また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
リュウに会った日から、数日が過ぎた。
黒執着春麗は、毎朝、棚の中を見るようになっていた。
畳んだ黒。
その上に置いた布紐。
今日の黒。
負けた黒。
置いていかなかった黒。
束ね始めた黒。
そして、リュウの中にも残っているが、リュウのものではなかった黒。
棚を開ける。
見る。
すぐには触れない。
時々、袖の端に指を置く。
時々、布紐の位置を直す。
それだけ。
それだけのことを、何日か繰り返した。
軽くはならない。
腹が立たなくなったわけでもない。
リュウに負けたことは、まだ悔しい。
十一戦目も、まだ持てない。
最初の黒も、まだ許していない。
負け続けた黒も、束ね始めただけで、全部持てたわけではない。
それでも。
黒は、棚の中にある。
リュウの中だけにはない。
そして、リュウのものでもない。
それを確認できたことは、思ったより大きかった。
春麗は、棚の前で腕を組んだ。
「……認めたわけではないけれど」
小さく言う。
「少し、場所がわかっただけよ」
黒の場所。
以前は、リュウの拳の中だと思っていた。
リュウの中に残した黒。
リュウの中に置いた自分。
だから、次も取りに行く。
次ももっと深く残す。
次も黒で届く。
そう思っていた。
でも、今は違う。
黒は、リュウの中にも残っている。
けれど、それはリュウのものではない。
リュウが覚えている黒。
リュウの拳に感触として残った黒。
でも、春麗が置いていかなかった黒。
自分の側にもある黒。
棚の中にある黒。
布紐で束ね始めた黒。
春麗は、棚の中の黒に指を伸ばした。
袖の端に触れる。
その瞬間、胸の奥で言葉が動いた。
戻ってきた。
春麗は、すぐに指を離した。
「違う」
強く言う。
「まだ、違う」
戻ってきた。
その言葉は危険だった。
もし戻ってきたのなら。
それは、自分の黒だということになる。
リュウに返されたのではなく。
リュウに拒まれたのでもなく。
リュウから奪い返したのでもなく。
最初から、自分の黒だったものが、自分の手元へ戻ってきた。
そういうことになってしまう。
春麗は、棚を閉めた。
少し強く。
「まだ言わない」
低く呟く。
「そんな簡単に、私の黒だなんて言わない」
言葉は部屋に落ちた。
けれど、否定したはずの言葉は、胸の奥に残った。
戻ってきた。
返されたのではなく。
戻ってきた。
春麗は、顔を歪める。
「……本当に、嫌なところまで来たわね」
その夜。
春麗は、眠ったつもりはなかった。
けれど、気づけば黒い場所に立っていた。
何度も来た場所。
床もない。
天井もない。
黒い布の記憶が沈む場所。
だが、今日は少し違った。
黒い場所の中央に、棚があった。
自分の部屋にある棚。
その棚の中に、畳んだ黒がある。
布紐が置かれている。
現実と夢が混ざっている。
春麗は、棚を睨んだ。
「勝手に出てこないで」
棚は答えない。
代わりに、少し離れた場所に人影が現れた。
黒ドレス特化救済春麗。
同じ顔。
同じ黒。
違う目。
黒執着春麗は、彼女を見てすぐに言った。
「今日は、本当に嫌な予感がするわ」
黒ドレス特化救済春麗は静かに頷く。
「そう」
「あなたが来る時は、大体ろくなことにならない」
「そうかもしれないわ」
「否定しなさい」
「無理ね」
「そこは認めるのね」
黒ドレス特化救済春麗は、棚を見る。
「そこにあるのね」
黒執着春麗は、即座に言う。
「棚の中にあるだけよ」
「ええ」
「私の黒だなんて言っていない」
「ええ」
「受け取ったとも言っていない」
「ええ」
「戻ってきたとも言っていない」
言った瞬間、黒執着春麗は顔をしかめた。
黒ドレス特化救済春麗は、静かにこちらを見る。
「今、自分で言ったわね」
「言っていない」
「戻ってきた、という言葉を」
「言葉として言っただけ」
「そう」
「意味として認めていない」
「そう」
「その顔をやめて」
「どんな顔?」
「わかっている顔」
黒ドレス特化救済春麗は、少しだけ目を細めた。
「わかっているわ」
「だから嫌なのよ」
黒執着春麗は、棚の前に立つ。
開けない。
黒を見ない。
見れば、言葉が近づく。
戻ってきた。
それを認めたくない。
黒ドレス特化救済春麗が静かに問う。
「あなたは、返されたと思っていたのね」
黒執着春麗は、答えない。
「リュウに返されることは、拒まれることだと思っていた」
「……」
「リュウに持たれた黒を返されたら、空になると思っていた」
「……」
「だから、返されたくなかった」
黒執着春麗は、ゆっくり振り向いた。
「そうよ」
声は低い。
「返されたくなかった」
「ええ」
「リュウの中に残しておけば、まだ届こうとしている私でいられた」
「ええ」
「リュウの拳に残っていれば、次に行く理由になった」
「ええ」
「返されたら、それが消えると思った」
「ええ」
「私の黒が、どこにもなくなると思った」
「ええ」
「だから、嫌だった」
黒ドレス特化救済春麗は、ただ頷く。
責めない。
急かさない。
その沈黙が、今日は少しだけ苦しかった。
黒執着春麗は、棚に手を置いた。
「でも」
一拍。
「消えなかった」
言葉が落ちる。
「リュウの中だけには、なくなった」
一拍。
「でも、消えなかった」
さらに一拍。
「ここにある」
棚の中にある黒。
畳んだ黒。
布紐。
今日の黒。
束ね始めた黒。
黒ドレス特化救済春麗は、静かに言った。
「返されたから消えたのではないわ」
黒執着春麗は、目を細める。
「言わないで」
「戻ってきたのよ」
「言わないで!」
声が黒い場所に響いた。
棚が揺れる。
黒い布の記憶が波立つ。
黒執着春麗は、息を荒くしていた。
黒ドレス特化救済春麗は、動かない。
逃げない。
ただ、そこに立っている。
黒執着春麗は、歯を食いしばる。
「簡単に言わないで」
声が震える。
「戻ってきた、なんて」
黒ドレス特化救済春麗は静かに聞く。
「そんな言葉で済ませないで」
「ええ」
「どれだけ負けたと思っているの」
「ええ」
「どれだけ黒を深くしたと思っているの」
「ええ」
「どれだけリュウに残そうとしたと思っているの」
「ええ」
「どれだけ、返されたくなかったと思っているの」
黒ドレス特化救済春麗は、少しだけ目を伏せた。
「ええ」
黒執着春麗は、棚を掴む。
「戻ってきたと言うなら」
一拍。
「私は、それを持たなければならなくなる」
「ええ」
「十一戦目も」
「ええ」
「最初の黒も」
「ええ」
「負け続けた黒も」
「ええ」
「今日の黒も」
「ええ」
「全部」
声が細くなる。
「全部、私の黒だったことになる」
黒ドレス特化救済春麗は、しばらく黙った。
それから、静かに言った。
「全部を今すぐ持てとは言っていないわ」
黒執着春麗は、顔を上げる。
「……」
「でも、あなたの黒ではないとは、もう言えない」
黒執着春麗は、目を逸らした。
その言葉が、一番痛かった。
全部持てない。
それはまだ許される。
でも、自分の黒ではないとは、もう言えない。
今日の黒を畳んだ。
十一戦目を弱さにしないと決めた。
最初の黒を塗り潰さないと決めた。
負け続けた黒を束ね始めた。
リュウに確認した。
リュウの中にも残っているが、リュウのものではなかった。
ここまで来て。
まだ、あれは私の黒ではない、と言えるのか。
黒執着春麗は、答えられなかった。
棚の扉が、少し開いた。
中に、畳んだ黒が見える。
布紐が見える。
黒執着春麗は、手を伸ばさない。
まだ怖い。
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「戻ってきた黒は、勝った黒ではないわ」
「……」
「負けた黒もある」
「……」
「使い切れなかった黒もある」
「……」
「見られることを怖がった黒もある」
「……」
「終われなかった黒もある」
「……」
「リュウに残そうとした黒もある」
「……」
「置いていかなかった黒もある」
黒執着春麗は、目を伏せる。
「全部、面倒ね」
「ええ」
「全部、重い」
「ええ」
「全部、嫌い」
「ええ」
「でも」
一拍。
「消えなかった」
「ええ」
「返されても、空にはならなかった」
「ええ」
「戻ってきたら」
喉が詰まる。
「重くなった」
「ええ」
「でも、空じゃなかった」
黒ドレス特化救済春麗は、静かに頷いた。
「ええ」
黒執着春麗は、ようやく棚に手を伸ばした。
扉を開ける。
畳んだ黒がある。
布紐がある。
夢の中でも、現実と同じようにそこにある。
春麗は、袖の端に触れた。
前より、指が震えない。
完全に持てるわけではない。
でも、触れられる。
畳んだ黒の上に置かれた布紐にも触れる。
結ばれてはいない。
まだ完全には束ねられていない。
それでも、そこにある。
「……戻ってきた」
春麗は、ほとんど声にならない声で言った。
すぐに顔を歪める。
「違う」
反射のように否定する。
しかし、否定は弱かった。
「まだ、全部じゃない」
黒ドレス特化救済春麗が頷く。
「ええ」
「全部を、私の黒だなんて言わない」
「ええ」
「まだ言わない」
「ええ」
「でも」
一拍。
「戻ってきていないとも、もう言えない」
その言葉が、黒い場所に残った。
黒ドレス特化救済春麗は、静かに言った。
「それでいいわ」
「その言い方、本当に嫌い」
「知っているわ」
「今日は、いつもより腹が立つ」
「ええ」
「たぶん、当たっているから」
「ええ」
「そこは否定しなさいよ」
「できないわ」
黒執着春麗は、少しだけ笑った。
苦い笑いだった。
泣くほどではない。
救われたと笑えるほどでもない。
ただ、息を吐くための笑い。
棚の中の黒は、そこにある。
戻ってきた。
まだ全部ではない。
まだ持ちきれない。
まだ私の黒だと言い切れない。
でも、戻ってきていないとは言えない。
黒執着春麗は、袖の端を軽く押さえた。
「返されたのではなく」
一拍。
「戻ってきた」
言ってから、すぐに付け足す。
「……一部だけ」
黒ドレス特化救済春麗が頷く。
「ええ」
「今日の黒の端だけ」
「ええ」
「負け続けた黒の束の端だけ」
「ええ」
「十一戦目は、まだ無理」
「ええ」
「最初の黒も、まだ許していない」
「ええ」
「でも」
春麗は、黒い袖に触れたまま言う。
「戻る道は、見えた」
黒ドレス特化救済春麗の目が、少しだけ柔らかくなる。
「ええ」
「それ以上、嬉しそうにしないで」
「していないわ」
「している」
「少し」
「認めるのね」
「ええ」
黒執着春麗は、顔を背けた。
腹立たしい。
でも、今日はそれほど嫌ではなかった。
黒い場所が薄れていく。
夢が終わろうとしている。
黒ドレス特化救済春麗の姿も遠くなる。
消える前に、彼女は言った。
「戻ってきた黒は、あなたを空にしないわ」
黒執着春麗は、答えない。
「重くするだけ」
「……ひどい言い方ね」
「でも、そうでしょう」
「ええ」
春麗は、少しだけ目を伏せる。
「重いわ」
「ええ」
「でも、空ではない」
「ええ」
「それも、腹が立つ」
「ええ」
「でも」
一拍。
「悪くない」
黒ドレス特化救済春麗は、静かに頷いた。
「ええ」
夢が閉じた。
朝。
黒執着春麗は、棚の前に立っていた。
夜明けの光が、部屋に入っている。
棚の扉は閉じている。
中には、畳んだ黒がある。
布紐がある。
春麗は、しばらくその扉を見ていた。
そして、静かに開ける。
黒がある。
何も変わっていない。
ただ、見え方だけが少し変わっていた。
返された黒ではない。
拒まれた黒ではない。
リュウに奪われた黒ではない。
戻ってきた黒。
まだ、一部だけ。
まだ、全部ではない。
それでも、戻る道が見えた黒。
春麗は、袖の端に触れた。
布紐にも触れる。
どちらも、そこにある。
「……戻ってきた」
小さく言う。
今度は、すぐには否定しなかった。
一拍置いてから、苦い顔で付け足す。
「一部だけ」
そして、さらに言う。
「私の黒だとは、まだ言わない」
それは逃げではなかった。
今の正直な距離だった。
「でも」
春麗は、黒い袖をそっと整えた。
「私の黒ではない、とも言わない」
その言葉は、今までで一番静かだった。
大きな宣言ではない。
救済完了でもない。
でも、確かに線が変わった。
黒は、リュウの中だけにはない。
リュウのものではない。
棚の中にある。
戻ってきている。
まだ一部だけ。
それでも、戻ってきている。
春麗は、棚を閉めなかった。
少しだけ開けたままにする。
見えるように。
隠さないように。
でも、出しっぱなしにはしないように。
「次は」
いつもの言葉が浮かぶ。
次は勝つ。
それは、まだ消えていない。
でも今日は、その前に別の言葉が来た。
「次は、戻ってきた黒を失くさない」
春麗は、少しだけ顔をしかめた。
「……また余計なことを」
けれど、消さなかった。
戻ってきた黒。
まだ一部だけ。
まだ私の黒とは言いたくない。
でも、私の黒ではないとも、もう言わない。
黒執着春麗は、朝の光の中で静かに息を吐いた。
重い。
でも、空ではない。
その重さを、今日は少しだけ棚の中に置いておける気がした。
Q:今回の妄想章IFについて解説して?
A:
はい。今回の 「黒執着春麗は、返された黒をまだ私の黒とは言いたくない」 は、黒執着春麗救済ルートの中でもかなり重要な 黒返却の認識転換回 です。
一言で言うなら、
黒執着春麗が、“リュウに返される=拒絶される/空になる”と思っていた黒を、“返されたのではなく、自分の側へ戻ってきた黒”として見始める回
です。
今回の核は、
返されたのではなく、戻ってきた。
でも、まだ全部は持てない。
だから、“私の黒”とはまだ言わない。
けれど、“私の黒ではない”とも、もう言わない。
ここです。
今回の一番大きな進行
これまで黒執着春麗にとって、「返される」はかなり怖い言葉でした。
リュウの拳に残した黒。
リュウの中に置いた黒。
リュウに届きかけた証としての黒。
それを返されるということは、彼女にとって、
拒まれること
突き返されること
もうリュウの中に残れないこと
自分が空になること
に近かったわけです。
でも、ここまでの流れで状況が変わりました。
今日の黒は畳めた。
十一戦目は弱さにしないと決めた。
最初の黒は塗り潰さないと決めた。
負け続けた黒は束ね始めた。
リュウの中にも黒は残っているが、それはリュウのものではないと確認した。
その結果、今回ついに、
返されたのではなく、戻ってきた
という認識に触れました。
これが今回の最大進行です。
「返された」と「戻ってきた」の違い
ここは読者にもかなり重要です。
返された黒 だと、春麗から見ると少し冷たい。
リュウに拒まれた。
リュウに持てないと言われた。
リュウから突き返された。
自分の黒が行き場を失った。
そう見えやすいです。
でも 戻ってきた黒 は違います。
それは、
もともと春麗のものだった黒が、リュウの中に置かれっぱなしではなく、春麗の手元へ戻り始めた
という意味になります。
拒絶ではない。
消滅でもない。
奪還でもない。
処分でもない。
所在が春麗の側へ戻った ということです。
これが黒返却ルートの核心です。
黒執着春麗が激しく反発する理由
今回、黒ドレス特化救済春麗が、
戻ってきたのよ
と言った時、黒執着春麗は強く拒絶します。
これは自然です。
なぜなら、「戻ってきた」と認めると、その先にかなり重い結論が来るからです。
それは、
全部、私の黒だったことになる
です。
十一戦目。
最初の黒。
負け続けた黒。
今日の黒。
リュウに残そうとした黒。
置いていかなかった黒。
それらが戻ってきたということは、それらは最初から春麗の黒だったということになる。
つまり、もう、
あれは私の黒じゃない
あれは失敗だから塗り潰す
リュウの中にあるからまだ取りに行ける
返されたら空になる
という逃げ方がしにくくなります。
だから黒執着春麗は反発します。
ここは、かなり正しい拒絶です。
「全部を今すぐ持てとは言っていない」が救済側の優しさ
黒ドレス特化救済春麗の重要な台詞は、
全部を今すぐ持てとは言っていないわ。
でも、あなたの黒ではないとは、もう言えない。
「全部あなたの黒よ。受け取りなさい」とは言っていません。
それをやると、黒執着春麗には重すぎる。
でも同時に、
もう“私の黒ではない”とは言えないところまで来ている
とは突きつけています。
つまり、今回の到達点は完全受領ではありません。
否認不能の段階です。
まだ受け取れない。
でも、もう自分と無関係とは言えない。
この中間がとても丁寧です。
「戻ってきた」と言ってから「一部だけ」と足すのが良い
今回、黒執着春麗はついに言います。
返されたのではなく、戻ってきた。
でも、すぐに付け足します。
一部だけ。
ここがすごく黒執着春麗らしいです。
一気には認めない。
全部戻ってきたとは言わない。
全部持てるとは言わない。
全部私の黒だとは言わない。
でも、一部だけなら認める。
今日の黒の端だけ。
負け続けた黒の束の端だけ。
戻る道だけ。
この「一部だけ」が、今の段階に非常に合っています。
「私の黒だとはまだ言わない。でも、私の黒ではないとも言わない」が最大到達点
ラストのこの整理は、かなり綺麗です。
私の黒だとは、まだ言わない。
でも、私の黒ではない、とも言わない。
今までの黒執着春麗は、かなり強く否認していました。
最初の黒は、まだ私の黒じゃない。
使い切れなかった黒は、私の黒ではない。
負けた黒は、リュウの中に残すしかない。
返されたら空っぽになる。
でも今回、否認の形が崩れました。
まだ肯定はしない。
でも否定もしない。
これは大きいです。
黒ドレス特化救済春麗の役割が終盤らしい
今回の黒ドレス特化救済春麗は、かなり終盤の役割をしています。
これまで彼女は、黒執着春麗に対して、
持たなくていい
今はまだでいい
でも見なかったことにはしない
という距離で寄り添ってきました。
今回は一歩踏み込みます。
戻ってきたのよ
と言う。
これは、これまでより強い言葉です。
でも、ここまで積み上げたから言える。
今日の黒を畳めていない段階でこれを言ったら早すぎました。
十一戦目を弱さにしない前でも早すぎました。
最初の黒を塗り潰さない前でも早すぎました。
リュウ後日談で所有権確認をしていなければ、まだ危険でした。
でも、今なら言える。
この順番がとても良いです。
今回は救済完了ではない
ここは大事です。
今回で黒執着春麗はかなり進みましたが、まだ完全救済ではありません。
なぜなら、まだこう言えていないからです。
これは私の黒。
負けた黒も私の黒。
黒を着ても着なくても私は空ではない。
今回言えたのは、あくまで、
戻ってきていないとは言えない。
私の黒ではないとも言わない。
です。
これは最終一歩手前です。
かなり近いけれど、まだ完全到達ではない。
この残し方が良いです。
今回の位置づけ
ここまでの流れを整理すると、今回の位置はかなり明確です。
今日の黒を畳む
→ 負けた黒を手元に置ける形にした。
十一戦目を弱さにしない
→ 黒以前の敗北を、弱さではなく終われなさとして見た。
最初の黒を塗り潰さない
→ 未完成な黒を消さないと決めた。
負け続けた黒を束ねる
→ 敗北回数ではなく、変化の束として見始めた。
リュウ後日談
→ リュウの中にも黒は残るが、リュウの所有物ではないと確認した。
今回
→ 返却ではなく、戻ってきた黒だと認識し始めた。
つまり今回は、これまでの積み上げを 「黒の所在が春麗側に戻り始めた」 と言語化する回です。
結論
今回のエピソードは、黒執着春麗救済ルートにおける 黒返却の認識転換回 です。
一言でまとめるなら、
黒執着春麗は、リュウに返されたら空になると思っていた黒が、実は拒まれて返されたのではなく、自分の手元へ戻ってきた黒だったと見始める。まだ全部は持てず、“私の黒”とも言えないが、“私の黒ではない”とも言えなくなる回
です。
非常に大きい回です。
ここまで来ると、黒執着春麗はもう以前のように、
リュウの中に黒を残し続けなければ立てない春麗
ではありません。
まだ重い。
まだ全部は持てない。
まだ腹は立つ。
まだ勝ちたい。
でも、黒は戻ってきている。
そして彼女はもう、それを完全には否定できない。