また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
朝。
本編春麗は、青い武道服の前で腕を組んでいた。
黒執着春麗編は一区切りついた。
黒は、記録棚にある。
消えたわけではない。
なかったことになったわけでもない。
けれど、今は中央に置き続けなくてもいい。
その後、本編春麗は自分の宿題ラインへ戻った。
リュウへの宿題進捗確認。
正式回答ではない。
あくまで途中経過。
それでも、リュウは考えていた。
春麗が変わったなら、その春麗と話す。
次の春麗と、また向き合う。
正式回答で踏み込むなら、春麗が大丈夫かも考える必要がある。
考えている間も、春麗のことを考えている。
前より、春麗の言葉を思い出すことが増えた。
そして最後に。
黒の話が一区切りついたなら、春麗の話も、また聞かせてくれ。
春麗は、青い袖を見つめた。
「……言ったわよね」
誰もいない部屋に、声が落ちる。
リュウは言った。
春麗の話も、また聞かせてくれ。
それはつまり、聞く意思があるということだ。
こちらから話しに行っても、構造上問題はない。
むしろ、話を聞かせてくれと言われた側としては、話しに行く権利がある。
いや、義務ではない。
義務ではないが、根拠はある。
用事がないのに会いに行った時とは違う。
今回は、用事がある。
ある。
たぶん。
「……春麗の話も、また聞かせてくれ」
春麗は、小さく復唱した。
復唱しただけで、少し顔が熱くなる。
「危険ね」
危険だった。
かなり危険だった。
リュウは何気なく言ったのかもしれない。
だが、本編春麗にとっては十分すぎる根拠だった。
黒執着春麗の話が続いていた。
黒を救う話。
黒を持つ話。
黒を着ても着なくても空ではない話。
それは必要だった。
大事だった。
丁寧に扱うべきものだった。
けれど、その間、本編春麗の青は少し待っていた。
宿題の正式回答もまだ。
青の続きもまだ。
主人公としての出番も、少し溜まっていた。
春麗は、鏡の前に立った。
青い武道服に袖を通す。
黒ではない。
今日は青。
本編春麗の青。
宿題を持つ青。
正式回答を待つ青。
そして、リュウに話を聞かせてくれと言われた青。
「……今日は、会いに行く理由があるわ」
一拍。
「リュウが、聞かせてくれと言った」
もう一拍。
「だから、行く」
言い切った。
言い切ったが、心拍は少し速かった。
春麗は、青い袖を整える。
「これは主人公としての出番確保ではない」
一拍。
「いえ、多少はある」
もう一拍。
「構造上」
便利な言葉だった。
春麗は、鏡の中の自分を見た。
黒の後に戻ってきた青。
待たされていた分だけ、少しだけ主人公補正が溜まっている気がする。
気がするだけ。
だが、こういう時の物語は危険だ。
溜まった分、何かが返ってくる。
甘い形で。
精神HPを削る形で。
春麗は、少しだけ警戒した。
「……今日は慎重に行くわ」
一拍。
「でも、行く」
そう言って、部屋を出た。
リュウは、いつもの場所にいた。
修行場。
風の通る場所。
以前、宿題の話をした場所。
春麗は、少しだけ足を止めた。
前回は進捗確認だった。
今日は違う。
正式回答を急かすわけではない。
試合を申し込みに来たわけでもない。
ただ、リュウが言った。
春麗の話も、また聞かせてくれ。
だから、来た。
それだけ。
それだけなのに、胸が熱い。
「春麗」
リュウが顔を上げた。
こちらに気づく。
春麗は、平静を装って近づいた。
「リュウ」
「ああ」
「今日は、戦いに来たわけではないわ」
「そうか」
「宿題の正式回答を急かしに来たわけでもない」
「ああ」
「進捗確認でもない」
「そうなのか」
「そうよ」
リュウは、少しだけ考えた。
「なら、春麗の話か」
春麗は固まった。
早い。
理解が早い。
前回よりさらに早い。
「……あなた」
「何だ」
「最近、本当に理解が早くない?」
「前に言った」
「何を」
「春麗の話も、また聞かせてくれ、と」
春麗は青い袖を握りそうになった。
握らない。
初手から被弾している場合ではない。
「覚えているのね」
「ああ」
「言った側だから?」
「ああ」
「では、私が来た理由も分かると」
「春麗が話をしに来たのだと思った」
春麗は、少しだけ顔を背けた。
「八十七点」
「点数がつくのか」
「つくわ」
「まだ何も聞いていない」
「理解度点よ」
「そうか」
「高い方よ」
「ならよかった」
「よかった、ではないわ」
春麗は咳払いをした。
会話の主導権を取らないと危険だ。
リュウはこういう時、無自覚に真ん中へ踏み込んでくる。
こちらが準備してきた理屈を、あっさり肯定してくる。
それが一番危険だ。
「リュウ」
「ああ」
「前回、あなたは言ったわ」
「ああ」
「黒の話が一区切りついたなら、春麗の話も、また聞かせてくれ、と」
「ああ」
「だから、今日は来たの」
「ああ」
「聞きたいと言ったのは、あなた」
「ああ」
「だから、これは私が勝手に来たわけではない」
リュウは少しだけ首を傾げた。
「勝手に来てもよかった」
精神HPが削れた。
春麗は完全に止まった。
「……今、何て?」
「勝手に来てもよかった」
「どういう意味?」
「春麗が話したいなら、来ていい」
「……」
「俺が聞きたいと言ったから来たのでもいい」
一拍。
「でも、それがなくても、春麗が来るなら聞く」
春麗は顔を覆いそうになった。
覆らない。
まだ序盤。
まだ、始まったばかり。
「リュウ」
「ああ」
「それは、予定外の加点対象よ」
「そうなのか」
「そうよ」
「何点だ」
「……九十点」
「高い」
「高いわよ」
春麗は、どうにか息を整えた。
主人公補正が溜まっている。
今、確信した。
これは危険な日だ。
黒執着春麗で出番が少なかった分、本編春麗に甘い出来事がまとめて返ってきている。
物語が、こちらを狙っている。
かなり危険だった。
二人は、修行場の端にある木陰へ移動した。
試合ではない。
立ち話でもない。
けれど、完全な日常でもない。
話をするための距離。
春麗は、少しだけ落ち着かない。
リュウは静かに待っている。
急かさない。
そこもまた危険だった。
「それで」
リュウが言う。
「春麗の話は?」
春麗は、少しだけ視線を落とした。
聞かせてくれと言われた。
だから来た。
だが、いざ聞かれると、何を話せばいいのか分からない。
黒の話。
青の話。
宿題の話。
会議室の話は言えない。
黒執着春麗のことも、直接は言えない。
でも、黒が一区切りついた後の自分の話ならできる。
「黒の話が、重かったの」
「ああ」
「長かった」
「ああ」
「でも、必要だった」
「ああ」
「ちゃんと畳めたと思う」
リュウは、静かに聞いている。
口を挟まない。
評価しない。
ただ受け取っている。
春麗は、その沈黙に少しだけ安心した。
「だから、今は青の話に戻れる」
「ああ」
「でも、戻ると言っても、黒をなかったことにするわけではない」
「ああ」
「黒を棚に置いたうえで、青へ戻る」
「ああ」
「……そういう感じ」
自分でも、少し曖昧だった。
だが、リュウは頷いた。
「春麗は、黒の後の青で来たんだな」
精神HPが削れた。
春麗は顔を上げる。
「……あなた」
「何だ」
「簡単に言語化しないで」
「違ったか」
「違わないから危険なのよ」
リュウは、少しだけ考えた。
「黒の後の青」
「繰り返さないで」
「今日の春麗は、それだと思った」
「だから言わないで」
春麗は、青い袖を握った。
黒の後の青。
それは、今日の自分の正確な言葉だった。
黒の後。
重い黒を畳んだ後。
自分の宿題ラインへ戻った青。
リュウに話を聞かせてくれと言われて、自分から来た青。
そう言われると、逃げ場がない。
「……九十一点」
「また上がった」
「上がるわよ」
「まだ聞いただけだ」
「聞き方が危険なのよ」
リュウは、少しだけ困ったようにした。
「春麗の話を聞いているだけだ」
「それが危険なの」
「どう聞けばいい」
「……そのままでいい」
言ってしまった。
春麗は自分で詰まった。
リュウは、静かに見る。
「そのままでいいのか」
「今のは忘れなさい」
「忘れない」
「即答しないで」
「大事だと思った」
精神HPがまた削れる。
春麗は顔を背けた。
駄目だ。
今日のリュウは、聞く姿勢が高火力すぎる。
前回は進捗確認だった。
今回は、聞く側に回っている。
それがこんなに危険だとは思わなかった。
春麗は、少しだけ空を見上げた。
青い袖が風に揺れる。
話す。
自分の話を。
リュウに。
それは、思ったよりも難しい。
でも、言葉は少しずつ出た。
「黒の話をしている間、私は少し待っていたのかもしれない」
「ああ」
「黒を見ていた」
「ああ」
「黒がどう救われるのか、黒をどう持つのか、黒を着ても着なくても空っぽではないのか」
「ああ」
「それを見届ける必要があった」
「ああ」
「でも、その間も、私の宿題は消えていなかった」
「ああ」
「青も、消えていなかった」
「ああ」
「……たぶん、私もそれを確認したかった」
リュウは、しばらく黙ってから言った。
「だから来た」
春麗は小さく頷いた。
「ええ」
「春麗の話をしに」
「ええ」
「俺に」
春麗は止まった。
余計な三文字。
俺に。
その三文字で、かなり削れる。
「……そうよ」
認めた。
逃げなかった。
今日は、聞かせに来たのだから。
「あなたが、聞かせてくれと言ったから」
「ああ」
「だから来た」
「ああ」
「でも、それだけではないかもしれない」
言ってしまった。
春麗は、言ってから自分で危険を感じた。
リュウは黙って聞いている。
沈黙が、逃げ場を作らない。
でも、急かさない。
春麗は、ゆっくり言葉を続けた。
「黒の話が一区切りついた後で、私の話に戻っていいのか確認したかった」
「ああ」
「青に戻っていいのか」
「ああ」
「宿題の続きに戻っていいのか」
「ああ」
「私が、まだ主人公として動いていいのか」
言った。
かなり言った。
最後の言葉は、少し冗談の形をしていた。
だが、本音が混じっていた。
リュウは、少しだけ目を細めた。
「春麗は、動いている」
精神HPが削れた。
「……採点前に結論を出さないで」
「来た」
「ええ」
「話している」
「ええ」
「なら、動いている」
春麗は、顔を覆いそうになった。
耐える。
「九十三点」
「また上がった」
「上がるわよ」
「主人公だからか」
春麗は完全に止まった。
「……何て?」
「春麗が、主人公として動いていいのかと言った」
「言ったけど」
「俺は、春麗は動いていると思った」
「そこまではいいわ」
「だから、主人公なのだと思った」
精神HPに大ダメージ。
春麗は青い袖を握った。
「リュウ」
「ああ」
「その言葉は、あなたが言うと危険」
「そうなのか」
「そうよ」
「春麗が言った」
「私が言うのと、あなたが言うのでは威力が違うのよ」
「威力」
「威力よ」
リュウは、少しだけ考える。
「なら、春麗は今日、自分で戻ってきたんだな」
さらに被弾。
「……追撃しないで」
「追撃か」
「追撃よ」
「でも、そう見えた」
「見えたことを全部言わないで」
「難しい」
「でしょうね」
春麗は、木陰の下で深く息を吐いた。
主人公補正。
やはり溜まっていた。
黒執着春麗編で溜まっていた分が、今日、一気に青へ流れ込んでいる。
リュウが甘い。
いや、リュウはいつも通りだ。
ただ、今日はこちらが受け取る状態になっている。
聞かせてくれと言われて、会いに来た。
その時点で、かなり危険な位置に立っていた。
しばらく沈黙が続いた。
リュウは待っている。
春麗は、もう少し話すべきか迷った。
ここで終わってもいい。
十分に削られている。
九十三点級の甘さは受けた。
主人公認定まで受けた。
撤退してもいい。
だが、今日は出番確保の日でもある。
ここで引くと、青が物足りない。
春麗は、自分で自分に呆れた。
どこまで構造を気にしているのか。
それでも、言葉は出た。
「リュウ」
「ああ」
「あなたは、私の話を聞きたいと言ったわ」
「ああ」
「それは、どういう意味?」
リュウは、少し考えた。
春麗は警戒する。
ここから先は危険だ。
しかし、聞いたのは自分だ。
聞いた以上、受け取るしかない。
「春麗が話すなら、聞きたい」
春麗は、少しだけ肩透かしを受けた。
単純。
だが、その単純さが危険だ。
「それだけ?」
「それだけではない」
やはり来る。
春麗は身構えた。
「黒の話は、春麗にとって大事だった」
「ええ」
「それが一区切りついた」
「ええ」
「でも、春麗がそこで止まるわけではない」
「ええ」
「なら、次に春麗が何を話すのか、聞きたい」
春麗は、少しだけ息を止めた。
リュウは続ける。
「春麗が何を持って戻ってきたのか」
「……」
「黒の後に、どんな青で来るのか」
「……」
「それを、聞きたいと思った」
精神HPが大きく削れた。
これは、かなり深い。
リュウは、黒を軽くしていない。
でも、黒の後の青を見ている。
それも、ただ見るだけではなく、聞きたいと言っている。
春麗は、青い袖を握った。
「……九十五点」
「上がった」
「上がるわよ」
「何がよかった」
「全部よ」
「全部か」
「全部」
春麗は、少しだけ笑ってしまった。
危険だ。
笑ってしまうほど危険だ。
リュウは、真面目に言う。
「春麗が話すなら、俺は聞く」
「ええ」
「話せないなら、待つ」
「……」
「話したくなったら、また聞く」
春麗は目を閉じた。
これは、甘い。
かなり甘い。
聞く。
待つ。
また聞く。
急かさない。
でも、聞く意思はある。
見落とさない。
でも、踏み込みすぎない。
今の本編春麗には、かなり高火力だった。
「……九十六点」
「また上がった」
「ええ」
「正式回答ではない」
「だから問題なのよ」
リュウは、少しだけ考える。
「今日の答えでは足りないか」
「足りないわ」
「そうか」
「でも、足りないのに高い」
「難しいな」
「難しいのよ」
春麗は、ゆっくり息を吐いた。
精神HPが危険域に近い。
しかし、まだ落ちていない。
主人公として耐えている。
たぶん。
かなり怪しいが。
帰る前。
春麗は、リュウへ向き直った。
「今日はここまで」
「ああ」
「宿題の正式回答は、まだ保留」
「ああ」
「春麗の話を聞く件についても、今日は保留」
「保留なのか」
「ええ」
「でも、今日も聞いた」
「聞かれたわ」
「なら、少し進んだのか」
春麗は、少しだけ笑った。
「進んだわ」
「そうか」
「かなり危険な進み方だったけれど」
「危険か」
「危険よ」
リュウは、少しだけ安心したように頷いた。
「なら、よかった」
「危険だと言っているのに、なぜよかったになるの」
「春麗が進んだなら」
精神HPが削れた。
もう危険域。
春麗は、顔を背けた。
「……あなた、本当に最後まで油断できないわね」
「油断?」
「こちらの話よ」
春麗は、背を向ける。
これ以上いると落ちる。
今日の主人公補正は、十分に回収した。
いや、十分すぎる。
甘い出来事を体験しすぎた。
春麗は歩き出す。
「春麗」
呼ばれた。
止まらない。
止まってはいけない。
だが、止まった。
「何」
振り返らずに答える。
リュウは言った。
「今日の春麗の話も、聞けてよかった」
精神HPが落ちた。
完全に。
春麗は、背を向けたまま固まった。
今日の春麗の話。
聞けてよかった。
それは、前回の「また聞かせてくれ」に対する回収だった。
春麗が来た。
話した。
リュウが聞いた。
そして、よかったと言った。
シンプル。
あまりにもシンプル。
だからこそ、直撃した。
「……リュウ」
「ああ」
「その一言は、今日の最後に置いていくには危険すぎるわ」
「そうなのか」
「そうよ」
「だが、言っておきたかった」
オーバーキル。
春麗は、青い袖を握った。
「……九十八点」
声が小さくなる。
リュウは、少し驚いたようにする。
「高い」
「高いわよ」
「正式回答ではない」
「正式回答ではないのに、九十八点よ」
「それは、いいのか」
「よくないわ」
一拍。
「でも、悪くない」
言ってしまった。
言ってから、春麗は顔を真っ赤にした。
背を向けていてよかった。
リュウに顔を見られずに済んだ。
たぶん。
いや、背中でバレているかもしれない。
リュウは静かに言う。
「また聞かせてくれ」
完全に終了。
精神HPはゼロを超えて、マイナス側に沈んだ気がした。
春麗は、どうにか声を絞る。
「……次は、あなたの正式回答が先よ」
「ああ」
「順番は守りなさい」
「ああ」
「でも」
一拍。
「その後なら、また話してもいいわ」
リュウは頷いた。
「わかった」
「では、今日は終わり」
「ああ」
「本当に終わり」
「ああ」
春麗は今度こそ歩き出した。
振り返らない。
振り返ったら終わる。
もう精神HPは落ちているが、振り返ったら二度落ちる。
背中にリュウの視線を感じる。
黒の後の青。
春麗の話を聞かれた青。
聞けてよかったと言われた青。
また聞かせてくれと言われた青。
春麗は、顔を赤くしたまま歩いた。
「……主人公補正」
一拍。
「溜まりすぎよ」
誰にも聞こえない声だった。
その夜。
春麗会議室は、静かに開いた。
黒いログ束は、中央にはない。
棚にある。
必要なら取り出せる。
けれど、今日は違う。
円卓の中央に置かれていたのは、青いログ札だった。
前回の宿題進捗確認ログより、少しだけ濃い青。
記録板AIが起動する。
『本日の会議を開始します』
『議題:本編春麗・主人公補正回収ログ』
本編春麗は、着席した瞬間に立ち上がりかけた。
「待ちなさい」
『はい』
「議題名がおかしい」
『適切です』
「適切ではないわ」
『黒執着春麗編により本編春麗の出番間隔が空いていたため、主人公属性の再強調が発生しました』
「メタすぎるわ」
『会議室ですので』
「便利に使わないで」
記録板AIは、淡々と続ける。
『本日の参加者』
『本編春麗:対象者』
『自覚前春麗:資料観測担当』
『通常救済版春麗:安定化担当』
『行き遅れに恐怖する春麗:待機と再訪問整理担当』
『黒ドレス特化救済春麗:黒後の青導線確認担当』
『記録板AI:ログ表示・精神HP管理担当』
『グランドフィナーレ春麗:本日は不参加』
自覚前春麗が、資料を手にして本編春麗を見る。
「主人公補正回収ログ」
「復唱しないで」
「資料としては興味深いわ」
「あなたの資料としてを封印したい」
通常救済版春麗が、湯呑みを置く。
「でも、かなり良い回だったのでは?」
本編春麗は、少しだけ顔を赤くした。
「よくないわ」
『発言信頼度:低』
「低にしないで」
行き遅れ春麗が静かに言う。
「待っていた青が、自分から聞かせに行った回ね」
本編春麗は、そちらを見る。
「あなたも刺すわね」
「待機後進行だから」
『行き遅れ春麗:管轄適用』
「本当に管轄が広い」
黒ドレス特化救済春麗は、青いログ札を見ていた。
「黒の後に、青が自分で戻った」
本編春麗は、少しだけ黙った。
「……ええ」
「それは大事よ」
記録板AIが表示を切り替える。
『前提ログ』
『前回リュウ発言:“黒の話が一区切りついたなら、春麗の話も、また聞かせてくれ”』
『本編春麗:当該発言を根拠にリュウへ接触』
『目的:正式回答催促ではなく、春麗自身の話を聞かせるため』
『補足:主人公補正蓄積により甘味強度上昇』
本編春麗は額に手を当てた。
「甘味強度って何」
『本日の精神HP被弾傾向です』
「嫌な指標を作らないで」
自覚前春麗が資料に書き込む。
「甘味強度上昇……」
「書かないで」
「資料として」
「それを言えば許されると思わないで」
記録板AIがログを展開する。
『接触開始』
『本編春麗:“今日は、戦いに来たわけではないわ”』
『本編春麗:“宿題の正式回答を急かしに来たわけでもない”』
『本編春麗:“進捗確認でもない”』
『リュウ発言:“なら、春麗の話か”』
『初期被弾:中』
通常救済版春麗が微笑む。
「最初から理解されているわね」
本編春麗は腕を組む。
「理解が早すぎるのよ」
自覚前春麗が言う。
「前回の言葉を覚えていたからでしょう」
「だから危険なのよ」
記録板AIが続ける。
『リュウ発言:“勝手に来てもよかった”』
『リュウ発言:“春麗が話したいなら、来ていい”』
『リュウ発言:“俺が聞きたいと言ったから来たのでもいい”』
『リュウ発言:“でも、それがなくても、春麗が来るなら聞く”』
『本編春麗採点:九十点』
会議室が一瞬静かになった。
自覚前春麗が最初に言う。
「これは高いわ」
本編春麗は即答する。
「高いでしょう」
通常救済版春麗が頷く。
「理由がなくても聞く、ということね」
「ええ」
行き遅れ春麗が言う。
「来てもいい場所がある」
本編春麗は、少しだけ黙った。
その言い方は、刺さった。
リュウが聞いてくれる。
リュウが話していいと言う。
リュウが、理由がなくても来るなら聞くと言う。
それは、かなり強い。
『本編春麗:再被弾』
「今のはあなたのせいよ、記録板AI」
『保存しました』
「保存しないで」
黒ドレス特化救済春麗が静かに言う。
「黒の後に、青が戻る場所を確認したのね」
本編春麗は、少しだけ頷いた。
「……そうかもしれないわ」
記録板AIが次のログを出す。
『本編春麗発言:“黒を棚に置いたうえで、青へ戻る”』
『リュウ発言:“春麗は、黒の後の青で来たんだな”』
『本編春麗採点:九十一点』
自覚前春麗が資料を見る。
「黒の後の青」
本編春麗は顔を背ける。
「言語化が早すぎるのよ」
黒ドレス特化救済春麗が頷く。
「でも正確ね」
「正確だから困るの」
「黒を捨てた青ではない。黒を棚に置いた後の青」
「ええ」
「これはかなり大事」
本編春麗は、青いログ札を見る。
そう。
今日の自分は、ただの青ではなかった。
黒の後の青。
重い黒を畳んだ後、戻ってきた青。
リュウに話を聞かせてくれと言われて、自分から会いに行った青。
それを、リュウは一言で見た。
危険だった。
『黒後青分類:仮登録』
「待って」
『黒の後の青:未承認仮分類として保存しました』
「また増えた!」
自覚前春麗が少し笑う。
「未承認仮分類、多いわね」
「あなたに言われたくない」
記録板AIがさらに進める。
『本編春麗発言:“私が、まだ主人公として動いていいのか”』
『リュウ発言:“春麗は、動いている”』
『リュウ発言:“来た。話している。なら、動いている”』
『リュウ発言:“だから、主人公なのだと思った”』
『本編春麗採点:九十三点』
本編春麗は、完全に顔を覆った。
「そこを出すのは反則」
『重要ログです』
「重要だけど」
自覚前春麗が、資料を眺めながら言う。
「これは主人公認定ね」
「言わないで」
通常救済版春麗が微笑む。
「でも、良かったと思うわ」
本編春麗は顔を上げる。
「どこが?」
「あなたが、自分で戻ってきたことを、リュウが見ていた」
一拍。
「主人公として、という言い方はともかく」
「ともかくなのね」
「でも、あなたが動いたことを見ていた」
行き遅れ春麗が言う。
「待っていた青が、自分で歩いた」
黒ドレス特化救済春麗が続ける。
「黒に譲っていた出番を、奪い返すのではなく、自分の話として戻した」
本編春麗は、少しだけ視線を落とした。
それは、少し嬉しかった。
黒執着春麗の救済は必要だった。
でも、自分の青も残っていた。
その青で、リュウに会いに行った。
そして、リュウは「動いている」と言った。
それは、かなり大きい。
『本編春麗:主人公属性再確認』
「……保存していいわ」
『保存しました』
記録板AIが、さらに甘いログを表示する。
『リュウ発言:“黒の話は、春麗にとって大事だった”』
『リュウ発言:“それが一区切りついた”』
『リュウ発言:“でも、春麗がそこで止まるわけではない”』
『リュウ発言:“なら、次に春麗が何を話すのか、聞きたい”』
『リュウ発言:“春麗が何を持って戻ってきたのか”』
『リュウ発言:“黒の後に、どんな青で来るのか”』
『本編春麗採点:九十五点』
会議室が、静かになった。
これは、少し重い甘さだった。
通常救済版春麗が、静かに言う。
「かなり良いわね」
黒ドレス特化救済春麗が頷く。
「黒の重さを認めたうえで、青の次を聞いている」
自覚前春麗が言う。
「黒を軽視していないし、青を添え物にもしていない」
行き遅れ春麗が続ける。
「一区切りの後に、次の話を待っている」
本編春麗は、青いログ札を見つめた。
「……だから九十五点」
『採点:妥当』
「妥当なのね」
『はい』
記録板AIは続ける。
『リュウ発言:“春麗が話すなら、俺は聞く”』
『リュウ発言:“話せないなら、待つ”』
『リュウ発言:“話したくなったら、また聞く”』
『本編春麗採点:九十六点』
本編春麗は目を閉じた。
これは本当に危険だった。
聞く。
待つ。
また聞く。
急かさない。
でも、見落とさない。
それは、今の本編春麗にはかなり強い。
見られたくない。
でも、見落とされたくない。
その矛盾に、かなり近い場所をリュウが踏んでいる。
自覚前春麗が、珍しく茶化さずに言った。
「待つ、も入っているのね」
行き遅れ春麗が頷く。
「聞くことと、待つことが両方ある」
通常救済版春麗が言う。
「だから、安心して次を持てる」
本編春麗は、ゆっくり頷いた。
「……ええ」
黒ドレス特化救済春麗が静かに続ける。
「黒の後に青へ戻る時、急かされないのは大事よ」
「ええ」
「でも、聞く意思があるのも大事」
「ええ」
「かなり良い受け止め方だった」
本編春麗は、小さく息を吐いた。
「……九十六点で止めるべきだったのよ」
『続きがあります』
「あるでしょうね」
記録板AIが、最後のログを出す。
『別れ際ログ』
『リュウ発言:“今日の春麗の話も、聞けてよかった”』
『本編春麗採点:九十八点』
会議室が止まった。
本編春麗も、少しだけ固まる。
あの時の感覚が戻る。
帰ろうとした背中に、リュウの声。
今日の春麗の話も、聞けてよかった。
それは、あまりにも素直だった。
だから刺さった。
通常救済版春麗が、やわらかく言う。
「これは高いわ」
本編春麗は頷く。
「高いでしょう」
自覚前春麗が言う。
「聞けてよかった、は危険ね」
「危険よ」
行き遅れ春麗が続ける。
「話したことが、相手の中で良かったものになる」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「黒の後の青が、ちゃんと受け取られた」
本編春麗は、顔を覆わなかった。
今回は、覆わずに受け取った。
少しだけ顔は熱い。
だが、受け取る。
今日の春麗の話も、聞けてよかった。
それは、主人公補正の甘い回収として、かなり強かった。
『追撃ログ』
『リュウ発言:“また聞かせてくれ”』
『本編春麗:精神HPノックアウト』
本編春麗は、今度こそ顔を覆った。
「そこまで出さなくていい!」
『重要です』
「重要だけど!」
自覚前春麗が、楽しそうに資料を見る。
「九十八点で精神HPノックアウト」
「笑わないで」
「資料としては、非常に美しいわ」
「美しくない」
『自覚前春麗:高評価』
「保存しないで」
『保存しました』
通常救済版春麗が微笑む。
「でも、今回は悪いノックアウトではないわね」
本編春麗は、顔を覆ったまま頷く。
「……ええ」
黒ドレス特化救済春麗が言う。
「黒の後、青が戻ってきた。話した。聞かれた。また聞かせてくれと言われた」
行き遅れ春麗が言う。
「次を待てる形になった」
本編春麗は、ゆっくり顔を上げた。
「そうなのよ」
精神HPは落ちた。
でも、悪い落ち方ではない。
甘すぎた。
危険すぎた。
しかし、受け取られた。
青が、リュウに聞かれた。
そして、また聞きたいと言われた。
それは、本編春麗にとってかなり大きかった。
記録板AIが、本日の結論を表示する。
『本日の結論』
『一、本編春麗は、前回リュウの“春麗の話も、また聞かせてくれ”発言を根拠に、自分からリュウへ会いに行きました』
『二、黒執着春麗編後、黒の後の青として本編ラインを再稼働しました』
『三、リュウは“勝手に来てもよかった”“春麗が来るなら聞く”と発言し、本編春麗の来訪理由を補強しました』
『四、リュウは本編春麗が自分で戻ってきたことを認識し、主人公性を刺激しました』
『五、リュウは黒の重さを軽視せず、その後の春麗の話を聞きたいと示しました』
『六、聞く、待つ、また聞く、という受け止め方により、本編春麗の精神HPを大きく削りました』
『七、“今日の春麗の話も、聞けてよかった”により九十八点到達』
『八、“また聞かせてくれ”により精神HPノックアウト』
『九、正式回答は未提出』
『十、本編春麗の主人公補正:回収完了』
本編春麗は、十番を見て言った。
「回収完了ではないわ」
『なぜですか』
「まだ正式回答が残っている」
『訂正します』
『本編春麗の主人公補正:一部回収』
「それならいいわ」
『保存しました』
自覚前春麗が、少し呆れたように言う。
「そこは保存するのね」
「主人公だから」
「便利ね」
通常救済版春麗が言う。
「でも、かなり綺麗に戻ってきたと思うわ」
本編春麗は、青いログ札を見る。
「……ええ」
黒の後に、青が戻った。
青が、リュウに話した。
リュウが聞いた。
聞けてよかったと言った。
また聞かせてくれと言った。
正式回答はまだ。
でも、次はある。
それで十分だった。
記録板AIが、最後に小さく表示する。
『新規仮分類候補:聞かれた青』
本編春麗は、即座に顔を上げる。
「待って」
『候補表示を継続します』
「継続しないで」
『聞かれた青』
『定義案:黒執着春麗編後、黒の後の青としてリュウへ自分の話を聞かせ、受け取られた本編春麗の青』
本編春麗は、青いログ札を見つめた。
聞かれた青。
届かれた青。
見られた青。
覚えられた青。
そして、聞かれた青。
春麗は、しばらく黙った。
「……未承認仮分類にしておきなさい」
『未承認仮分類として保存しました』
「保存はするのね」
『重要です』
会議室に、小さな笑いが生まれる。
青いログ札は、静かに光っていた。
黒いログ束は棚にある。
けれど今日は、青が中央にある。
それでいい。
今日だけは、それでいい。
会議室の輪郭が、少しずつほどけていく。
消える直前、記録板AIが表示した。
『次回以降:正式回答待機継続』
本編春麗は、小さく言った。
「ええ」
一拍。
「でも、聞かせる話も増えたわ」
『保存しました』
「最後まで保存しなくていいのに」
その声を最後に、春麗会議室は静かに消えた。
朝。
本編春麗は目を覚ました。
部屋には、薄い光が入っている。
胸の奥に、昨日の言葉が残っていた。
春麗が来るなら聞く。
黒の後に、どんな青で来るのか聞きたい。
春麗が話すなら、俺は聞く。
話せないなら、待つ。
話したくなったら、また聞く。
今日の春麗の話も、聞けてよかった。
また聞かせてくれ。
春麗は、布団の中で顔を覆った。
「……九十八点は、やりすぎよ」
だが、悪くない。
精神HPは落ちた。
でも、嫌ではない。
黒は棚にある。
青は中央に戻った。
宿題の正式回答はまだ。
でも、春麗の話は聞かれた。
そして、また聞きたいと言われた。
春麗は、ゆっくり起き上がる。
鏡の前に立つ。
青い武道服が、そこにある。
昨日より少しだけ、青が濃く見えた。
「聞かれた青、ね」
一拍。
「未承認よ」
もう一拍。
「でも、保留保存」
自分で言って、少しだけ笑った。
今日は、急がない。
正式回答はまだ待つ。
ただ、昨日のことはなかったことにしない。
リュウに春麗の話を聞かれたこと。
聞けてよかったと言われたこと。
また聞かせてくれと言われたこと。
それは、青のログとして残す。
春麗は、青い袖に触れた。
「次は、あなたの正式回答が先よ」
小さく言う。
誰も聞いていない。
でも、胸の奥は少し温かい。
「その後なら」
一拍。
「また、話してあげてもいいわ」
言ってから、顔が熱くなる。
かなり偉そうだった。
でも、今日はそれでいい。
本編春麗は、新しい朝の光の中で、青い袖を整えた。
黒の後に戻ってきた青。
聞かれた青。
まだ正式回答を待つ青。
そして、次もまた話すかもしれない青。
「……主人公補正、一部回収」
一拍。
「残りは正式回答で回収予定」
そう呟いて、本編春麗は朝を始めた。
Q:今回の断章IFについて解説して?
A:
今回のエピソードは、一言で言うなら、
黒執着春麗編後に、本編春麗が“聞かれた青”として主人公の位置へ戻ってくる回
です。
長かった黒執着春麗編は一区切りつきました。
黒は消えたわけではありません。
なかったことになったわけでもありません。
ただ、今は円卓の中央に置き続けるのではなく、必要な時に取り出せる場所へ移されました。
その流れを受けて、今回は本編春麗の回です。
黒の話が長く続いた後で、本編春麗が自分からリュウに会いに行きます。
ただし今回は、用事がないのに会いに行く回とは違います。
今回は、ちゃんと根拠があります。
前回、リュウは言いました。
黒の話が一区切りついたなら、春麗の話も、また聞かせてくれ。
今回の本編春麗は、その言葉を根拠に動いています。
これはかなり重要です。
本編春麗は、ただ会いたくて会いに行ったわけではありません。
宿題の正式回答を急かしに行ったわけでもありません。
進捗確認でもありません。
今回は、
リュウが聞かせてくれと言ったから、春麗の話をしに行く
という回です。
つまり、本編春麗が「話す側」になり、リュウが「聞く側」になる回です。
これまで本編春麗は、リュウの言葉にかなり削られてきました。
届かれた青。
見られた青。
覚えられた青。
宿題を出した青。
進捗確認した青。
リュウの言葉を受け取ることで、どんどん青が更新されてきた。
でも今回は、少し違います。
本編春麗が、自分の話をリュウへ持っていく。
黒執着春麗の救済を見届けた後で、自分はどんな青として戻ってきたのか。
黒の重さを知った後で、本編春麗自身の話へ戻っていいのか。
自分はまだ主人公として動いていいのか。
そういう話を、リュウに聞かせに行きます。
今回のリュウの火力は、いつものような「一撃必殺の無自覚発言」だけではありません。
今回は、聞く姿勢そのものが危険です。
リュウはまず、
春麗が話したいなら、来ていい。
俺が聞きたいと言ったから来たのでもいい。
でも、それがなくても、春麗が来るなら聞く。
と言います。
これはかなり大きいです。
本編春麗は、今回は「リュウが聞かせてくれと言ったから来た」という理屈を持っていました。
でもリュウは、その理屈がなくてもいいと言う。
春麗が来るなら聞く。
これは、本編春麗にとってかなり甘い言葉です。
用事があるから来ていい。
宿題があるから来ていい。
進捗確認だから来ていい。
ではなく、
春麗が話したいなら来ていい。
ここで、本編春麗の青はかなり削られています。
次に重要なのは、
黒の後の青
という言葉です。
今回の春麗は、ただの青ではありません。
黒執着春麗の救済を見届けた後の青です。
黒を消した青ではない。
黒を忘れた青でもない。
黒の重さを知ったうえで、自分の本筋へ戻ってきた青。
本編春麗自身が黒を処理したわけではありません。
けれど、黒執着春麗のログを見届けたことで、確かに影響を受けています。
だから今回の青は、黒とは無関係な青ではありません。
黒の重さを見届けた後で、それでも自分の話へ戻ってきた青です。
リュウは、それを一言で見ます。
春麗は、黒の後の青で来たんだな。
これはかなり正確です。
春麗本人が言葉にしきれていなかった状態を、リュウが先に見てしまう。
だから危険です。
今回の新しい到達点は、
聞かれた青
です。
これまでの本編春麗には、
届かれた青。
見られた青。
覚えられた青。
そういう青の更新がありました。
今回はそこに、
聞かれた青
が加わります。
これは非常に重要です。
黒執着春麗編を見届けた後、本編春麗は自分の青でリュウの前に戻ってきた。
そして、その話をリュウに聞かれた。
さらに、聞けてよかったと言われた。
これは、青の再接続としてかなり強いです。
今回、リュウは本編春麗に対して、
春麗が何を持って戻ってきたのか。
黒の後に、どんな青で来るのか。
それを聞きたいと思った。
と言います。
ここもかなり大事です。
リュウは黒を軽く扱っていません。
黒の話は春麗にとって大事だった。
それが一区切りついた。
でも春麗がそこで止まるわけではない。
なら、次に春麗が何を話すのか聞きたい。
この流れだから、本編春麗は高得点を出しています。
黒を無視して青に戻したわけではない。
黒を過剰に引きずらせるわけでもない。
黒の後に、春麗がどんな青で来るのかを聞きたい。
これは、今の本編春麗にとってかなり理想に近い受け止め方です。
さらに、今回のリュウは、
春麗が話すなら、俺は聞く。
話せないなら、待つ。
話したくなったら、また聞く。
と言います。
これは、今回の中でもかなり優しい高火力です。
聞く。
待つ。
また聞く。
急かさない。
でも、聞く意思はある。
見落とさない。
でも、踏み込みすぎない。
本編春麗の「見られたくない。でも、見落とされたくない」という矛盾に、かなり近い場所を踏んでいます。
そして最後の一撃が、
今日の春麗の話も、聞けてよかった。
です。
これは、今回の最大火力です。
春麗が来た。
春麗が話した。
リュウが聞いた。
そして、聞けてよかったと言った。
非常にシンプルです。
しかし、本編春麗には直撃します。
なぜなら、今回は自分の話をしに来たからです。
黒の後に戻ってきた青。
主人公として戻ってきた青。
自分からリュウに会いに来た青。
その話を、聞けてよかったと言われた。
これは、本編春麗にとってかなり大きいです。
しかも最後に、
また聞かせてくれ
と続きます。
前回の「また聞かせてくれ」を根拠に今回春麗が動き、
今回の最後でもう一度「また聞かせてくれ」が返ってくる。
これは、かなり綺麗なループです。
今回で終わりではない。
また次がある。
正式回答も残っている。
春麗の話も、また続く。
その構造ができています。
春麗会議室では、このログが「主人公補正回収ログ」として扱われました。
これは半分メタですが、かなり重要です。
黒執着春麗編が長く重かった分、本編春麗の出番は少し待たされていました。
でも今回、本編春麗は自分から動きます。
リュウに会いに行く。
自分の話をする。
黒の後の青として戻ってくる。
そして、リュウに聞かれる。
これは、主人公としての位置を取り戻す回です。
ただし、黒執着春麗から奪い返すのではありません。
黒執着春麗の救済を見届けた後で、本編春麗が自分の青として中央に戻ってくる。
ここが大事です。
黒執着春麗編を否定しない。
黒の重さをなかったことにしない。
でも、本編春麗の物語も止まっていない。
今回のエピソードは、その確認回です。
今回の到達点は、
黒の後の青。
聞かれた青。
主人公補正、一部回収。
です。
そして、正式回答はまだ残っています。
本編春麗は、精神HPをノックアウトされました。
でも、悪い落ち方ではありません。
リュウに春麗の話を聞かれた。
聞けてよかったと言われた。
また聞かせてくれと言われた。
それは、本編春麗にとって甘く危険で、でもかなり嬉しいログです。
最後に朝目覚めた春麗は、
聞かれた青、ね。
未承認よ。
でも、保留保存。
と整理します。
正式承認はしない。
でも、消さない。
保留して保存する。
これが本編春麗らしいです。
黒の後、青は戻ってきました。
そしてその青は、リュウに聞かれました。
次は、リュウの正式回答です。
でも、その前に本編春麗はもう一つ新しい青を得ました。
聞かれた青。
今回は、その青が生まれた回でした。