また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
自分をめんどくさい女と自覚する前の春麗のエピソードになります。
朝。
自覚前春麗は、黒ドレスの前で止まっていた。
そこにある。
黒い布。
自分が一度、勝った黒。
リュウに届いた黒。
そして、届いたからこそ、少し危険だった黒。
黒ドレスを見れば、思い出す。
黒で勝った時の感覚。
黒を使った時の熱。
リュウの拳に、黒が届いた瞬間。
そして、その後に折られたもの。
黒酔いフラグ。
黒に勝ちすぎないための釘。
黒だけを自分にしないための、あの言葉。
自覚前春麗は、黒ドレスから視線を外した。
次に、青い武道服を見る。
青。
本編春麗の青。
戻って選び直された青。
届かれた青。
見られた青。
覚えられた青。
そして、自分にとっては、まだ少し距離のある青。
青を見れば、別のログを思い出す。
黒ではない自分を見られた日。
黒でも青でもない服でリュウに会ってしまった日。
試合ではない。
資料整理日。
そう言い訳していたのに、リュウに見られた日。
今日の春麗も、昨日の青とは違うな。
その言葉で、精神HPを削られた日。
自覚前春麗は、額に手を当てた。
「……どちらも、面倒ね」
黒を選べば、黒の続きを始めることになる。
青を選べば、青の意味を背負うことになる。
黒を選ばなければ、黒から逃げたように見えるかもしれない。
青を選ばなければ、青を避けているように見えるかもしれない。
どちらも選べる。
どちらも選ばないこともできる。
しかし。
どちらかを選べば、自分の次が決まってしまう気がした。
自覚前春麗は、黒ドレスと青い武道服の間に立ったまま、しばらく黙っていた。
黒でもない。
青でもない。
まだ決めていない。
先日の会議室で出た言葉が、胸の奥に残っている。
決める前の春麗。
未承認仮分類。
正式に認めたつもりはない。
だが、消えてもいない。
「今日は、まだ決めないわ」
声に出す。
部屋の中に、その言葉が落ちる。
「黒を選ばないとは言っていない」
一拍。
「青を避けているわけでもない」
もう一拍。
「資料として、選択前の状態を確認するだけ」
言ってから、自分で少し安心した。
資料として。
便利な言葉だ。
まだ使える。
いや、使っているだけでは駄目だと分かっている。
分かっているが、完全に手放すにはまだ早い。
自覚前春麗は、黒にも青にも触れなかった。
代わりに、普通服に近い服を選んだ。
ただし、完全な日常服ではない。
動ける。
走れる。
いざとなれば構えられる。
試合をするつもりはない。
少なくとも、予定にはない。
しかし、動けない服では困る。
足元には、動きやすい靴を選んだ。
髪も、少しだけ整えた。
鏡の中の自分を見る。
黒ではない。
青でもない。
完全な日常でもない。
試合服でもない。
自覚前春麗は、鏡の中の自分に言った。
「念のためよ」
誰に対する言い訳かは、分からない。
たぶん、自分に対してだ。
「偶然を記録するには、外出が必要」
一拍。
「資料として」
そう言って、部屋を出た。
街は、いつも通りだった。
黒ドレスを着ていない。
青い武道服でもない。
それだけで、歩く感覚が少し違う。
黒を着ていない自分。
青を選んでいない自分。
まだ決めていない自分。
自覚前春麗は、歩きながら何度も自分に言い聞かせた。
今日は試合の日ではない。
今日は黒の続きを始める日ではない。
今日は青へ移る日でもない。
今日は選択前状態の確認日。
資料として、次位置未定の自分がどう反応するかを確認するだけ。
だから、もしリュウに会ったとしても。
そこまで考えて、足が止まりそうになった。
会う前提になっていないか。
自覚前春麗は、軽く咳払いをする。
「偶然の可能性を想定しているだけよ」
誰も聞いていない。
それでも言う。
「資料として」
角を曲がる。
その先に、リュウがいた。
当然のように。
あまりにも当然のように。
自覚前春麗は、一瞬だけ足を止めた。
リュウもこちらに気づいた。
「春麗」
名前を呼ばれた。
それだけで、少しだけ胸が跳ねる。
自覚前春麗は、平静を装った。
「偶然ね」
「ああ」
リュウは頷く。
そして、春麗を見る。
黒ではない。
青でもない。
でも、完全な日常でもない。
自覚前春麗は、その視線を感じて少しだけ肩に力が入った。
見ないでほしい。
いや、見られて困る格好ではない。
資料として確認しているだけだ。
リュウは、しばらく何も言わなかった。
その沈黙が、逆に危険だった。
そして、言った。
「今日の春麗は、まだ決めていないんだな」
自覚前春麗の精神HPが削れた。
かなり削れた。
初手。
まだ会話開始直後。
しかも、正確。
正確すぎる。
「決めていないわけではないわ」
即座に反論する。
「条件を整理していただけよ」
一拍。
「資料として」
リュウは頷いた。
「ああ」
「納得するのね」
「春麗がそう言うなら」
「なら、今の発言は撤回しなさい」
「撤回?」
「まだ決めていない、という表現よ」
リュウは少し考えた。
「でも、来た」
さらに削れた。
自覚前春麗は、一歩下がりそうになった。
下がらない。
来た。
そう。
黒も青も選ばず、試合でも日常でもない状態で、それでも外に出た。
そして、リュウに会った。
偶然。
資料として。
選択前状態の確認。
言い訳はできる。
だが、来たこと自体は消えない。
「……来たことまで観測対象にしないで」
リュウは真面目に答える。
「見えた」
「見えたものを全部言葉にしないで」
「難しいな」
「難しくないわ」
自覚前春麗は、息を整える。
ここで崩れてはいけない。
黒でも青でもない。
まだ決めていない。
それを見抜かれただけだ。
見抜かれただけ。
ただ、それだけ。
それだけなのに、かなり危険だ。
リュウは、もう一度春麗を見た。
視線は乱暴ではない。
黒を見る時のような強い踏み込みでもない。
青を見る時のような、まっすぐな確認でもない。
ただ、今の春麗を見ている。
それが一番困る。
「黒ではない」
リュウが言う。
自覚前春麗は少し身構える。
「ええ」
「青でもない」
「ええ」
「でも、春麗だ」
その言葉は、以前にも近いものを聞いた気がする。
黒でも青でもない日。
普通の服まで観測対象にしないで、と言いたくなった日。
だが、今回はそこで終わらなかった。
リュウは、少しだけ考えてから続けた。
「まだ決めていない春麗も、春麗だ」
自覚前春麗は、完全に止まった。
未確定状態。
選択前。
黒を選んでいない。
青も選んでいない。
決めていない。
それを、リュウが春麗として見てきた。
否定しない。
急かさない。
決めろとも言わない。
ただ、まだ決めていない春麗も春麗だと言う。
それは、かなり危険だった。
「未確定状態まで、勝手に肯定しないで」
どうにか言う。
声は少しだけ硬かった。
リュウは首を傾げる。
「肯定したのか」
「したわ」
「そうか」
「自覚がないのね」
「ああ」
「だから危険なのよ」
リュウは真面目に言う。
「でも、春麗は春麗だ」
「繰り返さないで」
「黒でも」
「やめなさい」
「青でも」
「やめなさいと言っているでしょう」
「まだ決めていなくても」
「リュウ」
「ああ」
「その先は、かなり危険」
リュウは止まった。
珍しく止まった。
自覚前春麗は、少しだけ息を吐く。
助かった。
完全に助かったわけではない。
もう十分削られている。
だが、止まってくれた。
リュウは、少しだけ静かに言った。
「わかった」
それもまた、少し危険だった。
分かって止まる。
踏み込みすぎない。
なのに、見落とさない。
やはり、リュウは危険だ。
しばらく、二人は並んで歩いた。
そうなった経緯は、自覚前春麗にもよく分からない。
気づけば、同じ方向へ歩いていた。
リュウは何も急かさない。
春麗も、自分から黒や青の話をしない。
ただ、沈黙が続く。
試合前の沈黙ではない。
日常の沈黙とも少し違う。
選択前の沈黙。
自覚前春麗は、横目でリュウを見る。
リュウは前を見ている。
何かを待っているようでもない。
けれど、こちらが何かを言えば聞くのだろう。
それが、また危険だった。
リュウが口を開いた。
「今日は戦わないのか」
自覚前春麗は、少しだけ足を止めた。
その問いは来ると思っていた。
だが、実際に聞かれると少し揺れる。
黒で行くなら、戦う流れはある。
青で行くなら、試合の意味はある。
でも今日は、黒でも青でもない。
決めていない。
戦うのか。
戦わないのか。
それすら、まだ決めていない。
自覚前春麗は、少し考えてから答えた。
「今日は、まだ戦う日ではないわ」
一拍。
「戦わないと決めたわけでもないけれど」
言ってから、自分で少し笑いそうになった。
本当に、曖昧だ。
しかし、今日はその曖昧さを持って来た。
リュウは頷く。
「なら、次を待つ」
精神HPが削れた。
自覚前春麗は、即座に言う。
「待たないで」
「なぜ」
「待たれると、次を決めなければいけない気がするから」
リュウは考える。
「決めなくてもいい」
「今、次を待つと言ったでしょう」
「ああ」
「矛盾しているわ」
「次があるなら待つ」
さらに削れる。
自覚前春麗は、顔を少しだけ背けた。
「……そういう言い方をしないで」
「駄目か」
「駄目ではないから、困るのよ」
リュウは、また少し考える。
「春麗が決めたら、その時に戦えばいい」
「決めなかったら?」
「その時は、その時の春麗を見る」
大きく削れた。
自覚前春麗は、完全に言葉を失った。
その時の春麗を見る。
またそれだ。
リュウは、黒を選んだ自分も見た。
黒を着なかった自分も見た。
そして今、まだ決めていない自分まで見ている。
さらに、次に決めなかった自分まで見ると言う。
「……あなた」
「ああ」
「本当に、未確定状態の扱いが危険ね」
「危険か」
「危険よ」
自覚前春麗は、どうにか体勢を立て直す。
「今日は戦わない」
「ああ」
「次に戦うかどうかも、まだ決めない」
「ああ」
「黒か青かも、まだ決めない」
「ああ」
「ただ」
一拍。
「次がないとは、言っていない」
リュウは静かに頷いた。
「わかった」
その素直さに、また少し削られた。
別れ際。
自覚前春麗は、少しだけ足を止めた。
今日は何も選ばなかった。
黒を選ばなかった。
青も選ばなかった。
試合もしなかった。
ただ、リュウに会った。
そして、見られた。
まだ決めていない春麗として。
それが、どれほど危険だったか。
自分でもよく分かっている。
リュウが言う。
「春麗」
「何?」
「次に会う時も、今日と違っていていい」
自覚前春麗は、息を止めた。
「……何を」
「黒でも」
「リュウ」
「青でも」
「止まりなさい」
「まだ決めていなくても」
止まらなかった。
いや、止まったのかもしれない。
でも、言うべきところまでは言った。
自覚前春麗は、額に手を当てた。
「あなた、本当に最後に余計なものを置いていくわね」
「余計か」
「余計ではないのが一番余計なのよ」
リュウは少し困ったようにした。
「難しいな」
「ええ、難しいわ」
一拍。
「だから、資料が必要なのよ」
リュウは頷いた。
「資料か」
「ええ」
「なら、今日も資料になったのか」
自覚前春麗は、黙った。
資料。
今日も資料になった。
それは確かにそうだ。
でも、それだけではない。
今日のこれは、資料として見るだけでは済まない。
自分のログだ。
黒でも青でもない。
決めていない自分が、リュウに見られた。
それは、資料ではなく、自分の記録だ。
自覚前春麗は、少しだけ視線を逸らした。
「……なったわ」
「ああ」
「でも」
一拍。
「資料だけでは、ないわね」
リュウは静かに見る。
何も言わない。
自覚前春麗は、その沈黙に少しだけ救われる。
「今日はここまで」
「ああ」
「次があるかは、まだ決めない」
「ああ」
「でも、次があった時に、あなたが今日のことを忘れていたら減点」
「忘れない」
即答。
自覚前春麗は顔を背けた。
「……即答しないで」
「忘れない」
「二回言わないで」
リュウは、少しだけ頷いた。
「また今度だ」
自覚前春麗は、ゆっくり息を吐いた。
「ええ」
一拍。
「また今度」
そう言って、リュウと別れた。
帰り道。
自覚前春麗は、ひとりで歩いた。
黒を選ばなかった。
青も選ばなかった。
試合もしなかった。
それなのに、胸の奥は妙に疲れている。
精神HPは、かなり削れた。
だが、悪くない。
悪くないから、余計に困る。
「今日は、何だったのかしら」
小さく呟く。
資料としての確認。
選択前状態の観測。
偶然接触。
リュウとの会話。
未確定性の肯定。
試合未実施。
次回未定。
どれも言葉としては並べられる。
けれど、それだけでは足りない。
今日は、黒を選ばなかった。
青も選ばなかった。
試合もしなかった。
でも、リュウに会った。
そして、リュウに言われた。
今日の春麗は、まだ決めていないんだな。
まだ決めていない春麗も、春麗だ。
その時の春麗を見る。
次に会う時も、今日と違っていていい。
自覚前春麗は、足を止めた。
胸の奥に、言葉が残っている。
未確定な自分を、そのまま見られた。
それは、恥ずかしい。
かなり恥ずかしい。
でも、否定されなかった。
急かされなかった。
決めろとも言われなかった。
ただ、春麗として見られた。
「……これは、ログね」
静かに言う。
一拍。
「資料ではない」
もう一拍。
「いや、資料でもある」
自分で少しだけ笑った。
「でも、自分のログでもある」
それが、今日の結論だった。
資料係ではない。
ただ見て終わる春麗ではない。
今日は、自分自身が見られた。
決める前の春麗として。
自覚前春麗は、空を見上げる。
「……資料係では、終わらなかったわね」
一拍。
「まだ決めていないだけ」
もう一拍。
「でも、次に会う時は、何かを選ぶかもしれない」
黒か。
青か。
それとも、また決めないままか。
まだ分からない。
けれど、次がある。
次があると、リュウは待つと言った。
待たないで、と言ったのに。
次があるなら待つ、と言った。
自覚前春麗は、少しだけ顔を赤くした。
「……待たないでと言ったのに」
小さく呟く。
でも、歩き出した足は止まらなかった。
今日は何も選んでいない。
それでも、止まってはいない。
決める前の春麗として。
自覚前春麗は、自分の次のログへ向かって歩いていた。
Q:今回の妄想章IFについて解説して?
A:
今回のエピソードは、一言で言うなら、
自覚前春麗が、“資料を見る側”から“自分自身のログを更新する側”へ戻る回
です。
前回、自覚前春麗には新しい未承認仮分類がつきました。
決める前の春麗。
黒を選ぶ春麗ではない。
青を選ぶ春麗でもない。
黒を捨てた春麗でもない。
青に逃げた春麗でもない。
まだ決めていない春麗。
今回は、その分類を実際に外へ持ち出す話です。
ただし、今回は試合回ではありません。
黒ドレスで戦うわけでもない。
青い武道服で戦うわけでもない。
リュウに明確な用事があるわけでもない。
春麗会議室へ戻ってレビューするわけでもない。
自覚前春麗が、黒も青も選ばないまま外に出る。
それだけの話です。
でも、今回の自覚前春麗にとっては、それだけでかなり大きいです。
冒頭で、自覚前春麗は黒ドレスと青い武道服の前で止まります。
黒ドレスには、黒で勝ったログがあります。
リュウに届いた黒。
黒酔いフラグを折られた黒。
黒だけを自分にしないための、危険で大事な黒。
一方で青い武道服には、本編春麗の青があります。
届かれた青。
見られた青。
覚えられた青。
そして、自覚前春麗にとっては、まだ完全に自分のものではない青。
どちらも選べる。
どちらも選ばないこともできる。
でも、どちらかを選ぶと、自分の次が決まってしまう気がする。
ここが今回の出発点です。
だから彼女は、
今日は、まだ決めないわ
と言います。
これは逃げではあります。
でも、完全な逃げではありません。
黒を選ばないとは言っていない。
青を避けているわけでもない。
ただ、選択前の状態を確認する。
そして、いつものように、
資料として
と言い訳します。
この「資料として」が、今回もかなり大事です。
自覚前春麗にとって「資料として」は、逃げ道であり、防御であり、観測者の立場へ戻るための言葉です。
でも今回の「資料として」は、少しだけ意味が変わっています。
ただ見るための資料ではなく、
自分自身が次へ行くための資料になり始めています。
今回、自覚前春麗は普通服に近い格好で外に出ます。
でも完全な日常服ではありません。
動ける靴を履く。
髪も少し整える。
試合服ではない。
でも、いざとなれば動ける。
この曖昧さが、自覚前春麗らしいです。
黒ではない。
青でもない。
日常でもない。
試合でもない。
まさに、次位置未定の状態です。
そして、当然のようにリュウに会います。
ここでリュウが言う、
今日の春麗は、まだ決めていないんだな
が、今回の第一被弾です。
これはかなり危険な言葉です。
なぜなら、黒でも青でもないことを見られたのではなく、
決めていない状態そのものを見られたからです。
自覚前春麗は、
決めていないわけではないわ
条件を整理していただけよ
資料として
と反論します。
でも、リュウは、
でも、来た
と言います。
ここがかなり強いです。
黒を選んでいない。
青も選んでいない。
戦うつもりもない。
日常だと言い切るつもりもない。
それでも、来た。
この「来た」という事実を見られてしまう。
これで自覚前春麗は、観測者側だけではいられなくなります。
今回のリュウの最大火力は、
まだ決めていない春麗も、春麗だ
です。
これは、今回のエピソードの核です。
黒でも青でもない春麗を認めるだけなら、以前の「黒でも青でもない日常回」と近くなります。
でも今回は、さらに一段進んでいます。
リュウは、服装ではなく、状態を見ています。
まだ決めていない状態。
選択前の春麗。
未確定の春麗。
それを、そのまま春麗として見ている。
だから、自覚前春麗はかなり削られます。
彼女は、決めていないことを弱さや逃げとして扱いかけていました。
でもリュウは、それを否定しない。
急かさない。
決めろとも言わない。
ただ、
まだ決めていない春麗も、春麗だ
と言う。
これは、自覚前春麗にとってかなり危険な肯定です。
今回、試合をしないのも大事です。
ここで試合をしてしまうと、黒か青か、あるいは戦う春麗としての答えが出てしまいます。
でも今回の目的は、答えを出すことではありません。
決める前の春麗を立てること。
だから試合はしません。
リュウが、
今日は戦わないのか
と聞く。
自覚前春麗は、
今日は、まだ戦う日ではないわ
戦わないと決めたわけでもないけれど
と返す。
この曖昧さが、今回の彼女の現在地です。
そしてリュウが、
なら、次を待つ
と言う。
これも危険です。
自覚前春麗は「待たないで」と返します。
待たれると、次を決めなければいけない気がするからです。
でもリュウは、
次があるなら待つ
と言う。
さらに、
その時の春麗を見る
と言う。
これは、黒を選んだ春麗でも、青を選んだ春麗でも、まだ決めていない春麗でも、その時の春麗を見るということです。
自覚前春麗にとって、かなり逃げ場のない肯定です。
今回の到達点は、終盤の自覚前春麗の整理にあります。
今日は黒を選ばなかった。
青も選ばなかった。
試合もしなかった。
でも、リュウに会った。
そして、リュウに見られた。
これは資料です。
でも、資料だけではない。
自覚前春麗は、最後にこう整理します。
これは、ログね。
資料ではない。
いや、資料でもある。
でも、自分のログでもある。
ここが今回の最大の更新点です。
自覚前春麗は、これまで「資料として」と言うことで、少し距離を取っていました。
でも今回は、自分自身がリュウに見られています。
黒でも青でもない。
決めていない。
未確定。
次位置未定。
その自分が、春麗として見られた。
だから、これは単なる資料ではなく、自分のログです。
最後の、
資料係では、終わらなかったわね
という言葉も重要です。
前回の会議室で、自覚前春麗は「資料係では終わらない」と言いました。
今回は、それを実際に一歩進めました。
派手な試合はしていません。
精神HPノックアウトもしていません。
大きな勝敗もありません。
でも、リュウに「まだ決めていない春麗」として見られた。
そして、それを自分のログとして受け取った。
これで十分です。
今回のエピソードは、自覚前春麗のリブート第一歩です。
黒へ戻るのか。
青へ行くのか。
また決めないまま進むのか。
答えはまだ出ていません。
でも、次がある。
次があるなら待つ、とリュウは言った。
そして自覚前春麗は、
でも、次に会う時は、何かを選ぶかもしれない
と考えます。
この「かもしれない」が、彼女らしいです。
断言しない。
正式承認しない。
資料として逃げ道を残す。
でも、次へ進む可能性は認める。
今回の到達点は、
黒でも青でもない。
試合もしない。
でも、リュウに会った。
まだ決めていない春麗として見られた。
そして、それは資料であり、自分のログでもある。
です。
自覚前春麗は、資料係では終わりませんでした。
まだ決めていないだけ。
でも、止まってはいません。
次のログへ向かって歩き始めています。