また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※これは本編時空ではなく、妄想章IFです。


断章IF:春麗会議は、救済後の黒執着春麗が精神HPで倒されたログを確認する

 

 春麗会議室に、新しいログが届いた。

 

 黒い表紙ではなかった。

 

 だが、表紙の端に黒い印がある。

 

 そして、その横に、記録板AIの文字が表示されていた。

 

『黒執着春麗・救済後後日談ログ』

 

『対象:リュウに黒ドレスで初勝利後、翌日精神HPノックアウト』

 

 本編春麗は、その表示を見た瞬間、湯呑みを置いた。

 

「待って」

 

 自覚前春麗が首を傾げる。

 

「何?」

 

「今、救済後って書いてあったわよね」

 

『はい』

 

「初勝利後とも書いてあったわよね」

 

『はい』

 

「その次に、精神HPノックアウトって書いてあったわよね」

 

『はい』

 

 本編春麗は、ゆっくり額に手を当てた。

 

「……リュウね」

 

『高確率でリュウです』

 

「高確率じゃなくて確定でしょう」

 

『確定です』

 

「でしょうね!」

 

 通常救済版春麗が、静かにお茶を注ぐ。

 

「まず落ち着きましょう」

 

 本編春麗は振り向く。

 

「このログタイトルで落ち着ける?」

 

「無理かもしれないわ」

 

「でしょう?」

 

 行き遅れに恐怖する春麗は、両手で湯呑みを包みながら小さく言った。

 

「勝った翌日に、精神戦で負けるのは……待機位置が崩れやすい」

 

 本編春麗がそちらを見る。

 

「あなた、今回も管轄あるの?」

 

「勝利の翌日の待機。かなり危険」

 

『行き遅れ春麗:勝利翌日待機リスクを指摘』

 

「記録板AI、今のは保存していいわ」

 

『保存しました』

 

 自覚前春麗は、ログ表紙を見ながら言う。

 

「黒執着春麗本人は、ここには来ないのよね?」

 

『はい。本人参加なし。会議室側の観測ログです』

 

 本編春麗は頷いた。

 

「そこは大事ね」

 

 通常救済版春麗も頷く。

 

「本人が来たら、精神HP追撃になってしまうもの」

 

「ええ。今の彼女には、見守る距離が必要よ」

 

 記録板AIが表示する。

 

『確認事項:黒執着春麗本人への干渉なし』

 

『会議室内でのログ観測のみ』

 

 本編春麗は深く頷く。

 

「よろしい」

 

 自覚前春麗が表紙を開いた。

 

 ログが投影される。

 

 救済後の黒執着春麗。

 

 黒を着ても着なくても空ではないと知った春麗。

 

 黒ドレスでリュウにギリギリ初勝利した春麗。

 

 その翌日。

 

 黒を着ていない春麗。

 

 リュウに遭遇。

 

 そして。

 

『昨日の黒も春麗だった』

 

『今日の春麗も、春麗だ』

 

『どちらも、よかった』

 

 会議室が静まり返った。

 

 本編春麗は、ゆっくりログを閉じた。

 

「……一回閉じましょう」

 

 自覚前春麗が頷く。

 

「ええ」

 

 通常救済版春麗も静かに頷く。

 

「一度、閉じた方がいいわ」

 

 行き遅れ春麗は、湯呑みを持ったまま固まっていた。

 

 記録板AIが表示する。

 

『会議室全体精神HP:急減』

 

 本編春麗が即座に言う。

 

「数値を出さないで」

 

『推定被弾量:大』

 

「出さないでって言ったでしょう!」

 

 自覚前春麗が、頬を押さえながら言う。

 

「これは……黒執着春麗用の発言に見えて、会議室全体に範囲攻撃が入っているわね」

 

『範囲攻撃判定:成立』

 

「成立させないで」

 

 本編春麗は、深呼吸した。

 

「整理しましょう」

 

『整理モードに移行します』

 

「まず、黒執着春麗は救済後だった」

 

『はい』

 

「黒を着ても着なくても空ではないと確認済み」

 

『はい』

 

「その後、黒ドレスでリュウにギリギリ初勝利」

 

『はい』

 

「勝った黒も、負けた黒の隣に畳んだ」

 

『はい』

 

「つまり、かなり綺麗に着地していた」

 

『はい』

 

「その翌日、黒を着ていない状態でリュウに会った」

 

『はい』

 

「そして、リュウが言った」

 

『昨日の黒も春麗だった。今日の春麗も春麗だ。どちらも、よかった』

 

 本編春麗は机を叩いた。

 

「読み上げないで!」

 

『失礼しました』

 

「失礼では済まない高火力よ!」

 

 自覚前春麗が腕を組む。

 

「でも、内容としては正しいのよね」

 

 本編春麗がそちらを見る。

 

「そこが問題なのよ」

 

「黒を着ても春麗。黒を着なくても春麗」

 

「ええ」

 

「黒ドレスを選んだ春麗も、翌日それを棚に置いて歩く春麗も、どちらも春麗」

 

「ええ」

 

「どちらも、よかった」

 

 本編春麗が目を閉じた。

 

「最後を言わないで」

 

「でも、そこが決め手でしょう」

 

「決め手だから言わないでほしいのよ」

 

 通常救済版春麗が、柔らかく言った。

 

「黒執着春麗にとっては、救済の確認になっているのよね」

 

 本編春麗は頷く。

 

「そうなのよ」

 

 通常救済版春麗は続ける。

 

「彼女は、自分で黒を着ても着なくても空ではないと確認した」

 

「ええ」

 

「でも、リュウに見られた」

 

「ええ」

 

「昨日の黒も、今日の自分も、両方見られた」

 

「ええ」

 

「その上で、どちらも春麗だと言われた」

 

 本編春麗は、湯呑みを持つ手を止めた。

 

「……刺さるわね」

 

『本編春麗:共感被弾』

 

「共感被弾を記録しないで」

 

『重要です』

 

「重要だけど、今はやめて」

 

 行き遅れ春麗がぽつりと言う。

 

「これは、待っていた答えを急に渡された時の被弾に近い」

 

 本編春麗が振り向く。

 

「あなた、また管轄が広いわね」

 

「急に来る答えは危険」

 

『行き遅れ春麗:急答被弾リスクを指摘』

 

「それは保存していいわ」

 

『保存しました』

 

 自覚前春麗が、再びログを開く。

 

 今度は、続きを見る。

 

『昨日の黒を見た後だから、今日の春麗がよく見える』

 

 会議室が再び静かになった。

 

 本編春麗が、今度は椅子の背もたれに沈んだ。

 

「……これは駄目」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「駄目ね」

 

 自覚前春麗も頷く。

 

「完全に駄目ね」

 

 行き遅れ春麗は、小さく言う。

 

「これは、待機解除攻撃」

 

『技名候補:待機解除攻撃』

 

「記録板AI、技名にしないで」

 

『未承認仮分類です』

 

「未承認でも駄目」

 

 本編春麗は、ログを見つめた。

 

「昨日の黒を見た後だから、今日の春麗がよく見える……」

 

 口にしてしまって、自分で少し固まる。

 

 記録板AIが表示する。

 

『本編春麗:自己再生被弾』

 

「そんな項目ないでしょう!」

 

『新規作成しました』

 

「作らないで!」

 

 自覚前春麗が、少しだけ頬を赤くしながら言う。

 

「でも、これは黒執着春麗にとっては本当に危険ね」

 

 本編春麗は頷く。

 

「ええ」

 

「黒を着た自分と、黒を着ていない自分が、対立しなくなった直後でしょう」

 

「ええ」

 

「そこへ、リュウが外側から両方を同時に肯定してきた」

 

「ええ」

 

「しかも、本人はたぶん褒めている意識すら薄い」

 

「そこなのよ」

 

 本編春麗は身を乗り出す。

 

「リュウは意図して甘くしていない。だから避けられないのよ」

 

『リュウ無自覚高火力発言:再確認』

 

「保存していいわ」

 

『保存しました』

 

 通常救済版春麗が、黒いログを見つめる。

 

「でも、黒執着春麗は壊れていないわね」

 

 本編春麗は少し表情を落ち着けた。

 

「そこは重要ね」

 

 通常救済版春麗は続ける。

 

「精神HPはノックアウトされた」

 

「ええ」

 

「でも、救済は壊れていない」

 

「ええ」

 

「黒を着ても着なくても空ではない、という地点は維持されている」

 

「ええ」

 

「ただ、リュウの発言で甘い方向に倒された」

 

 本編春麗は、深く頷いた。

 

「それが今回の判定ね」

 

 記録板AI。

 

『判定:救済破壊ではなく甘味系精神HPノックアウト』

 

「甘味系って何よ」

 

『重さではなく甘さによる精神HP損耗です』

 

「適切だけど腹が立つわね」

 

 自覚前春麗が、少し笑う。

 

「黒執着春麗、救済後だからこそ被弾したのよね」

 

「そう」

 

 本編春麗はログを指差す。

 

「救済前なら、たぶんこの言葉は別の刺さり方をしていたわ」

 

 通常救済版春麗が頷く。

 

「黒を着ていない自分を見られることに耐えられなかったかもしれない」

 

「ええ」

 

「昨日の黒も春麗、今日の春麗も春麗、という言葉を、拒絶や奪取のように受け取ったかもしれない」

 

「ええ」

 

「でも今は違う」

 

 本編春麗が言う。

 

「今の彼女は、その言葉が正しいとわかっている」

 

 一拍。

 

「だから、逃げ場がない」

 

 会議室が、妙に納得した空気になった。

 

 記録板AI。

 

『整理:正しいから逃げ場がない』

 

「それは保存して」

 

『保存しました』

 

 行き遅れ春麗が、湯呑みを見つめながら言う。

 

「待っていた答えが正しいときほど、精神HPは削れる」

 

 本編春麗がしみじみと言う。

 

「あなた、本当に名言を出すわね」

 

『行き遅れ春麗:名言候補』

 

「保存していいわ」

 

『保存しました』

 

 自覚前春麗が、ログの最後の方を読む。

 

 黒執着春麗が部屋に戻る。

 

 棚の中の勝った黒を見る。

 

 昨日の黒も、今日の私も、春麗。

 

 昨日は勝った。

 

 今日は負けた。

 

 でも、どちらも私。

 

 自覚前春麗は、そこで少しだけ黙った。

 

「……これ、かなりいい着地ね」

 

 本編春麗も頷く。

 

「ええ」

 

「黒でリュウに勝った翌日に、黒を着ていない状態で精神HP負け」

 

「ええ」

 

「でも、それも私」

 

「ええ」

 

「勝った黒も、精神HPで負けた今日も、どちらも消さない」

 

「そう。そこが良いのよ」

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

「勝利も敗北も、同じ棚に置けるようになっているわね」

 

 本編春麗は、指を鳴らしかけてやめた。

 

「それよ」

 

『総括候補:勝利も精神敗北も同じ棚に置ける春麗』

 

「保存して」

 

『保存しました』

 

 黒ドレス特化救済春麗がいない会議室。

 

 黒執着春麗本人もいない。

 

 それでも、黒のログは円卓の中央にあった。

 

 重くはある。

 

 だが、以前の黒ログとは違う。

 

 今の重さは、救済前の沈む重さではない。

 

 畳める重さ。

 

 棚に置ける重さ。

 

 そして、少し笑える重さだった。

 

 本編春麗は、湯呑みを持ち直す。

 

「今回の結論」

 

『はい』

 

「黒執着春麗は、救済後もリュウに弱い」

 

『保存しました』

 

「早いわね」

 

『重要です』

 

「ええ。重要よ」

 

 自覚前春麗が笑う。

 

「でも、それは弱体化ではないわね」

 

 本編春麗は頷く。

 

「そう。弱体化ではない」

 

 通常救済版春麗が続ける。

 

「見られても消えない」

 

 行き遅れ春麗が言う。

 

「待っていなくても、答えが来ることがある」

 

 本編春麗が言う。

 

「そして、リュウの無自覚発言は、勝敗とは別判定」

 

 記録板AIが表示する。

 

『最終整理』

 

『戦闘結果:前日、黒執着春麗勝利』

 

『翌日精神戦:リュウ勝利』

 

『黒執着春麗救済状態:維持』

 

『精神HP:一時的ノックアウト』

 

『黒の所在:棚の中。本人の手元』

 

『追加判定:昨日の黒も今日の春麗も春麗』

 

『会議室評価:高火力。危険。だが良い』

 

 本編春麗は、最後の行を見て頷いた。

 

「危険。だが良い。これね」

 

 自覚前春麗が頷く。

 

「ええ」

 

 通常救済版春麗も微笑む。

 

「良い後日談だと思うわ」

 

 行き遅れ春麗が、小さく言う。

 

「精神HPが減っても、戻れる場所がある」

 

 本編春麗は、少しだけ目を細めた。

 

「本当に、あなた今日冴えているわね」

 

『行き遅れ春麗:本日評価高』

 

「それも保存していいわ」

 

『保存しました』

 

 少しだけ笑いが起きた。

 

 春麗会議室らしい笑いだった。

 

 黒執着春麗本人はいない。

 

 本人にこのログを見せるつもりもない。

 

 見せたら、おそらく二次被弾する。

 

 記録板AIが表示する。

 

『注意:黒執着春麗本人への本ログ開示は非推奨』

 

 本編春麗は即答した。

 

「当然よ」

 

『理由:精神HP再被弾リスク』

 

「わかっているなら、絶対に見せないで」

 

『了解しました』

 

 自覚前春麗が、ふと呟く。

 

「でも、黒執着春麗は本当に一区切りついたのね」

 

 本編春麗は頷いた。

 

「ええ」

 

「リュウに勝てる」

 

「ええ」

 

「リュウに精神HPで負ける」

 

「ええ」

 

「でも、どちらも自分として持てる」

 

「ええ」

 

「それ、かなり強いわ」

 

 本編春麗は、静かに笑った。

 

「そうね」

 

 一拍。

 

「かなり、強いわ」

 

 記録板AIが最後に表示する。

 

『黒執着春麗:救済後もリュウに精神HPで倒される可能性あり』

 

『ただし、回復地点を所持』

 

『黒:棚の中』

 

『勝利:保持』

 

『精神敗北:保持可能』

 

『会議室判定:安心して倒されてよい段階』

 

 本編春麗が思わず吹き出した。

 

「安心して倒されてよい段階って何よ!」

 

『救済破壊ではなく、甘味系精神HPイベントとして処理可能という意味です』

 

「説明されると余計におかしいわ」

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

「でも、そういうことね」

 

 行き遅れ春麗も頷く。

 

「倒れても、戻れる」

 

 自覚前春麗が言う。

 

「黒も、勝利も、精神敗北も、棚に置ける」

 

 本編春麗は、湯呑みを置いた。

 

「では、結論」

 

 記録板AIが待機する。

 

 本編春麗は、少しだけ笑って言った。

 

「黒執着春麗は、救済後もめんどくさい」

 

『保存しました』

 

「そして」

 

 一拍。

 

「リュウは、救済後の春麗にも危険」

 

『保存しました』

 

「さらに」

 

 本編春麗は、少しだけ誇らしげに言った。

 

「それでも、黒執着春麗はもう戻ってこられる」

 

『保存しました』

 

 会議室に、静かな空気が流れた。

 

 それは、安堵に近かった。

 

 黒執着春麗本人はここにいない。

 

 でも、彼女がもう、黒だけに沈む春麗ではなくなったことを、会議室の全員が知っている。

 

 昨日は勝った。

 

 今日は精神HPで負けた。

 

 どちらも春麗。

 

 なら、次もきっと立てる。

 

 本編春麗は、ログを閉じた。

 

「さて」

 

 全員が顔を上げる。

 

「このログ、甘味が必要ね」

 

『甘味提案:強く推奨』

 

「強く?」

 

『会議室全体が範囲被弾したため』

 

「異議なし」

 

 自覚前春麗も頷く。

 

「異議なし」

 

 通常救済版春麗が立ち上がる。

 

「用意するわ」

 

 行き遅れ春麗が小さく手を挙げる。

 

「待つわ」

 

 本編春麗は笑った。

 

「あなたは本当にぶれないわね」

 

 黒いログは、記録棚へ移された。

 

 見えない奥ではない。

 

 必要なら、また取り出せる場所。

 

 でも、円卓の中央に置きっぱなしにはしない場所。

 

 記録板AIが、最後に小さく表示する。

 

『補足:本編春麗も、類似攻撃への耐性は低い可能性があります』

 

 本編春麗が即座に振り向いた。

 

「最後に私を巻き込まない!」

 

 その声に、会議室の空気がようやく軽くなった。

 

 重い黒の救済の後。

 

 選んだ黒での初勝利の後。

 

 そして、翌日の精神HPノックアウトの後。

 

 春麗会議室には、いつものツッコミとお茶と、少し多めの甘いものが必要だった。

 




Q:今回の断章IFについて解説して?

A:

今回のエピソードは、一言で言うなら、

救済後の黒執着春麗が“勝った翌日に精神HPで負けた”ログを、春麗会議室が安全圏から確認する回

です。

前回、黒執着春麗はリュウに勝ちました。

黒ドレスで。
自分で選んだ黒で。
初めて、最後に立っていた黒。

これは彼女にとって非常に大きな到達点です。

ただし、今回の重要点は「リュウに勝った黒執着春麗すごい」で終わらないところです。

むしろ今回の本題は、その翌日です。

黒を着ていない春麗。
昨日の勝った黒を棚に置いた春麗。
勝った黒を特別に飾らず、負けた黒の隣に置けるようになった春麗。

その春麗が、リュウに会ってしまう。

そして、精神HPを削られる。

ここが今回の核です。

救済後の黒執着春麗は、もう黒だけに沈む春麗ではありません。

勝った黒も、負けた黒も、自分の黒として棚に置ける。
黒を着ても着なくても、自分は空ではない。
黒を選んだ自分も、黒を着ていない自分も、どちらも自分。

そこまで来ています。

だからこそ、今回のリュウの言葉が刺さります。

昨日の黒も春麗だった。
今日の春麗も、春麗だ。
どちらも、よかった。

これは、救済前の黒執着春麗にはたぶん受け取れなかった言葉です。

救済前なら、黒を着ていない自分まで見られることに耐えられなかったかもしれません。

黒を着た自分だけが本物。
黒を残せた自分だけが意味を持つ。
黒を着ていない自分は空なのではないか。

そういう危うさがあった。

でも、今の彼女は違います。

黒を着ていない自分も、春麗だと分かっている。

だからこそ、リュウにそれを言われると逃げ場がない。

正しいから刺さる。

これが今回の精神HPノックアウトの理由です。

今回の春麗会議室は、そのログを観測する側です。

黒執着春麗本人は会議室には来ません。

ここはかなり大事です。

黒執着春麗本人がこの場に来てしまうと、ログの再確認そのものが二次被弾になります。

だから今回は、春麗会議室側が観測し、整理する形にしています。

本人に直接干渉しない。
でも、ログは確認する。
そして、救済後の彼女がどこまで来たのかを見届ける。

その距離感が大事でした。

今回の会議室で最初に強く出るのは、本編春麗です。

ログタイトルを見た時点で、

救済後
黒ドレスで初勝利後
翌日精神HPノックアウト

という単語が並んでいます。

この時点で、本編春麗は「リュウね」と察します。

これはもう、連作内の共通認識です。

リュウは勝敗とは別に精神HPを削る。

勝っても危険。
負けても危険。
相打ちでも危険。
そして、勝った翌日でも危険。

今回、それが改めて確認されています。

特に重要なのは、会議室全体にも範囲攻撃が入っていることです。

黒執着春麗に向けられた言葉なのに、本編春麗、自覚前春麗、通常救済版春麗、行き遅れ春麗まで被弾している。

なぜか。

それは、この言葉が黒執着春麗だけの問題ではなく、春麗全体に刺さる構造を持っているからです。

昨日の自分も春麗。
今日の自分も春麗。
どちらも、よかった。

これは、本編春麗にも刺さります。

届かれた青も春麗。
見られた青も春麗。
宿題を出した青も春麗。
今日の青も春麗。

自覚前春麗にも刺さります。

黒を選んだ自分も春麗。
黒を選ばなかった自分も春麗。
決める前の自分も春麗。

行き遅れ春麗にも刺さります。

待っている自分も春麗。
進んでいないように見える自分も春麗。
答えを急かさない自分も春麗。

だから、これは範囲攻撃です。

今回の会議室で一番大事な整理は、

救済破壊ではなく、甘味系精神HPノックアウト

です。

黒執着春麗は精神HPを落とされました。

でも、救済は壊れていません。

黒を着ても着なくても空ではない、という地点は維持されています。

昨日の黒も、今日の自分も、どちらも春麗だと受け取れている。

ただし、リュウにそれを言われたことで甘い方向に倒された。

つまり、これは崩壊ではありません。

成長後の被弾です。

ここがかなり重要です。

救済後だからこそ、正しく刺さる。

壊れるのではなく、落ちる。

沈むのではなく、照れる。

黒に戻るのではなく、黒と今日の自分を両方持ったまま精神HPで倒される。

これは、救済後黒執着春麗のかなり良い状態です。

また、今回の行き遅れ春麗もかなり良い仕事をしています。

「勝利の翌日の待機」
「急に来る答え」
「待っていた答えが正しいときほど、精神HPは削れる」

このあたりの整理は、行き遅れ春麗らしい視点です。

彼女は、待つことや答えを急かさないことの担当ですが、今回は「勝った翌日」という静かな時間に突然リュウの答えが来る危険性を見ています。

勝利の翌日だから安心、ではない。

むしろ、勝利の翌日は危険です。

昨日の勝ちをどう持つのか。
黒を着ない今日をどう歩くのか。
その隙間に、リュウが言葉で入ってくる。

行き遅れ春麗の管轄が今回も妙に広いのは、そこです。

今回の最終的な到達点は、

昨日は勝った。
今日は精神HPで負けた。
でも、どちらも私。

です。

これはかなり良い着地です。

黒執着春麗は、前日に戦闘で勝ちました。

でも翌日、精神戦では負けました。

以前の彼女なら、勝利だけにしがみついたかもしれない。
あるいは、精神敗北を認められなかったかもしれない。
黒で勝った自分と、精神HPで倒された自分を同じ棚に置けなかったかもしれない。

でも今は違います。

勝利も持てる。
精神敗北も持てる。
黒も棚にある。
自分もそこにいる。

どちらも春麗。

これが、救済後の強さです。

春麗会議室側もそれを確認しています。

黒執着春麗は、救済後もリュウに弱い。
でも、それは弱体化ではない。
見られても消えない。
倒れても戻れる。

ここが今回の結論です。

また、最後の「安心して倒されてよい段階」という記録板AIの表現も、少しおかしいですが重要です。

これは、雑に言えば、

もうこの子は、甘い精神HPイベントで倒されても大丈夫なところまで来た

という意味です。

以前の黒執着春麗なら、倒れることが危険でした。

黒に沈む。
黒だけを自分にする。
リュウへ押しつける。
戻れなくなる。

でも今は、倒れても戻れる。

黒は棚にある。
勝利もある。
精神敗北も置ける。
会議室側も、観測できる。

だから、甘味系精神HPイベントとして処理できる。

これは、かなり大きな変化です。

今回のエピソードは、黒執着春麗本人の出番ではなく、春麗会議室側の確認回です。

でも、黒執着春麗の現在地をかなりはっきり示す回でもあります。

彼女はもう、危険な黒だけの存在ではありません。

黒で勝てる。
黒を着なくても歩ける。
リュウに精神HPで倒される。
でも、戻れる。

そして、その全部を春麗として持てる。

今回の到達点は、

黒執着春麗は、救済後もめんどくさい。
リュウは、救済後の春麗にも危険。
それでも、黒執着春麗はもう戻ってこられる。

です。

黒は、棚にある。

勝利も、そこにある。

精神敗北も、そこに置ける。

だから彼女は、次もきっと立てます。

そして春麗会議室には、いつものようにお茶とツッコミと、少し多めの甘いものが必要になる。

今回は、そういう後日談でした。
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