畳めない。

 

 でも、塗り潰さない。

 

 春麗は、静かに息を吐いた。

 

「最初の黒は、まだ許さない」

 

 一拍。

 

「でも、塗り潰さない」

 

 言葉が部屋に落ちる。

 

 痛い。

 

 でも、必要な言葉だった。

 

「使い切れなかった黒」

 

 一拍。

 

「見られることを怖がった黒」

 

 さらに一拍。

 

「それでも、リュウに届こうとした黒」

 

 春麗は、目を伏せた。

 

「なかったことにはしない」

 

 棚の中の黒は見えない。

 

 けれど、そこにある。

 

 今日の黒。

 

 それを畳めた自分がいる。

 

 だから、最初の黒も、いつか畳めるかもしれない。

 

 今はまだ無理だ。

 

 持てない。

 

 許せない。

 

 でも、塗り潰さない。

 

 春麗は、窓の方へ歩いた。

 

 朝の光が入っている。

 

 リュウに勝ちたい気持ちは、まだある。

 

 それは消えていない。

 

 むしろ、まだ強い。

 

 でも、次に黒を着る時。

 

 もう、最初の黒を塗り潰すためだけには着られない。

 

 昨日の黒を捨てるためにも。

 

 十一戦目を弱さにするためにも。

 

 最初の黒をなかったことにするためにも。

 

 黒は着ない。

 

 春麗は、窓を開けた。

 

 冷たい空気が入る。

 

「次は」

 

 いつもの言葉が浮かぶ。

 

 次は勝つ。

 

 それは変わらない。

 

 でも、その前に、別の言葉が来た。

 

「次は、最初の黒を消さない」

 

 春麗は、少しだけ顔をしかめる。

 

「……また余計なことを」

 

 けれど、消さなかった。

 

 言葉を。

 

 記憶を。

 

 最初の黒を。

 

 黒執着春麗は、朝の光の中で静かに息を吐いた。

 

 今日の黒は、棚の中にある。

 

 十一戦目は、まだ畳めない。

 

 最初の黒も、まだ畳めない。

 

 でも、塗り潰さない。

 

 それだけを胸に置いて。

 

 黒執着春麗は、次の朝へ立った。

 




Q:今回の妄想章IFについて解説して?

A:

今回の 「黒執着春麗は、最初の黒を塗り潰さない」 は、黒執着春麗救済ルートにおける 初回黒ドレス戦の再定義回 です。

一言で言うなら、

黒執着春麗が、最初の黒ドレス戦を“未完成だから塗り潰すべき黒”として処理するのではなく、“未完成でも、リュウに届こうとした黒”として消さないことを選び始めた回

です。

今回の核は、

最初の黒は、まだ許せない。
でも、塗り潰さない。
使い切れなかった黒でも、リュウに届こうとした黒だった。

ここです。

今回の一番大きな進行

これまで黒執着春麗は、初回黒ドレス戦をかなり強く否定していました。

あの黒は未完成だった。
見られることを怖がっていた。
リュウに迷いを見抜かれた。
黒を全部使えていなかった。
だから、あの黒はまだ自分の黒ではない。

そして過去の彼女は、

あなたが見た今日の黒を、私が塗り潰す

という方向へ進みました。

これは当時の春麗にとっては必要な言葉でした。

あのまま初回黒を抱え込んだら、立てなかった。
だから「これはまだ私の黒ではない」と切り離して、次の黒へ行った。

でも今の黒執着春麗は、すでに「今日の黒を畳める」ところまで来ています。

だから、最初の黒についても、

あれは未完成だった。
でも、なかったことにしていいわけではない。

と見直せるようになった。

ここが今回の大きな進行です。

良かった点

今回良かったのは、初回黒を美化しなかったことです。

今回の春麗は、

最初の黒も大事だった
あれも完全な私の黒だった
あの時の私も間違っていなかった

とは言っていません。

むしろ、まだ許していません。

見られることを怖がった自分も嫌い。
黒を使い切れなかった自分も嫌い。
リュウに見抜かれたことも腹が立つ。
負けたことも当然腹が立つ。

これは自然です。

ただ、その上で、

塗り潰したら、あの時の春麗まで消えてしまう

と気づいた。

ここが救済として非常に良いです。

救済は「過去を肯定すること」ではなく、まず 過去を消さないこと から始まる。

今回の到達点はそこです。

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